赤旗2017年10月25日付
日本共産党の小池晃書記局長は23日放送のNHKスペシャル「徹底討論」で総選挙結果、憲法改定、消費税増税の問題などをテーマに与野党代表と討論しました。
共闘すれば自民党をどんどん落とす結果に
自民、公明与党が3分2の議席を獲得した総選挙。視聴者から「選挙をやっても変わらない」などの意見が紹介されました。「最後は数の力で法案の採決などはないのか」と司会者に問われた自民党の萩生田光一幹事長代行は「数のおごりだと言われないように野党の意見も聞きやっていきたい」と発言。小池氏は「今回の解散は『森友・加計疑惑』隠し解散。(安倍晋三首相は)説明するといったが、選挙中もほとんど議論されなかった」と批判し、次のように述べました。
小池 一刻も早く国会を開くべきです。(首相指名選挙だけの)特別国会だけではなく、臨時国会を開いて徹底的に議論すべきです。
さきほど、視聴者の意見で「選挙をやっても変わらない」という意見がありましたが、変わったと思うんです。今度の総選挙では「市民と野党の共闘」が進み、私たち日本共産党と立憲民主党、社民党の3党で、市民連合のみなさんと政策合意を確認してたたかいました。そのなかで立憲民主党が躍進をして、共闘勢力が全体として議席を増やした。これは率直にうれしいことです。比例で日本共産党の議席を減らしたのはまことに残念ですが、これは私どもの力不足で、捲土(けんど)重来で頑張りたいと思います。
選挙直前に希望の党が出現して、野党共闘が分断されても、そのなかで共闘すれば効果がでる。新潟あるいは北海道などでは、明らかに共闘で自民党をどんどん落とすという結果がでました。ここに今後の日本の政治の希望があると思います。
立憲民主党の長妻昭代表代行は自民党が立憲主義・民主主義を軽んじていると批判し、「徹底的に追及する」と表明しました。
立憲民主が野党第1党に―安倍9条改憲反対の声が高まった
憲法9条1項、2項を残したまま自衛隊の存在を明記するとした安倍首相の9条改憲について、自民・萩生田氏は「国民的議論をいただいて明記をしていきたい」と表明。公明党の斉藤鉄夫幹事長代行は自民党の議論を「見守りたい」とし、希望の党の樽床伸二代表代行は「9条(改憲)は逃げることなく思考停止になってはいけない」と加勢しました。立憲民主・長妻氏は「自衛隊を明記することでフルスペック(全面的な)の集団的自衛権行使になるとの解釈もある」と安倍9条改憲に反対しました。小池氏は次のように発言しました。
小池 1項、2項があっても、そこに矛盾する条項があとから書かれれば、あとから書かれた条文が元の条文に優先するというのが法律の原則です。つまり1項、2項が死文化するわけです。憲法は、武力に寄らない平和が根本原則ですが、それがひっくりかえるということになりますよ。しかも、安倍首相が書き込もうとしている自衛隊というのは災害救助で頑張っている自衛隊じゃないわけです。安保法制で集団的自衛権を行使する。その自衛隊を書き込むということになれば、文字通り制約なく海外で武力行使ができるようになる。
今度の選挙では野党のなかで、「安倍政権による憲法9条改悪反対」という立憲民主党、社民党、共産党の共闘が大きくのびて、立憲民主党は第1党になったわけです。「9条を変えない」という声が高まった選挙だと思います。
政治がやるべきことは憲法を実現すること
立憲民主・長妻氏が「憲法改正は国政の最優先課題とは考えていない」と発言したのに対し、与党側は「国会では憲法議論の入り口で止まっている。大いに各党が議論すべきだ」(自民・萩生田氏)、「改正項目を絞りこんで議論を」(公明・斉藤氏)、「総論ばかりで議論が全然進んでいない」(日本維新の会・片山虎之助共同代表)などと主張し、教育無償化や地方自治、「道路をはさんで選挙区が変わる」(萩生田氏)として小選挙区の区割り変更による「1票の格差」問題などをあれこれあげました。小池氏は次のように反論しました。
小池 国民のなかで憲法を変えてほしいという声が、ほうはいとわき上がっている状況じゃないんじゃないですか。憲法を変えないと、「これができない」ということがあるわけじゃないじゃないですか。
教育無償化だって、憲法に教育の機会均等が定められている。地方自治は憲法の大原則。それから道路を挟んだら投票所が変わると(区割りの問題を)いうけど、それは憲法の問題じゃなくて小選挙区制という制度が生んだ弊害です。小選挙区制でやっていったらそういう矛盾がどんどん起こってくるわけで。変えるべきは憲法ではありません。
憲法に基づく政治をきちんとやっていくということこそ、求められている。国民の基本的人権が本当に保障されているのか、あるいは男女の同権、平等ということが実現されているのか。いまの日本では憲法が実現されていないんですよ。まず、政治がやるべきことは憲法を実現することであって、いろいろなことを入り口にして、結局、狙いは9条だと思いますので、そういう方向にもっていく議論には私どもは賛成できません。
