○小池晃君 おはようございます。日本共産党の小池晃です。
前回散会となった質疑の続きをやりたいと思いますが、まず、厚労省に確認をします。
改正案の施行日前に労働者派遣契約を締結する派遣先と派遣元、及び派遣労働契約を結ぶ派遣元と派遣労働者、これは、今年十月一日には四十条の六の一項三号、つまり業務単位の期間制限違反のみなし雇用制度の適用があることを合意して派遣契約を結んでいることになると思うんですが、いかがですか。
○政府参考人(坂口卓君) お答え申し上げます。
ちょっと御通告なかったのであれですが、今回、今の時点で派遣契約あるいは雇用契約を結んでおられるということがあると思いますけれども、それ自体が四十条の六の現行の一項、四十条の六の一項の三号ですか、を前提にしているとは必ずしも言えないのだろうと思います。そういったことまでを、そういったことまでを念頭に常に置いて、違法なケースが行われるというケースを置いてということではないのではあろうかと思います。
○小池晃君 ちょっと、信じられないですよ、これ。だって、今の法律あるわけだから、それを前提にして雇用契約を結んでいなかったらこの雇用契約は無効ですよ。これ、駄目ですよ、この答弁。こんなのじゃ話にならないですよ。
だって、それはだって現行法にあるわけだから、だから、十月一日に施行されるかどうかはこの法案が成立しなきゃ分からないわけじゃないですか。だったら、当然、そのことを含めて合意しているというのが当然でしょう。
○政府参考人(坂口卓君) 一つ一つの契約でそのことを明確に合意してという趣旨ではないという趣旨で申し上げたつもりだったんですけれども、今委員の方が御指摘されましたように、現行の法律の体系、まだ、ただその四十条の六はいまだ施行されていないわけでありますけれども、四十条の六という規定がある、改正されて施行前の規定があるということは、そういったことは念頭に置かれているということかと思います。
○小池晃君 いや、当然ですよ。それを含んで雇用契約結んでいなきゃ、それはおかしいわけですよ。
つまり、派遣労働者は、労働契約の上では期間制限違反のみなし雇用制度の権利を取得しているわけですよ。そのことは大臣も答弁されました、前回。当事者の期待を裏切ってはいけないという考えは理解している、期待権を守るという意味においては実効的に変わらないと、この答弁で裏付けられていると私は思うんです。この労働者の権利を奪うことは誰にもできないはずですよ。大臣、ところが、附則第九条の「なお従前の例による。」には未施行の四十条六の一項三号は含まれないなどという解釈を持ち出してきているわけですよ。この誤った解釈を撤回せずにこの法案を成立させれば、国会が立法によって派遣労働者が既に得ている権利を奪うことになるわけですよ。そういうことが許されるはずがないじゃないですか。
私は、この四十条六の一項三号を除くとするこの解釈は撤回していただかないとこれ以上進めないと思います。撤回してください。
○国務大臣(塩崎恭久君) 一般に、未施行の規定、これは未施行なわけですね、十月一日から施行でございますので、この規定には法的な効力が施行にならないうちは発生をしていないわけでございまして、この未施行の規定の施行に掛かる期待というのが先生がお触れになったわけでありますけれども、これは法律に特段の定めがない限りは直ちに保護されるものではないということで、この法制局のペーパーも理事会にお出しをしているわけでありますけれども、そこにもそのことは明確に書いてあるわけであります。
同様に、一般的に今そういうふうに申し上げたわけでありますけれども、同様に、この労働契約申込みみなし制度については、未施行の状況では法的な制度として効力が発生をしておらないために、この制度に対する期待、先生がおっしゃった、私もそれを受けて期待ということを申し上げたわけでありますけれども、この期待についても当然に法的に保護されるものではないということを申し上げているわけでございまして、私がその期待権という言葉を使ったことについて今お触れになりましたが、理事懇提出資料でも御説明させていただいたように、今回の附則第九条第一項に関連をして、改正前に締結をした派遣契約で働く労働者の方々が抱く労働契約申込みみなし制度の適用を受けられるという期待については法律で規定されてはおらないわけであって、法律上の権利は発生をしていないというふうに理解をしているところでございます。
