参院厚生労働委員会
2014年06月26日
○小池晃君 日本共産党の小池晃です。
今日、日比谷の野外音楽堂で大規模な集会が行われました、先ほど。精神科病棟を居住施設に転換することに当事者が中心となって反対の声を上げたわけです。
我が国の精神病床の平均在院日数は二百八十三・七日と異常に長い。入院患者も三十万人を超えて、OECD加盟国でも例を見ないわけですね。
本来、精神医療改革というのであれば、長期入院を解消して一刻も早い退院と地域での生活の開始、そのための施策を打ち出すべきなのに、今の精神科病棟そのものを居住施設に転換するという構想です。
大臣、病院の敷地の中で病院の建物を転換した施設で暮らしていくことが社会復帰、地域移行と言えるのでしょうか。
○国務大臣(田村憲久君) 精神障害者の方々が退院をされて地域で生活をされる。今委員がおっしゃられたのは、同じ病院内の敷地でありますとか、例えばその病院の部屋を改装しながら住居として使用すると、それが地域移行と言えるかどうかというお話だというふうに思いますが、地域移行、地域へ移っていく途中段階というふうな、そういう考え方はあるんであろうというふうに思います。
でありますから、それ自体が完全に地域で生活されているということではありませんが、その途上、そこで社会とかなりの間離れてお暮らしになられてこられた、社会に暮らすためにいろんな訓練、準備をされなきゃならぬというような場合に、一時的にそういうところで生活をされてから地域社会に出ていただくというような、途上という考え方はあろうと思いますが、いずれにいたしましても、これ、検討会で今議論をされておる話でございますので、関係者間でしっかりとした議論をしていただきたいというふうに思います。
○小池晃君 一時的なものだと大臣おっしゃるんですが、日弁連の会長声明では、多数の精神病床を減少させることがいかに難航しているかという日本の歴史的経緯に鑑みれば、これが一度整備されれば恒久化してしまう危険性は否定できないと言っている。私、そのとおりだと思うんですね。
厚労省の意向調査でも、入院患者は、退院先が病院の敷地内だったら退院したくないという回答が多数です。病院の中は嫌だ、退院した気にならない、自由な行動をしたい、本当にそのとおりだと私は思う。
我が国も批准をした障害者権利条約は、障害者がほかの市民と平等の機会を持って地域社会に包容されて社会参加し、自立した生活ができるようにする措置を締約国の義務としているわけです。
今回のやり方というのは、まさに病院の敷地内で、しかも病棟を転用した施設で地域から分離した生活を継続させることになるわけで、これは権利条約が定めた締約国の義務に逆行すると私は思いますが、大臣、いかがですか。
○国務大臣(田村憲久君) いずれにしても、これは検討会で御議論いただく話でありますけれども、一時的、つまりずっとそういう場所で生活されるとなるとそれは難しい部分はあると思います。
ただ一方で、御本人の意思というものはしっかり確認すること、始めからもう地域で生活できるという方を無理にそのような施設等々で生活いただくというのはこれは問題がありますから、やはり本人の御意思ということ。それから、病院とは明確に分かれているということ、つまり自由に出入りができたり普通に生活できるようなそういう環境であること。更に申し上げれば、先ほど来言っております地域移行への途上であるということでありまして、今の御議論からいけば、その住まわれる施設、それから環境、そういうものがどのような環境であるかということがまさに条約と反するかどうかという話になってこようと思うわけでありまして、どのような環境の中にそういうものを提供いただくのかということも含めて検討会で御議論をいただいておりますので、検討会での御議論というものを見守らさせていただきたいというふうに思います。
○小池晃君 自由に出入りができるとおっしゃるけれども、それが今の精神科病院でできていないということが問題なんですよ。異常なんですよ、日本の精神科医療の実態は。やっぱりそこをちゃんと権利保障していくというのが世界の流れなわけですよ。
大臣は検討中だ検討中だとおっしゃいますのでお聞きしますが、こういう障害者の問題は、私たちのことを私たち抜きで決めないでというのが大原則で、そう語られてきているわけですが、二〇〇九年に発足した障がい者制度改革推進会議は二十六人の構成員のうち十四人が当事者でした。ところが、今の検討会は二十五人のうち当事者は二人しかいないわけです。
