参院厚生労働委員会
2014年4月15日
○小池晃君 日本共産党の小池晃です。
次世代育成支援法に関して、児童扶養手当と公的年金の併給制限の見直しについて聞きます。
今回の改正は、併給制限を見直して、年金額が手当を下回るときはその差額分を支給するというもので、これは我が党もかねてから改善を求めてまいりましたので一歩前進ではあると思いますが、更に検討を求めたいことをちょっと聞きたいと思います。
私どもに寄せられた相談では、五歳のお子さんを持つ六十歳のシングルファーザーの方で、定年退職後に老齢年金受給の手続をしたけれども、併給制限があるので児童扶養手当は支給停止になると言われたというんですね。父又は母に代わって祖父母が児童を養育する場合は、二〇〇二年に総務省の行政評価局からの指摘を受けて親族里親制度が創設されたわけですけれども、こういう方の場合は、実父であるために親族里親制度の対象にはなりません。
〔委員長退席、理事階恵美子君着席〕
局長にお聞きしたいんですが、実父又は実母の所得が老齢年金の場合も何らかの手だてというのがこれは必要じゃないでしょうか。
○政府参考人(石井淳子君) 併給制限の見直しを差額支給とした考え方について、やはりこの児童扶養手当と公的年金が、稼得能力の低下に対する所得保障という同一の性格を有しているということに着目したものでございます。
御指摘のような、児童扶養手当よりも高い額の老齢年金を受給しているため児童扶養手当を受給できない一人親家庭に対しても、これまでも母子自立支援に対する相談支援やヘルパー派遣などの子育て生活支援、母子寡婦福祉貸付金の貸付けによる経済的支援などの支援は行ってきたところでございますし、今の事案は父子家庭ということでございましたけれども、今回のこの改正法では、父子福祉資金を創設して、従前、母子家庭を対象としていた修学費などの貸付制度と同様に、父子家庭に対しても貸付けが受けられるようにしているところでございます。
また、二十六年度予算では、一人親家庭の様々な課題に対する相談体制の強化を図る事業を創設するとともに、子供に対するピアサポートを行う学習支援等の推進を図ることといたしているところでございます。
○小池晃君 父子家庭に様々な制度を拡大していることは承知もしているし、それは必要だと思うんですが、厚労省の立場は、児童扶養手当と老齢年金というのは所得保障という点で同一だから併給はしないというんだけれども、目的は違うわけですよね。老齢に伴う年金と、一人親ということで必要な経費の児童扶養手当って、目的違うわけだから。しかも、先ほどの総務省の行政評価でもやっぱり同じような指摘しています。児童扶養手当と老齢年金とでは、支給の趣旨、目的が異なると言っているわけですね。
大臣、やっぱりこれは手当と年金、併給を私は認めてもいいんではないかと思っております。これ、様々なケースあると思うんですね。やっぱりこの問題について更に検討を加えていく必要あるんじゃないですか。やはり今後の検討課題とするということでお願いしたいと思います。
○国務大臣(田村憲久君) 公的年金と児童扶養手当は、お互いに、先ほど局長が申し上げましたとおり、これは稼得能力の低下等々に対する所得保障であるということであります。
言われている意味は、年金と児童扶養手当はそういう所得保障ではあるけど内容が違うんじゃないかと。しかし目的は一緒でありまして、やはり生活をしっかり維持するという目的であるわけでありますから、ただ、老齢年金の方が加入期間が少なくて金額が少ない場合に、それは併給が認められないと本来もらえる児童扶養手当より低いという話になったときには、これは本末転倒でございますから、ここは併給調整をしようということに今回させていただくわけであります。
今の年金の話でいきますと、例えば遺族年金の場合、これは当然遺族年金もらう場合とそれから児童扶養手当と併せてこれはどちらが高いかと、これは併給調整するわけですね。これを両方とももらえるという話になると、死別の家庭は両方とももらえるわけでありますね。ところが、死別じゃなくて生別で別れられたところの方は遺族年金はもらえません。そして児童扶養手当だけですと。
