赤旗2018年5月21日付
20日のNHK「日曜討論」に出演した日本共産党の小池晃書記局長。森友・加計疑惑や自衛隊「日報」の隠ぺい、「働き方改革」一括法案、北朝鮮問題などについて各党代表者と議論しました。
森友・加計疑惑
安倍政治の核心に関わる
冒頭、森友・加計両学園をめぐる安倍首相夫妻の「国政私物化」疑惑に対し、「(首相が言う)『ウミを出す』どころかウミはたまる一方だ」(立憲民主党の福山哲郎幹事長)、「平成のリクルート事件だ」(国民民主党の古川元久幹事長)との批判が相次ぎました。自民党の萩生田光一幹事長代行は「(国会で)推測の議論をしていては何の解決にもならない」と強弁しました。
これに対し小池氏は、森友・加計疑惑をめぐる公文書改ざんや国会での虚偽答弁が「安倍首相の答弁とつじつまを合わせるために行われているのが深刻だ」として、次のように説明しました。
▽安倍首相の“腹心の友”である加計孝太郎・加計学園理事長の獣医学部新設(愛媛県今治市)について、学園が事業者に決まる直前の昨年1月まで知らなかったという首相答弁につじつまを合わせようとした柳瀬唯夫元首相秘書官の国会答弁が即座に愛媛県知事に反論され破綻した▽森友疑惑も「私や妻が関わっていたら総理大臣をやめる」という首相答弁につじつまを合わせるため、公文書改ざんをしたとみられる。
「どれも安倍政治の核心に関わることだ」と断じた小池氏。陸上自衛隊のイラク派兵「日報」の隠ぺいも「まさに『戦場の真実』を隠すことになるわけで、本当に深刻な問題だ」と述べ、「政府が国会と国民に対して、正直に真実を話す当たり前の政治を実現することが、あらゆる問題の前提になる」と主張しました。
「働き方改革」
「過労死促進法」白紙撤回を
議論は、政府が最重要法案としている「働き方改革」一括法案の問題に移りました。
厚生労働省が法案作成の前提となる事業所データをねつ造し2割強を削除した問題について、萩生田氏は「(調査数)全体のパイ(割合)で見ると法案審議は進められる。何としても成立させたい」と居直りました。
小池氏は「2割も間違っていたら、普通は残りも信用できない。『法案の出発点だ』としていたデータが間違っていたのだから、出発点に戻るしかない。法案は白紙撤回し、労政審(労働政策審議会)に差し戻して、議論をし直すべきだ」と迫りました。
法案内容についても「問題だらけだ」として、残業時間の上限月100時間は過労死水準を超える「過労死合法化」であり、「高度プロフェッショナル(高プロ)制度」は労働者を労働時間規制から外すことで深夜も時間外も割り増し賃金が支払われない“残業代ゼロ”にするとともに、実労働時間を管理しなくなるため過労死認定すら困難になる「過労死促進法」だと厳しく批判しました。過労死した労働者の遺族も反対の声をあげていることを示し、「働く側ではなく、働かせる側のための改革だ」として法案の白紙撤回を重ねて求めました。
司会者がNHKの最新世論調査で、法案に「反対」が28%、「賛成」が16%の一方、「どちらとも言えない」が46%にのぼり「理解が進んでいない原因は」と問いかけると、萩生田氏や公明党の高木陽介幹事長代理は「丁寧に説明する」などと答えるだけで、残業代ゼロの根本は何ら変わらない“法案修正”を口実に「審議にご協力を」と述べました。
これに対して小池氏は、「『理解が広がっていない』『丁寧に説明する』と言うなら、法案の議論を続けるしかない。週明けに強行採決するなんてありえない話だ」と述べたうえで、長時間労働の解消とまったく矛盾する高プロ制度の法案削除を強く求めました。
さらに、週15時間・月45時間・年間360時間を残業時間上限だとした大臣告示は、厚労省の検討会が「残業時間が月45時間を超えると、脳・心臓疾患の発症が高まる」としたことに根拠があると説明し、「大臣告示を守らせるために、これを法制化すべきだ」と述べました。そして、連続11時間の休息時間を確保する「勤務間インターバル制度」の導入も要求。過労死の遺族はそれらの実現を求めており、「本当の働き方改革と言うなら、そうした声に応える議論をしっかり時間をとって徹底的にやるべきだ」と迫りました。
