日本共産党 書記局長参議院議員
小池 晃

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2014年3月4日 参院予算委員会 速記録

2014年03月04日

参院予算委員会
2014年3月4日

○小池晃君 日本共産党の小池晃です。
集団的自衛権について質問します。
まず、集団的自衛権とは何か。そして、日本国憲法に照らして集団的自衛権が行使できないとしている理由を説明してください。

○政府特別補佐人(小松一郎君) まず、御質問にお答えするに先立ちまして、私は、本国会序盤に心ならずも一か月近く入院を余儀なくされ、その間に内閣に多大な御迷惑をお掛けしたのみならず、本院における御審議にも答弁要求にお応えできなかったことにより支障をもたらしてしまいましたことを誠に申し訳なく思っておりまして、この場をお借りして心よりおわび申し上げます。
そこで、御質問、まず第一点、集団的自衛権とは何かということでございますが、既に本委員会におきまして私から民主党の大塚委員の御質問に御答弁申し上げたとおり、国際法上の概念でございます。
国際法の解釈、適用、実施は外務省の所掌事務でございまして、内閣法制局の所掌ではございませんが、私が理解しているところを申し上げますと、集団的自衛権とは、国際法上、自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を、自国が直接攻撃されていないにもかかわらず、武力を行使して阻止することが正当化される地位、やや硬い言葉で申し上げますと、国連憲章第二条第四項の定める武力行使の一般的禁止に対する違法性阻却事由であると一般に理解されております。
次に、集団的自衛権の行使と憲法との関係に関する従来からの政府の見解を御説明申し上げれば、次のとおりでございます。
憲法第九条の文言は、我が国として国際関係において実力の行使を行うことを一切禁じているように見えるが、政府としては、憲法前文で確認している日本国民の平和的生存権や憲法第十三条が生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利を国政上尊重すべきこととしている趣旨を踏まえて考えると、憲法第九条は、外部からの武力攻撃によって国民の生命や身体が危険にさらされるような場合にこれを排除するために必要最小限度の範囲で実力を行使することまでは禁じていないと解している。
これに対しまして、集団的自衛権を行使するということは、我が国にではなく他国に加えられた武力攻撃を武力を行使して阻止することを内容とするものでございますので、憲法上許容されない。
以上が従来の政府見解でございます。

○小池晃君 集団的自衛権の行使を可能にするということは、我が国に対する武力攻撃が行われていないにもかかわらず武力行使に参加をする、これを憲法九条が禁止しているのは自明のことであります。
そこで、こうした憲法解釈に基づくこれまでの日本の自衛隊の活動について聞きます。
二〇〇一年のアフガン戦争、そして二〇〇三年のイラク戦争の際にも、自衛隊派遣するために特措法を制定しました。いずれの場合も、武力行使をしない、戦闘地域に行かないと第二条の二項、三項に書き込みました。条文を読み上げてください。

○政府特別補佐人(小松一郎君) まず、テロ対策特別措置法第二条第二項でございますが、以下のとおり定めております。
対応措置の実施は、武力による威嚇又は武力の行使に当たるものであってはならない。
同じテロ対策特別措置法第二条第三項でございますが、以下のとおり定めております。
対応措置については、我が国領域及び現に戦闘行為(国際的な武力紛争の一環として行われる人を殺傷し又は物を破壊する行為をいう。以下同じ。)が行われておらず、かつ、そこで実施される活動の期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認められる次に掲げる地域において実施するものとする。一、公海(海洋法に関する国際連合条約に規定する排他的経済水域を含む。第六条第五項において同じ。)及びその上空。二、外国の領域(当該対応措置が行われることについて当該外国の同意がある場合に限る。)。
以上でございます。
次に、イラク特措法第二条第二項でございますが、既に読み上げましたテロ特措法第二条第二項と同じ規定でございます。
そして、イラク特措法第二条第三項でございますが、既に読み上げましたテロ特措法第二条第三項とほぼ同じ規定でございますが、テロ特措法と異なるところは、第一号にイラクの領域を含めた外国の領域と定めておりまして、第二号に公海及びその上空を掲げているというところでございます。
以上でございます。

○小池晃君 官房長官に確認しますが、このイラク特措法あるいは旧テロ特措法の第二条二項、三項は、米軍などに協力支援活動を実施するけれども、その場合も外国の領域で憲法が禁じている武力行使はしないと、武力行使と一体化する活動は行わないという意味ですね。確認です。

○政府特別補佐人(小松一郎君) まず、今の規定、読み上げました規定は、集団的自衛権とは関係がないということをまずお答えいたします。なぜならば、このイラク特措法、テロ特措法で予定しております行動はいわゆる後方支援と呼ばれる活動でございまして、それ自体、武力行使とは関係ないから、国際法上、阻却すべき違法性がないからでございます。(発言する者あり)
その上で、憲法九条の解釈として従来政府が申し上げておりますことは、そういうそれ自体が武力行使に当たらない活動であっても、外国が行う武力行使と一体化する行動を行うことは、我が国があたかも武力行使を行ったと同じように評価されるおそれがあると。これは憲法との関係という意味でございますが、そういう武力行使の一体化という法理を従来政府は取ってきておりまして、そのこととの関係で今申し上げたような規定になっているわけでございます。

