日本共産党 書記局長参議院議員
小池 晃

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貧困解消へ体制強化/小池氏 児童福祉法の参考人質疑

2016年05月28日

赤旗2016年5月28日付

 参院厚生労働委員会は26日、児童福祉法改正案について参考人質疑を行いました。

 児童虐待問題に取り組む磯谷文明弁護士は意見陳述で、改正案第1条で子どもを権利主体として定めたことを評価。虐待死が疑われる子どもが全国推計で年間350人もいるという調査を示し、死亡事例の全調査や児童福祉司などの増員・専門性向上を求めました。

 東京都八王子児童相談所の辰田雄一所長は、児童虐待の相談が2014年度は約8千件で過去最高だったと指摘。「相談所の体制強化には財源の裏付けが必要だ」として国の支援を訴えました。

 質問に立った日本共産党の小池晃議員は、子どもの権利条約の精神を盛り込んだ改正案第1条は「大きな意義がある」と強調したうえで、児童虐待の要因の一つである貧困問題について問いました。辰田氏は「いろんなケアをするが貧困は解決しない。親への支援を並行しないと厳しい状況だ」と述べました。

 小池氏は、一時保護所で、対応が異なる被虐待児や非行児童へのケアが混合したり、過密状態になっている問題を質問。辰田氏は、個別のニーズに応えるように、独自の職員配置を行う体制強化を求めました。それに関し全国里親会の木ノ内博道副会長は、家庭的養護の推進とあわせ、施設の小規模化や里親支援を求めました。

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速記録1
○小池晃君 日本共産党の小池晃です。
 お三人の参考人の皆さん、ありがとうございます。
 まず、磯谷参考人にお伺いしたいと思うんですが、本改正案の一条に子どもの権利条約の精神ということが明記されたことの意義なんですが、これはやはり保護の対象から権利の主体という点では非常に画期的ではないか、非常に大きな役割があると思うんですね。先ほど参考人もこれからこれはじわじわ効いてくるというようなお話をされましたけれども、このことでどのようなことを期待されているか、その意義も併せてお聞かせください。

○参考人(磯谷文明君) 御質問ありがとうございます。
 日本は御承知のとおり子どもの権利条約は締結をしているわけですけれども、実際なかなか、実際の法制度に浸透してこなかったというふうに思っておりますが、今回この児童福祉法にそのことが、しかもその一番最初に明記されたというのはとても画期的だと思いますし、この点は私の理解では大臣が随分この子供の権利ということをお考えになったと伺っております。そういったところも反映されたものというふうに理解をしております。
 これがどういうふうに効いてくるかというところはなかなか容易に予測は難しいのですけれども、やはり子どもの権利条約の一つの大きな目玉というのが意見表明権で、やはり子供が自分のことについて意見をきちんと述べて、かつ年齢や成熟度等には応じますけれども尊重されるということになっています。
 児童福祉の現場でも、もちろん実際上は子供の話も聞きながら援助方針を決めてはいますけれども、それをもう少し明確に意識付けをしてやるというふうなこともこれから考えていくことになるのかなというふうに思っています。児童福祉というのはやっぱりどうしても子供を助けてあげるというふうな形の発想になりがちですけれども、そこで、一体でも子供はどう考えているだろうか、もちろん子供が考えていることが全て正しいわけでないのはこれは残念ながらそうなんですけれども、やっぱりそこをきちんと受け止めるやり方というのをこれから具体的に考えていけるんじゃないかなというふうに期待をしているところであります。
 以上です。

○小池晃君 ありがとうございます。
 辰田参考人にお伺いしたいと思うんですが、家族統合というのは本当に今大変になってきているんじゃないかなと。特に、阻害しているものは一体何なのかという辺りで、虐待の要因の一つにやっぱり子供の貧困ということが指摘をされていると思うんですね。現場でお仕事されていて、この貧困という問題が家族統合にどのような影響を与えているというふうにお感じか、お聞かせください。