大臣、やはりここは当事者不在の議論を改めて、検討会に障害当事者の声を反映させる、そして検討するべきじゃないですか。
○国務大臣(田村憲久君) 議論の過程の中におきましては、長期の入院患者の方々も含めて多くの方々から議論をお聞きをいたしてまいりました、参画もしていただきました。議論を聞いた中には、長期入院者約百七十名、入院中の精神障害者の方々百七十名、退所、退院された方々も四十名ということで、それは患者の方々も含めてですね、精神障害をお持ちの方々の御議論といいますか、お話はお聞かせをいただき、その内容を反映をさせていただきながら今検討会を進めていただいておるという状況でございます。
○小池晃君 検討会そのものに加えるべきだという、そういうふうに申し上げているんですが、そうすべきじゃないですか。
○国務大臣(田村憲久君) いや、ですから、多くの方々にもう御意見をお聞かせをいただき、参画をいただきながら検討会の議論を進めていただいておりますので、そういう皆様方の御意見も反映されながら、検討会、最終的な御議論をいただくんだというふうに考えております。
○小池晃君 私は、やはり日本の精神医療の問題、かつて呉秀三という方は、明治期から大正期にかけての日本の精神医療の実態について、病を受けた不幸に加えて、この国に生まれた不幸を併せ持っているというふうに言われたんですね。
今度の病棟転換政策というのは、これはやっぱり遅れた日本の精神医療政策を更に深い闇の方に持っていくことになりかねないと思っています。
これは、モデル事業で風穴を空けようとか、あるいは継続審議にするなどという対応ではなくて、白紙撤回、これをするべきだと、最初から考え直すべきだというふうに申し上げておきたいと思います。
武田薬品の問題です。
降圧剤カンデサルタン、商品名ブロプレスの臨床試験CASE―Jのことですが、先ほどからも議論あるように、これは第三者機関が、武田薬品がブロプレスの付加価値最大化と売上げ最大化を図る目的のために企画段階から一貫して関与したというふうにいっております。
〔委員長退席、理事西田昌司君着席〕
武田の社員が京都大学に置かれたデータセンターを仕切って、京大などの研究チームには三十七億円の資金が渡っています。医学雑誌にはブロプレスの効果を大々的にうたう広告が掲載されて、実はその前に学会誌に掲載された論文では、正式の論文では四十二か月までのデータしか認められなかった。その結果、ブロプレスとアムロジンの効果には差がなかったんですけど、広告は四十二か月以降も使って、そうすると心血管イベントが減少していく。ゴールデン・クロスなんということも言って、これは効果があるんだと。これはまさに捏造と言えるものだと思うんですね。しかも、重篤な副作用について厚労省に報告していなかったことまで明らかになった。
あのノバルティスは逮捕者まで出しました。私は、武田の事例はノバルティス以上にこれは悪質ではないかと。いろんな問題点が出てきていると思うんですね。大臣、ノバルティス社については厚労省は東京地検に告発したわけですが、武田薬品についてももちろん同様の対応が必要だと思いますが、いかがですか。
○国務大臣(田村憲久君) 武田の報告書といいますか、法律事務所の報告書が出てまいりまして、これを今我々も精査をさせていただいております。
あわせて、今日、足立委員からも鋭い御指摘を幾つかいただきました。それも含めて、独自に我々も聞き取り調査をさせていただきたいというふうに思っております。その上で、分かってきた事実を基に適切な対応をしてまいりたいと考えております。
○小池晃君 これ、厳正な対応が必要だというふうに私思います。
やはり、この事例通じて明らかになってきたのは、奨学寄附金が不正の温床になっているということなんですよ。これは去年の委員会でも、私、ノバルティスの問題で、やはりひも付きのお金でどうしても利益相反生じて公正公平な臨床研究できないではないかということで、基金をやっぱりつくってやるべきではないかということを申し上げました。大臣は、情報開示が大事なんだと、それやればいいんだみたいな、そういう答弁でした。
もちろん情報開示必要なんだけれども、やっぱりこのお金の流れという不正の温床を断たない限り、こういう事態は本当に根を断てないというふうに思うんですね。
実は、あの委員会での審議の後の厚労省の検討会の席では、日本学術会議も、臨床研究の適正化のために製薬企業からの資金を基金として活用する仕組みというのを提案されています。大臣、やはりいよいよ正面からこういうやり方を検討すべきではないですか。
