「赤旗」6月19日付
日本共産党の小池晃議員が18日の参院本会議で行った医療・介護総合法案に対する反対討論(要旨)は次の通りです。
第一は、介護保険利用料2割負担の根拠が完全に崩壊したにもかかわらず、これを撤回しないことです。
政府は、年金収入280万円の世帯では、平均的な消費支出をしても年間60万円が余るので2割負担は可能だということを唯一の論拠にしていました。参院の質疑でその説明は崩壊し、60万円余るという説明は撤回され、大臣は「反省している」と述べました。このような法案をこのまま採決にかけるなど国会の自殺行為というべきであり、撤回すべきです。
第二に、要支援者への訪問・通所介護を保険給付から外し、市町村の地域支援事業に置きかえることが、受給権のはく奪にほかならないからです。
地域支援事業に移行した場合の専門的サービスは「多くとも現状維持」、2025年度に5割程度になるという試算が示されました。新たに要支援と認定された人には、ボランティアなどのサービスしか提供されなくなる恐れがあります。
要支援者への給付費の伸び率5・6%が3・7%に抑制され、2035年度での給付抑制は2600億円にのぼります。サービス単価や人件費の切り下げ、利用者の負担増につながり、介護サービスを量質ともに低下させることは明白です。
第三に、特別養護老人ホームへの入所を要介護3以上に限定することに、何の道理もないからです。
52万人の特養待機者のうち17万8千人は「要介護1、2」です。こうした方々は今でも入所待ちの行列に並んでも後回しにされていますが、今後は行列に並ぶことすら許されなくなります。多数の方々の入所の権利を奪いながら、それに代わる施設計画は示されていません。「介護難民化」「老人漂流社会」はいっそう深刻にならざるをえません。どの問題をとっても制度の根幹を揺るがす歴史的大改悪であると断じざるをえません。
第四は、上からの強権的な医療計画の押し付けで、国民の医療を受ける権利が侵害されるからです。
都道府県主導で病床の再編・削減を推進する仕組みがつくられ、病院が従わない場合、医療機関名の公表、各種補助金や融資対象からの除外など制裁措置をとります。国民皆保険制度を支えてきたのは、自由開業医制度とフリーアクセスの原則のもとでの、質の高い開業医と民間病院、公的病院の献身的な努力と自発的な連携です。強権的なベッド規制は、国民皆保険制度の根幹を揺るがすもので容認できません。
政府が19本もの法案を一括して提出したことは、国会の審議権を奪うものであり、審議は全く不十分だと言わざるをえません。国民に対する立法府としての責任を果たすことができず、本会議採決など言語道断です。
経済財政諮問会議で検討されている「骨太の方針2014」では、法人税減税に合わせて社会保障の自然増抑制がうたわれています。小泉政権時代の社会保障抑制路線が完全復活しつつあります。
「社会保障のため」と言って消費税増税したのに社会保障の拡充には回さず、社会保障の拡充を求めると「財源不足」を口実に拒否し、法人税減税に走りだし、その財源は社会保障の削減で賄う。これほど身勝手で無責任な政治が許されるはずがありません。
医療崩壊、介護難民という事態がいっそう大規模に進行するでしょう。しかし、この道はかつて国民から厳しい批判を浴び、自民党政権の崩壊をもたらした道です。国民の厳しい審判が下されることは間違いなく、こんな政治に未来はありません。日本共産党は、自民党政治にかわる新しい政治、憲法25条の生存権保障を全面的に実現する改革の実現のために奮闘する決意を表明するものです。