○小池晃君 私が聞いたことにちゃんと答えてくださいね。後半だけ聞いたんですよ。憲法の番人なんだから、安倍政権の番犬みたいなことをしないでください。
総理に聞きますが、今までのことも踏まえて、これまで政府は憲法に照らして、我が国に対する武力攻撃発生しないときには、海外での武力行使も、他国の武力行使と一体とみなされるものもできないというふうにしてきたんですね。間違いない。今の確認されました、憲法に照らして。
集団的自衛権を行使できるようにするということは、日本が武力攻撃を受けていないときにも武力行使を可能にすると。これはあくまで基本的な定義についてお伺いします。そうですね。

○内閣総理大臣(安倍晋三君) 集団的自衛権の行使についての一般的な定義については法制局長官から答弁したとおりでございまして、私としても同じ考え方、言わば集団的自衛権の行使については同じ認識でございます。それが我が国にはできるかということですか。
それも今まで、従来の、答弁については法制局長官から答弁したところであります。

○小池晃君 いや、私が聞いたのは、集団的自衛権行使できるようにするということは、武力攻撃受けてなくても武力行使可能になるということですねと聞いているんです。

○内閣総理大臣(安倍晋三君) 現在、今、安保法制懇において議論を重ねているわけでありますが、我が国を取り巻く安全保障環境が一層厳しさを増しており、大量破壊兵器や弾道ミサイルの脅威は深刻度を増していると。また、サイバー攻撃のような国境を越える新しい脅威も増大をしている中において、このような状況の下では脅威は容易に国境を越えてくるわけでありまして、もはやどの国も一国のみにおいては自国の平和と安全を守ることはできないという認識であります。
そして、自国の平和と安全を守るためには国際社会と協力して地域や世界の平和を確保していくことが不可欠であり、このような観点に立って安全保障の法的基盤を再構築する必要があるという考え方の下に、ただいま安保法制懇において議論がなされているわけでございますが、集団的自衛権につきましても、これは個別的な事例に即して分類をしながら議論を重ねているわけでございまして、例えば、公海上におきまして、我が国に対する攻撃が行われていないという状況の中におきまして、しかし他国からのミサイル発射が懸念される中において、警戒している米国のイージス艦に対して、我が方のイージス艦がそのイージス艦に向かってくるミサイルを撃ち落とす能力があっても撃ち落とさなくてもいいのかと、こういう事例について議論をしているところでございます。

○小池晃君 そういうことを聞いているんじゃないんですよ。何か、これをやるのかどうかと聞いているんじゃないですよね。何でもできるとは言っていないんですよ。日本が集団的自衛権行使できるようになるということは、日本に武力攻撃が加わっていなくても武力行使が可能になるということですねという言葉の意味を私は確認しているので、お答えください。もう明確だと思います。

○内閣総理大臣(安倍晋三君) それはまさに、言葉の定義ということについてはそういう定義であります。

○小池晃君 テロ特措法の国会審議の際に、当時の小泉首相はこう述べています。
NATOは集団的自衛権の行使として対米支援活動をすると言っている、NATO諸国は日本と違って彼らはアメリカと一緒に武力行使することを辞さないと言っている、明らかに日本とは違うんですと、日本は武力行使もしないし、戦闘行為にも参加しないんです、戦場には出ていかないんです、日本としても苦労しているんです、国際社会の一員としての責任をどう果たそうか、こういう答弁しています。
そもそも、アフガン戦争を我々は断じて認めません。テロを戦争でなくすことはできないことは今の事態を見ても明らかです。しかし、当時の日本政府は、集団的自衛権が行使できなかったから、自衛隊の派遣はしたけれども、武力行使はしません、戦闘行為に参加しません、戦場には出ませんという、そういう立場を取ったわけですね。もしも日本が集団的自衛権行使できるようになれば、アフガニスタンのような戦闘地域でNATO諸国と同じように武力行使も可能になるということじゃないですか。実際にそうするかどうかを聞いているんじゃないですよ。可能になるということは、これは間違いないんじゃないですか。
自民党の石破茂幹事長は、「日本人のための「集団的自衛権」入門」の中でアフガン戦争についてこう書いています。論理上は、日本の集団的自衛権の行使が可能になっていたならば、あの戦いに自衛隊が参加した可能性はゼロではない。そういうことですね。

○内閣総理大臣(安倍晋三君) 現在、その石破幹事長が書かれた本でございますが、今、例えば安保法制懇においてどういう議論がなされているかといえば、例えば、今アフガンの例を出されたわけでございますが、実際に戦闘に参加するということについての議論ではなくて、そこに例えば医薬品あるいは弾丸等を運ぶことができるかどうかということについての議論はなされているわけであります。