ここの公平性、どう考えるかと。つまり、元々同じ目的でありますから、これは併給調整という形の中で今回対応させていただこうということでありますけれども、同じ目的でないというような、仮にこれ、どういう種類のものかということをもう一度規定し直さなきゃいけないわけですね。仮に違うものであるというふうに規定する場合には、今度は、年金というのは死別の方は両方とももらえるんだけど、生別はこっちしかもらえないという不公平感も生まれてくるわけでありまして、なかなかこれ、検討するのは難しいのではないかというふうに考えております。
○小池晃君 いや、検討はしてくださいよ。それは、様々おっしゃるような矛盾とか課題あることは私もよく承知をしております。しかし、やっぱり現実にこういう困難抱えている方もいるわけですから、どういう形で答え出せるか、やっぱり検討していただきたいと思います。
〔理事階恵美子君退席、委員長着席〕
パート法の改正案について、以降聞きます。
賃上げで景気回復をというのが安倍内閣のキャッチフレーズになっているわけです。しかし、賃上げやるとすれば、非正規雇用の中で最も大きな部隊であるパート労働者、ここが決定的なわけです。JILPTのパートタイム総合実態調査では、五九%のパートタイム労働者が不満、不安を抱えて、五二%が賃金安いというふうに言っている。
大臣、今回のパート法について衆議院で大きな前進だと答弁されましたが、しかし果たしてどれだけ処遇が改善するのか。今回の法改正でパート労働者の大幅な賃上げは実現するんでしょうか。
一体どれだけの人の賃上げに結び付く法改正なのか、御説明ください。
○国務大臣(田村憲久君) もちろん賃金は労使でお決めをいただく話でございますので、なかなかどれぐらい改善するんだと定量的に申し上げるのは難しいわけであります。ただ、そういう中において、今般、その職務の内容及び人材活用の仕組み、これが同じである方々、約十万人ぐらいおられますけれども、ここは均等待遇ということをこの中においてうたっておるわけでございますので、ここに関してもしそうでない場合に関しては、賃金の改善というものは我々としては期待できるのではないかと、このように思っております。
あわせて、短時間労働者の待遇の原則をこの中に盛り込まさせていただきました。さらには、雇用管理の改善措置、これに対して雇入れ時に説明をしていただくということも盛り込まさせていただいたわけでございまして、合理的な賃金、これが形成される中において、賃金の上昇というものを期待をさせていただいております。
○小池晃君 今、明確に広がるのは十万人だということがあったわけで、千五百七十万人のうち十万人だと。率にして〇・八%なわけで、一歩前進というか、半歩前進というか、親指の先ぐらいの前進というか、まあそんな印象を受けるわけですね。
国際的に見るとどうかと、今日資料をお配りしましたけれども、フルタイムに比べてパートの賃金水準、五六・九%です、日本は。アメリカは極端に低いですが、イギリスは七〇・七、フランス七四・三、ドイツ七九・三、デンマーク八一・一、スウェーデン八三・一%と、これが今の実態であります。
格差というのは様々職場にはありますが、賃金についてだけ見ても、男女間の賃金格差に加えて一般労働者とパート労働者の格差ということがあって、この二重の差別の下で日本の女性パート労働者は特に労働条件が極めて低い。
前回のパート法の改正案の審議も私、参加しまして、七年前、あのときもやっぱりこのことは大問題になって、しかし、七年前と比べてほぼ横ばいじゃありませんか。この格差を解消できない理由はどこにあるというふうに、局長、お考えですか。
○政府参考人(石井淳子君) まず、格差が解消できないというふうな御指摘なんですが、歩みはささやかかもしれませんが、ここ数年のパートタイム労働者の賃金格差というのは縮小傾向にあるというふうに認識をしているところでございます。
研究会でもそこについては認めていただいたということでございます。
その上ででございますが、諸外国と比較をして、確かにこの数字で見たときに、アメリカを除いて、日本は賃金格差が大きいというのはそのとおりかと思います。