○小池晃君 おかしいですよ。だって、それを含めて契約しているというふうに認めたじゃないですか。だったら、それは効力発していることになるでしょう。だって、それを含めて、期間制限違反のみなし雇用も含めて契約結んでいるということは、既にこの法律が未施行ではあるけれども労働契約上は効力を発生しているということじゃないですか、違いますか。大臣、答えてください、効力発生していますよね。
○国務大臣(塩崎恭久君) これ、今私から申し上げたとおり、この期待を持って雇用契約を結ばれたということはそのとおりかも分かりませんが、しかしながら、これは未施行でありますので、法律で規定されているわけではなく、法律上の権利は生じてはいないということでございまして、これを前提に契約を結ばれたんだということを申し上げているわけではないわけでございます。
○小池晃君 それを含めて契約結んだんだから、それ前提にして契約しているんじゃないですか。矛盾していますよ、今の。答弁矛盾しています。
○国務大臣(塩崎恭久君) いや、期待は持っていらっしゃったでしょうけれども、しかし、法律が施行されていない限りは、内閣法制局からのペーパーにあるように、これ、一般に、施行されていない法令の規定の改正を行った場合に、改正がなかったとすれば利益を受けた者の期待をそのまま保護しなければならないということではなく、改正における保護を具体的にどのように行うかについては、政策判断の問題、つまり別途、法律、手だてを打たないと、これを法律上に守られる権利というようなことには相ならないということでございます
。
○小池晃君 これ、政策判断だと言い出したのは重大ですよ。その政策判断、今までこの場では一切議論されていないんです。だったら、いかなる政策判断なのか、その政策判断がいかなる理由で出てきたのか、これはきちっと文書で提出してもらいたいと思います。委員長。
○委員長(丸川珠代君) ただいまの件につきましては、後刻理事会で協議をさせていただきます。
○小池晃君 その政策判断なるものによって、要するに四十条の六ではないけど、四十条の四があるからいいんだというふうにおっしゃっているようです。しかし、四十条の四と四十条の六は全く違うわけですよ。四十条の四は、行政上の効力しかありませんから、だから労働局が是正を指導監督はできても、応じない限りはこれは労働契約は成立しない、だからわざわざみなし雇用制度をつくったわけですよね。
みなし制度は民事上の効力を持つ、派遣先が派遣労働者に対して労働契約申込みをしたとみなされて、派遣労働者が承諾すれば雇用契約は成立するわけですよ。四十条の四と六は全く効力が違うということは、大臣はお認めになりますね。全く効力違いますよね、イエスかノーかでお答えください。
○国務大臣(塩崎恭久君) 先ほどの質問で、ちょっと理事会協議になっていますけれども、私どもとして、その期待に対してはこの四十条の四の規定で保護をするということで、期待に一定程度応えるということにしているわけでございます。
それで、今、どこが違うのかということでありますけれども、四十条の四につきましては、労働契約申込みみなし制度と比べると確かに民事上の効力を有していない、民事効がないということで、保護の程度が弱いという御指摘だというふうに今受け止めましたが、しかしながら、この四十条の四の労働契約申込み義務というのは行政指導であって、この履行を行政指導によって図るわけでありまして、労働者の方に裁判まで起こしていただく必要がないということ、それから、労働契約申込み義務を履行しない事業所については、この法第四十九条の二の第一項に基づいて当該義務を履行するよう勧告できるほか、同条第三項に基づいて企業名の公表という社会的制裁を加えることも可能であって、また先生御指摘のとおり、二十六業務と詐称した派遣につきましては、一般に法第四十条の四の規定が適用されることはないわけでありますけれども、このような場合であっても期間制限を超えて派遣先が当該派遣労働者を受け入れている場合、これには法第四十九条の二の第二項の規定においては、指導、助言を行った上で当該派遣労働者を雇い入れるように勧告することができるようになっているということでありまして、先生、弱いじゃないかということを四十条の四につきましておっしゃったわけでありますけれども、確かにさっき申し上げたとおり、民事効がないというようなことにおいてはそうですけれども、実効的に、私どもとしては、派遣労働者の保護に欠けることがないということで、四十条の四を経過期間中に適用するということで、このみなしを代替するということでございます。