○小池晃君 ちょっと、ごまかさないでくださいよ。こうはっきり言っているじゃないですか、石破さんだって。そして、議論をすり替えている。
日本周辺のことであるように、先ほどからいろいろと言っているけれども、例えば昨年末に閣議決定をされた国家安全保障戦略では、ペルシャ湾及びホルムズ海峡、紅海及びアデン湾からインド洋、マラッカ海峡、南シナ海を経て我が国に至るシーレーンについて、我が国と戦略的利害を共有するパートナーとの協力関係を強化するというふうに言っているわけで、この下で集団的自衛権行使すれば、これは当然地球規模での戦闘協力になっていく可能性はある。可能性ですよ、私聞いているの。
総理、要するに、集団的自衛権行使できるようにするということは先ほどお認めになった。我が国に対する直接の武力攻撃がなくても我が国が武力行使できるようになると。そうすると、結局、アフガニスタンのような戦闘地域って、絶対じゃないと言えるんですか。NATO諸国と同じような集団的自衛権行使できるようになる可能性があるじゃないですか。そういうことをはっきり言わないと、国民とちゃんと議論すると言うんだったら。これは可能性はあるでしょう。どうですか。

○内閣総理大臣(安倍晋三君) 我々は今、安保法制懇で議論をしているわけでございますが、そもそもですね、そもそも我が国の自衛権につきましても、自衛権につきましても必要最小限という制約が掛かっている。自衛権全体に掛かっているわけでありますから、個別的自衛権にも掛かっているわけでありまして、当然、自衛権全般に掛かっていて、そして個別的自衛権についても掛かっている。
そして、それを超えるものということで、今まで集団的自衛権については行使できないということになっていたわけでありますが、その制約の中にですね、制約の中に入るものがあるかどうかということも含めて議論がなされているわけでございまして、それは、ほかの国と同じように言わば集団的自衛権が行使できるということとはこれは違うわけで、明確に違うと言ってもいいんだろうと、このように思うわけでありまして、まさに今、安保法制懇で問われていることは、例えば一体化の議論でありますが、弾薬やあるいは医薬品を運ぶことも果たしてできないのかどうかということについて、今、アフガンあるいはイラク等について例を挙げられましたが、ということについての議論であるということは正確に申し上げておきたいと、このように思います。

○小池晃君 いや、だから最初に確認、認めたじゃないですか。集団的自衛権の行使というのは、我が国に対する武力攻撃、実際の武力攻撃なくても武力行使できるようになるという定義はお認めになったわけですから、それが可能になるということは、やるかどうかと聞いているんじゃないですよ、実際に我が国に武力攻撃が加えられていなくても武力行使をする可能性があるということですよねと聞いているんですよ。これ、どうですか。

○内閣総理大臣(安倍晋三君) 最初に問われたのは一般的な定義としてお答えをさせていただいたわけでありまして、一般的な定義としてお答えをしたものについて、言わば日本が全てそれができるというふうには安保法制懇の中において議論はされていないわけでありまして、その特定の制約の中においても何ができるかということについて議論がなされていて、例えばということで先ほど申し上げたわけでございます。

○小池晃君 何でもできるとは私、一言も言っていないですよ。言っていませんよ。
こういう集団的自衛権の行使が可能になるということは、結局、制約があると、今まで制約があると総理おっしゃった。その制約が、これは集団的自衛権の行使ができるとできないとでは違ってくるわけでしょう。それは、最大の問題は、我が国に対する武力の攻撃、武力攻撃がなくても武力行使ができるようになると、それが可能になるということではありませんかと聞いているんですよ。
間違いないじゃないですか、これは。どうですか、総理、可能性はあるということはきちんと認めて国民と議論すべきだと私は思います。

○内閣総理大臣(安倍晋三君) つまり、今安保法制懇で議論をしているわけでありますから、私が予断を持って申し上げることは今の段階では控えさせていただきたいと思いますが、そもそも、基本的な立場として、制約がある中においては、普通のほかの国々との比較において、そういう国々が行使できる集団的自衛権とは違うというふうに考えているわけでありまして、そもそもそこで武力行使に参加をしていくということについては議論を行っていない、例えばアフガン戦争のようなケースでありますが、ということの議論は行っていないわけでありまして、そもそも、先ほど申し上げましたような武器、例えばアフガン戦争であれば武器弾薬を輸送するということがどうかという議論であります。

○小池晃君 さっきから同じことしか繰り返さないんですけどね、総理は。だって、国際法上の概念として集団的自衛権の行使をお認めになったわけでしょう、どういう概念かということは。だとすれば、それが可能になるということは、まさに日本だけ特別なことじゃないじゃないですか。
だから石破幹事長も、要は論理上は、論理上はですよ、論理上は集団的自衛権行使可能になっていたならばあの戦いに自衛隊が参加した可能性はゼロではないと。これ、じゃ間違いですか、この石破さんの記載は。間違いなんですか、幹事長の書いたこれは。つい最近出た本ですが、間違いなんですか。

○内閣総理大臣(安倍晋三君) 私は、間違っているとか間違っていないとか論評する立場ではございませんが、私も、石破幹事長は恐らくフラットな中における定義として、その定義の論理的帰結について述べておられるのかもしれませんが、これは私の推測でありますが。日本は憲法第九条があるという制約の中における、この制約をみんな認めている中において、個別的な事象、分類において我が国の生存権、先ほど小松法制局長官から答弁をさせていただきましたが、前文と十三条における生存権等々においてそれを否定するものではないという、これは砂川判決がそうだったわけでありますが、そこで個別的自衛権については引かれて、言わば我が国の自衛権はあるということはこれは最高裁の判例としてあるわけでありますが、その中における集団的自衛権というものについて今世界情勢が変わってきている中において可能となるものがあるかどうかということについての議論がなされているということでございます。

