赤旗2016年3月27日付
国や自治体の責任で行うべき仕事を社会福祉法人に肩代わりさせる社会福祉法改悪案が、福祉施設を利用する障害者や福祉保育労働者らの反対にもかかわらず、23日の参院本会議で可決されました。しかし、これまでの運動と国会論戦で今後のたたかいに生かせる答弁が引き出されています。
改悪案は、社会福祉法人が「多額の内部留保を有している」という根拠のない前提に立って、すべての法人に「地域公益活動」(無料・低額の福祉サービス)を義務づけるもの。既存の事業費などを引いた残額を地域公益活動などに回す投下計画の作成と自治体などの承認を受けることを義務づけます。今でも厳しい社福の経営実態に拍車をかけ、本来の福祉サービスが低下するとの批判の声があがっていました。
■付帯決議で
日本共産党の小池晃議員は15日の参院厚生労働委員会で、「国が果たすべき役割を社会福祉法人に肩代わりさせるものだ」と追及しました。仮に「残額」が出ても本来の事業に使うのが筋だと小池氏が指摘すると、塩崎恭久厚労相は「職員の処遇改善を含む人材への投資など社会福祉事業への再投下を最優先とする。(本来)事業の適正な運用への活用は担保されている」と答弁。厚労省の石井淳子社会・援護局長は、「残額」すべてが本来の社会福祉事業のみに充当する「計画」でも認められるとの認識を示しました。
同委員会で可決された付帯決議にも、本来の事業を優先し、「過度の負担を求めるものではないことを周知徹底すること」が盛り込まれました。
また小池氏の質問に石井局長は「(追加的な事業である)地域公益事業は(本来の)社会福祉事業に支障がない範囲で実施していただくもの」と答弁しました(17日)。さらに石井氏は、例えば手厚い支援を要する障害者を多く受け入れ、募金なども含めて何とか経営を維持している障害者施設はどうかと問われると、「残額」がないのに追加的な費用をかけて公益事業を行うことは求めていないと認めました。
■算定方法も
「残額」の算定方法が省令任せになっていることに対しても批判が集中していた点です。参考人として同委員会で発言した家平悟・障害者の生活と権利を守る全国連絡協議会事務局次長は「国会が白紙委任をして、本来利用者の支援のために使われるべきお金が他に流用されることにならないのか」と指摘しました(16日)。付帯決議には、「社会福祉法人の経営に支障を来すものとならないよう、事業の継続に必要な財産額が適切に算定されるようにすること」という文言が盛り込まれました。
改悪案は前国会で衆院で可決されていますが、参院で前国会から継続した案件のため、国会法の規定により再び衆院に送られました。