この理由はどこにあるのか、昨晩、結構悩んで考えたところでございますけれども、やはり社会経済の在り方などかなり複合的なものが絡んでいて、一口で申し上げることはなかなか難しいと思うんですが、考えられることとしまして、例えば欧州諸国では職務給が一般的であります。したがいまして、その職務給的な、横断的な市場の中で対応がしやすい部分、これは恐らくあるだろうと。
それに対しまして日本は、余り職務給的なもの、パートはそうでございますが、一般の正社員は違っておりまして、能力、責任とか配置転換の範囲だとか、様々な要素が考慮されて賃金が決定される、あるいは年功序列という形で上がっていく企業もあるということがあります。
なかなか単純な時間割ということが難しい状況になったのではないかということが一つと、あともう一つ、最近変わってきているとはいえ、やはりパートタイム労働者は、とりわけ非正規雇用者の中でも、その職務内容について見たときに、比較的スキルを要しないものに就いている方の割合が多いと。諸外国との比較はちょっとできていませんが、非正規の中でパートが賃金が低いということについて言えばそういう部分がありまして、キャリアなどが賃金に反映されにくいという部分があるのではないかなというふうに考えております。
○小池晃君 改善してきていると言うけれども、七年前に比べて二ポイントでしかないわけですね。
今、様々な社会的な状況が違うんだというお話ありましたけれども、ただ、日本の中だけ見たって、パートのやっぱり女性労働者だけ特別な状況にあるわけですよ。
この十五年間の勤続年数別の賃金比較見ますと、勤続十五年後の賃金水準で見ますと、一般男性は勤続十五年間で賃金は一・八倍に伸びます。パートでも男性では一・五倍になっています。女性も一般では一・五倍なんです。ところが、パート女性というのは十五年間働いても一・一倍なんですね。ほとんど変わらないわけです。
なぜこうなっているのか。パートの平均勤続年数というのは男性より女性の方が長いわけですね。
ところが、勤続年数長いのに昇給がほとんどない、これが実態だと。様々、今おっしゃいましたけど、私は、やっぱりこういう賃金格差の大きな要因に、幾ら働いてもパートの女性の賃金が伸びないということがあると思いますが、これはどうですか、その認識は。イエスかノーかでちょっと端的にお答え願います。
○政府参考人(石井淳子君) 恐縮でございます。
イエスかノーかで、もう少ししゃべらせていただきたいと思いますが、おっしゃるとおり、確かに男性と女性と比べたときに勤続年数による伸びが違う、これはそのとおりでございます。
これも昨晩、結構悩んだのでございますけれども、一つは、やはり女性パート労働者、比較的技能を求められることがない業務に従事する場合がやはり多くて、なおかつ役職に就かずに補助的な業務を行っている場合が多いということがまず考えられるのが一つと、あともう一つ、これ先ほどの薬師寺議員の御指摘の中にもあったわけでございますが、やはり女性パートの多くが主婦パートでございます。主婦パートの方が、社会保険の三号被保険者となることを前提に就業日数を設定をしたりとか就業調整をしている方が一定程度おられまして、そういう就業調整をしている方としていないパートと比べた場合に、明らかに就業調整されている方の賃金は低いということがありまして、こういうものは要因として考え得るのではないかなというふうに思っております。
○小池晃君 私は、やっぱり最大の原因は、同一労働同一賃金という均等待遇が、先ほど緩いというお話ありましたけど、非常に不十分であるということが根底にあると、その上にいろんな要素もあると思いますけど、やっぱりそこをしっかり正していかなきゃいけないと思うんです。
ところが、今回、均等待遇を義務付ける現行第八条について、無期要件は削除しましたけれども、正規と非正規の決定的な違いになっている、大きな違いとなっている人材活用の仕組みの違い、要件に残したわけですね。総合実態調査でも、パート労働者のうち、一般労働者と責任の重さが同じというのが三六%ですけれども、そのうち人事異動の有無や範囲が同じという労働者は四・七%しかいない。まあほとんどいないわけですよ。
大臣、均等待遇対象を拡大するというのであれば、やはり無期要件だけではなくて人材活用の仕組みの違いも削除すべきだったんじゃないですか。
