2014年10月28日
参院厚生労働委員会
○小池晃君 日本共産党の小池晃です。
泉南アスベストの原告団と会っていただいたことはよかったというふうに思います。これ出発点ですから、あくまで。これは補償のために全力を挙げていただきたいというふうに思います。
今の大臣の発言を受けてお聞きしたいと思うんですが、先ほど議論もあったように、無期転換権を奪われながら有期で働いたら今度は雇い止め、こういうのは絶対に本来はあってはならない話だと私は思うんですね。
局長にお伺いしますけれども、今回の専門的知識等を有する有期雇用労働者については、これは五年を超える一定の期間の事業における契約になるわけですから、これ労働契約法第十九条で言う雇用契約更新の期待権はより高まることになるし、やっぱりこれ本来は認められるべきだというふうに思うんですが、いかがですか。
○政府参考人(岡崎淳一君) 労働契約法第十九条におきましては、有期労働契約の契約期間の満了時にその有期労働契約が更新されると期待されることについて合理的な理由があると認められる者等については使用者が雇い止めすること、これにつきまして、客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当であると認められないときということで、そうした雇い止めが民事上認められないということになっております。
今回の特例につきまして、無期転換申込権発生までの期間を書面で明示するということでございますが、これは無期転換申込権の発生の期間ということでございますので、これをもって直ちに期待が合理的であるというところまではいかないわけでありますが、先生おっしゃりますように、全体の状況の中でそのことも含めて考慮する、勘案する一つの要素になっていくというふうに考えております。その上で、全体として、最終的には司法判断ということになるわけでありますが、私どもとしましても、労働契約法十九条がしっかり守られるということは非常に重要だというふうに考えております。
したがいまして、大臣から今申し上げましたとおり、専門的知識等を有する有期雇用労働者につきまして、特定有期業務の期間中の雇用の安定、あるいは労働契約法第十九条の趣旨も踏まえまして、合理的な理由のない雇い止めを回避するということが望ましいということを認定事業主に対してしっかりと周知して対応してまいりたいと、こういうふうに考えております。
○小池晃君 これはしっかりそういう趣旨なんだということをくれぐれも、労働行政の上でもやはりしっかり据えるべきだということを重ねて申し上げたいと思います。
定年後引き続き雇用される労働者の問題について聞きますが、そもそもこの項目は労政審で使用者側から突然出てきたもので、前回の委員会でメリットを聞かれて、基準局長は、無期に転換するとなると労使それぞれいろんな問題を生じる場合もあると。これでは分からないわけで、一体いろんな問題というのは何ですかと。無期転換権を剥奪してどんな定年後の労働者にメリットがあるのか私には全く分からないので説明してほしい。
○政府参考人(岡崎淳一君) 前回、いろいろな問題という言い方をしてしまいましたが、具体的に使用者側から出た問題意識につきましては、六十歳で定年を迎えられる、その方を有期雇用で継続雇用していくといった場合に、五年を超えた場合には無期転換になるとした場合には、六十五歳までは高齢法に基づきまして継続雇用の義務があるわけでございますが、その時点で無期転換を避けるために雇い止めせざるを得なくなるという可能性があるんだというような問題意識を経営側が言ったわけです。
そういうことをその審議会の中で議論してほしいということがありまして、それを前提に労使で議論した結果、雇用継続を望む労働者の方、あるいは労働者の能力を継続的に発揮を望む使用者の双方のいろんな議論の中で、両方にとってそういう場合につきましては特例を設けるということが必要ではないかと、こういう結論になったということでございます。
○小池晃君 無期転換を認めちゃったら雇用がしにくくなるという使用者側の言い分認めちゃったら、これは労働行政敗北だと私は思うんですよね。
