赤旗2017年9月25日付
日本共産党の小池晃書記局長は24日のNHK番組「日曜討論」で、衆院解散・総選挙をめぐる動きや主要な争点について与野党代表と議論しました。司会は、太田真嗣解説委員、牛田茉友アナウンサー。
冒頭解散―憲法違反そのもの 代表質問、予算委開き国民に判断を
冒頭、安倍晋三首相が28日召集の臨時国会冒頭で衆院を解散する問題が問われました。自民党の萩生田光一幹事長代行は「解散は総理の専権事項。総合的な判断で決断されると思う」と25日に行う安倍首相の記者会見での表明を待ちたいと発言。民進党の大島敦幹事長は、野党4党が憲法53条に基づく臨時国会召集を要求しているとともに、冒頭解散でなく衆参本会議での代表質問、予算委員会開会などを求めていることを示し、「国会での議論を通じて、国民のみなさんに論点、課題について理解していただいた上で解散すべきだ」と述べました。
小池氏は次のように発言しました。
小池 臨時国会冒頭での解散というのは、「森友」疑惑、「加計」疑惑隠しの前代未聞の党略的な解散だと言わざるをえません。
あわせて、大島幹事長からあったように、野党は憲法53条にもとづく臨時国会召集を要求しているわけで、(政府・与党は)これを3カ月間たなざらしにしたあげく、審議もせずに解散するというのは憲法違反というほかありません。
「解散は総理の専権事項だ」と言うけれども、憲法にはそんな文言はありません。憲法違反の解散を「専権事項」といって、自分の都合だけで解散するというのは、これは解散権の私物化だと言わざるをえない。
政府は実際に、「当面の諸案件の審議を求めるために臨時国会を召集した」と通知しているんです。だったらやろうじゃないですか。きちっと代表質問をやる。予算委員会をやる。そして、疑惑に応える証人喚問やる。そうしたことをやって、国民に判断していただく材料を提供したうえで解散するのが筋です。それもせずに冒頭で解散するなどということは許されないことだと思います。
他の野党も「森友、加計問題の追及をおそれ、疑惑を隠す、政治の私物化解散だ」(社民党の又市征治幹事長)、「究極のわがまま解散」(自由党の森ゆうこ参院会長)と批判しました。
一方、「日本のこころ」の中野正志幹事長は、これまで民進党や共産党は解散を求めていたとして、今回の解散は「むしろ喜んで受け入れるべきだ」などと発言。小池氏は反論しました。
小池 冒頭解散には反対です。しかし私は先ほど、きちんと議論したうえで解散すべきだと言ったじゃないですか。冒頭解散は国民に対して、「疑惑隠し」でしかないと言っているんですよ。でたらめなことは言わないでください。
選挙で問われるもの―安倍暴走政治の審判 野党と市民の共闘、共産党躍進を
討論では「何が問われる選挙なのか」について各党が考えを述べました。与党は「安倍政権の4年半の政策と実績を信任いただけるかどうかが一番のポイント」(自民・萩生田氏)、「安定した政権選択」(公明党・斉藤鉄夫幹事長代行)などと主張しました。小池氏は次のように表明しました。
小池 この国を安倍首相の好き放題にさせていいのかということが問われる選挙になると思います。
国民のなかには個々の政策課題だけではなくて、政治姿勢に対する不信感が広がっていると思います。「森友・加計」疑惑隠し、あるいは「共謀罪」の強行などの憲法破壊、そして沖縄の新基地、原発再稼働などの民意を顧みない強行的なやり方の結果、都議選で惨敗して「反省して丁寧に説明する」と言ったのにこのありさまです。「疑惑隠しの冒頭解散」です。
こういう国政私物化、憲法破壊、民意踏みつけという安倍暴走政治に審判を下すことを私たちは正面から訴えていきたいし、今回の解散自体がそういう民意の前での追い込まれた解散だという面もあると思っています。われわれとしては、絶好のチャンスだととらえて、野党と市民の共闘、そして日本共産党の躍進で、安倍暴走政治を止めようということを訴えていく選挙にしたいと思います。
民進・大島氏、社民・又市氏、自由・森氏も安倍首相の政治姿勢を問う選挙にしていく考えを語りました。
野党間の協力―接戦区を中心に「1対1の対決構図」をつくっていく
司会者から「総選挙での野党間協力」をどうすすめるかと問われ、小池氏は次のように答えました。
小池 いま精力的に努力しているところです。この2年間、安保法制=戦争法の強行で市民のみなさんとともに、こういう政治は許してはいけないということで、野党と市民の共闘を広げてきました。総選挙でもこれを大きく発展させたいと思っています。20日の野党4党の書記局長・幹事長会談で「候補者の一本化を模索する」と合意できたことは非常に重要で、これにもとづいて候補者の調整を急いでいきたい。
私たちは、「本気の共闘」のためには、共通政策の確認と、相互支援・相互推薦が必要だと申し上げてきました。同時に、少なくともお互いに譲り合って、接戦となっていくような選挙区を中心に「1対1の対決構図」をつくっていきたい。そういう選挙区を広げていくために力をつくしていきたいと思います。いまの安倍総理の暴走を許してはいけないという、市民の声に私たちとしては応えるために、合意をしっかりつくっていく努力を続けたいと思います。
これに対し民進・大島氏も「“1対1の構図にもっていってくれ”という多くの(国民の)みなさんの要望がある」と発言。「野合、談合」と野党共闘を攻撃する日本維新の会の馬場伸幸幹事長に対して、大島氏は「失礼だ。(1対1の構図がよいという)国民の声を受け止めていくというスタンスだ」と反論しました。
自民・萩生田氏や公明・斉藤氏は、自衛隊・安保条約をめぐる考え方の違いを持ち出して野党間の協力を攻撃。小池氏は発言しました。
