赤旗2018年1月27日付
日本共産党の小池晃書記局長は26日の本会議での参院代表質問で、安倍政権の国政私物化、アベノミクスによる貧困と経済的な格差に加えて、「健康格差」の拡大、財界の要求に従った「働き方改革」、アメリカいいなりの沖縄新基地建設、改憲のたくらみなどを追及。政治の抜本的転換を迫りました。
情報隠ぺい
国民の不信と怒り根深い
森友学園・加計学園疑惑について小池氏は、「とりわけ情報隠ぺいに対する国民の不信と怒りは根深い」と指摘。森友学園への国有地売却で、財務省が国と学園側との交渉記録を開示したことに触れ、「適切に破棄した」と虚偽答弁をしてきた佐川宣寿前財務省理財局長を国税庁長官に昇格させた人事を批判しました。
安倍首相は「人事は適材適所で行った」「今後もしっかり説明する」と述べるだけでした。小池氏は、首相の妻の昭恵氏、加計学園の加計孝太郎理事長の国会招致を求めました。
株式譲渡益
富裕層税負担欧米並みに
小池氏は、安倍政権のもとで貧困がいっそう悪化した事実を示し、格差是正のために、富裕層の所得の多くを占める株式譲渡益に対して欧米並みの税負担を課すことを求めました。
小池氏は「アベノミクスで最も恩恵を受けたのは、日銀マネーや年金資金で株価がつり上げられた株高で潤った超富裕層だ」と指摘。5年間で株価は2・2倍に上昇し、上場企業の大株主上位300人の保有時価総額は9・2兆円から25・2兆円に増加しました。
給与所得への税率(住民税を含む)が最大55%であるのに対し、株式譲渡益への税率は20%に抑えられています。そのため所得が1億円を超えると所得税の負担率が低下する逆転現象が起きています。小池氏は株式譲渡益に対して欧米並みの30%の税負担を課し、格差を是正することを求めました。
安倍首相は小池氏の指摘を否定できず、「外国の制度や市場への影響を踏まえ、総合的に検討する」と答弁しました。
「健康格差」
低所得者ほど疾病リスク
小池氏は、低所得者や不安定雇用の人ほど疾病や死亡のリスクが高まる「健康格差」が拡大していることを指摘しました。
小池氏は具合が悪くても医療機関への受診を控える高齢者の割合や、子どものぜんそくを発症するリスクが、低所得者ほど高まっている調査結果が大学や国などの研究機関から出ていることを紹介。小池氏は、安倍政権のもとで、非正規雇用を拡大する労働法制の規制緩和を繰り返し、年金の削減や医療費の窓口負担引き上げなどの負担増と給付減を続けた結果、「『健康格差』をいっそう拡大したのではないか」と迫りました。
安倍首相は、まともに指摘に答えず「貧困・格差を拡大させたとの指摘はあたらない」と開き直りました。
小池氏は、社会保障の自然増削減を中止し、応能負担の税制で財源を確保することで、社会保障を充実させることを求めました。
「働き方改革」
残業代ゼロ制度は撤回を
小池氏は、安倍首相の唱える「働き方改革」について、労働者の望む働き方とは正反対だと追及しました。
財界はこの20年、労働基準法の労働時間の適用除外を繰り返し求めてきました。小池氏は「今回の『高度プロフェッショナル制度』、いわゆる残業代ゼロ制度もまさに財界の要求そのもの」だと指摘。また「企画型裁量労働の拡大」はどれだけ働いても「みなし時間分」の残業代しか払われない労働者を営業分野にも広げるとして「低賃金と過労死の温床を広げるだけだ」と批判しました。
安倍首相は「働き方改革」について、財界人を中心に構成された「働き方改革実現会議」の決定であるにもかかわらず「財界の要求そのものとの指摘は当たらない」と否定。企画型裁量労働に追加される課題解決型の開発・提案業務は、過労自殺した電通の高橋まつりさんの業務そのものですが「低賃金と過労死の温床を広げるだけのものではない」と答えました。
残業の上限規制では繁忙期に月100時間の残業を容認しています。小池氏は、トヨタ系列子会社で働き、月85時間の残業でも過労死認定された三輪敏博氏の例を挙げ、安倍政権の4年間、月100時間未満の残業で過労死認定された人は全体の52~59%で過半数だと指摘。「政府案は『過労死の合法化』ではないか」と批判し、残業時間の上限は週15時間、月45時間、年360時間を例外なしに法令化すべきだと求めました。
安倍首相は、残業の上限を年720時間、単月100時間未満としたのは労働界・経済界の合意のもとだとして「過労死の合法化という批判は当たらない」と強弁しました。