しかも、これは大臣は都合がいい人もいると先ほど言ったけれども、これは権利なわけですから、あくまでも。義務じゃないわけですから。だから、無期転換申込権を付与されても全て申し込むとは限りませんし、いろんな事情があって退職することだってもちろんあるわけで、やっぱり逆に一律に定年六十歳超えというところで権利を奪ってしまうということがあっていいのかと。これはやっぱり事実上の年齢差別になるんじゃないかというふうに私は思うんですね、やっぱり。
それから、現実に正社員だといっても、結局リストラとか違法な退職勧奨が今広がっていますから、定年までなかなか働けないわけです。先ほどもあったように、たとえ定年にたどり着いても、一〇〇%の継続雇用にはなっておりません。これは義務化されたはずの定年後の雇用確保制度、いまだに七・七%、実数で一万一千を超える会社で行われてないわけで、希望しても再雇用されない労働者も年間四千四百三十一人もおられます。
私は、定年後の雇用確保を義務化するというなら、まずやっぱりこれを解決すべきなんではないか。希望者が六十五歳まで働くことができる継続雇用制度というのは、これは年金受給開始年齢を先送りしたことに伴う措置なわけですから、これは本来一〇〇%が当然なわけで、どうやって一〇〇%にするのか。厚労省としてはそこはどう考えているんですか。
○政府参考人(生田正之君) 委員御指摘のとおり、企業における高齢者雇用確保措置の実施状況につきましては、昨年六月一日現在で九二・三%となってございます。これにつきましては、希望者全員につきまして六十五歳までの雇用確保措置の実施を企業に義務付けた高齢者雇用安定法の改正が施行された直後ということもございまして、就業規則の改定等が間に合わなかったという原因があるんじゃないかというふうに考えてございます。
この問題につきましては、やっぱり一〇〇%の実施を目指す必要が当然あるというふうに思っておりまして、確保措置未実施企業に対しましては、改正高齢者雇用安定法に基づきます指導に従わない場合については、最終的には企業名公表の措置もあるということを念頭に置きながら、原則、全ての未実施企業に対して個別訪問指導を実施するなどして強力に指導していきたいと考えてございます。
○小池晃君 企業名公表をやっていただきたいと思いますよ、これ本当に。しかし、やっぱりこういったことを解決することこそ私は先決課題だというふうに言いたいわけであります。
定年後働く理由については、前回の委員会でも、やっぱり生活の糧を得るためだと答えている方が本当に多いわけですね。定年後も働かないと家計は厳しい。そして、多くの方は、定年前の企業に再雇用されても大幅賃金ダウンの上、有期雇用なわけですよ。実際にはいつ雇い止めになるか分からないという状況になっている、これが最大の問題です。
昨年の調査では、定年制廃止、それから六十五歳以上を定年制にしている企業は全体で一七・三%、中小企業では一八・六%まで来ています。
私、エージレスな社会というのであれば、大臣、少なくとも継続雇用制度を、これを一〇〇%徹底するとともに、特に大企業を中心に六十五歳までの定年制の延長、これが最大の担保になるはずだと。希望者がやっぱり六十五歳まで働くことができる定年延長制広げていく、このことが急がれるんじゃないかと思いますが、大臣はいかがですか。
○国務大臣(塩崎恭久君) 今、継続雇用制度について、本来一〇〇%であるべきだということを先生御指摘になられまして、私どもの方としてもできる限りそれを慫慂していくということが大事だというふうにまず思っていますが。
定年の問題は、先生先ほどちょっとおっしゃったんですけれども、米国のように年齢差別禁止法みたいなものがあって定年そのものがないという国もあるわけですけれども、我が国においては、定年の引上げということがずっと議論になってきて、取りあえずこの継続雇用制度ということで、こういう形で今来ているわけですけれども。
その引上げについて、一つは、現在六十歳の定年制が広く定着をして機能していて、企業の労務管理上の大きな影響を、仮に引き上げると及ぼすということ、それから、六十歳以降は働き方や暮らし方に対する働く側のニーズがこれまた多様であるということもあって、直ちに六十五歳に引き上げるということはなかなか難しいのかなというふうに考えております。この点については、雇用と年金の接続ということが課題になった高年齢者の雇用安定法の平成二十四年の改正時の労政審の議論においても議論がかなり深められたところでありまして、労使の合意の下に現行の制度が導入されたということだと思っています。