○小池晃君 可能になるものがあるかどうかとおっしゃった。要は可能なんですよ。可能になるんですよ、これは。実際に何をやるかどうかは別なんです。可能になるわけです。今までの自民党政権というのは、そういう場合でも絶対に武力行使はしないと言ってきたわけですよ。我々は、一体化するということは結局武力行使ではないかという追及はした。しかし、我々がここを追及をすると、いや、武力行使はしませんと、その可能性はないと言ってきたんです。
今総理は可能性も含めて検討すると言った。結局これは集団的自衛権を行使できるようにすると、私は論理の話をしているんです。集団的自衛権の行使を可能にするということは、結局、日本に対する攻撃がなくても海外で武力行使をする可能性があるということです。そういう新しい道に進もうというのがまさに集団的自衛権の行使じゃないですか。
結局、集団的自衛権の行使というのは、海外で武力行使を、戦闘に加わるということになる可能性があるということは否定できないわけです、今のやり取りをしても。それはしませんとは言いませんからね。可能性も検討しているとおっしゃったわけですから。
元内閣法制局長官の阪田雅裕さんは、集団的自衛権の行使というのは海外で戦闘に加わるということだ、自衛隊員に犠牲者が出ることや隊員が他国の軍人を殺傷することも起こり得ると、こう言っているわけですよ。
実際にそんなことになったら一体どういう事態になるのか、外務省にお聞きをします。アフガン戦争に派兵した主な国別の犠牲者の数を示していただきたい。

○国務大臣(岸田文雄君) アフガンにおける不朽の自由作戦及び国際治安支援部隊、ISAFの犠牲者数につきましては、NATO及び関係国の中には犠牲者数を発表していない国、機関もあるため犠牲者数を確定的に把握はできておりませんが、ただ、主要メディアが引用いたします独立系サイト、アイカジュアリティーズによりますと、二〇一四年三月三日現在のアフガンにおける外国軍の犠牲者数は三千四百二十五名と掲載されております。主要国では、米国二千三百十三名、英国四百四十七名、ドイツ五十四名、イタリア四十八名となっております。

○小池晃君 三千人を超える犠牲者が出ているし、さらにアフガニスタン民間人の犠牲者数というのは、これは国連アフガン支援団の資料によれば二〇〇七年以降だけで一万七千七百人を超えているわけであります。そして、いまだに泥沼です。
日本に対する武力攻撃も発生していないときに自衛隊員を武力攻撃に参加をさせて、その生命を危険にさらす、自衛隊員が外国人の命を奪うことになる。この重大問題を憲法解釈の変更で進めるということなど、私は断じて許されないというふうに申し上げたい。
憲法解釈の変更について、二〇〇四年閣議決定した答弁書の該当部分を読んでください。

○政府特別補佐人(小松一郎君) 御指摘の答弁書でございますが、平成十六年六月十八日の民主党島聡衆議院議員の質問主意書に対する政府答弁書でございます。該当部分をそのまま読み上げさせていただきます。
憲法を始めとする法令の解釈は、当該法令の規定の文言、趣旨等に即しつつ、立案者の意図や立案の背景となる社会情勢等を考慮し、また、議論の積み重ねのあるものについては全体の整合性を保つことにも留意して論理的に確定されるべきものであり、政府による憲法の解釈は、このような考え方に基づき、それぞれ論理的な追求の結果として示されてきたものであって、諸情勢の変化とそれから生ずる新たな要請を考慮すべきことは当然であるとしても、なお、前記のような考え方を離れて政府が自由に憲法の解釈を変更することができるという性質のものではないと考えている。
仮に、政府において、憲法解釈を便宜的、意図的に変更するようなことをするとすれば、政府の憲法解釈ひいては憲法規範そのものに対する国民の信頼が損なわれかねないと考えられる。
このようなことを前提に検討を行った結果、従前の解釈を変更することが至当であるとの結論が得られた場合には、これを変更することがおよそ許されないというものではないと考えられるが、いずれにせよ、その当否については、個別的、具体的に検討されるべきものであり、一概にお答えすることは困難である。
以上でございます。

○小池晃君 首相は、アジア情勢の変化などを解釈変更の理由に挙げておられます。しかし、答弁書にあるように、たとえ情勢の変化を考慮したとしても、政府が自由に憲法の解釈を変更することができるという性質のものではないとしたのが従来の政府の立場であります。
集団的自衛権の行使を可能にするなどという憲法の根幹に関わる解釈の変更など、この答弁書で認める余地は全くないじゃありませんか。

