赤旗2017年9月29日付
ヤマト運輸(本社・東京都中央区)が宅配ドライバーの残業代圧縮のために適用している変形労働時間制について、中央労働基準監督署が運用に問題があると同社に調査改善を求める行政指導をしていることが、28日までに分かりました。元宅配ドライバーの相談を受け、労基署申告を支援してきた神奈川労連は改めて、東京労働局に同社が速やかに未払い残業代を全額支払い、人間らしく働ける労働時間にするよう徹底指導を求めるとしています。
この問題は、横浜市の鶴見労基署に元宅配ドライバーの小村亮輔さん(35)が申告したもの。ヤマト本社所在地の中央労基署が指導したことで全国に波及する可能性があります。ヤマトは昨年来、労基署から違法な長時間労働とサービス残業(不払い残業)の是正指導を受け、総額230億円を支払うとしていましたが、今回の指導でさらに増額になるかも注目されます。
変形労働時間制とは、労働基準法に定められた労働時間規制の例外規定です。1年や1カ月など一定期間の労働時間が平均して週40時間に収まれば、1日8時間を超えても残業代を出さなくてもよくなります。ただし、対象期間の勤務スケジュールを事前に決めておくなどの要件があります。
小村さんが働いていたヤマト鶴見中央センターなどでは、平均週40時間を超える勤務が最初から恒常的に割り当てられ、ひんぱんにスケジュール変更が行われるなど、労基法の要件を満たしていませんでした。にもかかわらず変形労働が適用され残業代が全額払われていませんでした。
これまで労基署は、変形労働の要件逸脱の運用について「労基法違反」の認定を行っておらず、企業が残業代を値切るための抜け穴になっていました。小村さんと神奈川労連は8月22日、日本共産党の小池晃書記局長(参院議員)の事務所で、厚生労働省に是正指導するよう要請。「違法」の認定はしないものの、「問題あり」だという指導を実現しました。