○参考人(辰田雄一君) 御質問ありがとうございます。
 虐待の発生している家庭について、イコールではありませんが貧困の家庭が多くあることは事実であります。当然そういった経済的な基盤の弱さ、またそういった家庭において、それがやっぱりいらいらだとか、そういったものがやっぱり力の弱い子供に向かってしまうというところで虐待が発生している家庭が数多くあります。
 そして、家族再統合に向けてというところでは、当然虐待したことを親にきっちり認識してもらい、そのためにどうしたアプローチを、子供への関わり方だとか、そういったところをまたペアレントトレーニングなどいろんなケアを入れながらやっていきます。ただ、当然、でも経済的な貧困が解決しているわけではありませんので、やっぱりそういったところにどのように親に対しての支援をどう入れていくか、そこもやっぱり並行して考えていかなければなかなか厳しい状況にあろうかと思います。

○小池晃君 ありがとうございます。
 重ねて、一時保護所の実態なんですけれども、非常に、非行、虐待、混合処遇となっているということで、そこに過密という問題が加わって非常に困難が生じているというふうに聞いているんですが、その点どのようにお考えでしょうか。

○参考人(辰田雄一君) 御質問ありがとうございます。
 今、一時保護所の方も、本当に保護されている子供の種別は様々です。そこで必要な保護ということは、やはり保護所がいっぱいだから保護しないということでは当然ありません。必要な保護は児童相談所長がしっかり判断して保護所に入れなければならないと思っていますし、当然、保護先は一時保護所だけで対応するものではなく、保護する子供の中で養育困難だとかまたそういったものがあれば、例えば里親さんの方に一時保護委託を掛けたり、そしてまた学校の方に通学できる体制を取ったりだとか、そこはいろいろ考え方はあろうかと思っております。
 ただ、混合処遇は、そこは賛否、正直あります。
 そこへ虐待の子また非行の子も入ってくる。そういう中で、じゃ、一律的などういった支援をしていったらいいか、一律ではないところもありますし、個別的なところをしていかなければならない。
 やっぱり学校の教育の保障もどうしていってあげたらいけないか。
 先ほど質問の方で回答させていただいたとおり、職員の配置の基準というのが児童養護施設に準じてなんですね。そこは一時保護所独自の職員配置だとか、そういったこともやっぱり考えて、個別のニーズに応えられる体制を整えていかなければならないと考えております。

○小池晃君 ありがとうございました。
 木ノ内参考人にお伺いしたいと思います。
 先ほどのお話聞いて、やはり里親などの家族的養護の非常に重要性、意義ということは大変大きいというふうに思いました。これ進めるべきだと思うんですが、当面すぐに施設を置き換えることが現実にはなかなか難しい、諸外国のような方向に持っていくべきだと私も思いますが。そういう中で、施設処遇の在り方について里親の立場から施設に望んでおられること、このようなやっぱり施設処遇でもこういったことが必要なんじゃないかという御提言いただければと思うんですが。

○参考人(木ノ内博道君) 今、十五年計画で家庭的養護に進めていこうというような国の方針も出ておりまして、まずはやっぱり施設の小規模化というところに取組が始まっているかと思います。
 今、五十人以上の施設が半分ぐらいあるというようなことで、やはり集団養育を個別養育の方に切り替えていくということが一つだろうと思いますし、併せて家庭養護を増やしていくというような、そういう部分があるかと思いますし、それから、施設を今のような施設ではなくて、もっと療育ができる、課題を持った子供たちに対応できるような、そういう施設に変わっていくというようなこともあるでしょうし、もう一つ、例えば乳児院などは、働いている人が乳児を専門に養育できる、家庭に連れて帰れる、赤ちゃんを、そういうような、場合によっては職業里親になるのかもしれませんけれども、何らかのそういった新しい仕組みをつくり出して、それで施設を変化させていくというようなことが可能なのかなというふうに思って、そういった議論を専門委員会でもしておりました。

