赤旗2018年2月9日付
日本共産党の小池晃書記局長は7日夜、BSフジのプライムニュースに出演し、自民党、公明党、立憲民主党の国会議員らと安倍9条改憲について議論を交わしました。小池氏は戦力不保持を定めた9条2項を死文化する安倍改憲の危険を明らかにし、憲法を踏みにじり続けてきた政治から憲法を生かす政治への転換を訴えました。
小池氏は、改憲問題をめぐる基本姿勢として「現行憲法の理念が実現していないことが問題であり、憲法を生かすことが政治の仕事だ」と述べ、自民党が議論を進める改憲4項目―▽憲法9条への自衛隊明記▽緊急事態条項▽合区解消▽教育無償化―について「いずれも憲法を変えるべき課題ではない」と強調しました。日本の安全保障については「北朝鮮の核・ミサイル開発は許されませんが、解決するためには、憲法に基づく本気の外交力こそが求められている」と語りました。
公明党の斉藤鉄夫憲法調査会長代理は「共産党は、自衛隊が違憲だといっている。違憲の存在を(現状で)認めること自体、憲法をないがしろにしている」と攻撃しました。
小池氏は「憲法9条があるにもかかわらず、これだけの世界有数の軍隊をつくってきたことこそ憲法をないがしろにしている。私たちは、自衛隊は違憲だから、今すぐになくせなどという主張はしていない。いま問われているのは、今まで自民党ですらできないといってきた集団的自衛権の行使を容認し、さらに歯止めをなくして海外で米国と一緒に戦争をするような改憲をしようとしていることだ」と述べるとともに、「立憲主義を破壊してきたあなたたちにそんなことを言う資格はない」と、斉藤氏による論点そらしを厳しく批判しました。
番組では、自民党の憲法改正推進本部の会合で、9条2項を残して自衛隊を明記する首相案に対し、「2項削除」論や2項を残したまま「自衛権」を明記する案が出たことが議論になりました。
2項が死文化に
小池氏は、安倍首相が9条に自衛隊を明記しても「何も変わらない」と述べるのは「非常に不誠実だ」と批判。新しい条文は前からあった条文より優先する法の原則(後法優先の原則)があると指摘したうえで、「自衛隊を書き込めば、2項の戦力不保持の条項は空文化・死文化することになり、無制限の海外での武力行使が可能になる。安倍首相が書き込もうとしている自衛隊は、安保法制で地球の裏側の戦闘地域に行って集団的自衛権を行使する自衛隊だ」と指摘しました。
その上で、「自衛権」明記論については「『自衛権』と書けば、個別も集団もなく歯止めなくひろがる可能性がある」と指摘。「2項削除」論は「武力不保持、交戦権否認の削除など言語道断だ」と批判しました。
小池氏の批判を受け、自民党の柴山昌彦総裁特別補佐は「新しい規定で旧来のものが死文化するという疑問があるのは重々承知」とし、「疑問を払拭(ふっしょく)するような案文を検討中だ」と述べました。司会の反町理氏は「安保法制をむりやり正当化する憲法改正とみられるのは自民党としても損でしょう」と、柴山氏に疑問を投げかけました。
斉藤氏は、公明党内で安倍首相案に対する賛否両論の意見があると述べる一方で、「国際標準からしても、自衛隊という実力組織を明記することはそんなにおかしなことではない」と述べ、安倍改憲を追認する姿勢をにじませました。
擁護義務反する
小池氏は、9条改憲をめぐる世論調査の特徴として、「安倍首相のもと」での改憲に賛否を問うと、改憲反対が賛成を上回ることを指摘しました。
反町氏が「属人的なところに議論を寄せるのか」と述べたのに対し、小池氏は、秘密保護法や共謀罪など違憲立法を数の力で強行してきた安倍首相の姿を国民は見ていると述べ、「安保法制が強行され、『専守防衛』の建前すら投げ捨て、軍事費は5兆1911億円にのぼり、今まで持たないと言っていた空母や長距離巡航ミサイルも持とうとしている。こういう安倍首相のもとで憲法を変えることに、かなりの人が危機感をもっている」と強調しました。
さらに小池氏は「私たちは発議をすべきでない、その前にストップさせるという立場だ」と述べた上で、最低投票率もなく、権力側が投票直前まで金力に任せて宣伝できる国民投票法の問題を指摘しました。
同時に、世論調査では、経済や社会保障など国民が求めるさまざまな政策課題のなかで、「改憲」が最も優先順位が低いことをあげ、「国民の多数から憲法を変えてほしいという声など上がっていない状況の中で、国会が数の力で改憲発議に突っ走ること自体が、大臣や国会議員の憲法尊重擁護義務に反するものだ」と語りました。