日本共産党 書記局長参議院議員
小池 晃

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2014年5月20日 参院厚生労働委員会 速記録

2014年05月20日

参院厚生労働委員会
2014年5月20日

○小池晃君 日本共産党の小池晃です。
今日は難病患者の自己負担の問題について質問します。
昨年発表された当初案というのは、これは高齢者医療の限度額を参考にしたということで、本当に大幅な負担増が出されてびっくりいたしまして、患者さんの中にも怒りの声が大きく広がったわけです。私もこの委員会で質問して、大幅な引下げ求めまして、その結果、障害者の自立支援医療などを参考にしたものに今回提案をされているわけであります。それによって患者負担、実際にはどうなっているか。
今日お配りしている資料の一枚目、二枚目に、作家の大野更紗さんたちが主宰する、タニマーによる制度の谷間をなくす会という団体が新制度案と現行制度の比較を試算したグラフを作っておられます。細かいところは別にして、この結果見ますと、既認定者について言うと、新制度への移行によって大半が負担増になっておりますし、いずれの場合もやっぱり低所得世帯に負担増が集中している。高額かつ長期の場合も一般の場合もそういう傾向があるのではないかというふうに思います。制度の谷間をなくす会は、非課税世帯や低所得者への更なる配慮が必要だと提言しておりますが、私も本当にそのとおりだというふうに思うんです。
具体例でいろいろ寄せられている声を聞いても、例えば兵庫県但馬地域在住のパーキンソン病の患者、収入は月四万円の国民年金のみで今回二千五百円の自己負担が発生する。これでは受診できなくなると訴えておられます。兵庫県難病団体連絡協議会は、生活保護基準以下の収入しかない場合は、自己負担はやっぱりゼロにすべきではないかというふうに主張しています。
それから、佐賀県在住の三十代の全身性エリテマトーデス、SLEの患者さんですが、入退院を繰り返していて働けません。現在の収入は障害年金二級の六万六千円のみで、家賃が二万円、食費が二万円、かなり切り詰めた生活だと思いますが、光熱費や電話代で二万円、趣味に掛けるお金はほとんどない。こういう中で医療費の自己負担として月二千五百円が掛かり、しかも入院したら別に食費が掛かるようになると。この方も、住民税課税できないほどの低所得なのに何で負担を今回取るようにするのかという声を寄せておられます。
厚労省に確認しますが、難病の既認定者で低所得一、二のいわゆる住民税非課税の方の階層区分の方について、医療費自己負担を全額公費負担にした場合、所要額幾らになるでしょう。

○政府参考人(佐藤敏信君) 今の御質問でございますけれども、低所得の一と二の既認定者ということでございまして、現在の自己負担額がゼロ円から千五百円、それぞれ低所得者の一が千五百円、それから低所得者の二が二千五百円ということでございまして、それぞれに人数を掛け合わせますと、十八億円と四十五億円、合計で六十三億円ということになります。

○小池晃君 六十三億円でできるということであります。少なくともやっぱり低所得、非課税世帯については無料を継続すべきだと私は思います。
佐賀のSLEの患者さんが特に心配していたのが入院時の食費でありまして、従来は入院した場合の食費は自己負担限度額の算定に含まれていましたから、ほとんどの所得層で実質負担ゼロでした。新制度案では通常の入院の場合と同じように別枠になりますから、一般世帯で一食二百六十円、住民税非課税世帯で一食二百十円ということになります。
例えば、今紹介したSLEの患者さんが新制度施行後に二週間入院したとすると、治療費は二千五百円で上限になるんですけれども、食費は四千四百十円が請求されます。経過措置が切れた後は八千八百二十円になります。病気で働けずに六万円の障害年金しか収入がない人にとって極めて過酷なことになると思うんですね。
それから、子供の場合、新制度案では、小児慢性特定疾患の患児も一食百三十円求められます。
しかし、今日、資料の三枚目、四枚目に全国心臓病の子どもを守る会が作られた資料を入れておりますが、これ非常にリアルに心臓病の特に手術を受けたような子供さんの負担が出ておりまして、これ見ますと、やっぱり公的助成を受けた後の患者負担だけじゃないわけですよ。保険外負担、差額ベッド、それから医療機関までの交通費、付添いのための費用、もう本当に多額の負担が掛かっているわけですね。
こうした中で、せめて入院中の食事代は今までどおり無料にしてほしいという、私はこれ本当に切実な願いではないかというふうに思うんです。
厚労省にもう一回確認しますが、小児慢性特定疾患児の既認定者で低所得Ⅰ、Ⅱの階層区分の方、これお子さんの方ですね、医療費自己負担を全額公費負担にする場合の所要額と食事療養費を全額公費負担にするための所要額をそれぞれ示してください。

