2014年10月21日
参院厚生労働委員会
○小池晃君 日本共産党の小池晃です。
今回の法案は、有期労働契約が通算して五年を経過した場合に労働者の申込みによって期間の定めのない雇用に転換する、いわゆる無期転換権を十年に延長する特例をつくると。しかし、そもそも、この無期転換権というのは、有期労働契約の反復更新の下で生じる雇い止めに対する不安を解消し、働く方が安心して働き続けることができるようにするためということで制定されているわけで、言わば有期から無期へ、非正規から正社員へ、本当に数少ない仕組みですよ。数少ないルートですよ。それに穴を空けてしまう。
しかも、この五年後の無期転換ルールというのは去年の四月に始まったばかりで、施行後一年半しかたっていないわけですから、これ改正効果がまだ出てきていない。先ほど階政務官も、そういった形で有期、無期になった人は把握していないというふうに答弁もされました。労政審でも、無期転換ルールを見直すべき立法事実すらつかめていない中で、一方的に見直し提案があったと批判されているわけです。
厚労省に聞きますが、これまでの労働法で成立した法律が実際にその効果を現す前にその法律を改定する、こんなことはありましたか。
○政府参考人(岡崎淳一君) これまでの労働関係法令、成立したものについて見ますと、今回のような形で本格的な効果が出ていない段階で改正しているという例はございませんでした。
ただ、今回、別途、労働者派遣法改正法案が提出されておりますが、これにつきましては施行の効果が及ぶ前の制度改正事項も含まれているということでございます。
○小池晃君 実施されるのを待たずに例外つくる、規制緩和を進めるというのは、私は本当に拙速過ぎると思うし、はしなくも派遣法ということをおっしゃった。派遣法はそうなっているわけですね。
結局、最近の厚生労働省の法案の作り方というのは、こんなことを平気でどんどんどんどんやるというふうになってきているんじゃないだろうか。
国会の審議をやっぱり軽んじるものだと思いますよ、これは、やり方そのものが。
しかも、この本法案では、無期転換権を十年まで付与しない対象を年収要件などを大臣告示で変更できるというふうになっているわけです。先ほどから労政審でやる、労政審でやるというふうにおっしゃるわけですが、例えば年収一千万円超のうち高度の専門知識というふうになると三・六%、労働者数で一万一千人程度なのが、五百万円超にすると同じ調査で一〇・四%と約五倍になる。かなり違うわけですね。私、少なくともこれを国会審議を経ずに変えるようなことをやっていいんだろうかというふうに思うんですよ。
先ほど局長は、労基法の十四条もそうなっていますというふうにおっしゃった。ただ、その労基法の十四条というのは、これは有期雇用契約の上限を三年から五年等に延長するものですよね。一方で、今回の措置というのは、これは無期転換権という労働者の権利を全国規模で奪うわけですよ。
そういう意味では、これは労働者の権利に非常に関わる、一層厳格にすべきものであることは私は間違いないと思うんです。
大臣、せめてこの要件をやはり国会審議が必要な法律要件にすべきだったんじゃないですか。
○国務大臣(塩崎恭久君) 高度専門職の具体的な要件のうち、この高度の専門的知識、技術又は経験につきましては、労働基準法第十四条に基づく一回の労働契約の期間の特例の対象を参考にして、法案成立後改めて労政審において検討することとしております。こうした本年二月の労政審の建議で示された考え方の枠内で検討を行うことは労使の共通理解であるため、対象が一定の範囲を超えて拡大するおそれはないというふうに考えているところでございます。
先ほど触れた労働基準法第十四条におきましても、具体的な対象者の要件は下位法令に委任をされておりまして、こうした先例と比べても、省令等に委任することに問題はなく、国会承認を求めることは必要ないものというふうに考えております。
○小池晃君 いや、だから、私さっき言ったみたいに、労基法十四条をそのままこれに当てはめるのはおかしいんじゃないですかと。こういう労働者の権利を奪うようなもの、しかも労政審、労政審とおっしゃる、それはもう当然やらなきゃいけないけれども、それは当然ですよ。
しかし、これだけやっぱり労働者の権利に関わる、せっかくその権利を拡大する法律を作って、実施もしていないうちにこれをまた例外作るという。だったらば、その要件ぐらいは厳格にする、ただ単に労政審で議論するだけではなくて、やっぱり国会承認事項にする、せめてそのくらいしないと、これはどんどんどんどんこの穴が広がっていくということになるんじゃないかということを大変懸念をしているわけです。それは、先ほどからもそういう指摘、相次いでいると思うんですね。