○国務大臣(田村憲久君) 八条で、先ほど来話が出ておりますけれども、短時間労働者の待遇の原則というものは示させていただいているわけであります。
先ほど来も話あるんですが、やはり日本の雇用システムというものが、長期雇用の中において人材育成しながらというふうな形で、人材活用というものに重きを置いている部分があるわけでありまして、そこを外して職務の内容だけでこれを均等にしていく、また均衡にしていくというのはなかなか日本の雇用慣行の中では難しいと。
逆の方から見ると、例えば職場、勤務地、これが転勤等々があって変わる、若しくは労働時間が一定ではない、残業等々もある、さらには職務も変わるというような働き方をしている人と、そうじゃない人たちを一緒でいいのかと、裏から見ればですよ、そういうような話もあるわけでありまして、それは、そうじゃない働き方をしている人からしてみれば、それは一緒というのはおかしいよねという議論が出てくるわけでございますから、だからこそ、そこは新八条等々の中において、バランス取るようにということで、合理的なというような文言を入れさせていただいておるわけでございまして、これによって合理的な判断をそれぞれの事業主がしていただければ有り難いというふうに思っております。
○小池晃君 比較の仕方はちょっと後でもう一回議論しますが。
新八条の問題についてですが、先ほどからも議論あるんですけれども、待遇の相違は、職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して、不合理と認められるものであってはならないと。
不合理であるかどうかは何をもって基準、判断するんですか。
○政府参考人(石井淳子君) これも先ほど来と似たようなお話になってしまいますが、やはりパートタイム労働者、これ全てを対象としたのがその八条でございます。また、待遇ということで、これは全ての処遇、賃金その他全部含んでいるというわけでございます。
一方、パートタイム労働者や通常の労働者の就業の実態、待遇、多種多様であるわけでございまして、その組合せになりますと様々なパターンが考えられるわけでございます。その中で、具体的にいかなる場合にこの待遇の差異が不合理とされるか、個々の事案に即して判断されるものでありまして、これはあらかじめ網羅的に示すことは困難だというふうに思っております。
ただ、その一方で、パートタイム労働法におきましては、同じような働き方をしているパートタイム労働者、またその職務が同じという、そういう一定の範疇を捉えまして、九条以下で改正法案の中でこの明示をしているところでございまして、これに基づいた行政指導を行っていきたいと思いますし、これも午前中の津田委員以下でお答え申し上げておりますが、今後、裁判とか社会情勢の変化などによりまして明らかに不合理となる場合などが生じれば、更に必要な情報提供、これは行っていく考えでございます。
○小池晃君 私は、何の基準も示さないで裁判で訴えろと、裁判所へ行きなさいと、それだったら厚生労働省要らないという話になりますよ。これはやっぱり、裁判に訴えるかどうかだって基準もなければ訴えられないじゃないかという話も先ほどありましたし、パート労働者がやっぱり裁判に訴えるという、これほど大変なことはないわけですよ。そういう、裁判で訴えて闘ってくださいと、それで基準作ってくださいなんて、パート労働者に大臣、言えますか。私はこれは、八条の仕組みは非常に無責任だと思いますが、大臣、いかがですか。大臣。
○政府参考人(石井淳子君) 済みません、大臣の前座でまずお答えさせていただきたいと思います。
裁判のみならず、例えば個別労働関係紛争解決援助にこういう仕組みもございます。これは、労働局長による助言、指導というのもございますし、もう少し裁判に近いものとしまして、労働審判における審判事例などもあるわけでございまして、そういうものも含めて、あるいは学説というものが、確定されたような学説が出てくる、こういう場合も考えられるわけでございまして、そういうものを含めて幅広に対応していくことが可能だというふうに考えております。
