日本共産党 書記局長参議院議員
小池 晃

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2016年3月10日 財政金融委員会 速記録

2016年03月10日

○小池晃君 日本共産党の小池晃です。
 マイナス金利政策についてお聞きをします。
 前回の委員会で、マイナス金利政策が、尋常ならざる手段でなければ日本経済は立ち直らないと、そういうメッセージを送ったことにならないか、国民はそう受け止めているんではないかという質問に対して総裁は、御指摘のような声も含めていろいろな声があるというふうにお答えになったんですね。
 一昨日、内閣府が消費動向調査を発表して、二月の消費者態度指数はマイナス二・四とかなり落ち込んでいるわけですが、マイナス金利政策もここに影響したんじゃないかと思いますが、どうですか。

○参考人(黒田東彦君) 消費者態度指数は、振れを伴いつつも緩やかな改善傾向を続けてきたわけですが、年明け以降、二か月連続で前月比低下しておりまして、二月は前月差マイナス二・四ポイントとやや大きめの低下となったことは承知しております。この背景といたしましては、世界的に投資家のリスク回避姿勢が過度に広まる中で、我が国を含めて金融市場が不安定な動きとなっていることなどが影響しているのではないかと見ております。

○小池晃君 何か人ごとみたいなんだけど、やっぱりマイナス金利政策がその不安定さに影響を与えたことは間違いないと私は思うんですね。
 私、先ほど大塚委員も指摘をされた低金利政策の影響について聞きたいんですけれども、黒田総裁は新聞のインタビューで、預金金利は元々低いと、住宅ローンなど貸出金利の低下の方が下げ幅も影響もずっと大きいというふうにおっしゃっているんですけど、それでは、マイナス金利は家計には大きな影響はないという認識なんでしょうか。

○参考人(黒田東彦君) そもそも日本銀行の量的・質的金融緩和というものは、二%の物価安定目標の早期実現、これを目的として行っておりまして、金利全般に強い下押し圧力を加えて実質金利を引き下げて経済にプラスの影響を及ぼすということでございまして、具体的には、企業向け貸付けあるいは住宅ローン金利の低下を通じて設備投資や住宅投資などの経済活動が刺激されて国民所得が増加することになるということでございます。こうした国民所得の増加というものは、家計所得にもプラスの効果をもたらすものでございます。実際、二〇一三年四月に導入された量的・質的金融緩和の下で企業収益が過去最高水準で推移しておりますほか、家計についても、失業率が三%台前半まで低下するなど、雇用・所得環境は大きく改善しております。
 今回のマイナス金利付き量的・質的金融緩和は、日銀の当座預金の一部にマイナス金利を適用して更に実質金利を引き下げていこうというものでございます。こうした金融緩和が家計に与える影響につきましては、今申し上げた従来からの量的・質的金融緩和、今回のマイナス金利付き量的・質的金融緩和とも、家計と金融機関の間の金融取引に関する損益だけでなく、経済全体に与える影響という観点から議論する必要があるのではないかと思います。
 その上で、金融取引だけについて見ましても、預金金利についてはマイナス金利の導入以降低下しておりまして、この点はデメリットと言えるのかもしれませんが、元々ゼロ%に近かったために、その低下幅はごく小幅なものにとどまっております。一方、住宅金利の金利ははっきりと低下しておりまして、今後、住宅投資にもプラスの影響が及んでいくというふうに考えております。

○小池晃君 最後のところだけでいいんですよ、今の答弁は。長々やらないでいただきたい。
 私は金利の問題について絞って聞いているわけです。先ほど大塚委員も指摘をされたように、家計に影響は出ている、これは間違いないわけです。
 資料の一枚目に、低金利の家計への影響、それから企業への影響について出しました。これは一定の前提を置いて日銀が試算したものであります。
 これ低金利政策が始まった九一年を起点として、その金利水準が続いていた場合と比較をして受取利子と支払利子を計算したわけですけれども、家計部門は逸失利子、これが六百六兆円、それから利子、安いことによって負担が軽くなったのは二百十四兆円ですから、ネットで、差引きでこれは三百九十二兆円のマイナスということになる。年平均で約十六兆円のマイナスです。それから下のグラフの方は、これは企業部門で同様に試算したものですけれども、払わなくて済んだ金額がこれ二十四年間の差引きで五百七十一兆円。企業は年平均二十四兆円のプラスになるわけですね。
 総裁、これは、この利息のところに着目をすれば、家計部門から企業部門に巨額の所得が移転したという事実は事実としてお認めになりますか。

