「赤旗」2014年11月13日付
日本共産党の小池晃副委員長は12日のNHK番組「日曜討論」で、「日米・東アジア外交をどうするか」をテーマに各党代表者らと議論しました。
日米ガイドライン再改定―地球規模の戦争で武力行使へ
日米軍事協力の指針(ガイドライン)再改定に向けた「中間報告」(8日)について、自民党の高村正彦副総裁は「東アジアの情勢は厳しくなっている。切れ目のない対処方針を示し、抑止力を強める。日本の平和と安全に影響を及ぼす事態もグローバル(地球規模)化している。しっかり日米で対処する」と述べました。
他の野党は「改定自体は否定しない」(民主党)、「方向性は理解できる」(維新の党)、「当然見直すべきだ」(次世代の党)、「問題意識はよくわかる」(みんなの党)と容認姿勢。小池氏は正面から批判しました。
小池 はっきりしたのは、今回の中間報告で「周辺事態」という概念をやめて、地理的な制約をはずした。「後方地域」という概念もなくして、これまで「戦闘地域」といっていた場所でも自衛隊が米軍支援できるようになった。(集団的自衛権の行使を容認した)「閣議決定」に歯止めがないことがはっきりした。こんなガイドラインができればアメリカの派兵要求を断ることができなくなるし、もうすでにホルムズ海峡での機雷除去という要請が出たり、米国の高官が「対イスラム国で空輸などの支援に積極参加を」といっている。これでは地球的規模の戦争で、(米軍と)肩を並べて武力行使ということになる。とんでもない。ガイドライン改定の作業は中止すべきだ。
高村氏は「『周辺事態』はもともと地理的概念ではない。『周辺』という日本語があたかも地理的な概念であるかのごとく、誤解を受ける言葉だ」と反論しました。
小池 高村さんのような議論を、もし周辺事態法(1999年)のときにやっていたら大紛糾している。“地球の裏側まで行かない”と(政府は)説明していた。過去の侵略戦争への反省もなく、周辺諸国とまともに外交もできず、集団的自衛権行使のため、日米同盟のため、なんでもやれる(ようにする)。しかも国会でまともに議論せず、米国との協議で先行させるというやり方で、国民は「危うい」と思っている。「周辺事態」という歯止めすら取り払うやり方は、日本の針路を危うくする。こんな道を絶対進むべきではないし、そのもとにある「閣議決定」は撤回すべきだと改めて申し上げたい。
日中関係―北東アジアでも紛争を戦争にしない枠組みを
日中関係に議論が進み、自民党の高村氏は11月の北京でのアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議に合わせた日中首脳会談について「首脳会談開催の機は熟しつつある。最終的に両首脳の決断によって実現することを期待している」と強調。「条件を一方が突き付け、一方がのむ形の首脳会談が実現することはあり得ない」と述べ、安倍晋三首相が靖国神社に参拝しないと明言することなどを前提条件とする中国側をけん制しました。小池氏は司会の島田敏男解説委員から、尖閣問題を踏まえた日中外交のあり方を問われました。
小池 軍事的対応の悪循環から抜け出さないといけない。率直にいって、日中双方が緊張を高めている。ここから抜け出す平和の外交戦略が必要だ。ノーベル平和賞の有力候補にまでなった憲法9条を生かした平和外交をやれるかが問われている。東南アジアでは、東南アジア友好協力条約(TAC)を結び、絶対に紛争を戦争にしないという努力をしている。北東アジアでもそういう枠組みをつくるべきではないかとわれわれは提案している。「北東アジア友好協力条約」を結ぶ、領土問題も堂々と外交交渉で解決する。その土台に歴史認識がある。きちっとした態度を確立することが日本政府に求められている。
日韓関係―「慰安婦」強制問題否定すれば世界中から相手にされなくなる
日韓関係で、産経新聞前ソウル支局長が韓国検察に在宅起訴されたことについて各党は、「あるまじき行為だが、日米韓の連携をつくっておくことが東アジアの平和と安定に寄与する」(自民)、「遺憾だ。韓国にとってもよくない」(民主)、「韓国もおとなげない」(維新)と指摘しました。小池氏は日韓関係全体について次のように述べました。
小池 やはり「慰安婦」問題が根っこにある。自民党にいいたいのは、「河野(官房長官)談話を撤回せよ」といわれてなぜ反論しないのか。(1993年の)自民党政権時代に出したものだ。安倍首相も河野談話を継承すると一方でいいながら、国会で問われると「性奴隷といういわれなき中傷」と事実上否定するようなことをいう。二枚舌だ。日本軍「慰安婦」は、戦場で強制的に何人もの兵士の相手をさせられた。その人権じゅうりんに世界は怒りの声をあげている。そのことを否定すれば日韓関係だけでなく、世界中から相手にされなくなる。真の日韓関係のためにも、この問題の態度をきちっと明らかにすべきだ。
自民・高村氏は「20万人の少女を強制連行したというのは事実に反する。いわれなき誹謗(ひぼう)中傷に対してははっきり対応していかないといけない」などと述べました。
「『性奴隷』はいわれなき中傷か」との小池氏の問いに、高村氏は「強制連行した『性奴隷』はいわれなき中傷だ」と問題を矮小(わいしょう)化。小池氏は「それはごまかしだ」と批判しました。
北朝鮮拉致問題―特別調査委つくる約束を守らせる外交力を
北朝鮮の拉致問題解決について議論が移り、各党が「すべての拉致被害者を取り戻すということを頭のど真ん中に置いて、それに役立つのであれば、(北朝鮮に)いけばいい。その判断は政府が責任をもって最後は決める」(自民)、「オールジャパンの体制でやっていかないといけない」(次世代)と述べるなかで、小池氏は次のように語りました。
小池 情報を持っているのは政府ですから、当事者である政府が交渉の進め方を判断するということだと思う。大事なのは、(北朝鮮が)強い権限をもつ特別調査委員会をつくると(いって)調査を約束したわけですから、その約束を断固として守らせる外交力だ。国際的協力で北朝鮮を包囲し、圧力をかけるという点でいえば(北朝鮮核問題をめぐる)「6カ国協議」のメンバーである中国や韓国とまともな外交関係ができていない事態が大変な問題だ。日朝平壌宣言に示された核問題、ミサイル問題を包括的に解決するためにも、日本が近隣諸国とまともな関係をつくることが問われている。