私、やっぱり、そもそもこの法案は出発点がおかしいというふうに思います。国家戦略特区法の附則の二条で、これを、必要な措置を講ずるとして、法律の中に、特定措置を講ずるために必要な法律案を平成二十六年通常国会に提出することを目指すと。こんなの異常ですよ、やっぱり。全く関係のない内閣委員会で作る法律で厚生労働委員会で議論すべき法律の提出時期まで示していくと。
これは、やり方には労政審の労働側委員からも、国家戦略特区ワーキンググループというのは、これは労使の代表入っていないわけですから、政府が示した御都合のいい人だけ集めて仲よしグループでやった結論でしょう、これ、結局。これは非公開の会議ですよね。そこで見直し方針が決定されてこういうふうに進んできていることは極めて遺憾であると、私も本当にそう思います。
日本はILO条約百四十四条を批准をして、公労使三者構成で労働政策立法をやるという大原則、それは先ほどからも大臣もそれは変えないとおっしゃっているけれども、でも、特区法で個別労働法に対して次期通常国会までに成案を得るようというふうに枠を決めてやるようなやり方したら、幾ら労政審でやりますといったって、これはあらかじめその結論を拘束すると、出口は示すということになっちゃっているわけですよ。私は、大臣は、きちんと議論した、六回やった、六回やったというけれども、これでは労政審は通過儀式になってしまいますよ。これでいいんですかと。
大臣、こういう労働政策立法のやり方を私は今後、厚生労働省としては絶対に許すべきではないというふうに思いますが、いかがですか、大臣。
○国務大臣(塩崎恭久君) 先ほど来御説明申し上げているように、プロセスは先生の御指摘になった点がもちろんあるわけでありますけれども、この国家戦略特別区域法附則第二条において、この一定の期間内に完了する業務に就く高度な専門的知識等を有する労働者を対象に、労働契約法第十八条の通算契約期間の在り方等について労働政策審議会で検討を行って、所要の法律案の提出を目指す旨が規定をされているということに対して先生は今御指摘をされているわけですね。
今回は、戦略特区ということについての問題提起から、それを受けて労政審で議論したという格好でありますが、労政審で、先ほど申し上げたように特別部会をつくって六回やってきた。それは当然、労使が入って集中的に検討を行ってもらって、そしてその結果として法律の形ができてきたという格好でありまして、その間、国家戦略特区法の検討規定の範囲にとどまらずに、使用者側からは、定年後の高齢者についても労働契約法の特例を検討すべきという提案が出てきたり、あるいは労働者側からは、労働契約法の無期転換ルールの円滑な施行についても検討すべきというふうなことも意見として出されまして、それらの課題への対応の在り方についても併せて検討を行った上で建議を取りまとめていただいて、その上で本法案の提出をその建議を受けて行ったものでありまして、あらかじめ枠がはめられているという御指摘は、今のこういった追加的な提案、それも法律にそれがなるという形でもっているわけでありますから、枠がはめられて事前的に行われているという御指摘は当たらないんじゃないかなというふうに思います。
○小池晃君 いや、当たりますよ。当たります。
これ、僕は、僕が怒るんじゃなくて厚生労働省が怒らないといけないと思いますよ。こんなやり方というのは、厚生労働省は一体何のためにあるのかと。内閣府、内閣府といったって、結局、何か財界代表が内閣府の皮かぶっているような、まあ、そこまで言うとちょっとあれですけれども、そういうところだってあるわけだから、それはやっぱり、厚生労働省がこんなやり方したら、けしからぬと蹴飛ばすぐらいじゃなきゃ厚生労働省の存在意義ないですよ。私は、やっぱりこういうやり方をこれからどんどんどんどんやるようなことをやっちゃいけないと。
この法案についても、やっぱり出どころが本当に大問題だということは申し上げたい。引き続きちょっとまた質問の機会もあるんで、法案の中身については引き続きやりたいと思うんですが。
大臣、前回の委員会で雇用維持型から労働移動支援型への政策転換というふうにおっしゃった。
厚労省に聞きますが、労働移動支援助成金、今年度予算から大幅に増額されて対象を大企業にも広げて、仮に再就職できなくても再就職支援会社に費用を出せる。今年度の予算額と来年度の要求額はどれだけか。それから、助成金の対象となり得る再就職援助計画の対象者数は、直近で何人になっていますか。
○政府参考人(生田正之君) お答えいたします。