○内閣総理大臣(安倍晋三君) 今の小松法制局長官の答弁を最後まで聞いていただければ、前段においては、それはそう簡単なことではないということでありますし、私もそのとおりだと思っております。
しかし、それが全くその可能性がないのかといえば、そんなことはないという趣旨のことを最後は小松長官が述べていたわけでありまして、つまり、先ほど申し上げましたように、この国際情勢が大きく変わる中において、一国のみにおいて我が国を守ることができないという中において、国際関係の中において地域の平和と安定を協力をしながら維持をしていくという要請がある中において、この解釈について個別具体的に例を挙げながら、先ほども申し上げましたように、例えば日本においては日米同盟がなければ日本の安全を完全に守ることができないわけでありますし、そのことによって抑止力も効いている中において、日本を守っている米国のイージス艦が飛んでくるミサイルに対してイージス機能を集中しているときに、そこに飛んできたミサイル、別途飛んできた弾道ミサイルではないミサイルを日本のイージス艦が撃ち落とせるという能力を発揮をしなくていいのかという根本問題であります。そうしたことについてしっかりと議論をしているわけでございます。

○小池晃君 関係ないことをあれこれ答えられましたけれども、この閣議決定というのは、よく読めば、憲法解釈の変更がなぜできないのかという理由を列挙した上で、このようなことを前提に検討した結果、憲法解釈を変更することがおよそ許されないものではないとしているにすぎないわけです。
その理由を何と言ってきたか。理由は何と言ってきたか。情勢が変わったからといって政府が自由に解釈を変えることはできない。そして、政府が憲法解釈を便宜的、意図的に変更するようなことをすれば、政府の憲法解釈ひいては憲法規範そのものに対する国民の信頼が損なわれかねないとしているわけですね。
これが検討の前提なんですよ。だとすれば、この前提に照らせば、今の憲法の下で集団的自衛権行使が可能になるなどというそんな変更はおよそ許されるはずがないじゃありませんか。
集団的自衛権と憲法の関係について、もう一つ答弁があります。二〇〇四年二月二十七日、参議院本会議での当時の小泉首相の答弁を紹介してください。

○政府特別補佐人(小松一郎君) 御指摘の小泉純一郎内閣総理大臣が参議院本会議において行いました答弁の関連部分をそのまま読み上げさせていただきます。
集団的自衛権と憲法の問題ですが、現行憲法施行後の国際情勢の推移を踏まえて、集団的自衛権と憲法との関係について様々な議論があることは承知しております。憲法上の問題について、だれもが受け入れる状況の変化の中で時間の経過とともに制定時とは異なる憲法解釈が定着していくというものであれば、解釈の変更も一つの問題解決の方法となり得るものであると考えております。
しかし、解釈変更の手段が便宜的、意図的に用いられるならば、従前の解釈を支持する立場を含めて、解釈に関する紛議がその後も尾を引くおそれがあり、政府の憲法解釈、ひいては憲法規範そのものに対する国民の信頼が損なわれることが懸念されます。その意味で、私としては、憲法について見解が対立する問題があれば、便宜的な解釈の変更によるものではなく、正面から憲法改正を議論することにより解決を図ろうとするのが筋だろうと私は考えております。
以上でございます。

○小池晃君 集団的自衛権の行使を可能にするような重大な解釈の変更は誰もが受け入れる状況の中でなければならないし、見解が対立する問題があれば正面から改憲の議論をすべきだと、この国会答弁はその後の閣議決定で再確認をされているわけです。憲法の解釈を意図的、便宜的に行えば、最高法規としての憲法に対する信頼は揺らいでしまうと。だから、戦後の日本の保守政治は、保守なりの節度を持ってこのことに臨んできたわけですよ。だからこそ、今回の憲法解釈の変更に対しては、立場の違いを超えて怒りの声、疑問の声、懸念の声が広がっているわけです。
パネルを御覧いただきたい。(資料提示)自民党では村上誠一郎さん、古賀誠、野中広務元幹事長、公明党の漆原良夫国対委員長、そして阪田雅裕元法制局長官、憲法を変えるという立場の小林節慶応大教授も疑問の声を上げています。
首相、今の答弁に照らして言えば、この今の状況は、閣議決定で言うような誰もが受け入れる状況の変化なんですか。意見の対立、見解の対立がない状況だと総理はおっしゃるんですか。

○内閣総理大臣(安倍晋三君) まさに見解については様々な見解があるわけでありまして、その中におきまして、現在、今安保法制懇におきまして、分類を分けまして、今こういう状況の中において、これは憲法の解釈との関係において果たしてどうだろうかということについて議論がなされているわけであります。
集団的自衛権の行使だけではなくて、例えば海外における武器の使用等についても憲法との関係で議論しているところでございます。

○小池晃君 安保法制懇で議論しているだけじゃないじゃないですか。憲法解釈の変更をやろうとしているんじゃないですか。
ニューヨーク・タイムズの社説は、こう述べています。安倍氏はさきの国会で、国民は次の選挙で彼に審判を下すこともできると暗に示したが、それは立憲主義の誤った見方であると、安倍氏は当然、日本国憲法を修正する動きに出ることもできたはず、そのための手続が面倒過ぎるとか、国民に受け入れられないといったことは、法の支配を無視する理由にはならないと、こう言っている。
最高の責任者は私ですなどといって解釈改憲に踏み切れば、国民の自由や権利を守るため政府を縛る憲法の否定、すなわち立憲主義の否定になる、これが世界から寄せられている声であります。
総理、安保法制懇で議論していますで済む話じゃないんです。あなたは、これを閣議決定をして変更していくということをおっしゃっているわけですね。これだけ見解が対立している中で解釈を変えれば憲法の最高規範性が損なわれると、それでもやると総理はおっしゃるんですか。

