参院厚生労働委員会
2014年3月25日
○小池晃君 日本共産党の小池晃です。
今回の法案は、育児、介護の休業補償を休業前賃金の六七%に引き上げ、一定の改善であると評価できると思います。
現状を見ますと、一方で産休すら取れないという実態があります。妊娠、産休取るなら解雇、雇い止めということが横行しているわけですね。
厚労省の育児休業制度の調査研究事業を見ますと、妊娠、出産の離職理由に解雇、退職勧奨というのが一四%もあります。これは内閣委員会で我が党の議員が森まさこ少子化担当大臣にただしたところ、森大臣はこれを違法と明言をし、雇用均等室で厳正な是正指導を行っていると述べました。
そこで、聞きますが、妊娠、出産時の解雇、退職勧奨に関する雇用均等室への相談件数と、是正指導及び事業所名の公表はどれだけ行われていますか。
○政府参考人(石井淳子君) 平成二十四年度について申し上げますと、平成二十四年度における男女雇用機会均等法第九条関係、すなわち、この条文はその婚姻、妊娠、出産等を理由とする不利益取扱い関係でございますが、その相談件数は三千百八十六件でございます。相談件数の内訳は、女性労働者が千八百十九件、事業主が七百九十七件等となっております。
また、その男女雇用機会均等法第二十九条に基づきまして報告徴収を行った事業所のうち、男女雇用機会均等法違反が確認された事業所に対して是正指導を行っているところでございますが、このうち第九条関係の是正指導件数は十九件となっております。
この企業名の公表というのが実は規定としてございまして、二十四年度は零件でありましたけれども、男女雇用機会均等法二十九条において、是正指導に基づいた是正が行われず、勧告を実施してもなお是正が行われない企業に対して実施するものでございます。第九条関係で是正指導を行った十九件については、是正がされているか、あるいは現在、是正指導継続中ということでございます。
なお、過去の事例見ましても、勧告の段階で是正されておりまして、これまでのところは公表制度があることが是正指導につながっているところでございます。
○小池晃君 大臣、二千件近い相談に対して是正指導は十九件ですよ。今いろいろと言われたけれども、是正されたからいいんだということで、企業名公表ゼロなんですね。これで厳正な指導是正が行われていると言えるんでしょうか。
○国務大臣(田村憲久君) 婚姻や妊娠や出産等々で不利益取扱いということで、いろんな雇用均等室の方に相談はあるわけでありますが、今話がありましたとおり、企業側からもあります。一方、女性から千八百人強相談があると。ただ、この内容も、個別相談だけではなくて、一般的な話をいろいろと相談に乗られる場合もあるわけであります。
今、企業に対して報告徴収を実施した上で是正指導、これが少ないではないかというお話がございましたが、一方で紛争解決援助等は行っておるわけでありまして、これは、もちろん相談者の気持ちを十分に尊重した上ででありますけれども、二十四年度で二百三十二件あるということでございまして、直接企業に対して是正指導みたいな形で徴収してというようなやり方もありますけれども、間に入って紛争解決援助というようなやり方もあるわけでありまして、そのような意味では、今ほど来言っておりますとおり、全てが全て個別案件でない中において、個別案件に対してもこのような形で対応をさせていただいておるということであります。
○小池晃君 まだ、いろいろおっしゃるけれども、違法だと大臣が言明するようなことが一四%も起こっているわけですから、これで厳正にやっているというんじゃ、まだまだやっぱり努力は必要だと思うんですよ。今の水準で私は実態に合っていないと思う。
それから、同じ調査では、育児休業を取得しなかった理由に対して、制度がなかった又は対象外だったという回答が一番多いんですね。これ、非正規で五八%、正規で二八・四%。これ、制度がなかったというのは重大だと思うんですよ。この回答のうち、制度がないというふうに答えた人はどれだけいたんですか。制度がないと対象外って、そのうち制度がないはどれだけいたんですか。
○政府参考人(石井淳子君) 御指摘の調査でございますが、この調査票上、選択肢が、制度がなかった又は対象外だったとセットになっておりまして、制度がなかったという部分だけを切り出しての集計は出されておりません。
○小池晃君 これはやっぱり不十分ですね、こういう調査じゃ。制度がないというのはこれ大問題なわけですから。