○小池晃君 ありがとうございました。
 最後に、もう一回磯谷参考人にお伺いしたいんですが、磯谷参考人の資料の最後のページに陳述では触れない問題点というのがあるんですが、もしよろしければ、簡潔にでも感じておられる問題点をお話し願えますか。

○参考人(磯谷文明君) ありがとうございます。
 これは、差し出がましいのですけれども、私がほかの法律関係者と話をしているときに、どうなんだろうねというふうに思っていたところで、先生方はこれから政府の方にもいろいろと質問などをされるんだろうと思いますので、全くの御参考ということで作成いたしました。
 まず、一つ目の丸のところなんですけれども、これは、養子縁組その他の、児童も含めて、そういった方の相談に応じたり、必要な情報提供、助言をしたり援助をしたりという規定であります。
 これはもちろん非常に有意義な規定ではありますけど、その中に特別養子によって親族関係が終了した実方の父母も対象に含んでいるということから、一体どういうふうな支援を想定しているのかなというところがちょっと見えてこないよねというふうな議論をしていたところです。
 それから、二つ目の児童福祉法四十八条の三の方は、施設とかが市町村、児童相談所などと協力して親子の再統合のための支援等をやっていくということで、これもまた非常に重要なことなんですけれども、里親さんがやはりこの中に義務付けられているわけですね、里親さんもそういう措置をとらなければならないということになっている。
 ただ、木ノ内参考人のお話からすると、力のある里親さんだったらいけるのかなという気もしますけれども、一つは、里親さんに過大に負担にならないかなというふうなこと、特に親子を再統合というところまで、日々の生活もすごく大変だと思っておりますので、そういう意味でここまで期待をするというのがちょっと酷なのではないかなということと、あとやっぱりどういうふうな措置が想定されているのかなというところは疑問に思っていたということでございます。
 ありがとうございます。

○小池晃君 大変ありがとうございました。
 終わります。

速記録2
○小池晃君 日本共産党の小池晃です。
 児童虐待の相談件数は依然として増加傾向にあります。子供の命が奪われる重大な事件も後を絶ちません。社会全体で解決しなければならない課題です。そのための体制整備、財政支援が必要であります。
 本法案は、深刻する虐待問題に対応するために必要なもので、賛成であります。
 その上で、まず、本改正第一条に、全ての児童は児童の権利に関する条約の精神にのっとりという文言が入れられております。これ非常に重要だと私は思うんですが、大臣、我が国の法律で子どもの権利条約の精神が明記されているものはほかにあるでしょうか。

○国務大臣(塩崎恭久君) 児童の権利に関する条約の理念にのっとりという文言が、子ども・若者育成支援推進法第一条、ここに書かれております。なお、この文言は平成二十一年の第百七十一回通常国会において政府から提出された法案には含まれておらず、国会での御議論の過程で追加修正された、議員修正をされたというふうに承知をしているところでございます。

○小池晃君 閣法では初めてというか、内閣提案ではこれが初め、しかも、あれ内閣府で、厚労省の所管の法案としてはこれが唯一ということで、これは大きな意義があると私は思うんですね。
 現行法は、全ての児童はひとしくその生活を保障され、愛護されなければならない。保護すべき対象だった。それが本改正によって、全ての児童は児童の権利に関する条約の精神にのっとり、児童の年齢及び発達の程度に応じて、その意見が尊重され、その最善の権利が優先して考慮されという条文が加えられたわけで、これはかなり大きな変化だというふうに思います。
 保護の対象から権利の主体に転換したものであるということ、このことを確認したいのと、どうしてこういう転換を図られたのか、大臣の所見を伺います。

