赤旗2016年12月5日付
日本共産党の小池晃書記局長は4日のNHK日曜討論で、終盤国会にどう臨むか、年金カット法案、環太平洋連携協定(TPP)、カジノ解禁推進法案について各党幹事長らと議論しました。
安倍政権
強行採決を連発 強権政治極まる
「終盤国会にどう臨むか」と問われた自民・西村康稔(やすとし)副幹事長は年金、TPP、カジノ法案などの成立に全力を挙げると発言。民進・玉木雄一郎副幹事長は度重なる強行について「数のおごり、ゆるみがありありだ」と批判しました。
小池氏は、TPP、年金、カジノと強行採決をくり返す安倍政権・与党を「強権政治極まれりだ」と批判しました。
安倍晋三首相が年金審議の中で「私が述べたことを理解しないなら、こんな議論を何時間やっても同じ」だと放言したことに対して、「たとえ意見が違っても、耳を傾けて誠実に議論するのが民主主義の国の政府の務めだ。しかもTPPも年金もカジノも世論調査では国民の大多数が慎重審議、反対と言っている。民意に反した政策を推し進めるために、民意を無視した強権・強行に走らざるを得なくなっている。これが今の安倍政権だ。こういう政治に未来はない」と述べ、日本共産党として徹底的に論戦でたたかう立場を貫くと表明しました。
年金カット法案
高齢者の生活と命をカットする
年金カット法案について民進・玉木氏は、今の世代も将来世代も年金を減らすものだとして反対を表明。自民・西村氏、公明・斉藤鉄夫幹事長代行はともに、持続可能な制度を維持するためのものだと弁明しました。
小池氏は「年金制度の考え方を根本的に変えるものだ」と批判。これまでの年金の物価スライドについて、昨年の国会で塩崎恭久厚労相も「購買力を維持するためのものだ」と認めていることを指摘したうえで、「ところが今度は、賃金が下がったら物価が上がっても年金も下がる。まさに年金カット、高齢者の生活、命のカットになる」と断じました。
高齢者世帯の1割近くが生活保護に頼らざるを得ない現状があることを示し、「そういうときに年金までカットとなればますますひどくなる。そういう国にしてしまっていいのか」と指摘しました。
「世代間公平のため」と繰り返す与党に対して小池氏は、「高齢者世代の生活が苦しくなれば、親の生活費は現役世代にかかってくる。年金は地域経済を支えており、そこをいま下げれば日本の経済はますます悪化する。賃金下がったら年金下げていいとなると、下がった年金が現役世代に引き継がれることにもなる。断固、徹底審議して廃案にすべきだ」と主張しました。
自民・西村氏は「安倍政権後、賃金は確実に上がってきている。万が一下がったときのため、持続可能な制度にするためにお願いするものだ」と述べました。
小池氏は「万が一と言うが、この間賃金は下がっている」と反論。「消費税増税には断固反対だが、今後もし上げるとなったときに、消費税が上がって賃金が下がればまさにこの法律が適応される。消費税を増税して物価は上昇するが年金には反映されない。そのうえ、実質賃金は下がるので年金も下がる。消費税増税の上に年金も下がるというダブルパンチになる事態が十分想定される。ところが、安倍政権は賃金がこれから上がるから、賃金が下がる場合の試算は出さないという。これではまともな議論はできない」と批判しました。
TPP承認案
さらなる譲歩が迫られることに
番組司会者は、次期米国大統領のトランプ氏がTPP離脱表明するなど新たな国際情勢のもと、国会でTPP承認案・関連法案の成立は必要なのかと質問しました。公明・斉藤氏は「こういうときだからこそ自由貿易を守る立場を示す必要がある」と語り、自民・西村氏は安倍首相がトランプ氏と真摯(しんし)に話し合い、粘り強く話し合うことが大事だと述べました。
小池氏は「アメリカが離脱すればTPPは発効しない。発効しない条約を批准することにどんな意味があるのか」と語りました。
さらに、「これは単に無意味だということではない。安倍首相が『TPP並みのレベルの高いルールをいつでも締結する用意がある。国家としての意思を示す』と言ったように、TPPの水準というのが、日本の事実上の国際公約になる。“ここまでは譲る”ということを世界に宣言することになる」と述べ、トランプ氏が2国間協定推進に意欲的なことを指摘。「その交渉では、TPPで譲歩したところから、一方的にアメリカの要求が押し付けられることになる。さらなる譲歩が迫られることになり、極めて危険で、極めて有害だ」と強調しました。
その上で「自由貿易というが、いまは多国籍企業に、自由に最大限の利益をもたらす“自由”だ。いま最大の問題は、経済主権、食料主権をしっかり守っていくルールをつくっていくということ。今のやり方は危険だし、TPPは廃案にすることが日本の未来を守る道だ」と語りました。
カジノ法案
5時間余で強行 国会の自殺行為
カジノ解禁推進法案について民主、自由、社民はそろって、わずか5時間半ほどの審議で採決を強行したことを批判しました。自民・西村氏は本法案によってカジノが解禁されるわけではなく、政府の実施法でさまざまな規制・対策をとるとごまかしました。
小池氏は「カジノは賭博であり、犯罪だ。モノを生み出すわけではない。人のお金を何千万円も巻き上げるだけのものの、一体どこが成長戦略化なのか」と批判。すでに日本はパチンコなどのギャンブル依存症の比率は世界有数だと述べたうえで、「賭博場を解禁したら、さらに悲惨な事態が広がる」と語りました。
「依存症対策をしっかり取る」という維新・馬場伸幸幹事長に対して、小池氏は「カジノを解禁しないのが一番の依存症対策だ」と反論しました。そして「共産党は党として明確に反対する。刑法で犯罪とされているものを犯罪でなくしてしまう法律をわずか5時間ちょっとで強行してしまうようなことは、国会の自殺行為だ。断じて許されないし、委員会審議をやり直すべきだ」と求めました。
日ロ領土問題
正面から不公正正す交渉が必要
15日に予定されている安倍首相とプーチン・ロシア大統領との会談でどのような外交成果が期待できるかという質問に、自民・西村氏は「2人のリーダーシップで領土問題が一歩一歩進んでいくことを期待する」と発言しました。民進・玉木氏は、4島の帰属という大原則をあいまいにしてロシア側から足元を見られることに懸念を表明しました。
小池氏は「現在まで続いているロシアによる千島列島の不当な領有は、旧ソ連のスターリンが第2次世界大戦後の戦後処理の大原則である『領土不拡大の原則』を踏みにじったことにある。真の解決のためには、この不公正を正面から正す立場の交渉が必要だ」と話しました。
一方で、ロシア側が領土問題を後回しにして平和条約を求めているとする報道に触れ、「事実とすれば極めて重大だ。平和条約を締結すれば、どんな留保条件があっても、両国間の国境線の公式な画定という意義を持ってしまう。そんなことをすれば一つも返ってこないということになりかねない。まともな交渉もしないで経済活動などといっても、領土問題は前に進まない」と批判。ロシアによるクリミア併合やウクライナ問題を例に、「プーチン政権は非常に覇権主義的であり、こういう政権だけに、性根を据えた外交が必要だ」と話しました。