○内閣総理大臣(安倍晋三君) まさに今、安保法制懇の中におきまして、様々な分類について議論をしているわけであります。その結論を得た上において、我々としては、政府・与党で議論を重ねまして、そして法制局を中心に、もし解釈が必要であればどういう解釈をすべきかということを最終的に決定をするわけであります。
その上において閣議決定をするわけでありますが、しかし、それで直ちに、直ちに自衛隊が活動できるということにはならないわけでありまして、様々なこれは法の改正が必要となるわけでありまして、法を改正して初めてこの自衛隊等が、新しいもし解釈が必要となれば、その解釈の上に立って行動、活動ができるようになっていくということでありますが、同時にそれは、集団的自衛権の行使について解釈が変更されるということは、行使をしなければいけないということではもちろんないわけでありまして、行使する権利を持つという話であります。
その中におきまして、先ほど申し上げましたように、法改正を行い、さらには政策的選択肢としてそれを取るかどうかという判断がなされるということになるんだろうと思います。

○小池晃君 行使する権利を持つということが戦後の政治の根幹を変えることになるんですよ。
日本共産党は、集団的自衛権の行使、すなわち海外で戦争できる国にすることには断固として反対であります。もちろん、それは、憲法の明文そのものを変えることにも反対であります。
同時に今、憲法九条を守ろうという人も、変えてもいいという人も、日本の中だけでなく世界からも、安倍首相の余りに乱暴な憲法解釈変更に懸念と不安と、そして怒りが広がっているわけですね。
法の支配を粉々に壊してしまっていいのか。憲法の規範性をなきものにしてしまっていいのか。
この安倍政権の暴走を食い止めて日本の民主主義の根幹を守るために、今、与野党を超えて、私は、心ある全ての人が力を合わせる、立場の違いを超えて声を上げるときだというふうに思います。そのことを申し上げて、続いて、景気回復の鍵を握る賃上げの問題に移ります。
日本共産党は賃上げのための三つの提案をしておりますが、まず第一に、内部留保を活用した賃上げ。大企業の内部留保、この一年間で十五兆円以上も増えました。二百七十五兆円です。収益が改善したら賃上げをと先送りするんではなくて、内部留保の一部を活用してまず賃上げをと、この間何度も申し上げてきました。そして、賃下げ政策にほかならない労働者派遣法など労働法制の改悪をやめて、人間らしく働けるルールを作ることも求めております。
今日は、更に一つ、最低賃金の問題を取り上げたいと思います。
私たちは、厚労省と総務省の統計を基に、フルタイムの一般労働者で時給千円未満の労働者はどれだけいるのか計算してみました。これを見ますと、若年者そして高齢者、そして全体を通じて女性です。フルタイムであってもこれだけの低賃金が広がっているわけです。
私、総理に最初に基本的な認識をお伺いしたいんですが、年収二百万円にも満たないワーキングプアの広がりは、私はこれ深刻だと思う。この解決というのは日本社会の未来にとって極めて重要な課題ではないかと思いますが、総理の認識をまずお答えください。総理。

○内閣総理大臣(安倍晋三君) 今御指摘のワーキングプアの方々については、その範囲、定義については様々な議論がありますが、こうした方々は非正規雇用である場合が多いと考えられるわけでありまして、賃金水準が低いことに加えて、能力開発の機会が乏しい、セーフティーネットが不十分であるといった様々な課題があるというふうに認識をしております。
このため、キャリアアップ助成金の活用などによって非正規から正規への移行支援等の取組を進めるとともに、こうした方々が就労以外の様々な生活上の問題を抱えている場合には、昨年成立をした生活困窮者自立支援法に基づきまして、生活資金の貸付けのあっせん等の事業を行うなどの取組を行っております。

○小池晃君 私、もうちょっと大きな認識を聞いたんですが。
こういう低賃金の広がりというのは、私は社会の本当に病理現象とも言える深刻な状況だと思うんですね。この打開のためには最低賃金の抜本的引上げが極めて重要だと思います。
最低賃金の大幅引上げというのは、必ずこれは消費に結び付いてまいりますし、内需の活性化に最も効果的な景気対策であり、企業の経済活動にもプラスになってまいります。一九五九年に最低賃金制を導入した当時の岸信介首相も、最低賃金制によって中小零細企業の劣悪な労働条件が改善され、能率も上がり、事業も安定し、過当の競争もなくなる、中小企業対策としてもこれは効果があると答弁をされているわけですね。
欧米諸国も、このグラフに示したように、最低賃金の引上げを経済政策の柱に据えております。
軒並みやっぱり時給千円以上です。アメリカ・オバマ大統領は最低賃金の引上げを、今八百十七円、これを千百円を超える水準へと呼びかけておりますし、ドイツも今度の政権合意で全国一律最低賃金制の導入を決めています。これに比べて、日本はやっぱり圧倒的に遅れているわけですよ。
もちろん中小企業は大変ですよ。本当に必死の経営でやっているわけですよ。やっぱり賃金を上げるってそんな簡単なことじゃないということは私も十分承知をしています。しかし、これは、中小企業に対しては本気で抜本的な支援を行うことと併せて、これをやることが中小企業の経営にとってもいいんだと、岸元首相の答弁にあるとおりだと私は思うんですね。
総理、この最低賃金制導入をしたと、この歴史を更に前に一歩進める、そういう決意はありませんか。最低賃金、私は、全国一律でやることによって地域格差も解消する、このことが本当に大事な政策ではないかと。やっぱり最低時給千円以上、これはあしたからというのはそれは無理かもしれないけれども、これを目指してそのための中小企業支援を行うと、先送りにできないと思いますが、いかがですか。