労働移動支援助成金の今年度の予算額は三百一億円でございまして、平成二十七年度の予算要求額は三百六十三億円でございます。それから、直近の数字が平成二十五年度でございますけれども、ハローワークで認定した再就職援助計画の対象者数は五万四千四百五十七名でございます。
○小池晃君 これ、急速に拡大しているんですよね。平成二十五年度は一・九億円ですよ。補正では三・八億円だったのが、九十倍以上になってきている。私は、これが本当に違法なリストラに使われない保証はないんではないかというふうに大変懸念をしております。
実態についてちょっとお話をしたいんですが、政府の労働移動支援型への政策転換ということで、違法、無法なリストラが広がっています。多くの女性労働者、介護などの家族責任を負った労働者が退職させられています。
最初に厚労省に確認しますが、育児・介護休業法の二十六条は、子の養育、家族の介護を行うことが困難となる場合、これは配慮をしなければならないというふうに書いてあります。ここで言う配慮というのは何ですか。労働者や事業主から事情を聞けば、それで配慮したと、そのことのみをもって配慮したということになりますか。
○政府参考人(安藤よし子君) お答え申し上げます。
育児・介護休業法第二十六条は、就業の場所の変更を伴う労働者の配置変更を行う場合に、それにより子育てや介護をしながら働き続けることが困難となる労働者がいるときは、その労働者の子の養育や介護の状況に配慮することを事業主に求めているものでございます。
この場合の配慮とは、就業の場所の変更を伴う配置転換を行う場合に、当該労働者について子の養育又は家族の介護を行うことが困難とならないよう意を用いることをいうものでございますが、配置の変更をしないといった配置そのものについての結果や、育児や介護の負担を軽減するための積極的な措置を講ずることまでを事業主に求めるものではないとされているところでございます。
具体的な配慮の内容といたしましては、指針において、当該労働者の子の養育又は家族の介護の状況を把握すること、労働者本人の意向をしんしゃくすること、配置の変更で就業の場所の変更を伴うものをした場合の子の養育又は家族の介護の代替手段の有無の確認を行うことなどが例示をされておりまして、就業場所の変更を伴う配置転換をする場合には、こうしたことを行うように事業主に対する助言、指導を行っているところでございます。
○小池晃君 いや、だから、事情を聞いただけで、それで配慮したということになりませんねと。
○政府参考人(安藤よし子君) 育児・介護休業法第二十六条は、事業主に配慮することを求めるものであって、配置の変更をしないといった配置そのものについての結果を直接求めるものではないと考えております。具体的な配慮の内容については先ほどお答えしたとおりでございますが、これらを踏まえて、事業主が配置の変更について判断することにより配慮がなされるものと考えております。
○小池晃君 もうちょっと、雇児局長だったらやっぱり女性労働者を守る立場で答弁してくれなきゃ困りますよ。今のは本当に形式的だと思います。
今、実態何が起こっているかというと、工場閉鎖、ロックアウト解雇、追い出し部屋、退職強要。
大手電機のリストラは既に二十四万人と言われています。半導体メーカーのルネサスが、既に二万人辞めさせて、新たに五千四百人のリストラを来年春までに進めるために、今、退職強要、大量の遠隔地配転を強行しています。
二人の女性のお話聞きました。これ、五十代の正社員の彼女らは、勤務するルネサスの東京小平市の武蔵事業所から繰り返し退職強要面談を受けた。断ったらば、高崎の事業所に十月から遠距離配置転換を指示されています。当事者は中高生の子育て中です。遠距離通勤はとても無理だということで、二十六条に基づく助言、指導を東京労働局に求めました。しかし、労働局は、二十六条に基づく助言、指導はしないと、そう回答をした。
企業側は、十月から、一人は新幹線で二時間半掛けて、もう一人は高速道路を使ってやはり二時間以上自動車通勤を迫って、拒否すれば解雇だと、こういうふうになっているんですね。
問題は、紛争処理制度の中での労働局の対応ですけど、事実経過を言いますと、労働者は九月十八日に東京労働局に申告しています。東京労働局の雇用均等室は、九月二十二日にルネサス側から事情を聞いています。ところが、会社は、翌日祝日だったので、その日を挟んだ翌二十四日に女性労働者二人に解雇予告通知を渡した。解雇か配転かの二者択一を迫っている。会社側は、東京労働局から差し控えるべき指導はなかったと言っています。二十二日に企業側から事情を聞いたばかりだから、聞き取り協議始まったばかりで会社側は一方的に解雇予告通知を出したんですよ。
雇用均等室、これ認めてしまったとしたら、何のための制度なんですかということになるじゃないですか。局長、これで配慮したということになるんですか、二十六条に基づく。