○小池晃君 ちょっと、もうちょっと答弁簡潔にさせてくださいよ。これ、やり方ひどいですよ。最初の一言だけでいいんですよ。民事上の効力ないんですよ。全然違うんですよ。
厚労省、聞きますが、四十条の四による是正指導を行った例は過去何件ありますか。それだけ答えてください。余計なこと言わないでください。
○政府参考人(坂口卓君) お答えいたします。
これまで都道府県労働局の実施する監督指導におきまして、現行法の四十条の四に違反するとして指導した件数でございますけれども、平成二十三年度が一件、平成二十四年度がゼロ件、平成二十五年度が一件、平成二十六年度が一件ということになっております。
○小池晃君 過去三回しかないんですよ。
今日お配りしていますけれども、労働契約みなし制度がもしできた場合に、その対象となり得る派遣先、発注者に対する行政指導件数、これ厚労省出していますけど、これ見ると、二〇一〇年度は四百六十八件、一一年度四百五十七件、一二年度三百四十六件、一三年度三百十一件、一四年度二百九十七件、雲泥の差なんですよ。
しかも、四十条の四というのは、是正指導しても、これは派遣先が応じなければ直接雇用にならないわけで、これ大臣、全く違うわけです。実際に、日産、いすゞ、パナソニック福井、派遣切り裁判でも四十条の四で直接雇用に結び付いた例は一つもないんですよ。これが実態なんです。どうしてこれで派遣労働者の保護に欠けることはないなどと言えるんですか。全く効力も違うし実態としても働いていないじゃありませんか。しかも、これ見ていただくと分かるように、そのみなし制度の対象となり得るものの圧倒的多数は期間制限違反なんですよ。これをやめてしまうわけでしょう。そうしたら、救えなくなるんですよ、労働者が。
この法案の施行日は九月一日であります。もはや施行不可能です。ところが、与党は今日の理事会でもこれを延期するということを表明しました。九月三十日だということも言われているわけですよ。九月三十日ということは、十月一日のみなし雇用の施行前にしたいということでしょう。これ、自分たちが賛成してつくった制度なのに、それが実行される直前に発動を停止するって、こんな理不尽なことはないですよ。
しかも、この今問題になっていることは、施行日前に派遣契約を結んでいた労働者の既得の権益まで奪ってしまうわけですよ。こんなことが大臣、許されるんですか。私、いろんな労働法制の審議に今まで参加してきたけれども、こんなでたらめでこんな無法なやり方は今まで経験ないですよ。
大臣、この当然の疑問にあなたはどう答えるんですか。
○国務大臣(塩崎恭久君) これは繰り返し申し上げて恐縮でありますけれども、私どもが提出させていただいた、厚生労働省の中でも、契約をする、この施行前にですね、契約をされた方の、何というか期待というようなものについて御説明を申し上げました。法制局からの考え方も示せということでございましたので法制局からの考え方もお示しをしたわけでありまして、そこにも全く同じ論理で、この「なお従前の例による。」ことの中には未施行の法律は入らないということが明確に書かれているわけでございます。
しかし、私どもは、確かに十月一日から施行になるということは、それは多くの方が御存じの上で労働契約を結んだかも分からないということにおいて、先生が前回御指摘になったように、期待というものがあったということを否定をしているわけでは全くないわけでありまして、それに対する私どもの考え方は、先ほど来申し上げているとおり、この施行日にそのまま施行すれば受益がある者の期待を保護する必要が未施行である法律の規定の改正を行った場合にはあるわけではないということで、その言ってみれば代替手段として、私どもは、先ほどの法制局が言っている政策判断の問題として、私どもが申し上げているのは、この現行法第四十条の四の規定、弱い強いの評価はそれはおありでしょうけれども、私どもとしては、これをもって派遣先の労働契約申込義務によって派遣労働者の保護を図るということを判断したわけでありまして、あとはそれについてどうお考えになるかということで今お考えを頂戴をしたというふうに理解をしているところでございます。
