日本共産党 書記局長参議院議員
小池 晃

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小池晃の活動報告

NHK「憲法記念日特集」 小池書記局長の発言

2017年05月04日

赤旗2017年5月4日付

 日本共産党の小池晃書記局長は3日放送のNHK番組「憲法記念日特集 施行70年いま憲法を考える」に出演し、与野党7党代表と討論しました。司会は、島田敏男解説委員、田中泉アナウンサーです。


施行70年を迎えて―憲法に背く政治でなく、先駆的値打ちが全面的にいきる政治に

 冒頭、各党が憲法に対する基本的立場をフリップに書いて発言。「未来を展望して新しい憲法を考えるべきだ」(自民党の保岡興治憲法改正推進本部長)、「不備があるなら『加憲』で憲法論議を」(公明党の北側一雄副代表)、「日本は憲法を改正しない稀有(けう)な国になっている」(日本維新の会の馬場伸幸幹事長)など改憲の立場を示したのに対し、小池氏は「憲法の全条項を守り、憲法を生かす政治へ」とフリップに書き、発言しました。

小池 安倍首相は“憲法は国の理想を示す”とおっしゃっているんですが、理想はずっと棚上げにされてきたと思います。

 憲法9条という、世界で最も進んだ恒久平和主義の条項も、あるいは個人の尊厳、両性の平等、生存権の保障といった30条にわたる豊かな人権規定も、自民党政治のもとでないがしろにされてきました。民意を無視した沖縄での新基地建設強行のように、地方自治も踏みにじられてきたと思います。施行から70年で続いてきたのは、憲法に背く政治だといわざるをえません。

 いまの日本に必要なのは、この憲法を変えることではない。憲法が目指した政治を実現することだと思います。憲法の先駆的な値打ちが全面的に生きるような日本に改革していくことが必要だと思います。

立憲主義を考える―憲法解釈を一内閣で覆す暴走、自民改憲案は撤回を

 昨年11月に再開された衆院憲法審査会で議論された「立憲主義」がテーマになりました。自民・保岡氏は「権力を憲法で縛り、そのことで基本的人権を保障していこうという考え方」と述べ、民進党の武正公一憲法調査会事務局長は、憲法審査会で立憲主義が取り上げられた背景に、安倍政権による憲法解釈の変更、安保法制=戦争法の強行があると指摘しました。これを受け小池氏は次のように発言しました。

小池 保岡さんがおっしゃったとおりで、立憲主義の基本は権力の暴走から基本的人権を守るということじゃないですか。そのために、憲法は最高法規と定められているし、憲法擁護義務がわれわれ国会議員も大臣もみんなあるわけです。だから、歴代政府が積み重ねてきた憲法解釈を一内閣の閣議決定でひっくり返した、集団的自衛権行使容認の閣議決定は、立憲主義を脅かすということじゃありませんか。戦争法=安保法制もしかりであります。

 それから、あの自民党の改憲草案はなんなんですか。あれはまさに基本的人権の制約ということがちりばめられている。「公益及び公の秩序」の名で人権制約ができるようになっています。あとで議論になりますけど、緊急事態条項もしかりであります。

 結局、立憲主義が大事だと保岡さんがおっしゃるのであれば、私はあの自民党の改憲草案は撤回すべきだと思いますよ。それから、戦争法=安保法制は廃止をして立憲主義を回復する。これが出発点だと思います。

 小池氏が撤回を求めた自民党改憲案について自民・保岡氏は「われわれが野党と折衝する前提としてつくったもの」などと弁明。戦争法についても「憲法解釈の範囲内」と居直りました。公明・北側氏が「立憲主義については各党で共通の認識がないと思っていない」と述べた受け止めを司会者から問われ、小池氏は次のように発言。戦争法の問題で公明・北側氏との間でやりとりになりました。

持ち出す政府見解の中身は「集団的自衛権は行使できない」というもの

小池 憲法の原則ですから、そこは一致しているのは間違いないと思うんです。ただ、なんでこの立憲主義ということにこれだけ注目が集まったのか。

 一つは、やっぱり安保法制だと思うんです。安全保障政策に対する考え方の違いを超えて、最高法規である憲法が数の力で踏みにじられていいのかという怒りですよ。だから、あれだけ、反対の世論が広がったと思うんです。そこは、与党はしっかり受け止めるべきですよ。