今回の改正では、このときのアンケートで、収入が減り経済的に苦しくなると思ったということが休業給付の引上げを決めたというふうに説明聞いています。しかし、そもそも大前提として、制度がないといって育休取得が行われていないような会社は、これはあってはならないはずだと思うんですね。厚労省としてはどう考えているんですか。
○政府参考人(石井淳子君) 制度がなかったとお答えになっている方は、恐らくそういう規定がなかったということでお答えになっているんだと思いますが、やはり法の履行確保と、それから、労働者が安心して育児休業を取得する上で、規定の整備というのは大変重要だと思っております。
これはインフラのようなものだと思っております。
ただ、この就業規則等の規定の整備につきましては、現在大変重要視しておりまして、集団的手法も取り入れながらその徹底を図っております。
ただ、この育児・介護休業法でございますが、仮に、企業でのこの規定がなかったとしましても、これは、要件を満たせばこれは取得は可能なものでございまして、労働者の申出によってこの育児休業を取得させる義務がこれは事業主に生ずるものでございます。このため、こうしたことも併せて周知を図るとともに、労働者が要件を満たしているにかかわらず事業主が労働者の育児休業の申出を拒否するなどの法違反に対しては是正指導を行ってまいりたいと思っております。
○小池晃君 これ、徹底した対策が必要だと思います。
対象外だったという労働者に対してもこれは施策大切で、全労連は、依然として六割の女性が妊娠、出産を機に退職し、男性の取得率も低いということで、今回の引上げだけでは大きな改善が望めないと指摘をされています。
今、女性労働者全体の五七・四%は非正規雇用です。非正規の契約期間は圧倒的に三か月、六か月、一年というふうになると、結局現行制度では対象外というふうにならざるを得なくなっています。
やはり、育児休業取得の見直し、要件の見直しとともに、正規雇用が当たり前という社会をつくっていくことが大事だと思いますが、これは、均等室に、育児休業申出及び取得による不利益取扱いの相談件数を聞いたんですけど、これも二〇一一年度、二千百七十二件に対して是正指導は十四件、企業名公表ゼロです。もちろん相談全てが違法だったと思いませんけれども、少ないと思うんですね。
以上の議論を踏まえて、大臣、やはり違法な実態をしっかり把握するということとともに、厳正な是正指導、それからやっぱり企業名公表なんかをしっかりやって守らせていくというルールの見直し、これ、実効ある対策が必要だと思いませんか。
○国務大臣(田村憲久君) いきなり企業名公表というわけにはなかなかいかないわけでありまして、指導して直していただければ、それはそれで対応していただいたということになるわけであります。
もちろん、その制度がないというのは、本来制度がないというようなことがあってはおかしいはずであって、制度はあるんですよね。ただ、そこの会社においてそれを就業規則等々で明示していないということでございますから、本来資格のある方が育児休業等々を要望した場合には、それはしっかりと取得をさせていただかなければ困るわけでありまして、その点に関して違法行為があれば、我々は適切に対応してまいりたい、このように思っております。
あわせて、やっぱり周知徹底、これはまだ十分にできていないというところもあるんだと思います。周知徹底をするとともに、なかなか実際問題、均等室の方にいろいろと相談される方も、なかなか、実際問題、会社に言っていただくのはなかなかいろんな形で自分のことも分かってしまうからつらいという部分もありますので、そういう方々に対してどのように対応していくかということもいろいろと知恵を出していかなければならぬというふうに思います。
いずれにいたしましても、悪質なものに関しましてはこれは当然公表も含めて対応するわけでございまして、そこは決して我々、手を緩めるわけではございません。
○小池晃君 きちんと対応していただきたいと思います。
具体的な事例について聞きます。
世界有数の半導体メーカーであるルネサスエレクトロニクス、ここは二〇一〇年から大規模なリストラをやっています。昨年も三千人削減、この数年間で従業員を四万八千人から二万七千人へと半減させています。退職強要が一人に十回以上も行われたと、人権無視のやり方も社会的に大きな批判を浴びています。今年一月には、さらに、従業員二万七千人のうち五千四百人の人員削減と六千人の異動を提案して、早期退職募集と広域配転、進めております。