○参考人(黒田東彦君) 一般に、金融緩和を推進して金利水準が低下しますと、資金の貸し手から資金の借り手に所得移転が行われるという面があることは否定できません。もっとも金融緩和は、金利水準の引下げを通じて設備投資や住宅投資などの経済活動を刺激し、国民所得を全体として増加させることを目的としたものでございます。
 したがいまして、金融緩和の効果を検証する際には、金利低下に伴う経済主体間の所得移転という点に限定するのではなく、経済全体としての国民所得の増加、すなわち企業収益や雇用者所得の増加という幅広い観点から議論する必要があるのではないかというふうに考えております。

○小池晃君 私は、要するに、低金利のプラス面だけを強調するような議論はおかしいではないかと言っているんですよ。やはり、長期の低金利政策が国民に負担を強いているということをきちんと認めるべきだと。
 これまでの総裁と黒田総裁はスタンス違うと思うんです。白川前総裁は、金融緩和が家計の利子所得の減少要因となって、個人消費の減少要因であると国会で述べている。それから、福井元総裁も、これ国会で、家計に重い負担を掛けている、市場メカニズムを犠牲にした大変コストの掛かる政策だというふうに言っているわけです。もちろん、お二人とも金融緩和を進めた責任者である、金融緩和が企業投資を活性化するんだという効果も強調していますけれども、はっきりマイナス面を国会で認めていらっしゃるんです、正直に。
 ところが、総裁は、新聞のインタビューなども含めて、これはプラス面ばかり強調してマイナス面語らないじゃないですか。私は、いいことずくめであるかのような説明ではなくて、長期にわたる緩和政策が国民に負担を強いていると、個人消費にマイナスだということを私は率直に認めるのが日銀総裁としての説明責任だというふうに申し
上げているんですけれども、いかがですか。

○参考人(黒田東彦君) 先ほど申し上げたように、金融政策というのはあくまでも物価安定を目標にしたものでございまして、現在の政策は二%の物価安定目標をできるだけ早期に実現するということのために様々な努力を行っております。
 先ほどもお答えいたしましたように、金融緩和を推進して金利水準が低下すれば、資金の貸し手から資金の借り手に所得移転が行われるという面があることは否定できません。それは認めております。
 ただ、もっとも、今申し上げたように、金融緩和というのは金利水準の引下げを通じて経済活動を刺激して国民所得を全体として増加させることを目的としておりますので、金融緩和、金利低下の効果を検証する際には、やはり金利低下に伴う経済主体間の所得移転という点だけに限定すると適切ではなく、やはり経済全体としての国民所得の増加、すなわち企業収益や雇用者所得の増加という幅広い観点から議論する必要があるのではないかというのが私どもの考え方でございます。

○小池晃君 いや、だから、私が言っているように、そこを全体で議論していいんですよ。その移転という側面で、利子所得の移転という側面ではやっぱり家計に負荷を掛けているという事実は事実としてきちっと認めてくださいと。まあ事実上ちょっと認めるようなニュアンスの発言もあったんで、これ以上やってもちょっとらちが明かないと思うんで、次の問題行きたいと思うんですけど。
 この異次元緩和が日銀の財務を悪化させる、国庫納付金の減少として国民の負担につながるという問題についてお聞きをしたいと思うんです。
 日銀の副総裁だった岩田一政さんは、これは昨年の秋に、異次元緩和は出口過程において日銀が赤字になるリスクが高いというふうにおっしゃって、しかし、総裁はこの間、大門委員なども何度も質問していますが、出口については具体的に述べないというふうにずっと続けてこられました。
 資料の二枚目を見ていただきたいんですけれども、そういう中で国庫納付金、法定準備金、どうなってきているか。法定準備金の積立ては通常は剰余金の五%とされておりますが、平成二十五年度はこれは剰余金の二〇%で千四百四十八億円、二十六年度は二五%で二千五百二十二億円と急増して、その分、国庫納付金が減額されています。大門議員が、この問題、理由、質問したときに、総裁は、大規模な金融緩和に伴って従来よりも日銀の収益の振り幅が大きくなる可能性があるということはおっしゃった。
 私は、この出口における日銀の負担増については、民間はいろんな試算をしているわけで、例えば先ほどの日銀元副総裁が理事長を務めているシンクタンクは、これは異次元緩和の出口の局面で、最も短いケースで三年間、場合によっては六年間、国庫納付金がゼロになるという試算を発表しています。
 日銀は、異次元緩和の出口のコストの試算、公表していませんけれども、これ内部では当然やっていると、やっていなきゃおかしいと思うんですけど、ここはどうなんですか。