この4月から、改定労働契約法により5年以上同じ会社で働いた有期契約労働者が、申し込めば無期契約に転換できるようになります。小池氏は、自動車大手5社が無期転換できないように6カ月の空白期間を設けたとして「脱法行為を許さない厳格な指導とともに法の抜け穴をふさぐ改正に踏み出すべきだ」と強く求めました。
安倍首相は「無期転換ルールを意図的に避ける目的をもって雇い止めを行うことは望ましくない」として、労働局による啓発・指導を行うと述べるにとどまりました。
沖縄県民守れ
全機の飛行中止を求めよ
沖縄県で相次ぐ米軍機の事故に対し、安倍政権は米軍の説明をうのみにし、原因が究明されないまま事故機の飛行再開を容認するなど、米国追随ぶりを際立たせています。小池氏は「なぜ米軍に対し事故を起こした全機種の飛行中止を求めないのか」と迫り「県民や国民の安全よりも日米同盟を優先する、主権国家にあるまじき態度だ」と批判しました。
小池氏は、日米地位協定が米軍に治外法権的な特権を与えているとして「米軍の無法を許さないために、協定の抜本的な改定が必要だ」と強調しました。
安倍首相は、事故機の飛行再開について「検証を行い、合理性を判断してきている」などと述べ、米軍の基地以外での事件事故について、日本の警察が「所要の調査や捜査を行っている」と、事実に反する答弁を行いました。
小池氏は、安倍政権が辺野古への新基地建設を普天間基地(宜野湾市)の「負担軽減」を口実に強行していることに言及。同基地所属の米軍機がこの1年余りで、沖縄全土で事故を起こしていると指摘し、辺野古新基地は「危険性を一層増大させる」と警告しました。
小池氏は、普天間基地の無条件撤去、辺野古新基地建設の中止、米海兵隊の沖縄からの撤退が「沖縄県民の命と安全を守る唯一の解決策だ」と迫りました。
安倍首相は「沖縄の方々の気持ちに寄り添う」と言いながら、新基地建設を強行する姿勢を示しました。
トランプ第一
言うべきこと言う外交へ
小池氏は、温暖化対策の世界的枠組み「パリ協定」離脱やエルサレムの首都認定などのトランプ米大統領の政策に対し主要国が距離を置く一方、安倍首相は異常な「トランプ・ファースト」外交を展開していると批判し「言うべきことは言う、当たり前の外交政策をとることを強く求める」と迫りました。
小池氏は、北朝鮮の核・ミサイル開発をめぐり「経済制裁の強化と一体に、対話による解決を目指すべきだ」と指摘。先制的な軍事力行使も示唆する米国の立場を「支持する」とした日本政府の対応を「根本から改めるべきだ。戦争だけは絶対に起こしてはならない」と強調しました。安倍首相は「対話のための対話では意味がない」と述べ「米国の立場を今後も支持する」と改めて表明しました。
小池氏は、北朝鮮に核開発の放棄を迫る上で、「核抑止力論」と決別し、核兵器を全面的に禁止する核兵器禁止条約に参加することが「唯一の戦争被爆国政府としての責務だ」と迫りました。安倍首相は「条約は核抑止を否定し、北朝鮮が参加する見通しもない。参加することはできない」と言明しました。
歴史認識問う
多くの国民が9条を評価
歴史認識と憲法改定をめぐっても、安倍首相の答弁の不誠実さが際立ちました。“明治維新150年”を強調した施政方針演説について、小池氏は「150年の前半には侵略戦争と植民地支配に向かった負の歴史がある。戦前の歴史も含めて全てを肯定的に評価するのか」と迫りました。
安倍首相は、負の歴史について「戦後70年談話と立場は変わらない」と述べるだけでした。「70年談話」は、侵略と植民地支配への首相自らの判断を示さず、「反省」も「お詫(わ)び」も表明しない、侵略と植民地支配を認めた戦後50年の村山談話を覆すものです。
小池氏は、「憲法9条が日本の平和と安全に役立っている」との回答が初めて8割を超えた昨年3月のNHK世論調査に触れ、「多くの国民が高い価値を見いだしている9条の下での戦後の歩みをどう評価するか」とも追及。安倍首相は「戦後の平和が保たれたのは自衛隊と日米同盟の抑止力があったからだ」と強弁し、9条の役割を語りませんでした。
小池氏は「侵略の歴史への反省を語らず、9条を敵視し、数の力で憲法破壊を重ねてきた首相の姿勢に、多くの国民が不安と疑念をもっているからこそ、『安倍政権の下での改憲には反対』の声が多数になっている」と強調。「憲法を尊重し擁護する義務のある首相が、多くの国民が改憲を望まない下で『憲法のあるべき姿を示す』と言うのは、憲法と立憲主義を全くわきまえない発言だ」と批判しました。