○政府参考人(石井淳子君) 小児慢性特定疾病児童の低所得Ⅰ、Ⅱの世帯については、平成二十三年十月から二十四年九月の診療分のレセプト情報等を用いて自己負担額を推計したところ、まずその低所得Ⅰの世帯は一月当たり平均六百円、低所得Ⅱの世帯は一月当たり平均千百円の負担となると推計をされます。これらの世帯を平成二十七年度一年間無料とした場合の公費負担額は約一億六千万となると推計されます。
また、食事療養費でございますが、平成二十四年度の実績で、助成対象者数が約十一万人で、約七・一億円となっているところでございます。これも、その二十七年度におきまして二分の一が自己負担となる新規助成対象者、これは約五万人と推計しているところでございますが、二十四年度の実績を基に推計をいたしますと、平成二十七年度において食事療養費を全額公費負担とした場合の財政影響は約二億円と試算をされるところでございます。

○小池晃君 消費税の増収が五兆円になるということであります。だとすると、今の例えば食事療養費を無料継続二億円というのは、二万五千分の一なわけですね。
私は、やっぱりこのくらいのことはすべきなんではないかと。難病患者の多くは重篤な疾患で働けず入院も長期にわたる。特にお子さんの場合は本当にもう様々な負担が、特に若い御夫婦ですからまあ収入もそれほど多くない、お子さんの病気によって仕事を辞めなければいけないというような事情も出てくる、そしていろんな様々な負担が医療費の公的な部分以外にも掛かってくるという中で、やはり私は、公平のためって多分そういう理屈を出すんだと思うんですが、私はそういう理屈でこういう人たちにまで負担を次々同じように強いていくというやり方でいいんだろうかと。
せめて、大臣、このお子さんの食事の、入院食費を負担限度内の枠内にとどめてほしいと。こういう願いにやっぱり応えるような検討を、今回はこれでスタートするとしても、直ちにやっぱりそういう検討に入るべきではありませんか。いかがですか。

○国務大臣(田村憲久君) 公費負担医療、法的給付化する中において他の公費負担医療とのバランスということを考えますと、これは医療費の方もそうでありますが、無料というのはないわけでありますし、食費もやはり一定程度いただいておるということであります。
激変緩和の三年間というのは、例えば難病の方では半額にする等々やっておるわけでありますが、今言われたのは、多分小児慢性特定疾病の方々に関してはというお話であろうと思いますが、これに関しては、二分の一というような形の中で対応させていただきたいということでございまして、食費に関しても一定のこれは考えの下に軽減をしておるわけであります。それは、健全な育成という意味と、それから御家族等々のやはり御負担ということを考える中において、そのような軽減を掛けさせていただいておるということで御理解をいただければ有り難いというふうに思います。

