「赤旗」2015年10月10日付
共通番号(マイナンバー)制度の導入を受け、厚生労働省は、介護保険の各種手続きで来年から個人番号の記載や確認を求めることを決め、全国の事業者に通知しました。利用者や介護事業所などの負担が大幅に増えることに懸念が広がるなか、この通知をめぐって一部の自治体が誤った“指導”を始めたことで混乱に拍車がかかっています。
通知は9月29日付老健局長名で出されたもの。介護保険証の交付申請▽要介護・要支援認定の申請▽同更新認定の申請▽高額介護サービス費の支給の申請―など、あらゆる申請書に個人番号を記載するよう求めました。高齢者・利用者には何のメリットもない、手間を増やし、個人情報の流出のリスクを高めるだけの改悪です。
行政が対応誤り
介護保険の申請では、認知症や要介護状態の本人に代わって介護事業所・施設の職員やケアマネジャーらが代行している実態が多くあります。厚労省の通知に対して、事業者からは、その場合「個人番号が分からないケースでも申請が受け付けられるのか」「本来、個人番号の管理事業者ではない介護事業者が番号を集めていいのか」「万一、番号が漏れた場合は介護事業所が罰則を受けるのか」などの疑問が噴出しています。
さらに、厚労省の通知を受け、一部の自治体が「今後、個人番号の記載がない場合は申請を受け付けない」「介護事業所が申請を代行する場合は、マイナンバーカードか、そのコピーを持参するのが義務」だと説明。現場は大混乱に陥っています。
こうした事態を受け、日本共産党の小池晃参院議員と全日本民医連の担当者らがこのほど、緊急に同省老健局に対し対応をただしました。
同局担当者は、「個人番号の記載がなければ介護保険の申請は受理されないということか」との質問に「そうならないようにする」と回答。たとえ記入がなくても、行政が住民基本台帳から番号を確認することは可能であり、“番号の記載がないことを理由に申請をはねのけることはしない”ことが確認されました。
介護事業所に利用者の番号が蓄積される問題をめぐっては、番号の管理は求めるが「万一流出しても、故意に漏らしたのでないかぎり罰則はない」と説明。「自治体の対応や事業者での番号の取り扱いなどについては、今月中に具体的な中身を示す事務連絡を出す」「自治体に誤解を与えたり、事業所の業務に支障を与えないように配慮する」と繰り返しました。
抜本的に改めよ
小池議員は「介護サービスの申請・給付に本来必要のない番号の記載を義務付ける矛盾が露呈している。介護職員に個人情報を扱わせることは、利用者・家族との間にあつれきを生みかねない。こんなやり方は抜本的に改めるべきだ」と話しています。