 もう一つは、あの自民党の改憲草案です。先ほど、“野党との交渉の材料だ”と(発言されましたが)、そんなことないでしょう。公式な提案として出されているわけですよ。あれを読めば、まさに近代の憲法の大原則がひっくり返るようなもので、「憲法」といえませんよ。基本的人権は制約できる、97条の「基本的人権は侵すことのできない永久の権利」を削除しているわけですよ。ああいう時代錯誤的な、本当に近代の憲法をひっくり返すような提案をしているから、これだけ立憲主義ということに注目が集まっている。権力の暴走から基本的人権を守り抜く、個人の人権を守るという原則があるんだったら、僕はやっぱりあの(自民党改憲案の)提案は撤回してほしいと思います。

北側 憲法9条の下で自衛の措置がどこまで許されるのかということについては、憲法には明確に書いてないんですね。それをどうやって解釈してきたか。政府と国会との間の長年の憲法解釈の中でやってきたんです。昭和47年(1972年)の政府見解の根幹は、まったく今回の憲法解釈では変わっておりません。それから小池さん、そもそも日本共産党は自衛隊は憲法違反ですか。どうですか。そこを明確におっしゃってください。

小池 憲法違反ですよ。

北側 憲法の解釈について、自衛の措置がどこまで許容できるかという論理とはまったくその前提の違う方の立場の方がおっしゃっているわけです。

小池 自衛隊は憲法9条の文言から照らせば相いれない存在であるのは、憲法学的にもはっきりしています。

北側 それは立場が違うんですよ。

小池 違いますよ。ただ、そうであっても、やはり海外での戦争はしないということを一貫してやってきた。昭和47年見解は、集団的自衛権は行使できないという政府見解じゃないですか。それを使って合憲だというのはおかしい。

 小池氏が重ねて求めた自民党改憲案の撤回について自民・保岡氏は「憲法審査会に審議してほしいと提案したものではない。いつまでも(撤回と)おっしゃるのは適切ではない」との言い訳に終始しました。

「緊急事態条項」―三権分立の切り捨てで独裁政治に百害あって一利なし

 自民党改憲案では、「緊急事態条項」を新設しようとしています。これは、首相が「緊急事態」の宣言を行えば、内閣が立法権を行使し、国民の基本的人権を停止するなど、事実上の「戒厳令」を可能にするもの。自民・保岡氏は大規模災害を口実に「日常的にいろんな対応をしなければいけない」などと主張しました。小池氏は、次のように反論しました。

小池 (保岡氏は)“自民党改憲案にいつまでもこだわるな”とおっしゃるんですけど、昨年7月に安倍首相は、“これをベースにする”とおっしゃっていますから、こだわらざるをえない。

 これをみると、首相が国会に諮らずに「緊急事態」を宣言できるわけですね。法律と同等の政令を内閣が出せる。これは三権分立の停止ですよ。内閣に権力を集中して、基本的人権を制約する、これは独裁政治につながります。だから、(衆院憲法審査会で行われた今年3月の)参考人質疑でも、3人の参考人全員が危険性を指摘しているんです。

 実際に、東日本大震災の自治体の首長アンケートでも、「緊急事態条項」がなかったから人命救助に支障をきたしたとお答えになった首長さんは一人もいないんですね。岩手県の釜石市長は“一刻を争う現場に権限を委譲すべきだ”と。確かにそうだと思うんです。災害時に重要なのは、中央政府に権限を集中することではなくて、情報も権限も思い切って現場におろすことが一番大事であって、私は国の権限を強めることは百害あって一利なしだと思います。

 自由党の森ゆうこ参院議員会長は、「安倍政権の権力の乱用が目にあまる。そこは慎重にあるべきだ。中越地震のとき、緊急事態条項がなくても対応していけた」と指摘。社民党の照屋寛徳国対委員長も「国民の自由と権利が制限される」と反対しました。

憲法と教育の無償化―改憲することなく予算措置でできる

 番組では、各党が憲法議論で「重要だと考えるテーマ」を一つあげ、それについて他党に質問するやりとりがありました。維新・馬場氏は「教育の無償化について日本共産党さんに聞きたい」と小池氏に質問。小池氏は次のように答えました。

小池 教育の無償化はわれわれは政策でも掲げております。やはり、幼児教育から高等教育まですべて無償化をするということは、国民の強い願いでもあるし、いま教育費負担、本当に深刻ですから、教育無償化すべきだ。

 ただ、憲法は26条では「義務教育は、これを無償とする」と書いているわけで、それ以外は無償にしてはいけないとは書いていないわけですから、別に憲法を変えることなく、予算措置と法律をもってできる。逆に憲法を変えなければできないというふうにしてしまうと、これは課題を先送りすることになると思います。無償化は必要だと思いますが、改憲は必要ないと思います。