○小池晃君 公平の名の下に、本当にこういったところまで同じ仕組みにしていく。私は、一般の国民から、難病のお子さんの食事代が無料になったからそれは不公平だという声は起こらないと思いますよ。やっぱりそれだけ大変な状況にある以上、しかも社会保障の議論というのは、この場でいつもやるのは兆単位あるいは何千億円単位のものが大半ですが、今日の議論で出てくる数字は何億、何十億という単位なわけですね。やはり、こういうことすらできないような国なんだろうかと。
私は、そういったところに手だてをするということは決して不公平ではない、むしろ、そういった本当に大変な病気抱えている人たちに公平の名の下に負担を強いる方がよっぽど不公平だというふうに思うんですよ。
続けて、ちょっと呼吸の問題について今日は議論をしたいと思うんですが、先ほども質問がありましたが、今度の案はALSや筋ジストロフィーなどの難病で人工呼吸器装着する人について、気管切開なら月千円、鼻マスクの場合は月二千五百円から五千円ということになっている。関係者からは、気管切開と鼻マスクでなぜ区別するのか、そもそも息するだけで何で金を取るのかという声が上がっています。これは、先ほどの質問でも、これについては検討するんだと、専門家の意見を聞いた上でというお話もありました。
今日は、皆さんの元に小冊子、パンフレット配らせていただきました。これはNPPVネットワーク支援機構という、鼻マスクで人工呼吸器つないでいる皆さんが作られたものを厚意でいただきました。これ開いていただきますと、鼻マスクというのは非常にやっぱりクオリティー・オブ・ライフを保つ上で大きな役割を果たしているということがよく分かるんですね。先ほど大臣、議論の中で、鼻は取り外しだけれども気切はもう付けっ放しだから違うんだみたいなそういう議論ありましたけど、それは違うと思うんです。気管切開していても、二十四時間レスピレーターにつなぐわけじゃない人だっています。同時に、鼻マスクでも二十四時間つないでいる方もいるわけです。鼻マスクか気管切開かということが決定的な違いになるわけではないわけですよ。しかも、私は重視したいのは、やっぱりこの鼻マスクというのは非常に大きな役割がある。
今日は、実際に鼻マスク付けておられる、このパンフレットを提供していただいた、福島から来ていただいています、このNPPV支援機構の八代弘さんにも傍聴に来ていただいておりますが、要するに、気管切開するということは気道が直接外界にさらされるわけですから。人間の鼻というのはフィルターとしても非常に優秀なわけですよ、加湿機能を持っているわけです。そこを通さずに気管切開するということは、これは非常に侵襲度が高いし、いろんな疾患も起こりやすいし、あるいはしゃべるという点でも、御飯を食べるという点でも、やっぱり気管切開よりも鼻マスクの方が非常に進んだ私は治療法だと思うし、これもっと進めていくべきだと思うんです。それを進めるという立場から見ても、こっちは二千五百円、五千円で、気切は千円というのをそのままにしておいていいんだろうかというふうに思うんです。
今日は、八代さんが国会議員の皆さんにということで手紙も書いていただいて、それも資料に配らせていただきまして、実は、私は土曜日の日本筋ジストロフィー協会の総会で初めて八代さんにお会いして、本当だったら参考人で来ていただくとかあったと思うんですが、もう終わった後でしたので、是非、今日は御紹介したいと思っているんですが、八代さんは、呼吸は命の基本です、気管切開と鼻マスクで区別せずに、誰もが安心して息をできる日本にしてくださいと、こういうふうにおっしゃっているんですね。
大臣、気管切開と鼻マスクで区別するというのはそういう問題もあるわけですよ。ただ単に気管切開の方が拘束度が高いからという、そういう問題ではなくて、やっぱりむしろ積極的にこういう本当にクオリティー・オブ・ライフを支援するような治療法を普及するというのは、私は厚生労働省の一つの役割でもあると思うんですね。是非、そういう見地でこの問題の検討に当たっていただきたいと思うんですが、大臣、いかがですか。

○国務大臣(田村憲久君) この要するに医療費の助成制度の特例ということで千円という上限でありますが、これは人工呼吸器を付けておられる方々を想定をしておるわけでありまして、その基本的な考え方は先ほども長沢委員の御質問にお答えをいたしましたけれども、常時持続的に人工呼吸器を付けておられると、そしてまた一方で、日常生活動作等々に著しい制限を受けるという方々が言うなれば対象、まあこれ、人工呼吸器と言うよりかは生命維持装置と言った方がいいのかも分かりません、そういう方々が対象でございます。
そういう意味からいたしますと、先ほど来委員がおっしゃられた気管切開して人工呼吸器を付けた方々が具体的な例になるわけでありますけれども、ただ、先ほども長沢委員にお答えいたしましたとおり、これは専門家の方々にこれからちょっといろいろと御意見をいただきながら、要は、今私が申し上げた、持続的に常時生命維持装置を付ける、そして日常生活動作が著しく制限を受けると、この基準に値をされる状態の方、そして、それを客観的に今度はそういう方々に対応するという形の診断の基準といいますか、要は基準ですね、実務的な判断の基準といいますか、そういうものをしっかりと確立することが重要でございまして、いずれにいたしましても、先ほど来いろいろと御意見いただいておりますとおり、鼻マスク、顔マスクの方々がおられると、その方々が非常に御不便な中で日常生活を送っておられる、しかも、それを外せばこれは命を失われるというようなことであるならば、それは今言ったような基準に対応するという可能性があるわけでございますので、しっかりと検討をさせていただきたいというふうに考えております。