これに対し立憲民主・長妻氏も「政治が逸脱しているのではないか。現行憲法における乖離(かいり)というものも憲法審査会で議論しなきゃいけない」と発言。維新・片山氏が野党側が憲法議論そのものに反対しているかのように発言したことに小池氏は次のように発言しました。
小池 憲法9条改正問題で安倍首相の提案があったとき、私は安倍首相に予算委員会で議論した。われわれは憲法についての議論は否定していないんです。
ただ、憲法を変える必要があるのかと言っているんです。世論調査をみれば、国民のなかで「憲法を変えてくれ」というのは多数派ではないですよ。(改憲勢力から)いろいろな課題が今いろいろ出たけれども、私には憲法を変える口実で出しているだけにしか聞こえない。憲法を変えなくたって、できるようなことばかり言っている。
結局、憲法9条を変えるということが狙いとしてあるということは、安倍首相の5月3日の(自衛隊明記の)発言ではっきりしている。そういう方向にもっていくことは、われわれは断じて許さない。9条改憲は許さないということで頑張りたいと思います。
自民・萩生田氏は「共産党は憲法改正の必要はないと国民が言っているというが、われわれはその必要性は日々感じている。ここは議論を進めさせていただきたい」と言い放ちました。
北朝鮮問題―軍事力行使をすべきでないと米に言うべきだ
北朝鮮問題で自民・萩生田氏は、来月5日のトランプ米大統領訪日を機に対北朝鮮問題を協議すると述べ、「北朝鮮との対話を続けてきたが、約束をほごにされてきた。北朝鮮をテーブルにしっかりと座らせる環境をつくれるまで圧力を一貫して強めていくことに努力をしたい」と主張。小池氏は次のように発言しました。
小池 元防衛事務次官の秋山昌廣さんは、こう言っているんですね。
「政府の採っている制裁強化・圧力一辺倒、しかも軍事行動をも排除しないという対北朝鮮強硬姿勢は…日本の安全保障、国民の安全に深刻な危険をもたらしている」「米朝対立のエスカレーションがこのままさらに進めば、それだけ誤解や誤算による偶発的な軍事衝突」「それは第2次朝鮮戦争に発展し、韓国のみならず日本にも悲惨な戦禍をもたらす。このため、少なくとも米側から軍事力を行使すべきではないという考えを、日本としても明らかにすべきである」
私、その通りだと思うんですよ。トランプ大統領が来るのであれば、絶対に「軍事力行使はするべきではない」ということを言うべきだと思います。それをなぜしないのか。
北朝鮮に対して核開発放棄を強く迫ると同時に、アメリカに対しては軍事的な衝突を起こしてはいけないと迫るべきです。もちろん経済制裁を強化して、それで対話にもっていくという形で、この問題を解決する、そういう方向でやるべきだと思います。
司会者から「(北朝鮮問題で安倍首相に)与野党党首会談を進言してみては」との提起に萩生田氏は「今日の議論をふまえて話したい」とする一方、「手の内を話したときに北(朝鮮)に通じている方たちも中にはいらっしゃる可能性も否定はできない」などと、野党側に北朝鮮の“内通者”がいるかのような発言をしました。
家計消費の落ち込みは「特別な事態」、消費税10%は中止を
2019年10月からの消費税10%増税について与党側は「特別な事態が生じない限りは予定通り上げる前提で準備」(自民・萩生田氏)、「予定通り上げさせていただきたい」(公明・斉藤氏)と発言。維新・片山氏も「われわれは凍結だが、これは将来上げてもいいということ」と臆面もなく言いました。小池氏は、消費税8%増税以降、家計消費が1世帯当たり月平均2万円減となったことを指摘し、次のように発言しました。
小池 先ほど、(萩生田氏は)“特別な事態だったら増税しない”と言ったけれど、消費税を8%に増税してからの家計消費の落ち込みは「特別な事態」ですよ。10%にしたら、さらに5兆円の増税になるわけですから、やめるべきです。
増税するなら、「アベノミクス」でさんざんもうかっている富裕層、あるいは大企業におこなった4兆円の減税を見直すべきです。所得税だって、年収1億円を超えると証券優遇税制で税の負担率が下がるという不公平な構図があるわけです。これ(を改めること)で1兆円の財源が出てくる。
私たちは、消費税というのは所得が低いほど負担が重くなる最も不公平な税金であるから増税そのものに反対ですけれども、少なくともいまの経済状況、あるいは家計の消費の状況を考えれば、10%の増税はやるべきではないと思います。くらしも経済も破綻させます。
立憲民主・長妻氏は「2%上げることには否定的だ。8%に引き上げられた時、想定していた使われ方と違った」と述べました。
臨時国会を開き議論を
最後に司会者が「討論を受けて国民にどういうことを示すか」と質問。立憲民主・長妻氏は「かつての自民党は、与野党の合意をつくる寛容な姿勢があった時代もあったが、いまはトップダウン。ほとんど修正協議に応じず強行採決。対立をあおっている」と指摘。小池氏は「国会を開きましょう。選挙の中での議論は不足していますよ。特別国会だけじゃなくて、通常国会までの間に一定の期間の臨時国会を開いて、今日議論したような問題を議論しましょう」と強調しました。