○小池晃君 いずれにしても、私はこの仕組み、裁判でということを答弁で言うというのは、僕はちょっと無責任過ぎるというふうに思います。きちっと厚生労働省としての基準を示し、やっぱり行政指導をやるということを最低限やるべきだと。
それから、人材活用の仕組みを、通常の労働者と比較する期間を何で雇用関係が終了するまでの全期間というふうにしているんでしょうか。無期雇用のパートなどの場合は、定年までの全期間の間に異動が正社員と同一でなければならなくなってしまいます。雇用期間が一年などに限定されている場合は、その期間に異動、転勤がなければなりません。局長、そんなパート労働者が日本のどこにいるんですか。
○政府参考人(石井淳子君) どこにいるかというよりも、考え方をまず御説明をさせていただきたいと思います。
この有期契約労働者である場合の雇用関係が終了するまでの全期間における人材活用の仕組みについては、今後の見込みも含めて判断されるものであります。更新されるかどうか決まっていない段階でありましても、仮に更新をした場合に、人材活用の仕組みについて通常の労働者と同じ取扱いを予定しているかどうかと、そういう観点から判断することになります。
例えば、更新をした場合の期間を含めて、将来、当該事業主に雇用されることが見込まれる期間において、通常の労働者の雇用関係が終了するまでの全期間と同じ取扱いを予定している場合については、これは雇用関係が終了するまでの全期間において人材活用の仕組みが同じというふうな判断をすることになるものでございます。
○小池晃君 いや、それが現実的じゃないんじゃないかと思うんですよ。だって、多くはパート労働者として雇用されたとき、そのときにその人が転居を伴う配転が想定される、そんなケースってレア中のレアじゃないですか。こんな規定を置いたら、私は、これは誰も対象にならない、最初からそういう対象になるという人は本当に限られてくるんではないかと思いますよ。
今のような話でいけば、職務の内容が同じであっても、働き始めた時点で将来の転勤の可否などが通常労働者と違うというふうに判断されちゃったら、もうこれは差別は当然だということになっちゃう。それでいいんですか。
○政府参考人(石井淳子君) それで当然ということではございませんで、例えば雇入れ時にどのような人材活用とするか決まっていないという場合でありましても、個々のパートタイム労働者の働き、あるいは貢献を踏まえて決定されている場合には、その後どのように活用するかが明確になった段階で、その履行の将来の見込みを持って人材活用の仕組みの様子について判断することになります。
この判断でございますが、何も、何といいましょうか、思い付きで判断するわけではございませんで、どのように扱われるかについては、これは当該事業所における文書とか慣行によって確立されているものなど、客観的な事情から判断することになります。
○小池晃君 私はやっぱり、この仕組みはハードルになります、高いハードルになります。やはりその人材活用の仕組みというのはこの要件から外すということでなければ、やっぱり均等待遇を広げていくということにはならないということを重ねて申し上げたいというふうに思います。
それから、通勤手当のこと。労契法の二十条では有期労働者に対する通勤手当の差別を禁止しました。それにもかかわらず、このパート法ではフルタイムとパートタイムの通勤手当の差別禁止を明確にしていません。労政審の建議でも、一律に均衡確保の努力義務の対象外とすることは適当ではないとされているのに、法案の十条では通勤手当その他残されたわけですね。だから、労契法からも労政審の建議からも大きく後退した規定になっているんじゃないかなと。
今、現実に職場で何が起こっているかというと、昨年四月からの改定高齢者雇用安定法によって六十五歳までの再雇用制度導入されています。流通職場の例でいいますと、正規パートが六十歳を超えて再雇用されるときには、シニアとかアルバイトとか再雇用パートとか、名称は様々ですけれども、こういう場合に六十歳の定年までは通勤手当については全額支給されていたのに、再雇用になった途端に、勤務地も仕事の内容もほとんど変わっていないのに、賃金はパート、アルバイト並みの時間給になって十数万円減って、その上、全額支給だった通勤代が出なくなると。もう本当、追い打ち掛けるようなことが起こっているんですね。