○政府参考人(安藤よし子君) 個別の企業に関する事案の詳細についてお答えすることは差し控えさせていただきたく存じますが、一般論として、雇用均等室におきましては、労働者から具体的な相談があった場合に、相談内容を伺った上で、また会社からも事情聴取を行うなど双方からの事実確認を行った上で、法令、指針に定める事項に照らし適切な対応がなされているか判断を行い、法違反が認められる場合には助言、指導による是正指導を行っているところでございます。
また、法違反に必ずしも当たらないと判断されるような場合であっても、相談者の希望があれば、紛争解決援助制度の下で助言、指導、勧告又は調停といった制度を活用して、個別紛争の解決の支援を行っているところでございます。
○小池晃君 だから、会社側から事情を聞いた事実上翌日に解雇予告通知出すことを認めるなんて、これでいいんですかと言っているんですよ。こんなことあり得ないでしょう。
○政府参考人(安藤よし子君) 個別の事案における判断についてお答えすることは控えさせていただきますけれども、一般的には、法違反の有無については、状況把握などの内容や経緯などを事業主から聴取して総合的に判断をさせていただいているところでございます。
○小池晃君 ちょっと駄目ですよ、局長がこんなこと言っているようじゃ、何が女性が輝く社会ですか、女性が活躍できる社会ですか。現場の労働行政でこんなことやっていたら、女性労働者の人権なんて守れないですよ。
大臣、電車通勤では始業時間に間に合わないからといって、結局、東京青梅市から高速道路で通勤を昨日から始めたそうです。とてもでも続けられないとおっしゃっている。ルネサス側は、高速道路料金の約月十万円までは自己負担だと、こう言っている。均等室は、高速道路料金を会社に一部負担させることはできると言っている。ちょっとこういう話でいいんですか。
大臣、この育児・介護休業法の目的というのは、育児休業、介護休業だけじゃなくて、職業生活と家庭生活との両立に寄与をすると、その趣旨に沿って仕事するのが雇用均等室の仕事じゃありませんか。ところが、今言うように、ほとんど雇児局長の役割果たしていないですよ。これでいいんですか。大臣、これ事情をしっかり調査をしていただきたい。やっぱり現場ではこんなことが起こっている。まさに均等室が会社側の代理人のような役割を果たしているじゃないですか。
大臣は前回のこの委員会で、全ての女性がそれぞれの希望に応じて働ける、そして個性と能力を発揮できる、子育てや介護と仕事の両立が可能な雇用環境整備が大事だというふうに答弁されました。ところが、今現場ではこういうことが起こっているわけです。大臣、今私、事実経過、これもう明らかですから。要するに、会社側の事情を聞いたその翌々日に解雇予告通知出させちゃったわけですから、これはもう否定できない事実ですからね。
大臣、こんなことでいいんだろうか。これしっかり調査をしていただきたいのと、やっぱりこんなことで女性の労働者の権利を守ることができるのかどうか、私はこういう労働行政の在り方を見直すべきだと思いますが、大臣、いかがですか。
○国務大臣(塩崎恭久君) 先ほど来局長から申し上げているように、個別の事案でありますから、判断についてお答えを直接するのは差し控えたいと思いますけれども。
当該事案については援助が終了したとは承知をしておりません。東京労働局に対しては、引き続き公平で中立な立場で援助するように指導してまいりたいというふうに思っております。
○小池晃君 東京労働局側は助言、指導しないと通告しているんですよ。じゃ、これ撤回させてくさい。
○国務大臣(塩崎恭久君) 今申し上げたのは、公平中立な立場で引き続いて援助するように指導してまいりたいと、こう申し上げたんですが。
○小池晃君 ちょっと、こんなんでいいんですか。
私、これは労働行政について全体の問題で、こういうでたらめなやり方を許しちゃいけないというふうに思いますよ。こんなことがまかり通ったら法律も何もないじゃないですか。これちょっと…
…(発言する者あり)
○委員長(丸川珠代君) 速記を止めてください。
〔速記中止〕
○委員長(丸川珠代君) 速記を起こしてください。
○国務大臣(塩崎恭久君) 先ほど来申し上げているように、これは法律違反の事案ではございませんで、あくまでも労働局が援助をするということでやっているわけでありますが、今、小池先生のお話でもございますので、もう一回事実関係を調べるということはやってもいいかなというふうに思っておりますので、指示をいたしたいというふうに思います。
○小池晃君 じゃ、調査していただきたいというふうに申し上げます。
終わります。