一方で、御指摘のように、雇用と年金の接続というのが非常に大事でもありますし、この間の財政検証においてもいろいろなケースを出し、またオプション試算まで出しているわけでありまして、そういう意味では、六十五歳までの雇用確保が重要であると我々も考えているわけでありまして、六十五歳までは原則として契約が更新されるべきとの高年齢者雇用安定法の趣旨を没却することがないように、ハローワークにおける助言、指導等を更に徹底してまいりたいと思います。
○小池晃君 年金と接続していないわけだから、実態は、だからそこをつなげるためにいろんな知恵を出すべきだし、私はやっぱり定年制を拡張していくということを真剣に考えるべきだと。
今回のやはり特例は、六十五歳までの安定した雇用の確保も、それ以降にきちっと安定した仕事に就くことの希望も、その保障も見出せないわけで、やっぱり労働者に付与したばかりの権限に穴を空けるということは、私は許されないということを改めて申し上げたいと思います。
それから、雇用に関連して、雇用創出基金事業を活用した事業の問題について聞きます。
DIOジャパンという企業が、二〇一二年から同基金事業で一年間コールセンター業務の訓練を行いました。研修が終わった後はそのまま同社の一〇〇%子会社コールセンターでの安定した雇用につなぐといって、青森から、東北地方を中心に石垣島まで十県十九事業を受託した。使われた基金の総額は四十二億円に上ります。
ところが、研修を受けてコールセンターの社員として安定した雇用になるはずだったのに、一年間の研修期間の終了後に次々と子会社の事業所が営業不振で閉鎖されています。結局、この九月までに全ての事業所が閉鎖、譲渡となって、二千人に及ぶ人たちが離職を余儀なくされて、昨年末からは未払賃金問題も発生しています。また同社は、秋田、宮城、福島などから研修中の労働者を東京本社に送って、そこから福岡の楽天銀行などへ派遣労働させていたことも明らかになっています。
高額リースや無償譲渡の形を取った不正な基金使用は、岩手県議会で今大問題になっています。
日本共産党は、現場の労働者とともに未払賃金の事態が発覚した今年初めから繰り返し厚労省に問題解明と早期解決を求めてまいりました。
大臣、これは厚労省の雇用創出基金事業で多額の国費を投入しながら大量の離職者と賃金未払というかつてない規模の被害を生んだわけで、あってはならないことだと私は思います。自治体の責任だけにはできない問題です。
大臣はこのDIOジャパンの事態をどう受け止めているか、なぜ一年近くたっても解明、解決ができないのか、お聞きします。
○国務大臣(塩崎恭久君) 今お話ございましたこのDIOジャパン及びその関連子会社において、緊急雇用創出事業、これはリーマン・ショックの直後にスタートしたものでございますけれども、後の安定した雇用がうまくいっておらず、多くの離職者が発生し、また今御指摘のように賃金不払が生じた。これは大変遺憾であり、問題だというふうに思っています。
今回の事案で離職を余儀なくされた方に対しましては、関係県及び市町村には労働局と連携をして必要な支援をするように指導しておりまして、引き続きしっかりと対応してまいりたいというふうに考えております。
○小池晃君 厚労省としての責任はどう考えていますか。
○政府参考人(生田正之君) 今回の事案につきましては、基金事業ということで、雇用創出を一時的にするという事業の活用後にDIOジャパン、それから関連会社から離職者が生じたという案件でございます。
これにつきましても非常に問題だと私どもも思っておりまして、今年の六月には各都道府県宛てに雇用継続に向けた努力をするように指示をいたしまして、それから、労働局の職業安定部長宛てに今年の八月には大量離職発生時の再就職支援の指示もいたしまして、雇用が確保できるようにという対応をいたしております。それから、基金事業、派遣事業を指導監督する立場としまして、都道府県労働局を通じて派遣事業に関する必要な指導も行ってございます。
これらを踏まえまして、適切かつ厳正な対応をしてまいりたいと考えてございます。
○小池晃君 厚労省の責任があるからやっぱりそういう対応をしたということでしょう。これは明らかにやっぱりそういう問題だと思うんです。