○国務大臣(塩崎恭久君) 児童福祉法の理念規定は、昭和の二十二年にこの児童福祉法が制定されましたけれども、この当初から見直しをされてきませんでした。当時の戦争孤児をどうするかという問題からでき上がった法律でありましたが、子供の権利の主体であること、最善の利益が優先されること、こういったことは明確にされていませんでした。
 改正案では、これも今お読み上げをいただいたとおりで、児童の権利に関する条約の精神にのっとって権利を有するということを明確に総則の第一条に位置付けをいたしました。その上で、国民、保護者、国、地方公共団体、それぞれこれを支えるという形でこの福祉が保障される旨を明確にしたわけでございまして、また社会のあらゆる分野において子供の最善の利益が優先して考慮されることを、これも明確にさせていただきました。
 これ、なぜそうしたのかということでありますが、これは先ほど申し上げたように、児童虐待は、愛されるべき相手である親から虐待を受けるというようなことが増えていく中で、やはり、民法で親の権利は明確に定められている一方で、子供の権利は日本の法律にはどこにも書いていないと。
 これでは子供の命を守ることはできないだろうということで、やはりこれは権利というものを明確にした上で子供を守っていかなければいけないし、健全な養育を保障するということを権利として定めることが大事だというふうに思ったわけでありまして、まさに命と権利そしてその未来を守るということで第一条にうたわさせていただいたということでございます。

○小池晃君 何だか久しぶりに大臣の言うことをいいなと思いながら聞くような答弁でありましたけれども、時々そういうことありますけどね。
 ちょっと、具体的な問題、一時保護所について聞きたいと思うんですが、児童相談所が保護した子供を短期滞在させる。これは、厚労省の運営指針でも一時保護の期間は二か月超えてはならないとしております。
 配付資料を御覧いただきたいんですが、しかし、直近の数字ではだんだん増加傾向にあります。それから、地域別に見ますと、例えば福井県は平均六十五日、金沢市は五十九日、千葉県は五十四日。
 これ平均ですから、短い子供もいればもっと長期に入所しているケースも少なくないはずでありまして。この一時保護所の実態なんですね。虐待によるものが半数近くで、こういう場合は虐待者から引き離さなければいけないから、一時保護している間は学校に通えない。
 入所が長期化することは学習面の遅れにもつながります。文科省は昨年七月に通知を出して、児童の学習条件を向上させる取組というのもやられているようですが、やはりこの一時保護が長期化することで、学習面だけでないと思うんですね、交友面も含めて支障が出るおそれがあります。
 やはり、様々な事情を抱えている子供たちに、精神面でサポート、必要な支援、処遇の改善が必要だと思うんですね。さらに、一時保護所にとどめておくんではなくて、そこから先への支援につなげていくことも必要だと思います。
 厚労省、どうでしょうか。

○政府参考人(香取照幸君) お答え申し上げます。
 一時保護所につきましては、先生今御指摘のようなことは指摘をされております。現在の一時保護所の子供たちは、今お話ありましたように、様々な背景の子供がいらっしゃいますけれども、やはり虐待が非常に増えているというのは事実でございます。他方で、非行の子供とか養育困難の子供とか、様々な子供がいらっしゃいますので、そこはやっぱり個別の対応ということが恐らく必要になるということだと思っております。
現在、一時保護所に関しましては、心理担当職員の配置ということを、できるだけ個別に対応するということでやっております。それから、今お話しになった学習指導に関しましては、学習指導協力員というのを配置いたしましてできるだけ支援をしていくということをしております。
 それから、昨年度の補正で、一時保護所、結構大部屋といいますか、大きいところに子供がいるというところが結構ありますので、できるだけ居室の小規模化を図ると。それから、年齢別あるいは入所事由別にそれぞれ処遇できるようにそういうスペースを用意するということで、今整備は二分の一の国庫補助なんですが、特例的に補正で三分の二ということにしまして、できるだけ個別の処遇を確保するようにということをやっております。
 それと、退所後のお話ですが、今回の改正案では、一時保護を解除した後、施設なり措置をされるか自宅へ帰るかということになるわけですけれども、保護者に対するカウンセリングをきちんとやるということで解除後の子供の安全確認を図るということで、解除後の支援についても強化をしていくということをしております。
 あわせて、これも御答弁申し上げていますが、児相の体制強化ということで、児童相談所強化プランを作りまして、専門職の配置の大幅な増員というものも図るということで、全体として一時保護所の整備も進めてまいりますが、やはり基本的には、できるだけその子供の状態に合った支援ができるように、児相の体制の強化、あるいは一時保護所の強化、あるいは速やかな措置、あるいは在宅支援というものができるような体制を整備して対応してまいりたいと考えております。