今日お配りした資料の一枚目に、広域配転の計画、これは労働組合の電機・情報ユニオンが作成したものです。兵庫県伊丹や川崎などの事業所から、茨城県あるいは群馬県などに大量の異動が提案されています。ルネサス玉川事業所、相模原事業所では、事業所の廃止を理由にして全員が異動対象となって、川崎市の玉川事業所からは高崎に五百人、茨城那珂事業所に二百人、東京武蔵事業所に千六百人の広域配転。会社側は、行けなければ退職しかないという態度です。
育児・介護休業法二十六条では、事業主は、その就業の場所の変更により子の養育又は介護を行うことが困難となることとなる労働者がいるときは、当該労働者の子の養育又は家族の介護の状況に配慮しなければならないとなっております。しかし、ルネサスは、労働者の意向は聞かずに突然配置転換の内々示をして、事業所廃止は来年度末なのに、この三月末までにという期限を付けて早期退職募集を掛け、単身赴任を含む配置転換に応じるか退職かという決断を迫っているんですね。
早期退職に応じないと、割増しのない自己都合退職となって条件が不利になるという恫喝までしています。
資料の二は、労働者の訴えです。これは直接実名も出して、今日は配付資料なので黒塗りにしましたけれども、実名を明らかにしてこの配転に対する訴えを並べております。
上から見ますと、小二、年長の子供がおります。
那珂工場、この方は相模原なんですが、那珂工場への通勤は不可であり、通勤可能な職場の確保を希望します。次の方。小六、小二の子供がいます。
主人は日ビル勤務のため、私一人が那珂に異動することは不可能です。三人目ですが、中三、小五の子供がいます。母子家庭です。子供二人と母を扶養しているので働かなくてはなりませんが、那珂にはどう考えても行くことは不可能です。
労働組合には三十名近い女性労働者から訴えが寄せられて、そのほとんどが育児や介護で異動できないと。辞めたくないけれども、このままでは辞めるしかないという切実な声であります。
厚労省に聞きますけれども、これは会社に対して育児・介護責任を負う労働者が配慮を求めても、会社側が応じないで、労働者が均等室に来た場合には、これは育介法に基づいてどういう対応をするんでしょうか。
○政府参考人(石井淳子君) 雇用均等室では、労働者から具体的な相談、御相談があった場合には、まず相談内容を丁寧に聞き、また会社からも事情聴取を行うなど、双方から事実確認を行うところでございます。その上で、法に定める事項に照らして適切な対応がなされているかを判断をいたしまして、法違反を把握した場合には迅速かつ厳正な是正指導を行うということでございます。
○小池晃君 二〇一〇年には、NTTが行った介護義務のある労働者への広域配転指示は育介法二十六条違反だと、これは最高裁で確定しています。
事業所閉鎖など大規模なリストラの場合は、広域配置転換が多いんですね。遠隔地への配置転換を命じて事実上の退職強要ということが行われています。有能な労働者が離職を余儀なくされれば、これは結局会社にとっても損失になると思います。
私、これルネサスのやり方は極めて問題ではないかと。
先日、電機・情報ユニオンが労働者の訴えを厚労省にも届けまして、私も同席しました。対応を求めましたが、現状、取組、対応の状況はどうなっているでしょうか。
○政府参考人(石井淳子君) 一般論で申し上げたいと思います。
雇用均等室が労働者からの相談等によって法違反に関する情報を得た場合には、必要に応じて会社から事情聴取をして、法違反が把握された場合には迅速かつ厳正な是正指導を行うことでございます。個別の企業に関する事案については、誠に恐縮でございますが、お答えは差し控えさせていただきたいと思います。
○小池晃君 もうちゃんと具体例示して言っているんだから、こういったことにちゃんと個別名で答えないと、私は労働行政、役割果たせないと思いますよ。きちんと企業の責任をやっぱり追及するのが労働行政の役割なんだから。
大臣、ルネサスというのは、これは政府の全面的な支援を受けている企業なんですね。政府がつくった初の官民ファンドである産業革新機構からは総額千五百億円のうち千三百八十三億円の出資を受けて、取締役、監査役四名中三名が送り込まれて、リストラと広域配転が実行されているわけです。