局長、こうした事業所の対応はパート労働法では違反にならないということですよね。
○政府参考人(石井淳子君) 定年後の再雇用に当たっての処遇については、高齢者の意欲のほか、その知識、経験なども踏まえた上で、労使でよく話し合っていただいた上で決定していただくことが重要と考えております。
その上で、パートタイム労働者として再雇用する場合の通勤手当でございますが、今回のパートタイム労働法の改正法案では、新八条の待遇の原則や雇入れ時の説明義務を創設することといたしておりまして、これも踏まえて事業主が説明できる合理的な雇用管理を考えていただく中で、様々な検討をしていただくものと考えております。
なお、正社員には通勤手当を支給する一方で、再雇用の者を含めたパートタイム労働者には通勤手当を支給しないこととした場合でありましても、その事実だけをもってパートタイム労働法違反にはならないものというふうに考えます。
○小池晃君 だから、そうじゃないですか。それでいいんですかというんですよね。
この間、ちょっと議論あったけれども、法律で除外しておいて指針で認めるというんだけれども、使用者側が法律では除外しているというふうに開き直ったときに、指針にありますで労働者の利益守れるんですか。局長、どうやって守るんですか。
○政府参考人(石井淳子君) 労政審の建議では、一律に均衡確保の努力義務の対象外とすることは適当でない旨を明らかにすることが適当であると、こういう言い方であります。これは午前中来申し上げておりますように、指針、省令、特に省令において、何らかの形でそういう旨を明確にすることとして誤解がないようにしていきたいというふうに考えております。
○小池晃君 いや、だから、逆転しているんじゃないのって。指針でやるから大丈夫ですって、ちゃんと法律で除外しておいて後で指針でって、それ逆でしょうが。それで、だから労働者を守れるんですかというんですよ。
○政府参考人(石井淳子君) この条文の立て付けでございますが、この通勤手当というのは明記されていますが、省令で全部書き下す形になっております。その省令の中において明確に書くことによって十分明確に建議の趣旨を体現させることは可能というふうに考えております。
○小池晃君 法律より省令の方が何か偉いみたいな話で、ちょっと納得いかないな、僕は。
やっぱりこの問題、法律できちっと義務付けないでおくと、やっぱり企業任せになるとパート労働者の権利守れないと思うんですよ。だから私は、法律からは削除した上で指針で対応すると、これが筋だというふうに思いますよ。
さっき、十条から通勤手当削除何でしなかったんですかと言ったら、あっさり、できませんでしたとしか言わなかったけど、何かまともな検討をしたんですか。
○政府参考人(石井淳子君) まず、労政審での議論をちょっと御紹介をさせていただきたいと思います。
やはりこの通勤手当に関しては、例えば労働者側委員からは、通勤手当は実費弁償なのでパートタイム労働者にも全額支払うべきとの意見がある一方で、使用者側からは、通勤手当の支給の有無については個々の契約によって決まって、正社員にも通勤手当込みという場合もあって、法律で強制するものではないと。あるいは公益委員からは、通勤手当は広域から労働者を募集するという業務に関連する部分もあるけれども、労働者が住所を変えても支給されている点では福利厚生としての面があるといったような意見が出たわけでございます。
通勤手当の性格が非常に多様だというふうな意見が集約された中で、この通勤手当を改正法第十条に位置付けるか否かについては、例えば労働者側委員からは通勤手当を九条の例示から削除すべきという意見がある一方で、使用者側委員からは、通勤手当の位置付けについては各企業の考え方に基づいたものでよくて、現行法の第九条は職務関連か非関連かに仕分しているため、単純に削除すると職務関連と逆に位置付けることになるからこれ反対だといったような意見がありまして、集約されたのが、結局、多様な性格を有していることから、一律に均衡確保の努力義務の対象外とすることは適当ではないと、そういうまとまりだったわけでございまして、それを正確に反映をさせていきたいというふうに考えております。