○小池晃君 そういう取組は非常に大事だと思うんですね。
 それで、一方で、収容力が限界に近づいているんじゃないかという指摘もあります。共同通信の調べでは、東京都と千葉県の約六施設で一三年に定員オーバー、ピーク時には定員の一五〇%まで達したところもあると。定員を超えた場合は、今できるだけ小規模な部屋と言ったけど、一人部屋を二人で共有すると。子供たちがトラブルを起こさないために、職員が時間外勤務で見守るというようなこともあると聞いています。担当者は、保護が必要な子供が増えていて、命に関わるケースもあるから、定員オーバーだからといって断ることはないというふうに言うんですね。こうした状況をやっぱり放置できないと思います。
 大臣、やはり虐待件数、相談も増えている。未然に防ぐ、起こったときに子供たちの命守る、その最前線が児相であり一時保護所です。これは一時保護所の数も職員の数も抜本的に増やす必要があると思うんですが、いかがでしょうか。

○国務大臣(塩崎恭久君) 今、二百九の児相のうち独自の一時保護所を持っているのは百三十二、はっきり言えば百三十二しかないと、こう言わないといけないんじゃないかなと私は思っておりまして、子供の安全を確保するとともに支援につなげるためのアセスメントを行う、そういう場であるわけですけれども、残念ながら、相部屋だったりオーバーキャパシティーだったり、今のお話のとおり、そういうことがあるわけでありまして、やはりしっかりここは対応をしていかなきゃいけないということで、先ほど局長の方から御説明申し上げたような、数を増やす、量的拡大、環境改善、これはやってきているわけであります。
 一方で、二十八年度予算では、一定数の一時保護委託児童を受け入れることができる専用の居室等を設けている児童養護施設等に対する新たな加算等計上はしておりますが、やはりこれは児相で本来一時保護所をきちっと持ってケアをするということが大事なんだろうというふうに思っています。
 さらに、一時保護所の職員の充実というものも当然図らなければいけないわけでありますし、それから心理担当職員の配置については二十八年度の予算で経費計上しておるところでありますが、いずれにしても、一時保護が必要な子供の安全等を適切に確保するためには、一時保護所の整備、そして一時保護委託の、これは今の児童養護施設などでありますけれども、今すぐにということであればそういうこともあるかも分かりませんけれども、本来やっぱり中長期的には児相が自らちゃんと持って、そこでケアをしながら子供の発育を守っていくということが大事だというふうに思っております。

○小池晃君 是非進めていただきたいと思います。
 それから、追加でちょっと一問聞きたいんですが、先ほどやり取りあった歯科医療の問題なんですけど、児童福祉法第二十一条十の五では明示されていませんが、歯科医師も含まれるんだという御答弁がされました。
 確認しますけれども、この第二項にはその要支援児童に対する情報提供が刑法の秘密漏示罪の対象から除かれるという規定があります。この規定にも歯科医師は含まれるということでよろしいですか。先ほども虐待を早期に発見しやすい立場であるのは常識だという答弁もあって、やっぱり秘密漏示罪に問われたらという心配で通報をためらうようなことがあってはならないと思うので、そこははっきりさせていただきたいと思います。

○国務大臣(塩崎恭久君) 今、この刑法の秘密漏示罪の規定その他の守秘義務に関する法律の規定は、情報提供をすることを妨げるものと解釈してはならないと規定していることにつきましては、歯科医師についてもその協力の重要性に鑑みてこうした情報提供の協力を求めるということにしているわけでございますので、全く同じ扱いというふうに考えていただいて結構だと思います。