立憲民主党の福山氏も「法案審議が終盤国会まで延びたのは野党の問題ではなく、データ不備があまりに多くて審議できなかったからだ」と指摘し、拙速な議論を批判。自由党の玉城デニー幹事長は「法案は長時間労働や過労死を助長する懸念がある。それにどう答えるか真摯(しんし)な議論が必要だ」と求めました。
にもかかわらず、公明党の高木氏は「能力や成果で評価してほしいという多様性もある」などと弁明しました。小池氏は、「成果で賃金を払うことは、すでに当たり前のように行われていて、そういう働き方がまん延していること自体が問題だ」と前置きしたうえで、「成果で賃金を払えば成果が出るまで働かされる。成果で賃金を払う場合にこそ、労働時間管理の強化が必要だ」と述べる一方、高プロ制度は労働者を労働時間管理の対象から外すという「異次元の労働制度」であり、「そういう重大な問題だという認識があまりに不足している」と批判しました。
米朝首脳会談
対話で問題解決 大きな流れ
6月に予定される米朝首脳会談をめぐっては、萩生田氏は、日米や国連による経済制裁などの「圧力が功を奏して金(正恩=キム・ジョンウン=朝鮮労働党委員長)氏が交渉のテーブルにつき始めた状況だ」と述べました。
一方、日本人の拉致問題については「トランプ米大統領を通じて日本の思いを伝え、解決の糸口を見いだす努力をしてほしい」と述べ、“トランプ頼り”の姿勢を見せました。
小池氏は、軍事衝突の懸念があった状況が変わり、対話で問題解決する大きな流れが生まれているとし、完全な非核化や朝鮮戦争の終結を宣言し、非核化と平和体制の構築を同時並行で進めるとした4月の南北首脳会談を高く評価。「これからも紆余(うよ)曲折があると思うが、やはりこの方向でしか解決の道はない」と述べ、米朝首脳会談で「非核化で、より踏み込んだ合意がされることを期待したい」と表明しました。
そのうえで、「北東アジアの情勢ががらりと変わるような動きが起きているわけで、このチャンスを絶対に生かすべきだ。拉致問題もそうした大きな枠組み、包括的な取り組みのなかでこそ解決の条件が生まれる」と強調。「安倍政権にはこの状況にふさわしい外交戦略が見えない」と述べ、「対話否定・圧力一辺倒の破たんを認め、日本こそ主体的な外交戦略を持って平和・協力・繁栄の北東アジアをつくる外交に切り替えるべきだ」と主張しました。
立民の福山氏も、北東アジアの平和構築が「米中韓主導になっている」として“日本外し”への懸念を表明。司会者も「日本が議論から外されているという指摘がある」と萩生田氏に問いました。
萩生田氏は「核、ミサイル・拉致問題の完全な解決なくして国交正常化はないが、交渉すらまったくしないのかと言われれば、外交だからさまざまな環境のなかで適切に判断する」と発言しました。
小池氏は、「一切交渉しないというわけではないと述べたことは重要だ。米朝の敵対関係の解消に向けた今の動きは、日朝間の対話による解決の条件と可能性を広げている」と強調しました。
今後の国会審議
TPP・カジノ 強行許さない
最後に、会期末まで1カ月となった今後の国会審議の対応が問われました。
萩生田氏は、カジノを中核とする統合型リゾート(IR)の実施法案をめぐって、国際会議場の誘致で「日本はビジネスチャンスを失っている」と述べ、カジノ付きの会議場が観光資源になるなどを口実にして法案成立を要求。社民党の吉川元幹事長は「国際会議場になぜカジノをつくるのか疑問だ。ギャンブル依存症の問題も深刻だ。廃案にすべきだ」と応じました。
小池氏は「疑惑にふたをして悪法は強行するというのは許されない。終盤国会で疑惑は徹底解明、法案は徹底審議という立場でのぞんでいきたい」と強調しました。
さらに、国民生活を脅かす環太平洋連携協定(TPP11)を短時間の審議で強行することや、賭博であり犯罪であるカジノ実施法をまともに審議もせず強行することは許されないと指摘。日本維新の会の馬場伸幸幹事長が改憲論議の加速化を促したことに対しても、「今国会では絶対に9条改憲の発議はさせない。そのために市民と野党で共闘して頑張りぬきたい」と表明しました。