経産省も国会では、リストラの方針決定の際は雇用対策に万全を期すように大臣名で意見も述べているというふうに答弁しています。しかも、厳しい経営環境とも言うんですが、ルネサスは、今期、三月期の予想では営業利益は五百四十七億円、利益率六・七%と大幅に改善をしています。今回のリストラ、広域配転には何の道理もない。法令にも私は違反するものだと思います。
大臣にも改めて調査と厳正な対応を求めたいと思います。いかがですか。
○国務大臣(田村憲久君) 局長と同じような言いぶりで申し訳ありませんが、個別事案でございますので、具体的にはお答えはしません。
ただ、一般論として申し上げれば、法律違反の疑いがあれば当然調査に入って、その上で、問題があれば是正指導等々を行うわけでございます。
○小池晃君 厳正な対応をしっかりやっていただきたいというふうに思います。
来年度予算では、この雇用調整助成金、これを千百七十五億円から五百四十五億円に半減させる一方で、労働移動支援助成金を前年度の一億九千万円から三百一億円へと、実に百五十八倍になる。
資料の三枚目に出ております。先ほども若干議論ありましたが、雇用調整助成金は先ほどの答弁でも重要な施策だというふうに言われました。しかし、要件が非常に厳しくなって、売上げ減少五%というのがリーマン・ショック前の一〇%以上に戻って、受給期間も半分に短縮。これは結局、ほとんど利用されていなかったときの要件に戻すということで、かなり限定的になってしまうと思います。
今後も急激な経済変動あるいは大災害などでこれは活用される可能性はあるわけで、やはり今後も、大臣、臨機応変に要件変更できるようにと、先ほどもはっきりおっしゃっていただいたので、もう一回そこのところを確認をしたいと思います。
○国務大臣(田村憲久君) 来年度、二十六年度予算の中において、今年度と比べて約半減したではないかという話でありますが、これは先ほど申し上げましたとおり、十二月現在の数字を見て、来年度に向かって大体これぐらいのような状況であろうという中で予算立てをさせていただいたわけであります。一方で、労働移動支援助成金に関しましては、労働移動というようなもの、本来、自分の意思ではなく会社都合等々で離職を余儀なくされる方々に対しての支援というような形で予算を積み増ししていただいておるわけでありますが、しかし、これはトレードオフではございませんでして、要は両方とも伸びる場合もあるわけであります。
そういう意味からいたしますと、当然のごとく、非常に経済が激変して厳しい状況、それも継続してというよりかは、もうそのとき厳しくて、将来はまた経済戻る、企業も戻るであろうというふうな形の中において雇用を維持していただくという意味からすれば、それは雇用調整助成金というものは大変意味のある、そういう制度でございますので、そのときには我々も適切に迅速に対応させていただきたい、このように考えております。
○小池晃君 一方の労働移動支援助成金ですが、これは中小企業が事業規模を縮小する際に限られていたものを今回大企業にも広げると。しかも、これまでの要件は再就職が実現した場合だったんですけれども、今度はその再就職支援の委託をしたときから一人上限十万円で、額もこれだけどんと増えているわけです。
そもそも雇用保険財政というのは雇用の安定に資するための施策に使われてきたはずで、しかし、今回はこれは労働移動支援ですから大企業のリストラ支援にも使えるわけですね。大企業に拡大するわけですね。
厚労省に聞きますが、これまでの労働移動支援助成金も含めて、雇用保険財政から大企業に対して委託時から離職者全員対象に助成するような制度はありましたか。
○政府参考人(岡崎淳一君) 労働移動助成金につきましては、何回か改正はしております。大企業を対象としていた時期はございますが、委託時からということであれば、それはなかったというふうに考えております。
○小池晃君 こんな制度、今までなかったわけですよ。これはやっぱり現実には大企業のリストラに活用されるのは、私、目に見えていると。これ、拡充した内容を見ると、さっきも言ったように、委託しただけで一人上限十万円、言わばつかみ金のようなものが一事業所で最大五百人分出るわけですね。
例えば、今五千四百人のリストラを進めているルネサスは、玉川、相模原、北伊丹の各事業所ごとにリストラをやるわけですが、これ一般論として聞きますが、それぞれの事業所が申請すれば、これは例えば五百人分の申請をすれば、委託しただけで一事業所に五百人分の五千万円の支援金が出るということですね。