○小池晃君 こういう心配もあるから、ちゃんと歯科医師と書いておけばいいということだと思いますけどね。まあ、それはもうこれ以上言いませんけど。
 それから、ちょっと前回聞けなかった自立支援医療のことを聞きたいんですが、ちょっと時間がないので質問をちょっと飛ばしていきますが、これは二〇一八年三月まで、資料の三枚目にありますような経過的特例措置という負担軽減措置があるわけです。これ、財政審などは経過措置終了後は廃止すべきだと言っていて、患者、家族に不安広がっています。恒久的な制度にしてほしいという要望も来ているわけです。
 これ、経過的特例措置の対象となっているのは、ここにあるように中間所得の一と二という世帯で、これは、中間所得一は年収二百九十万から四百万程度、それから中間所得二は四百万から八百三十三万という、そういう水準です。この所得基準変わっていないわけですから、十年たって、これ、十年たったからやめるんだという議論は私は成り立たないというふうに思うんですね。
 実態どうなっているかというと、その次のページ以降に実態が出ておりますけれども、これは全国心臓病の子どもを守る会がアンケートをやった結果なんですけれども、これ、ゼロ歳から十九歳までの心疾患患者の親二百二名より回答を得ております。フォンタン術後が六十二名、ファロー、両大血管右室起始術後が四十九名、ASD、VSDの術後が十四名など、非常に重い心疾患のお子さんを持っている。配った資料にはありませんが、この間、手術年齢がかなり早くなってきていて、三歳から四歳までに最終手術終わっているケースが非常に多いのが特徴で、子供が小さいだけに収入が非常に少ないと。先天的な心疾患ですから、先天性心疾患は専門医療機関に限られるので、四人に一人が県外の病院に通院しているということも実態が出ています。
 それから、五枚目、六枚目のところに、医療費以外の負担が重いという実態が出ておりまして、差額ベッド、食事代、通院のための交通費、付添いのための費用。医療費以外の負担が三十万円超えているような実態があるんだということが共通して言われています。
 もう一回資料四枚目に戻っていただくと、ここに実例が出ておりますけど、経過的特例措置がなくなるとどうなるかということで計算してみたものです。これは二〇一〇年にカテーテル検査とそれからグレン手術をされた方の場合ですが、今、経過的特例措置によって負担額は五万六千五百二十円、これが経過的特例措置がなくなると三十万二百八円というふうに激増するわけですね。五・三倍です。
 生まれたときから重い心臓病を持ち、何度も検査、手術を繰り返し、遠くの病院にお子さんを連れていって、親御さんは泊まり込みでその面倒を見る。残された兄弟の世話はおじいちゃん、おばあちゃんたちに任せたりとか、いろんな苦労をしながらこれだけの医療費の負担を強いるということが私はあっていいんだろうかと思うんですね。
 私、こういう実態見ればこの経過的特例措置の廃止なんというのは絶対許されないと思うんですが、大臣、いかがですか。これ、やっぱりしっかり継続すべきですよ。

○国務大臣(塩崎恭久君) 自立支援医療の利用者負担に関する経過的特例措置、これについては、昨日成立させていただいた障害者総合支援法の見直しについての御議論の中にも障害福祉サービスの利用者負担の在り方として、併せて審議会で議論していただいたところでございます。審議会の報告書では、利用者負担に関する経過的な特例措置については、時限的な措置であって、施行後十年を経過する、そして平成二十二年度より障害福祉サービスの低所得者の利用者負担が無料となっていること、それから他制度とのバランスや公平性等を踏まえて、その見直しについて検討すべきというふうにされておりますが、この報告書を踏まえて、私どもとしては、この経過的特例措置について、今後、当該措置が終了するのは平成三十年三月でありますので、そこまでしっかり議論を深めてまいりたいというふうに考えているところでございます。