○内閣総理大臣(安倍晋三君) 最低賃金が引き上がっていく状況をつくっていくということについては、共産党の小池先生も岸信介も私も同じ考え方と言ってもいいんだろうと思います。
その考え方の下に、昨年度は十五円最低賃金を引き上げたところでありますが、大切なことは、まずそういう環境をつくっていくということにおいて、やっと現在、失業率についても低下をしてきたわけでありますし、有効求人倍率も上がってまいりまして、言わば労働市場がだんだんこれはタイトになっていく中において賃金が引き上がっていくという状況が醸成されつつあるわけでございます。
しかし、この最低賃金を引き上げていく上においては、これはもう小池委員も重々御承知の上で述べておられるんだろうと思いますが、中小企業・小規模事業者もその支払能力がなければならないということも重要であります。だからこそ、例えば第一次安倍政権のときには、中小企業・小規模事業者の生産性を上げていくという支援もさせていただいたところでございます。そのため、企業の収益を向上させ、そしてそれが雇用の拡大や賃金の上昇につながる経済の好循環をまずつくっていくことによって、そうした環境をつくっていきたいと思います。
また、政府としては、最低賃金を引き上げた中小企業・小規模事業者への助成等を拡充するとともに、例えばものづくり・商業・サービス革新補助金等において、賃上げや人材育成等の処遇改善に取り組む企業が優先的に採択されるよう工夫するなど、中小企業・小規模事業者への支援を今後充実をしていきたいと、このように考えております。

○小池晃君 最低賃金引き上げたとおっしゃるんですけどね、これ全国平均で五年前の七百三円から七百六十四円へ。ペースは若干上がってきていますよ。しかし、毎年十円ちょっとという引上げなんですね。この五年間のペースでいくと、千円になるのにあと二十年掛かるわけです。
大体、中小企業、私、最初に強調しましたけれども、実は最低賃金額に張り付いているというのは決して中小企業だけじゃないんです。例えば大企業のグループ企業で最低賃金に張り付いているケース少なくありません。例えばワタミグループが経営する居酒屋のアルバイト時給、ホームページを私、全国調べました。これ、全国四十七都道府県のうち十三都道府県の店舗でその地域の最低賃金額の募集を掛けているんですね。
総理、支払能力と言うけど、支払能力十分あるんじゃないですか、こういうところは。こういう、中小企業だからという言い訳は通用しないと私は思う。十分に体力があるような大企業グループが最低賃金ぎりぎりで雇用しているような状況を、総理、このまま放置していいんでしょうか。何とかすべきではないですか、総理。

○内閣総理大臣(安倍晋三君) この最低賃金については、今全国において、それぞれの県において適切な引上げが行われるように、そういう状況をつくっていきたいと、こう思っているところでありますが、言わば最低賃金に張り付いている企業がなかなか人材が集まらないと、人が集まらないという状況をつくっていく中において、そうした賃金における待遇あるいは職場環境の改善に努力を傾注していかなければいけないという状況をつくっていきたいと、こう考えております。

○小池晃君 何かちょっと頼りない答弁なんですね。もっとこれ、きちっとがつんと物を言うべきじゃないですか。支払能力十分あるような大企業グループで最低賃金ぎりぎりなんて、こんなことはもう駄目だということをはっきり言うべきですよ。
神奈川県のマクドナルドで十五年間働いている三十六歳の男性。シフト制で週五日八時間働いて時給八百六十円。これ、十五年前、八百円で働き始めて毎年十円上がったけれども、二〇〇六年以降は八百六十円のままだと。交通費も有給休暇もない。これ、月収十三万から十四万で、病院に通っていて月一万三千円から四千円の医療費掛かっている。親と暮らしているが、結婚もしたいし子供も欲しいが、この給料では望めない、せめて時給は千円以上にとおっしゃっている。
支払能力がなんてことを言うから最低賃金が上がらないんですよ。きちっとこのことを経済の発展の原動力と位置付けるべきだ。もちろん、おっしゃるように、中小企業に対する支援は必要だと思います。
私たち、政府のデータを基に計算をしてみました。最低賃金を時給千円以上に引き上げる場合に、雇用者全体、約二割に当たる九百三十二万人が賃上げの対象になってまいります。そのために必要な総額約二兆二千億円。そこで、従業員規模を百人未満の企業を対象として、最低賃金を九百円に引き上げる段階では最大で四千億円程度、千円に引き上げる段階でも九千億円程度です。もちろんこの中には黒字企業もあるでしょうから、全てを助成しなくても、これは最大だというふうに思うんですね。
今回、賃上げを期待して復興特別法人税の前倒し廃止、その規模は一兆円だというんです。しかし、法人税というのは黒字企業しか払っていないわけであります。一方、こうした最低賃金引上げのための直接支援を行えば、確実に賃金上昇につながる、ワーキングプアの解消になる、消費に回る賃上げになるから企業の収益向上にも貢献をする、全国一律最低賃金制で地域格差の解消にもなる。まさに好循環じゃないですか。財源はいろんな財源あると思う。例えば雇用保険には五兆円の積立金がある、これも活用できるんじゃないか。
賃金が上がれば雇用保険には更に保険料入ってくるわけですから。
総理、私はこれ現実的、具体的、前向きな提案をしているんですよ。是非、日本経済の好循環というのであれば、こういう低賃金を解消するような政策に足を踏み出すべきじゃないですか。総理、いかがですか。総理、答えて。総理、答えてください。