今いろいろ対応しているとおっしゃるけれども、例えば宮城登米の株式会社東北創造ステーション、ここが八月にほぼ全員が解雇されて、九月に閉鎖しました。労働者は若い女性中心です。七十二名が労働組合を結成して、DIOジャパンと国、自治体に今解決を求めています。組合の委員長さんはこう言っています。仕事は順調で、利益も上がって、ようやくずっと働けるところに入れたと、ところが今年六月から突然賃金が未払になった、ここは被災地で元々求人が少なくて、若い女性が働ける仕事は本当に限られる、百名もの仕事が一度になくなるのは大変な問題だと、こうおっしゃっているんですね。
登米の労働者は、立替払制度は賃金の八〇%までしかないと、何で満額もらえないのかと。これ、国の基金事業でやっている、国の事業だから安心ですよと言われて勤めたと言うんですよ。それなのにこういう事態になっている。
私は仕組みは知っていますよ。まあちょっと聞くと仕組みをいろいろ言うと思うけれども、仕組みは分かります。しかし、やっぱりこの事態の特殊性からいっても、特別な対応を、満額きちっと未払賃金払わせる、厚労省の責任でそういう仕事すべきじゃないですか。いかがですか。
○政府参考人(生田正之君) まず、未払賃金の支払につきましては、当然、労働基準関係法令違反ということでございますので、厳しく対応していくということでございますけれども、未払賃金の立替払事業につきましては、緊急雇用創出事業の終了後に継続して雇用されていた段階での賃金未払あるいは解雇でございますので、公的な事業により失業した、要するに、公的な事業を実施中に失業したというふうには整理できないということもございますので、この事案の失業者のみに賃金の全額補償をすると、立替払で全額補償するということにつきましては非常に困難だと思っております。
一方で、この事業の終了後に安定した雇用がかなわない人につきましてはきちんと支援しないといけないということでございますので、労働局、県、市町村が連携いたしまして必要な再就職支援をするということで、こういうことについて徹底してまいりたいと考えてございます。
○小池晃君 この事態に、DIOジャパンの本門のり子社長というのは、公式には姿を見せないで、代理人が倒産手続を取る作業をしているとか、社長はスポンサー探ししているとか、支離滅裂な対応をしています。
塩崎大臣、愛媛一区選出です。DIOジャパンの本社は、これは松山に本店がある。愛媛でも著名な本門社長とは大臣も面識があるんじゃないですか。所管省庁の大臣として、これは本門社長に厳しく対決すべきじゃないですか。いかがですか。
○国務大臣(塩崎恭久君) この方のお名前は今日、今日というか、今回、先生からの御質問をいただいて初めて知りました。
○小池晃君 そんな、だって、愛媛で有名な人ですよ。自民党の、名前は言いませんけれども、別の参議院議員はブログにちゃんと、何か祝賀会に出たとブログに書いておられる方いますよ。これは私は、当然、御存じないって、かえって問題じゃないですか、これ。ちょっと疑問です。疑問ですが、しかし、私、これは厚労省の長としてきちっと対応していただきたいというふうに申し上げたいというふうに思います。
大臣の個人的な問題に関わってちょっと聞きたいことがあるんですが、株式所有されていますね。
大臣が所有している数ある株式の中で時価総額、最も多い銘柄は一体何でしょうか。
○国務大臣(塩崎恭久君) 時価総額などを計算をしたこともないので、全く分かりません。
○小池晃君 株のことはちゃんと調べておくようにというふうに質問通告はしているんですが。
先日の資産公開を見ますと、武田薬品工業株を三千六百三十株保有されています。先ほど調べましたら、株価は四千六百三十円です。時価総額では千六百八十万円です。武田薬品というのはこの委員会で何度も問題になってきた企業です。高血圧薬ブロプレス、臨床試験データ改ざん問題ですね。それから、武田薬品会長は御存じ長谷川閑史さん、残業代ゼロ法案を提案をされた。
大臣、厚生行政にも労働行政にも深く関わる企業の株を時価総額で千七百万円近く保有しているんですよ。これ今、宮沢大臣の東電株、問題になっていますけれども、大臣のこの武田薬品株の保有だって利益相反ですよ。重大な問題だという認識はございませんか。国民から疑念を招くんじゃないかということはお考えになりませんか。
