赤旗2017年5月10日付
日本共産党の小池晃書記局長は9日の参院予算委員会で、安倍晋三首相が憲法9条の改定で「自衛隊」を条文に明記し、2020年に施行すると表明したことを追及し、それが自衛隊の存在の「追認」にとどまらず、海外での無制限の武力行使を認めるものだと告発しました。
小池氏は、安倍政権が集団的自衛権行使容認の「閣議決定」と安保法制=戦争法で従来の政府の憲法解釈に大穴を開けたと指摘。そのもとで、9条の1項(戦争、武力による威嚇、武力行使の放棄)と2項(戦力不保持)に加え、「3項に自衛隊の存在理由が書かれれば、3項に基づき海外での武力行使は文字通り無制限となり、2項は“空文化”するのではないか」とただしました。安倍首相は「どのような記述にするかは自民党で議論してほしい」と明言を避けました。
これに対し小池氏は、「自民党改憲草案」が掲げる9条2項の削除=「国防軍」創設について追及。「国際社会の平和と安全を確保」などの国防軍の活動を自衛隊の活動として書き込めば、海外での武力行使も含め活動が無制限になると指摘しました。安倍首相は「草案は公式文書だ」と言明し、小池氏の指摘を否定しませんでした。
小池氏は「安保法制で集団的自衛権の行使まで認めた自衛隊を書き込めば、そうした自衛隊を憲法上も認めることになる」とし、自衛隊の海外での武力行使が無制限に可能となると告発。首相は「1項、2項を残すから今まで受けている憲法上の制約は受ける」と答弁し、現状と変わらないかのようなごまかしを述べました。
安倍首相は「読売」(3日付)インタビューで自衛隊を「合憲化」するために条文に明記すると答え、“違憲状態”を認めながら、小池氏の質問に「合憲だというのは確立した立場だ」と表明。自ら持ち出した改憲に理由がないことを露呈しました。
「9条3項に自衛隊を明記すれば、自衛隊と憲法の矛盾は拡大する」。小池氏は、戦力不保持を定めた9条2項がある限り、自衛隊とは相いれないという議論は消えないどころか矛盾が広がると指摘しました。
さらに小池氏は、自民党も憲法審査会で9条をテーマとして提示しておらず、「機は熟した」などと言える状況ではないと批判。首相は「3分の2を形成する状況がない中で(9条改憲を)提起してこなかった」と認める一方、「自民党総裁として(自衛隊の明記を)提起している。リーダーとして目標の年限を示すことが私の責任だ」と述べ、首相主導で改憲論議を推進する意向を示しました。
小池氏は、9条改定は「必要ない」という声が世論調査でも多数だと強調。安倍首相が具体的な改憲内容に立ち入り、「2020年」と期限まで区切って発言したのは憲法99条の憲法尊重擁護義務に反する違憲の発言だと批判しました。