○小池晃君 しかし、十年たったからといったって、負担は変わらないわけですよ、苦しみは変わらないわけですよ。他制度との公平性と言うけれども、やっぱり特別困難抱えている方たちの軽減措置ですよ。
 大体これ幾ら掛かるのか。経過的特例措置の財政負担ってどれだけですか。それから、低所得者をさらに、住民税非課税の方を負担を無料にした場合の財政影響はどれだけになりますか。数字だけでいいですから答えてください。

○政府参考人(藤井康弘君) お答えいたします。
 自立支援医療の経過的特例措置に関します予算は約五十億円、御指摘の低所得者層を無償化するために必要な予算は約百二十億円と推計をしてございます。

○小池晃君 五十億円あればこの軽減措置は続けられるわけです。それから、おとといも議論になった基本合意でも約束されている住民税非課税世帯の負担無料化も百二十億円あればできるわけですよ。大臣、莫大な財政負担じゃありません、これ。やはり私はこういうことをしっかりやるのが政治の責任だというふうに思いますよ。
 自立支援医療というのは障害者医療の根幹を支えています。それなのにこの軽減制度を打ち切れば、恐らく他制度にも波及しますよ。自治体がいろいろやっている独自の制度なんかにも波及する可能性もある。私は、改めてこれ継続すべきだと、今の実態も見ていただいて、そしてその財政負担の額も見ていただいて。これ、やめちゃうということは許されないんではないかと。やはり大臣、これはきちんと継続するんだと、少なくとも厚労省としては政府に対して継続すべきと、物を言うんだというふうに言ってくださいよ。

○国務大臣(塩崎恭久君) 先ほども申し上げたように、三十年の三月までに検討していくことになっておるこの検討の事項でございますけれども、今お触れをいただいたように、基本合意の中に、利用者負担における当面の措置、その中で、自立支援医療に係る利用者負担の措置について当面の重要な課題とすると、こういうふうに明定をされています。
 我々、答弁でも申し上げたとおり、この基本合意並びに骨格提言の中の当事者や関係者の皆様方の思いをしっかりと受け止めながら今後の検討をしていくということを申し上げているわけで、自立支援医療に係る低所得者の利用者負担、この在り方について、今申し上げたような観点から、当面の重要な課題とされているこのことについてもしっかりと、様々な御意見をしっかり受け止めながら、私どもとしても厚労省としても考えていきたいというふうに思っております。

○小池晃君 やっぱり低所得者だけじゃないですよ、これ。やはり中所得者だって、こういう心臓病のお子さんを持ったら本当に大変な負担になるわけです。お仕事にも大きな影響出るし。
 だから、私は、単なる低所得者、もちろん低所得者対策は必要だけれども、それだけではなくて、やはり本当に子育て支援というのであれば、最もこういう困難を抱えている、そういう方たちに対する、五十億円あれば継続できるような制度を打ち切るというようなことは私はやってはならないと思いますよ。自分は生まれてこなきゃよかったというようなことをおっしゃるという話も聞くんですよ。そんなこと許していいのかということだと思います。これは真剣に考えるべき課題として問題提起したいと思います。是非これは継続していただきたい。
 それから、残る時間、どうしても熊本の問題、ちょっと今日、もう国会も終わりに近づいているので聞きたいんですが、雇用対策。
 これ、大変な今事態が起こって、ハローワークへの相談件数が物すごく増えている。一万三千件を超えたそうです。雇用保険の手続が七千二百件、雇用調整助成金三千三百件、仕事そのものについての相談千三百件。ハローワークの窓口二時間待ちという状況はいまだに解決されていません。厚労省、応援体制は今どうなっていますか。

○政府参考人(生田正之君) お答えいたします。
 今委員御指摘になったような事態に対応するために、ハローワークの全国ネットワークを活用いたしましたローテーション方式によりまして、雇用保険、雇用調整助成金の事務に精通した職員を他の労働局から熊本に応援派遣をしておりまして、現在九名の応援を行っております。