○小池晃君 そのいっときでもというのは、例えば一分なのかとか一時間なのかとかいろんな問題が逆に出てきますよ、そういうことを言い出したら。だから、やっぱり二十四時間、じゃ二十四時間もういっときも外さないということだけにするのかとかそういう議論になってくると、ますます混乱すると私は思うんですね。
むしろ、やっぱり呼吸補助装置という点では、これは既設でも鼻マスクでも、やはりそこは、例えばこれを取り組んでいるお医者さんは、コンタクトレンズと眼鏡の違いというふうに表現している方もいます。やっぱりそういう観点で、むしろそして逆に、鼻マスクという治療手段を普及するという立場で私は政策を作っていくということだってあり得ると思うんですよ。そこでやっぱり差を付けるんじゃなくて、むしろ鼻マスクをもっと広げていくために千円ということで同じにするという選択だってあるじゃないですか。
そういったことも含めて私はこの問題は検討していただきたいというふうに思うのと、改めてやっぱり問いたいのが、呼吸を有料化するということなんですね。障害のない我々は、呼吸するのにお金は掛からないわけです。でも、障害がある人が呼吸するということだけのために負担が掛かってくるということが、果たしてこれが公平、不公平とはならないと私は思うんですね。そういう観点でこの問題を見ていく必要あるんじゃないだろうかと。
新制度案でいう人工呼吸器等装着者の対象というのは、今の時点ではどんな人たちで、数は何人いらっしゃるんですか。

○政府参考人(佐藤敏信君) 先ほど大臣からお答えしたことと一部重複しますが、人工呼吸器等装着者については、患者さんが、まず一つ目は、持続的に常時生命維持装置を装着していること、二つ目は、日常生活動作が著しく制限されているという、この二つを基本的な考えとしております。
具体的には、ALSに代表されるような神経難病で気管切開を行って恒久的に人工呼吸器を装着している患者さんとか、あるいは心筋症など末期心不全の状態にあって体外式の補助人工心臓を装着している患者さんが該当すると考えております。
正確な把握はなかなか患者数として難しいところもありますけれども、約一万人程度ということで見込んでおります。

○小池晃君 まさにその装置を使わなければ生命維持できない人たちで、この人たちの無料措置を継続するのに掛かる公費は幾らですか。

○政府参考人(佐藤敏信君) 今申し上げましたとおり一万人おられまして、自己負担が千円です。
これに十二か月を掛けますから、一億二千万円というふうに推計できます。

○小池晃君 日本筋ジストロフィー協会の理事長は、憲法二十五条は生存権を保障している、生きるということは息をするということだ、誰もが平等に保障されるべきだというふうにおっしゃっておられます。
大臣、人工呼吸器、体外循環、生命を維持するために必要な治療ですよ。これはやっぱり鼻マスクも含めてこれは無料にしていくと、これぐらいの決断すべきではないですか、いかがですか。

○国務大臣(田村憲久君) 今般の医療費の助成制度でありますけれども、重度で継続される方々、二千五百円から二万円というような範囲の中でこの医療費の助成制度を行っておるわけであります。
その中において、今、ALSの方々、人工呼吸器を付けておられる方々という今考え方の下でお話をしておったわけでありますけれども、こういう方々は、やはり先ほど来言っておりますとおり、日常生活行動やまた意思の疎通等々も著しく制限されるわけであります。あわせて、御家族の方々の御負担というのも非常に重いということに鑑みて、これは特例で千円、月というような形でこれは助成をするという形になっておるわけでございまして、そのような観点から考えると、先ほど来、じゃ、鼻マスク、顔マスクどうなんだということを言われました。
ですから、それが同じような基準に照らし合わせる方ならばそれは検討させていただかなければならぬというふうに思いますけれども、全ての鼻マスクの方に対応できるかといいますと、先ほど言ったような部分があるわけでございまして、なかなかこの制度全般運営していく中において、全ての方々を千円ということになれば、他の方々の中においても、いろんな症状の方々、いろんな生活等々において制限をされる方々はおられるわけでありまして、じゃ、その方々に対してはどうなんだというようなことも出てくるわけでございますので、ですから、今般のこの出しております基準、これに当たるような方々であれば、それは検討をしっかりさせていただきたいということであります。

○小池晃君 先ほどからずっと議論をしてきて、自己負担そのものの問題も食費の問題も、無料ということについては、ほかの制度との公平を認めないということで、ほかの制度との公平を担保するということで無料というのは駄目なんだというようにずっと衆議院でもおっしゃってきています。
しかし、新制度案の負担設定の基になっている障害者の自立支援医療どうかというと、二〇〇九年に政府は、自立支援法違憲訴訟団との和解文書で、自立支援医療については無料化を目指すという合意をしているはずですが、間違いありませんね。