○政府参考人(岡崎淳一君) 委託しただけというか、要するに、労働者の再就職をどうやって支援していただくか、それをしっかりやっていただくところにつきまして委託時に一人当たり十万円ということ。当然、その分につきましては、再就職支援会社にそれ以上のものを払っているということが前提になっております。
○小池晃君 こういった形でお金が出ていく仕組みなわけですよ。
先ほどのルネサスは、神奈川県の玉川事業所では三十人近い育児、子育て中の女性たちが組合を通じて会社に通勤可能な配転を求める訴えをしていますが、このままでは失業せざるを得なくなるわけです。一方では、会社は五百億円を超える利益を上げているわけですね。そういう会社にお金が出る。
これ、確認しますが、労働移動支援助成金の要件というのは、事業規模縮小に伴い離職を余儀なくされる労働者の再就職支援ということであれば、十分な利益を上げている企業が事業所の再編で特定の工場を縮小する、そういう場合も労働移動支援助成金の対象になるんですね。
○政府参考人(岡崎淳一君) 会社の利益については要件に入っておりません。事業規模の縮小があるかどうかということで見るということにしております。
○小池晃君 ですから、要するに、十分に利益を上げて黒字で、そういう場合でも対象になるということですね。はっきり答えてください。
○政府参考人(岡崎淳一君) 会社の利益については要件にしておりません。
○小池晃君 利益を上げながらリストラを進める企業に助成金を支払うというのは、もう盗人に追い銭という感じがしますよ、これ、はっきり言って。
これ、長野にあるソニーの安曇野の事業所でも大規模なリストラやられています。ここは実は数年前にソニー東京事業所から長野県の安曇野事業所への広域配転に応じて来た人たちです。今度は安曇野の事業所が譲渡されて、千百人のうち二百人から三百人残して、残りは早期退職か広域配転だというリストラが進んでいるんですね。ここでもリストラ支援の労働移動支援助成金が使われるんではないかという話が言われています。
ソニーはこのリストラをやる一方で、山形県鶴岡のルネサスの工場を買収しているんですね。それだけの資金力があるんであれば、私は雇用責任を果たすのが筋だと思う。結局、このソニーもルネサスも互いに利益を上げるために事業所のスクラップ・アンド・ビルドで離職者を出して、そしてその再就職支援に雇用保険財政からお金が出てくるという仕組みなわけですよ。私、こういうことをやっていて日本の産業ってどうなっていくんだろうかと。
例えば、ルネサスの労働者が何でこのルネサスが衰退しているのかということについてアンケートをやっているんだけれども、一番多い答えは社員のモチベーションの失墜、二番目は経営者のビジョンのなさ。やっぱりこれ、リストラ、リストラ、リストラやっている、利益を上げながらこんなことをやっている企業に、私は、社員は本当に展望持てなくなる。そのことがやっぱり、結局、日本の半導体産業の競争力だって奪っているんじゃないかというふうに思いますよ。そこに助成金という形でお金が出ていく仕組みというのは果たしていいんだろうかと。
大臣、聞きますけど、こういう仕組み、特に雇用保険財政からこれが出ていく、これだけ大逆転の財政支出になっている、これでいいんでしょうか。これ見直す必要あるんじゃないですか。
○国務大臣(田村憲久君) ルネサスの話は委員の例でございますので、ルネサスが厳しい経営状況にあったのはいろんな理由があるんだと思いますけれども。
今般の制度は、基本的には、先ほど来言っておりますとおり、御本人の自己都合というのではなくて、基本的には御本人の意思とは、基本的にはですよ、意思とは別で、企業がそれぞれ離職を余儀なくする場合であるわけであります。そういう意味では、そういう環境というのは、状況というのはいろいろあるんだと思います。ただ、この中において、まずは就職をするための再就職援助計画というものをしっかり作らなきゃいけないということでございまして、それを事業主が作って、労働組合等にこれを示して一応理解が得られるということが前提であります。