なぜ改憲ができなかったか―憲法への国民の強い支持があった

 小池氏は、先の「緊急事態条項」の議論のなかで、自民、公明などが衆院議員の任期延長の検討を持ち出したことについて「憲法は、衆議院の解散中は参議院の緊急集会ができるようになっている。そういう点では(憲法の規定は)災害などを想定したものだといわれているし、よく練られていると思う。任期の延長はすべきでない」と指摘したうえで、自民・保岡氏に質問しました。

小池 自民党さんにお伺いしたいのですが、憲法が施行されて70年、自民党は結党以来、改憲を主張されてきているわけですね。しかし結党以来、改憲を主張しながらなぜ、これは実現できなかったとお考えなのか聞きたいと思うんです。

 やはり、改憲のターゲットは9条だと思いますし、9条については国民の強い支持があると思います。憲法施行70周年の記念式で大島理森衆院議長が「今日の平和と繁栄の礎には、新しい日本の進むべき道を示した憲法の崇高な理念があった」と(述べています)。私もその通りだと思うんですね。やっぱりそういったものに対する国民の強い支持があって改憲できなかったと私どもは思いますが、なぜ党是である改憲が60年以上できなかったのか。

 保岡氏は「(改憲発議に必要な)3分の2(の議席)を衆参でもつ可能性が、選挙制度の結果、絶望的状況だったことがある」と述べ、現在の衆参での「改憲勢力3分の2体制」を強く意識しました。

憲法9条の削除―なんの制約もなく海外での武力行使が可能に

 安倍首相が改憲の本丸とする憲法9条改定について自民・保岡氏は、9条に「自衛隊の存在と役割を書くべきだ」、公明・北側氏は「日本海にいるアメリカのイージス艦に第一撃があったときに日本の自衛隊が守れるのに、守れない選択肢はあってはならない」と、憲法違反の戦争法を改めて正当化しました。小池氏は、次のように述べました。

小池 北朝鮮の核開発、ミサイル開発は断じて許せませんし、これは本当に大きな脅威となっていると思います。しかし、軍事的な挑発に軍事で対応する軍事対軍事の悪循環は避けるべきだ。

 集団的自衛権行使容認の安保法制ができて、海外で、戦闘地域で、アメリカとともに武力行使ができるようになったけれども、安倍政権は9条が「まだ邪魔だ」というわけですね。これが典型的だと思ったのは、稲田防衛大臣が南スーダンでの戦闘が行われていることについて、「憲法9条上の言葉である戦闘は使うべきでないから衝突と使った」と(答弁しました)。やっぱり、憲法9条が制約になっているということだと思うんですよ。

 自民党改憲案は、9条2項を削除して「国防軍」にする。そうなると、もうなんの制約もなく、海外での武力行使が可能になっていくじゃないですか。これは、憲法の恒久平和主義、憲法の大原則とまったく相いれないと思います。私は、9条に自衛隊を書き込むというのは、単に自衛隊の存在を認めるということにとどまらない、海外での武力行使を無制限でできるようにしてしまうという危険を指摘したいと思います。

野党と市民の力で「改憲3分の2議席」を崩すために頑張りたい

 番組の最後でNHKの世論調査が紹介されました。「国民の間で憲法を変えるか、変えないかの議論がどの程度深まっているか」について「深まっている」は29%、「深まっていない」は67%にのぼりました。今後の憲法論議にどう臨んでいくか問われ、小池氏は次のように述べました。

小池 7割近くの国民が改憲の議論は深まっていないと(回答しています)。当然だと思いますよ。

 やはり憲法審査会の議論をみても、与党は改憲項目の絞り込みを狙ったんだと思いますが、思惑通り進んでいないじゃないですか。今日の議論を聞いても、憲法を変えなきゃいけないという議論に私は聞こえないですね、どこを変えるんだと、まったくはっきりしないですよ。

 そういう意味でいえば、これは憲法審査会の議論を重ねれば重ねるほど、改憲の必要はないんじゃないかとなっていく。むしろ現実の政治の方を変えなければいけないんじゃないかと。これがやっぱり当然だと思います。先ほど、(保岡氏は)“3分の2がとれなかったから絶望的だった”とおっしゃいました。ますます、野党と市民が力を合わせて「(改憲勢力)3分の2」を崩していかないといけないということを、今日の議論を通じて本当にしみじみ感じましたので、頑張りたいと思います。

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