○国務大臣(塩崎恭久君) これは、衆議院の厚労委員会では申し上げたところでありますけれども、私はなぜ株式をこのような形で、株数はそう多くないわけでありますけれども、割合たくさん持っているかといいますと、実は私の母の父、私のおじいちゃんですよね、が証券会社を地方で設立したものでありまして、実は私の、小学校ぐらいからずっと生前贈与などを受けてきたのがほとんどの私の株の所有でございます。
したがって、私が自分で選んで買ったことは、一回だけ日銀に入って株を買えば毎日株式欄を見るので勉強になるから買えと上司に言われて一銘柄だけ最低単位買ったときがありましたけれども、それももうはるか昔に売ったというふうに思いますので、武田を、自ら今政治家として何か買ったというなら別ですけれども、そういうことでは全くないので、そういう問題には当たらないと思います。そもそも貯蓄から投資へというふうに言っているときに、株式を持つことは何らそれ自体はおかしいことではなくて、意図的に買ったり売ったりするようなことはそれはおかしいと思いますけれども、それを持っているだけで問題だというのは少し違うのではないかなというふうに思います。
○小池晃君 利益相反なんですよ、やっぱりこれはね。やっぱりどういう株を持っているかというのは重大な問題で、買ったから、自分が買ったからどうこうという問題じゃない。そんな身の上話されても、それは何の言い訳にもならぬ。やっぱり厚生労働大臣の任を受けるべきでなかったんではないかと私は思うし、やっぱり年金積立金を、それを株式運用するということを一生懸命これからやろうとしている。この問題はまたの機会にちょっと取り上げたいと思います。
終わります。
○小池晃君 私は、日本共産党を代表し、ただいま議題となりました専門的知識等を有する有期雇用労働者等に関する特別措置法案に反対の討論を行います。
反対の第一の理由は、本法案が労働契約法改定による非正規雇用から正規雇用への僅かな流れを壊すものだからです。
有期雇用五年後の無期転換申込権は、安心して働き続けたいという有期契約労働者の要求を反映し、全ての有期契約労働者を対象としたもので、専門的知識や年収などの特定の条件を付け制限することは認められません。元々、無期転換権は、労働者が行使しなければ発生せず、五年を超えても必要な期間だけ働くことを妨げるものではなく、特例を設ける必要はないものです。
また、定年後の継続有期労働者への制限は、定年後働く全期間で制限されますが、定年後の労働者の六割は有期雇用で、働く理由も経済的理由が最も多く、安定した雇用の確保が求められるのは当然で、年齢によって申込権を奪う特例は許されません。
第二の理由は、改正労働契約法の施行から僅か一年半しかたっておらず、五年後の無期化の事実もなく、特例を設ける立法事実がないことです。
効果も検証できない下で特例を設けることは、労働関係法では前例がなく、異常極まりないものです。無期転換に関する企業調査では、四割は何らかの形で無期化を検討しており、この流れの加速こそ求められています。
第三に、特例の対象を国会審議なしに省令で変更可能としており、その対象がなし崩し的に拡大する懸念が大きいことです。
厚労省は、特例対象を労基法十四条の専門的知識を有する一千七十五万円の年収以上の者を参考とし、具体的には労政審で審議するとしていますが、要件がこれ以上広がらないという保障はありません。国会の審議を経ずに全ての労働者に付与された無期雇用申込権の権利制限を行政が行える仕組みであり、この方式が広がれば労働時間法制や解雇規制でも悪用されることが懸念されます。
最後に指摘したいのは、本法案が、労働政策立法は公労使三者協議を経て決められるというILO条約の大原則を踏みにじって提出されたという事実です。労働者代表が入らない国家戦略特区ワーキンググループという政府に都合のいい人物だけで構成した組織が出した結論を基に成立した特区法の附則の規定を理由に立法化を労政審に押し付けたもので、こんなやり方は戦後の労働立法の中で初めてのことです。
あるべきルールも無視し、その内容も安定雇用、正規雇用の流れに反する法案は廃案以外にはないということを述べて、反対討論とします。