○参考人(黒田東彦君) いわゆる出口の際に実際に日本銀行の収益がどうなるかというのは、御案内のとおり、どのような手段をどのような順序で進めるかという進め方に加えまして、その時々の金利情勢などによって大きく変わり得るものでございます。
 したがいまして、観念的にいろいろなことは検討されるわけでございますけれども、それはあくまでも実際の出口の際の手段、順序そして金利情勢などによって大きく変わり得るものでございますので、現時点で具体的にお話しすることは適当でないと考えております。
 その上で、従来から申し上げておりますとおり、量的・質的金融緩和あるいはマイナス金利付き量的・質的金融緩和の下での国債の買入れ、これは政策を推進していく過程では日本銀行の収益を押し上げる一方で、いわゆる出口の局面では収益を押し下げる性質を一般的には持っております。
 そこで、日本銀行では、収益の振れを平準化し財務の健全化を確保するという観点から、御指摘のような点も含めて一部を積み立てるということをやっておりまして、さらに、将来、収益が下振れる局面で取り崩すことができますように、昨年、政府に関係政省令を改正していただきまして引当金制度を拡充したところでございます。

○小池晃君 FRBは、これは少なくとも大規模金融緩和を進めた当初から出口コストについて試算を発表しているわけです。国庫納付金が減少する懸念についても明らかにしているわけですね。FOMCにおいてもそういった試算を踏まえた議論をやって、金融政策に反映させているわけですよ。私、だから、それは詳細に全部言えないというのは、それはそうかもしれない。しかし、試算やっているかどうか、やはりコストがこれは掛かってくるんだということについてやっぱりきちっと説明すると。
 私ちょっと金融の世界というのはいたわけじゃないからよく分からないけど、例えば総裁がやっていることは医者でやったら、これ病気になって、しかしこの薬とこの治療は必ず効きます、治りますというふうに言って、私に任せておきなさいと。それで治りゃいいんですよ。いつまでたっても治らないんですね。延々と続いているわけですよ。そうなると、やっぱり患者さんは不安になるわけです。やっぱり、実際に今の治療にどういう副作用があって、どういう困難があって、でもやっぱりこれは私は頑張りますから一緒にこの病気治しましょうというのが医者の姿勢なんですよ。
 総裁のやっているこの今の説明の仕方というのは、私は、国民の不安や市場の不安に応えるような、日銀総裁としての責任を果たすようなことやっていないんじゃないかというふうに思うんです。きちんと出口についてのコストについて正直に国民に対して、やっぱりそういう危険があるんだということを語るべきだし、日銀がやっぱり今検討している中身をちゃんと説明すべきだというふうに思います。(発言する者あり)そんなことないですよ。本当は今の、まさに黒田総裁こそ私は、まあやぶ医者という言葉は余りよくないですから使いませんけれども、これはやっぱり患者さんの不安をかき立てるだけの医者だと思いますよ。
 ちょっとちゃんとやっぱりそういう責任果たしていただきたいと思うんですが、いかがですか。