○国務大臣(田村憲久君) これやはり製薬会社、メーカーも、今般のいろんな事案がある中において、それぞれやはり襟を正していかなきゃならぬという御意識になってこられているというふうに思います。
日本製薬工業協会でありますけれども、この中において、この研究資金等々を含めて、これガイドラインをお作りになられて透明性高めると。これはかなり高い透明性、幾ら、どの研究者にというところまで御報告をされるというようなガイドラインを作ったわけでありますし、今言われた奨学寄附金に関しても、これはもう奨学寄附金等々は出さないというような方向性をお決めに、これはまあ工業協会でありますけれども、この中において決められたと。当然会員企業がたくさんこの中にはおられるわけでありまして、自主的な取組をまず我々としてはしっかりと見守らさせていただきたいと。
〔理事西田昌司君退席、委員長着席〕
基金に関しましては、これはやはり企業が御理解をいただかないと、国が無理やり基金を出させるということはこれはできないわけでありまして、PMDA等での医薬品の副作用の救済基金、これに関しても、それぞれ製薬メーカーが御理解をいただく中で成り立っておるわけでございますので、今はまずは自主的な取組というものをしっかりと我々は見ていきたいと、このように考えております。
○小池晃君 そういう腰が引けた対応では駄目ですよ。やっぱりきちんとやらなきゃ駄目だと。
ブロプレスの発売以来の販売額、総額で幾らになりますか。数字だけ。
○政府参考人(原德壽君) 配付資料にもございますが、この二〇一三年までで約一兆五千六百億円でございます。
○小池晃君 一兆五千六百億円ですよ。
これ、比較研究に明らかに不正があったわけですよ。比較研究の対象になったアムロジン、商品名でノルバスクでいうと、ブロプレスの八ミリとノルバスクの五ミリでいうと、薬価差、最初から百円ぐらい違うわけですね、一錠。もちろん全部カルシウム拮抗剤に代えるなんていうのはこれは現実的でないけれども、でも、やっぱりこれは多額な損害を医療保険財政に与えたことは間違いないわけですよ。
大臣、これは医療保険財政上も、臨床研究進める上でも、やっぱり相応の経済的な責任を武田薬品に果たさせるということは必要なんじゃないですか。いかがですか。
○国務大臣(田村憲久君) もちろんディオバンにしてもブロプレスにしても、今般のような事案が起こったということは大変遺憾であります。
これ、ディオバンのときに検討会をつくりました、検討委員会ですね。この中の結論の中において、やはり今言われた医療財政に対してのいろんな影響、これに対しても対応しなきゃならぬというような御意見もいただきました。
中医協薬価部会の中で、これ今、先ほど来、局長からも話がありましたが、一旦止まっておりますけれども、薬価の推移ですね、それぞれの、それから類似医薬品のやはり薬価の推移、こういうもののデータをしっかりと我々は検証しながら、どのような対応があるのかということ、これは中医協の方でも御議論をいただけるというふうに思っておりますし、我々もしっかりとその御議論をいただきながら対応を考えてまいりたいと、このように考えております。
○小池晃君 私も最後は足立委員と珍しくというか、珍しくじゃないけど、一緒のことを、長谷川閑史さんですよ、産業競争力会議で、個人と企業の持続的成長のための働き方改革なんというのを提案しているんですよ。何が持続的成長だと。こんな研究不正に最初から関わってきた人物ですよ。
持続的成長というんだったら、日本人による日本人のための初めての大規模な臨床試験に泥を塗ったんですよ、この責任を取らせないといけないですよ。持続的成長だというんだったら、まずは研究不正、自らの研究不正を正せと言うべきじゃないですか。製薬工業協会の副会長を停止しているんですよ。
私は、大臣、こういう人が産業競争力会議の分科会の主査、やる資格があると思いますか。監督官庁として、やっぱりこういう人は不適格だと言うべきじゃないですか。
○国務大臣(田村憲久君) 経済同友会の代表幹事としてということも含めていろんな経済の成長に対する有識者ということに関して、内閣官房でお選びになられたんだというふうに思います。内閣官房の方で適切な対応があられるんだというふうに思います。
○小池晃君 いや、監督官庁として、やっぱりこういう人は駄目だと言わなきゃ駄目だというふうに思います。
終わります。