お金は、基本的には企業に確かに払われますけれども、企業がそのまま懐に入れるわけではなくて、離職を余儀なくされる方の再就職に向かってのお金として使われるわけでありまして、あくまでも離職を余儀なくされる方々の再就職の支援という形で使われるわけでございますので、何か今のお話聞いていますと企業に入るような、そんな話でありますが、企業に入る、一旦は入りますけれども、またそこから再就職に向かって民間企業の方に出ていくわけでありまして、そのような意味からいたしますと、労働移動を支援するため、つまり離職を余儀なくされた方々に対して再就職を支援するためのこれはお金でございますから、これは我々としては必要なものであろうというふうに考えております。
○小池晃君 それが大問題なんですよ。ルネサスがこれまで退職強要の面談をした際に求めたのは、再就職支援会社が行うキャリアセミナーとキャリア相談を受けることなわけです。ルネサスが契約している再就職支援会社というのはどこか。パソナ、ランスタッド、マンパワーなど五社ですよ。
今回、ルネサスなどの大企業リストラの委託費用を国が半分以上支援する。しかも、仮に再就職に結び付かなくても、委託しただけで最高五千万円出る、一事業者当たり。そして、その金はパソナとかランスタッドに流れていくわけですよ。パソナの会長誰ですか。産業競争力会議のメンバーの竹中平蔵さんですよ。ランスタッドというのは、先日、私これ取り上げた、製造派遣・請負事業の日本生産技能労務協会の副理事長を務める企業です。労政審の部会にオブザーバー参加してあの労働者派遣法の土台つくった、そういう人物ですよ。結局、どちらも大企業のリストラとその後の製造業派遣に置き換えられることで大もうけするような企業ですよ。しかも、パソナの竹中さんというのは文字どおり政府の規制改革会議などで策決定に関与して、今回の失業なき労働移動という大路線引いたその張本人じゃないですか。こういうことが許されるのかと。
政策決定過程に深く関与して、リストラを推進して、その結果が自分たちの企業の利益拡大につながるだけじゃなくて、事業に対しては支援金が雇用保険財政から入ってくると。そういう構図ですよ、これ。一方で、労働者はリストラ、広域配で苦しんでいるわけですよ。こんなことでいいんですか。私はこういう仕組みは根本的に見直す必要があると思いますが、大臣、いかがですか。
○国務大臣(田村憲久君) 特定の企業名出ましたけれども、特定の企業を利するための制度ではないわけですね、これは。つまり、余儀なく離職をされる、そういう方々が円滑に、失業期間を短くして、次に就職をいただくための支援金であります。もちろんその中においてはいろんな企業がそれを受けるところがあると思います。着手金のような形で入るというのは問題ではないかという話でありますが、それは一定の経費は掛かるわけでありまして、そういう意味での着手金であるわけでありますが、実態何もしないで、その十万円を全く経費使わずに利益上げるようなことをすれば、それは当然企業側もそんなところには委託しないわけでありますから、それはちょっとどうなのかなというふうに思うわけでありまして、そこもちゃんと再就職をさせないことには残りの部分入ってこないわけでありますから、そういう意味で私は、その着手金だけもらってあとは知らないなんていうようなことは、それはないであろうと。
それよりかは、ちゃんとその離職を余儀なくされた方々が再就職をして、次の人生設計をちゃんと立てていただくということが重要であろうという中においての今回の制度だということを御理解をいただきたいというふうに思います。
○小池晃君 何にもしないで受け取ったら、それは犯罪ですよ。そんなことを言っているんじゃないんです。こういう仕組みを、特定の企業とかと言うけど、これ竹中平蔵さんのやっている会社ですよ。もう実際に政策決定過程にどおんと座ってやっている人たちじゃないですか。そういう人たちが労働行政をゆがめていくということが、雇用調整助成金からこの労働移動支援金に大胆にシフトすると、こういう路線引いて、それで大もうけすると。大企業は、不採算部門だといって労働者どんどん切り捨てている。これ、本来やっぱり経営者が責任問われなきゃいけないんですよ。それをやらずに全て労働者にこの犠牲を押し付けて、そしてそれを後押しするようなことを厚生労働省がやっちゃっていいんですかと。
私は、こういう仕組みは本当に根本的に問題があるというふうに思っていますし、このルネサスあるいはソニーなどにこの助成金が出ないようにしていただきたい。こんなことはやっぱり認められないと。やっぱりこういうやり方というのは労働者を二重三重に苦しめるものですから、直ちにやめるべきだということを申し上げて、質問を終わります。