○参考人(黒田東彦君) 確かに、FRBは出口戦略の原則であるとか、あるいは収益シミュレーション等を発表したことは事実ですが、御案内のとおり、実際の出口戦略は事前に言っていた出口戦略と全く逆になっております。
 そういったことで、そういったものを余り早く、まだ出口に差しかかって、出口が具体的に検討されていない段階で、いろんな状況によって具体的な出口の手段とか順序も変わりますし、それの収益への影響も変わるわけですので、そういった不確実でどっちに行くか分からないようなことを余り早く言うというのはかえって市場に対して不安定さをもたらしてしまうおそれがありますので、出口について具体的にお話しすることは適当でないと申し上げているとおりでありまして、したがいまして、出口のところでの収益の状況についても具体的にお話しするのは適当でないと思っております。
○小池晃君 いや、始めた当初だったらそういう議論もあるかもしれないけれども、もう延々と続いて、一向に出口が見えない、一向に効果が見えないという状況になっている中で、やはり私は、説明を避け続けるという態度で本当に責任果たしたことになるのかということを聞いているわけです。
 麻生大臣、先ほどから何かいろいろとおっしゃっているけれども、これ日銀だけの問題じゃないわけです、これは。これ、政府の経済・財政再生計画のベースになった試算でも、これは毎年五千億円程度国庫納付金が入るということが、二〇二四年までそれが前提となっているわけでしょう。ところが、元日銀副総裁などはこの五千億円が何年にもわたってゼロになる可能性を指摘しているわけですから、これ重大な問題じゃないですか、財務当局にとっても。大臣、ちょっと聞いていますか。
 やっぱり、国家財政に何兆円も穴を空ける可能性、危険性があるという、そういう状況であるにもかかわらず、この日銀の姿勢のままでいいんですか。この再生計画のままでいいんでしょうか。

○国務大臣(麻生太郎君) 財政に対するマイナス金利の影響という話なんだと思いますが、これは今、小池先生御指摘のように、日銀の納付金がありますけれども、マイナスの金利になりますれば、当たり前の話で、日銀が金融機関に支払う利息が減りますので日銀の収益が増える。当たり前でしょう。国庫納付増があります傍ら、金利が低くなりますので日銀が受け取る国債利息収入が減るということになりますから、日銀の収益が減るという国庫納付減と両方ということになりますので、この点については、日銀の収益及び国庫納付に与える影響については、これはなかなか一概に申し上げることはできないということだけははっきりしていますでしょう。
 そのほか、国債費、これ日銀の話ですから、出口の話についてはね、国債費につきましては、金利が低下すればその時点における資金調達コストが低下するとか、歳入歳出両面で財政への影響がいろいろ生じてくるのは、これは当然のことだと思っております。
 いずれにしても、政府としては、これは財政ファイナンスというような、いわゆる疑念を抱かれることがないように、マイナス金利による影響をよく見極めながら、政府、日銀の共同声明に沿って財政健全化の取組を進めていくことが重要であると考えておりますので、今出口の話をしておりますが、この件については日本銀行の所管のところだと思っておりますので、私どもとしてはそれが基本的な姿勢だと思っております。(発言する者あり)

○委員長(大家敏志君) 速記を止めてください。
〔速記中止〕

○委員長(大家敏志君) 速記を起こしてください。

○国務大臣(麻生太郎君) 最後のところはお聞こえにならなかったという話ですか。そう今聞こえましたので、確認しますけど間違いありません
ね。(発言する者あり)という質問をいただいたと、それで間違いありませんね。(発言する者あり)そうですか。
 出口のことにつきまして、このことにつきましては私どもの所管するところではなく、日本銀行の責任でやられているということを申し上げたと存じます。

○小池晃君 だから、出口の問題が財政にとっては大変な問題になるじゃないですかと言っているんです、私はね。これは日銀だけの問題じゃないんですよ。国庫納付金がゼロになるかもしれないと言われている。そのことについて、財政当局としては見て見ぬふりするんですかと聞いているんです。日銀の問題だで済ませる問題じゃないです。

○国務大臣(麻生太郎君) 先ほどの私にいただいた話と全然違いますので、民共合作ってなかなかうまくいっていないのだなともちょっと思わないでもありませんでしたけれども……(発言する者あり)俺も、今のちょっと、今のは訂正します。なかなか、言ってきた話と違いましたので。訂正させていただきます。
 今のお話ですけれども、国庫納付金が減るという点もありますけれども、我々としても、先ほど申し上げたように、プラスの面もありますので、今の段階で一概にそういった見解は、今の段階から軽々しく言うべきではないと思っております。

○小池晃君 国庫納付金が減るという問題がありますけれどもで済ませられる問題じゃないと思うんですよ、私、これは。だって、五千億円入り続けることが前提となった財政計画なわけですから、やっぱりそのことを放置していいのかと。もうちょっと時間がないので。
 私は、この出口コストの問題というのは、日銀だけの問題じゃなくて、財政も含めてこれは日本の未来に関わる問題だと。ところが、見て見ぬふりで突き進むと。やっぱり異次元緩和やめなきゃ駄目ですよ。やっぱりこのトリクルダウンの政策から抜本的に転換するということをしなければいけないというふうに申し上げて、質問を終わります。

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