○国務大臣(田村憲久君) 最低賃金の上がり方が歩みが遅いというお話がございました。もちろん、全体賃金が上がりにくい若しくは下がっている中において最低賃金が上がってきているわけでありますから、それは当然スピードが遅いと言われる部分はあるかも分かりません。ただ、今そういう意味で賃金が上がるような形で脱デフレ、アベノミクスやっているわけでありますから、その中において、最低賃金というものが景気の好循環の中において上がっていくということを我々は期待いたしておりますし、そのような形でいろいろと施策を打っておるわけであります。
その上で、今のお話でございますが、言われた部分、まず雇用保険は、御承知のとおり事業主とそれから労働者の保険料です。積立金といっても、これは国庫は入っておりません。でありますから、それを国が勝手に使うということはなかなか理解が得られないであろうな、このように思います。重ねて申し上げれば、そのような形で補填したもの、我々は社会主義経済下の経済政策じゃありませんから、ですから、それを入れていくということはこれどういうことかというと、結局それで価格自体が要するに影響を受けるわけですよ。その金額を、賃金補填した上で価格形成されますから、それ自体自由な経済というものを阻害する可能性もあるわけでありまして。
そう考えますと、やはり景気を良くする中で最低賃金を引き上げていくということが我々は王道であろうと思いますし、いつまでもそのようなことをやっておれば延々とその費用というものが必要になってくるということでございますから、我々は我々の方法で最低賃金をしっかりと引き上げてまいりたいというふうに思っております。

○小池晃君 スピード遅いと認めながらああだこうだ言い訳して、これだから駄目なんですよ。これだから最低賃金なんて上がらないんですよ、厚生労働省がこんな態度を取っているから。駄目なんですよ、それじゃ。岸首相が言ったように、これこそが中小企業の活性化なんだと、こういう立場でやらなきゃ駄目じゃないですか。
私、こういう発想じゃ駄目だと思うんです。雇用保険の積立金使えない、五兆円ずっとたまっているんですよ。こういったことに思い切って雇用のために活用するということが今求められているんじゃないですかと言っているんです。
それから、口では賃上げ賃上げと言いながら、政府、すぐにやれることをやっていないと私は思うんです。例えば、官公庁の求人状況を調べてみました。厚生労働省職業安定局の京都府宇治市のパート職員、時給八百九十円です。厚労省福岡労働局、時給八百八十八円、長野労働局も愛媛労働局も八百三十四円、財務省旭川財務事務所八百九円、松江も新潟も八百八円、防衛医科大学校七百九十円。政府のお膝元でこんな状況なんですよ。
企業に賃上げを賃上げをと要求するんだったら、まず隗より始めよなんじゃないですか。
アメリカのオバマ大統領は今年の一般教書演説の中で、最低賃金の引上げを企業に訴えるだけではなくて、こう訴えています、連邦政府との契約を結んでいる業者に対して、公正な賃金として時給十ドル十セント、日本円にして千百円以上ですよ、これを支払を求めると。そして先日、大統領令に署名をしたんですね。オバマ大統領は、政府の仕事に取り組む人が貧困の中に暮らすことはあってはならないと、そして、さあアメリカに賃上げをと、こう訴えたんですよ。
秘書さんの賃上げがどうのこうのと言っていたけれども、そうじゃなくて、国で雇っている人たちがまともな賃金で暮らせるようにする、これをまず総理、やるべきじゃないですか。見習ったらどうですか。

○内閣総理大臣(安倍晋三君) 今日この午後の審議の一番バッターは公務員の給与を下げろという質問でございましたが、今、小池委員の言っておられる気持ちは私も分かりますよ。しかし、その中において、この消費税を引き上げていくという、財政の厳しい状況の中においては、公務員の皆様方においても様々なことをお願いをしているわけでございますが、しかし復興のために御協力いただいたパーセンテージについては元に戻ささせていただいたところでございます。

○小池晃君 気持ちが分かるで済む話じゃないんですよ。気持ち分かってもらうだけじゃ何の意味もないんですよ。実際の具体的な行動が求められているんですよ。やっぱり日本を賃上げ社会にするための、私は本気で具体的な行動が求められているというふうに思います。それができるのは総理なんですよ。企業に求めるだけじゃなくて、総理自身ができることがあるわけです。最低賃金を全国一律時給千円以上にするための中小企業の直接支援を、国や自治体の仕事で適正な賃金の保障を、そのための公契約法の実現も併せて訴えて、私の質問を終わります。

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