○小池晃君 お考えを頂戴したって、そういう問題じゃないでしょう。だって、明らかに弱いと認めているじゃないですか。これは明らかに四十条の四と四十条の六というのは全く違うわけですよ。これによって期待が生じることも認めているわけですよ。
それを、これで期待に応えることになるんですか。四十条の六で雇用契約を期待して結んだ人が、四十条の四でその期待に応えることができるんですか。答えてください。
○国務大臣(塩崎恭久君) そこは先ほど来申し上げているように政策判断であって、私どもは一定程度この派遣労働者の期待というものに、まあ保護をするという意味においてその期待に応えるということで、四十条の四を適用することによって、この期間制限違反などについての違反行為について言ってみれば保護をするということをやるということを言っているわけで、弱い強いによってそれは全く当てはまらないという問題ではなくて、当てはまるけれども、それは相対的に強いか弱いかという判断があるということでございまして、それはもうどういうふうな違いがあるかということは先ほど申し上げたとおりであります。
○小池晃君 全く意味不明、支離滅裂だと思いますね、私ね。結局、これ何のための法案なのかというのがはっきりしてきますよ、この議論をやると。
経営側は何と言っているか。今日お配りしていますけれども、週刊経団連タイムス、これ見ますと、三枚目、二ページ目ですけれども、三枚目のところに労働者派遣法について書いてある。この弁護士さんは何と言っているかというと、施行前に締結した労働者派遣契約には旧法が適用されるという経過措置が設けられる、条文を読めば、仮に期間制限違反となっても労働契約申込みみなし制度は適用されないと考えられることから、経過措置の利用は検討に値すると。
国会では初めて議論されたことが、既に経団連の中ではこういうふうに議論されているわけですよ。経営側は公然と、新法が通れば今の派遣契約、違反していても大丈夫だから、利用は検討に値すると言っているんですよ。
大臣、どこが、大臣は派遣労働者のための法案だと繰り返してきたけれども、派遣労働者の期待が全部保護されなくてもいいというふうにはっきりおっしゃった。そして、経営側はこういうふうに言っている。労働者の既得の権利まで奪えって。骨の髄まで企業サイドに、要求に応えるのが今度の法案だということになるんじゃないですか、これ。答えてくださいよ、この疑問に。
○国務大臣(塩崎恭久君) 経団連でどういう方がどういう御発言をするかは、それは経団連の問題なので、私どもの問題では全くありませんのでそれについてのコメントはする必要がないというふうに思いますが、私どもは、何度も申し上げているように、この「従前の例による。」という中で旧法が適用になるということでありますから、未施行のこのみなし制度は適用されないけれども、それに代えて、今までございました労働契約申込義務であります四十条の四をもってこれは派遣労働者の皆さん方の保護を図るということを申し上げているわけであって、それについてのそれは御評価はいろいろあろうかというふうに思うわけでありますけれども、そこはこの委員会で議論をさせていただいているというふうに私は思っております。
○小池晃君 全然駄目です。こんなことでこの法案通すわけにいかないです、絶対に。
今日、日本経済新聞に、日経新聞社とNTTコムオンライン・マーケティング・ソリューションの共同調査、結果が出ています。派遣法改正案の賛否。派遣労働者の中では六八%が反対だと。そして、二十六業務の人の反対は七七%だと。もう七割、八割の派遣労働者が反対しているんですよ、この法案。そのことも今日出てきたわけですよ。
派遣労働者のためでも何でもない。業界の権益を守るだけの、そのための法案だと、しかも派遣労働者が持っている既得の権利まで奪ってしまうと、こういうやり方は断じて許されないということを申し上げて、質問を終わります。