○国務大臣(田村憲久君) これは二〇一〇年、平成二十二年一月でありますけれども、障害者自立支援法違憲訴訟原告団・弁護団と国が、厚生労働省でありますけれども、基本合意文書で当面の重要な課題という形にされております。

○小池晃君 いや、だから、無料を目指すということを確認しているわけですよね、この問題については、医療については。自立支援医療については、障害者の人権保障という立場から、財源を確保して無料化を目指すということを約束している。
この自立支援違憲訴訟団との和解文書を受けて、政府は総合支援法で難病患者等を障害者と位置付けたと思うんです。障害者福祉も低所得者は無料なんですね。その点でいえば、私は、難病患者の生命と人権を守るために、自己負担無料の分野があったとしても、これまでの政府の合意から見ても、あるいは制度の公平性という点から見ても、それはそれを失することにはならないのではないかと考えますが、いかがですか。

○国務大臣(田村憲久君) ですから、二〇一〇年に基本合意文書を結んだわけでありますが、このときの無料化に関しては当面の重要な課題ということになっておりまして、それは、毎年度予算編成過程において、なかなか難しい、厳しい財政状況の中で実現ができないということが続いておるわけであります。

○小池晃君 だから、重要課題というふうに確認をしているわけですよ。だから、そもそもやらないという話じゃないはずなんです、これは、無料化というのは。目指すべき課題なんですよ。
私は、今まで議論させていただいて、何というか、公平という名の下に何でも負担を求めていくという、こういう社会でいいんだろうかと。国民から見て、難病を持っている、抱えている方がいろんな形で負担軽減されたからといって、自分たちの制度と違うから不公平だって私は思わないと思うんです。むしろ、逆に、本当に病気を抱えている子供たち、患者さんにもう本当に僅かな、例えば一食百三十円の食費を求める、人工呼吸器で千円求める、こういう言ってみればみみっちいというか、そういうようなことをやっていく、そういう国でいいんだろうかと。むしろ、やっぱりそこは本当に、社会保障というのはやっぱりそういった人たちを支えるためにあるわけじゃないですか。
冒頭紹介した作家の大野更紗さん、今日も傍聴来られていますけれども、文芸春秋でこう言っていて、私、本当に共感したんですが、保守というのは、最も弱い者や子供をターゲットにして、そこから搾り取ろうというみみっちい思想なんだろうかと、かつての保守政権の屋台骨を支えた厚労族議員や制度派官僚は、何だかんだ言いながらも、長期的な社会のデザインを描いて、度量は大きかったと、こう言っています。量的にも質的にもかつてないような未曽有の抑制が社会保障の現場を脅かしているのではないかと。
保守政治って、私、そういうものなんじゃないか、そう思いませんか、西田さんだって。本当の保守というのはやっぱり弱い者を守るんですよ。
そのためにしっかりやるべきことをやるというのが本当の、私、保守政治だと思う。
何か効率性とか採算性とか、そういったことばかり追求して、公平だ、公平だという名の下に弱い者のところにしわ寄せするような、そんな政治でいいんだろうかと、私、根本問題としてそういう疑問を持つんですけれども、大臣、いかがですか。

○国務大臣(田村憲久君) 私も、常にそこは悩み、いろいろと自分自身の力のなさも感じる部分もあります。もちろん、難病の皆様方も大変おつらいわけでありますが、他にもおつらい状況の方々もたくさんおられます。そういう方々とのいろんな公平性というものを見なければならない。
全ての困った方々を全てお助けしたいという思いは、それは厚生労働省という役所はあります。
ありますけれども、それが財政的にもできない事実があり、そして、そこには公平性というものもやはり一定程度担保しなければ制度というものが成り立っていかないというつらさもあります。そういうつらさの中で、常日頃、厚生労働行政というものは動いておるわけでありますが、しかし、なるべくそのような矛盾の中において、少しでも困っておられる方々に力になっていきたいという思いの中で私も厚生労働行政をやっておりますし、多分ここにおります厚生労働省の人間もそんな思いを持っておると思います。
力のない部分に関しては大変申し訳ないと思いますけれども、現状はこのような状況であるということは御理解いただきたいというふうに思います。