小池 事実と違うことを言われているので、一言だけ言わせてください。
私どもは、今度の選挙のなかで、例えば自衛隊に対する見解、あるいは日米安保条約に対する私どもの政策は(野党共闘に)持ち込まないとはっきり言っているわけです。安保法制=戦争法を廃止し、立憲主義を取り戻す。安倍政権の下での憲法9条の改悪は許さない。これらが一致点です。
自由・森氏は「平和憲法を守り、一部の大企業のための政治ではなく、99%の普通の人々を豊かに幸せにする政治にしましょうということで、われわれ野党は一致している」と発言。社民・又市氏も「安倍首相の暴走政治を何とか止めてほしいというのが主要に問われている選挙だ」と述べて、野党間の協力の必要性を語りました。
消費税増税―日本経済に大打撃 「これ以上の増税許されない」で一致できる
安倍首相が、2019年10月の10%への消費税率引き上げによる増収で、幼児教育や高等教育の充実に回すと報じられていることが議論となりました。
自民・萩生田氏は、法律で決められている増収分の使途の変更は国民に信を問う必要があると述べ、使途変更を口実とした衆院解散を正当化。公明・斉藤氏は、使途変更に理解を示しました。
小池氏は、政府が一時的といっていた14年4月の8%への消費税率引き上げの影響がいまだに続いていることを指摘。「40カ月間も家計消費は低迷を続け、増税前に比べ1世帯当たり月2万円も減っている。10%にすれば5兆円の大増税で、家計にも日本経済にも大打撃になる」と強調し、次のように述べました。
小池 私どもは消費税は最悪の不公平税制だと思っていますが、税制に対する考え方の違いを超えて、いまの消費不況のもとでこれ以上の増税は許されないということは多くの政党や国民が一致できるのではないか。
今回、突然自民党が使い道の見直しを言い出しましたけれど、国民が教育とか子育てに思いを持っているのを逆手にとって、解散の口実にしようという非常に党略的なものです。安倍政権になってから、社会保障は小泉政権時代以上に自然増削減をやっています。文教予算は実額で減らしています。しかも、子育て世代、若い世代に一番の打撃になるのは消費税増税だということもあわせて申し上げておきたい。
北朝鮮問題―軍事衝突を避けるため米朝両国に対話による解決を求めるべきだ
核・ミサイル開発をめぐって緊張が高まっている北朝鮮問題について、公明・斉藤氏は「国際社会と連携して圧力を強めるという一点につきる。現時点で対話というのは北朝鮮の核保有を認めることにつながる」「対話はかえって日本の将来を大変悲惨な目に追い込むことになる」などと対話の努力を完全に否定。維新・馬場氏は、「敵基地攻撃能力」の保持や「非核三原則」の見直しの議論をすべきだと主張しました。小池氏は「北朝鮮の核・ミサイル開発は断じて許されない」としつつ、次のように述べました。
小池 いまの最大の危機は、米朝間に直接の対話がないもとで双方の批判がエスカレートし、偶発的事態、あるいは誤算によって軍事的衝突が起こることです。その場合、日本や韓国は深刻な被害を受けます。
これをどう避けるか。世界各国はこの前の国連総会でも対話による解決をと言っています。対話というのは決して北朝鮮の核保有を認めることではない。(米国が)これまで「戦略的忍耐」といって対話してこなかった間に北朝鮮は核開発をどんどん進めたわけで、まずは対話に持ち込み、そのなかで核の放棄を厳しく迫っていくことが必要ではないか。
ところが安倍首相は、「必要なのは対話ではなく圧力だ」と述べ、「すべての選択肢を持つというアメリカを支持する」という。これは軍事力の行使も容認するということであり、あまりにも危険です。日本は直接対話による解決を米朝両国に求めていくべきです。
萩生田氏は、軍事衝突は避けるべきだとしながら、圧力一辺倒の発言を繰り返しました。
憲法9条改悪―憲法を守らぬ首相に変える資格なし 反対の国民的共同を
安倍首相が2020年までに9条に自衛隊を明記する明文改憲を目指すとしていることについて、司会者から「自民党は具体的な項目を掲げて選挙をたたかうのか」と質問。自民・萩生田氏は、「逐条ごとの細かいやりとりは党内で続いている最中。どういう形でお示しするかは決まっていない」と述べ、公明・斉藤氏は、国会の憲法審査会で議論すべきだと主張。維新・馬場氏は教育無償化を口実とした改憲の姿勢を示しました。民進・大島氏は首相の解散権を縛るための改憲の考えを示し、社民・又市、自由・森両氏は、安倍首相の狙う改憲に反対を表明しました。小池氏は次のように述べました。
小池 国民のなかで憲法を変えてほしいという世論がわき起こっているわけではありません。教育無償化は憲法を変えなくてもできます。
安倍首相は憲法9条を変えて自衛隊を書き込むといっていますが、憲法は武力によらない平和、不戦が根本理念であり、それが変わってしまいます。違憲の安保法制=戦争法を合憲化し、憲法9条2項を空文化したら、無制限の海外での武力行使ということになっていきます。
そもそも安倍政権に改憲をいう資格があるのか。秘密保護法、安保法制、「共謀罪」と立憲主義破壊を積み重ねてきた。憲法に基づく臨時国会の召集要求すら無視した。憲法を守らない首相に憲法を変える資格はありません。
私たちは、安倍政権による憲法9条改悪を許さない、この一点で協力していきたいと思っています。今度の選挙ではこの国民的共同を訴えていきたい。憲法9条を変えようという安倍政権のたくらみに国民の審判を下し、二度とそういうことが言えないような結果を出す選挙にしたいと思います。