○小池晃君 私はこの議論は本当分からない。だって、通勤手当というのは、正社員だってパートだって通勤するんですよ。何でそこで差別するんですか、そもそも。職務の履行に必要不可欠な費用じゃないですか、通勤費というのは。だって、雇用先、指定された職場に行かなきゃ仕事できないんだから、そのための費用を出すことに何で差別が出てくる、何でこれが職務に密接に関連する賃金でないということになるんですか。
通勤手当について雇用形態で格差を付ける、その理由というか、根拠というか、どこにあるんですか。
○政府参考人(石井淳子君) まず、職務に密接に関連して支払う手当としては、賞与のほか、役付手当等の勤務手当、精皆勤手当、こういったもの、これはもちろんそうではございます。ただ、これらは職務の内容とか成果などに応じて支給の有無や支給額が決定される、まさに正真正銘職務関連の手当とされます。
ただ、この通勤手当でございますが、これ実費弁償の場合でありましても、勤務手当や精皆勤手当などのように職務の内容とか成果などに応じて支給の有無や支給額が決定されるものではないわけでございまして、これは職務に密接に関連して支払われる手当とは言えないというふうに考えます。
○小池晃君 何かその通勤手当の中にA型とB型とあるみたいな訳の分からない議論がやられているんだけど、私は、通勤手当というのはまさに職務に密接に関連する賃金だと思うけれども、その労政審の議論、あるいは厚労省が今おっしゃっているように、通勤手当そのものは職務に関連する賃金ではないけれども、一部に職務関連となるものがあるというわけですよね、あるかもしれない。
あるのかどうか、それも含めて検討するみたいなことを言うんです。
じゃ、その一部にある職務関連となるものというのは一体どんなものなんですか。それは一体、通勤手当の中にどの程度あるんですか。労政審でこういう議論があって、こういう法案出した以上、その通勤手当なるものの中に職務関連となるものがあるかどうかについてちゃんと検討、調査したんですか。
○政府参考人(石井淳子君) 労政審は、まさにプロの集まりの中での議論でありまして、その中でやはり通勤手当について一律に支払えるものもあるという議論を踏まえて、そういう議論に至ったものでございます。
しかしながら、少し突っ込んで申し上げますと、仮に法案を成立させていただいたならば、まずは改正法の円滑な施行に努めることになるわけでございますが、施行に当たっても、当然、事業所に対する指導とか相談をする中で、様々な事例について把握をして、必要に応じて対応していきたいというふうに考えております。
○小池晃君 要は検討していないじゃないですか、こういう議論をやっているのに、労政審でも。
だったら、ちゃんと検討しました、調査しました、通勤手当なるものの中にはこういうものもありました、こういうものもありましたと、だから、という議論だったら分かりますけれども、何の調査もしないでおいて、労政審では一律にこれをやるのはおかしいじゃないかと言われているのに、それは無視して法律上は一律に除外しちゃっていると。これ怠慢ですよ、大臣、こんなのでいいんですか。
これ、見直すべきだというふうに思いますけれども、どうですか、削除すべきだと、通勤手当。
○国務大臣(田村憲久君) いろんな御議論をいただく中においてこのような形になっておるわけでございまして、今局長から話がありましたが、いろんな形態があろうと思います。
ただ、一方で、やはり一律に除外するのはというようなこともございますので、そこはしっかりといただいた建議の中において、我々は、法案には書いてありませんけれども、対応はしてまいりたいというふうに思います。
○小池晃君 賃金の低いパート労働者にとって通勤手当支給が、出るかどうかというのは本当に決定的なわけですよね。やっぱりこれは、私は、この不支給を許すようなことになってしまったらば、やっぱりパート労働者の均等待遇にはならないし、就労機会を奪うことになるというふうに思います。貧困と格差を助長するということにもなっていくというふうに思いますので、この問題についてはきっちり削除していただきたいということを改めて申し上げておきたいというふうに思います。
以上です。