○小池晃君 今回、法制化される、対象疾患も広がるということで、私どもも賛成するわけです。
でも、やっぱり本当にきめの細かい対策、もう本当に困っている人たちに対して、やっぱりしっかり目が届く行政ということをやっていく必要があるということは、重ねて私は申し上げたいというふうに思います。それこそがやっぱり国民が求めている政治ではないかというふうに思うんです。
それから最後に、いわゆるトランジションの問題ですが、結局、今回先送りになってしまったわけです。私、十年前にこの委員会で尾厚生労働大臣に、1型糖尿病の問題を取り上げて、これを何とかしようじゃないかということで、尾大臣も、よく整理をして検討をしたい、いろんな制度をこの際整理してみたいというふうに言われて十年。結局、これはいろいろ聞いても多分、自立支援事業をやりますとか、いろんな話があるんだと思うんですが、結局やっぱり見送ったことは間違いないと思うんですね。
私、考え方として、やっぱりこれ変える必要があると思っているのは、やっぱり小児難病というのは、例えば糖尿病、これ、1型糖尿病というのは、大人になるとほかの大人の糖尿病もあるからということで対象から外れてしまうわけですよ。
小児がんもそういう傾向があります、がんだから。
先天性心疾患も、大人の心疾患があるからというふうになっちゃう。
ただ、やっぱり根本的に違う病気だというところがあって、1型糖尿病というのは、これはもうインシュリンを出すベータ細胞破壊されるという疾患で、もう全くインシュリン出ないわけですから、これは結局、一生涯頻回のインシュリン注射をやるとか、ポンプでインシュリン持続注入するとかしなければ生きていけないわけですね。
十九歳までは医療費助成対象なんです。ところが、同じ病気なのに二十歳になったら健常者扱いになるわけです、医療費三割負担になる。インシュリンポンプなどは、これは1型糖尿病への対応だけで月三万円ぐらい掛かるというふうに言われているわけです。しかも、多くの患者さんは十代で発症しますから、網膜疾患なんかが起こっていて、失明の危険も非常に高いわけですね。そうすると、さらに医療費も掛かる。それから、低血糖なんかが頻繁に起こりますから、なかなか仕事にも就けないという実態もあるわけで、多くが生活習慣病とされている2型糖尿病とは、私はこれは、糖尿病という名前は付いていますけれども、全く別の疾患だというふうに思うんですよ。ところが、糖尿病という名前が付いているがために二十歳を超えると難病と扱ってもらえないというのは、私はこれほど理不尽はないんではないかというふうに、これは十年前にもこの場で申し上げました。
これ、発想を変える必要があると。難病対策とつなげる、移行させるということじゃなくて、やっぱり二十歳過ぎても同じような形で支援を継続する、支援を後退させないという立場でこれは制度の維持、拡充を図るべきではないかと。
本当に、参考人でも私言ったんですけれども、役所の壁もあるわけですね、雇用・児童家庭局と健康局という。そういう垣根も取っ払って、やっぱりエージフリーで支援をしていくという方向に根本的に考え方を変える必要があるんじゃないか。
大臣、今回はこれで見送るということになったわけですが、しかし、こういった事態をやっぱりなくすために、当事者を参加させた検討の場をつくって、この問題について、今回はこうだけれども速やかに結論を出すと、そういう方向性を示していただけませんか、いかがですか。

○国務大臣(田村憲久君) これ、委員がおっしゃられました1型糖尿病のみならず、ほかの例えば小児がん等々も含めてこのトランジションの問題というものは、医療費助成が難病指定されていない、指定難病でないがためにそのまま医療費助成が受けられないという問題は、これは他にもあるわけであります。そこのところ、トランジションといいながら医療費助成がそのまま引き継いでいけないという中において、しかし、一方で自立支援ということで、先ほど委員がおっしゃられたとおり、そういう事業を今般は強化をさせていただきました。
どうしても、言われるとおり、成人になられて同じ病名の方との公平性という問題が、これも出てくるわけでございまして、なかなかここをどう乗り越えるかということが我々も判断ができないということでございます。問題意識はしっかり持ちながらも、今現状の中においては厳しい状況であるということしか申し上げられないということで御理解いただきたいと思います。

○小池晃君 検討すると、そのぐらい言ってくださいよ。やっぱりこの問題、十年前に検討すると言って十年やっていないんだから。やっぱり検討すると。
これは障害者認定の問題もあります。失明すれば障害者認定するとか透析になれば指定すると言っているけど、それじゃ遅いわけですよ。そうなる前の施策をきちっと、やはり年齢を超えて検討する。どうですか、大臣、検討するぐらい言ってくださいよ。

○国務大臣(田村憲久君) この小児慢性疾病のトランジションの問題は今後ともいろいろと議論をしてまいりたいというふうに思います。

○小池晃君 終わります。

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