○小池晃君 九名、九名なんですね、これだけ仕事増えているのに。
 九つハローワークがあり、一つの出張所があり、労働局には十か所あるわけです。職員は臨時職員含めても三百五十人。これ、大臣、先日現地を視察されて、実際その職員の皆さんは自ら被災をされ、その中で懸命に奮闘している姿を直接御覧になっているというふうに思うんですね。そこに応援が九人、これでいいんでしょうか。
 私は、震災という事態ですから、なかなかこれすぐに解決しない問題がいっぱいあるわけです、雇用の問題。それから、施策拡充している部分もありますから、通常よりもだから相談に時間が掛かっているわけですよ。制度に熟知した職員をやっぱり多数派遣する必要が僕出てきているというふうに思うんです。大臣の責任で被災地のハローワークに対する応援体制を抜本的に強化すべきではないですか。

○国務大臣(塩崎恭久君) 先週日曜日に、三回目、熊本に行ってまいりましたけれども、やはり一か月余りたって、雇用の問題が大変心配であるということは私も共通認識でございます。
 益城にも参りましたけれども、やはり、益城の方々が上益城に、隣町にハローワークは一応ありますけれども、そこまで行くのに車で二十分ぐらい掛かるわけですから、そんな余裕は多分ないんだろうというふうに私は思って、前回、松村委員の予算委員会での質問でも申し上げましたけれども、やはり、被災した事業所に対して、待ちの姿勢ではなくて、こっちがハローワークに来てくださいと言うんじゃなくて、むしろ積極的に出向いて、例えば雇用調整に関する情報を早期に把握をするということとか、それから、既に実施をしている雇用調整助成金とか雇用保険の特例措置、こういったことについて事業主向けの説明会の開催とか、あるいは事業主団体に出向いて説明をするなどあらゆる機会を捉えて周知を強化せよということを言ってまいりまして、離職の防止に向けた働きかけを強力に進めてきております。
 雇用調整助成金等の手続に慣れていない中小企業の皆さん方によりきめ細かな相談とかアドバイスを行うようにするために、来週からは応援体制、今九人ということでありましたが、二十人規模に増員をいたしまして体制を強化するということにしているところでございまして、今後とも被災地のニーズをどうきめ細かく把握をしていくかということが大事でありますので、今、元々の労働局の職員も出向いていく、シフトに入ってもらっているわけでございますので、万全を期してまいりたいというふうに思います。

○小池晃君 九人が二十人じゃスズメの涙じゃないですか。もう一桁増やせというさっき声あったけど、そうですよ、やっぱりね。これ、やっぱり抜本的にやらないと本当に現地大変ですよ。短期間の支援でしょう、これは限定された期間でしょう。やっぱりもっと思い切ってやらなきゃ駄目ですよ。やれること全てやると言っているんだから。
 それから、もう時間の関係で質問じゃなくて要望にとどめますけど、離職が続く中で、熊本県熊本市は実際に臨時職員を五十名募集して、避難所の働く臨時職員を募集しているわけです。こういったことをやっているわけですね。緊急雇用創出事業というのが国はあって、一時的な雇用創出をやった経験もあるわけです。是非、これ熊本県熊本市の国に対する要望の中には緊急雇用基金の創設による就業支援というのは出されています。もう補正予算はすぐにでも自治体の要望に応じるためにということで作ったわけでしょう。私は、やっぱりきちっとこの熊本で雇用を国がつくるということも、仕事もちゃんとやるべきだというふうに思います。
 自治体の要望を受け止めるかどうか、そのことだけでも言ってください、じゃ。

○国務大臣(塩崎恭久君) 実際、熊本市長からもその五十人のお話は直接私も聞いております。
 したがって、我々としては雇用の影響を、先ほど申し上げたように、二回目のときもそうでしたし、三回目はもっと緊迫度を増しているというふうに思いますので、適切なる連携を自治体としっかりやりながら、この基金という方式にはとらわれずに必要な雇用対策はしっかりと検討して打っていきたいというふうに思います。

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