2015年6月2日
参議院厚生労働委員会
○小池晃君 日本共産党の小池晃です。
津田理事が先ほども言われていましたけれども、十年前、この場で参考人質疑、決議を上げて、そのことも思い出すんですが、やはり自殺というのは、これは個人の問題ではなくて、多くが防ぐことのできる社会的な問題だと。誰も自殺に追い込まれることのない社会の実現を目指す、それを政治の意思として確認をして、法律を作り、その法律が実際に政策効果も上げてきたというのは、私は大変大事なことではないかなというふうに思っていまして、とかくこの厚生労働委員会は、対決法案、時には激突ということが多いわけですが、やっぱりそういう中で本当に大きな役割を果たしたんではないかなと私自身も改めて感じています。
しかし、同時に、やはり一日七十人以上の方が自ら今も命を絶っているということは、これは何としても解決をしなければいけない問題である、引き続き大きな課題であるというふうに思うんですね。
今日は、いろんな角度から議論されていますが、自殺未遂の問題に、未遂者あるいは未遂者家族の支援に限って中心に質疑をしたいと思います。
自殺されている方の約二割、三割は自殺未遂歴があると言われていて、基本法でも大綱でもこの対策の重要性は指摘をされているわけです。大臣にまず、未遂者対策というのは、これは自殺予防・防止対策にとって非常に重要性が高い課題であると思うんですが、その認識をまずお伺いしたい。
○国務大臣(塩崎恭久君) 自殺者の自殺未遂歴というのは、男女共に二十歳代から四十歳代で極めて高くて、特に女性の二十から四十歳代においては四〇%以上という自殺未遂歴がございまして、自殺の予防を進める上で自殺未遂者対策というのは重要であるという認識を私も感じているところでございます。
自殺未遂者に対する支援については、これまでに、救急医療や精神科医療で働く医療従事者を対象とする自殺未遂者に対する心理的ケアに関する研修、あるいは都道府県等が設置をいたします、先ほど来随分お話が出ておりますけれども、地域自殺予防情報センターにおける自殺未遂者やその親族等に対する相談対応などを実施するとともに、今年度から、救急搬送された自殺未遂者に対して入院中から相談支援を行う試行的な事業を新たに開始をしているところでございまして、こういうような取組状況を踏まえながら、今後とも自殺未遂者に対する適切な支援についても取り組んでいきたいというふうに思います。
○小池晃君 厚労省にお聞きしますが、今全国で自殺未遂、どのくらい起きているのでしょうか。
○政府参考人(藤井康弘君) お答え申し上げます。
先生、先ほど大臣も御答弁申し上げましたが、自殺者数に占める自殺未遂歴の割合につきましては警察庁の自殺統計等で私どもも把握をしておりますけれども、先生御指摘のような自殺未遂者数ということに関しましては、厚生労働省におきましては把握をしていないものでございます。
○小池晃君 総務省にお聞きをしたいと思いますが、少なくとも救急出動の搬送件数などで未遂というのは把握できるんじゃないでしょうか、その数は。いかがでしょうか。
○政府参考人(北崎秀一君) お答えいたします。
自殺未遂をした方の救急出動件数そのものではございませんけれど、消防庁では救急・救助の現況を毎年調査しておりまして、これによりますと、自損行為、すなわち故意に自分自身に傷害等を加えた事故で救急出動した件数は、平成二十五年中で六万四千六百二十二件となっておるところでございます。
以上でございます。
○小池晃君 自殺未遂者というのは、生きたい、死にたいというはざまを揺れ動いていると言われていて、やはりそういった方にしっかり対策をするというのは、本当にこれは最も緊急の支援の分野ではないかなと私は思うんですね。
大臣、いろいろと先ほどお話しされましたけれども、未遂者の数も現状では把握できていないというのが実態であります。これは、やはり全国の病院に対する調査であるとか、あるいは救急出動時の情報収集なども含めて、これは省庁間の連携を深めて情報収集、情報共有、これ緊急の課題としてあるのではないかと思いますが、いかがでしょうか。
○国務大臣(塩崎恭久君) 結論としては、そのとおりだと思います。
自殺未遂者の支援を行うためには、やはりその実態をしっかりと情報収集しておくということが大変重要でありますので、これまでも、厚生労働科学研究において、高度救命救急センターにおける重症な自殺未遂者の実態把握、これを行ってまいりました。
消防庁で把握をする自損行為、今お話が出ましたが、による救急搬送データのより細かな分析とか、そういうことに取り組んできたわけでありますけれども、今お話しのとおり、医療機関あるいは関係省庁としっかり連携をして、更に情報収集、共有の強化を図って自殺未遂者支援に取り組んでいかなければならないというふうに思います。
○小池晃君 これは、総務省も含めて、政府を挙げて是非取り組んでいただきたいというふうに思います。
自殺総合対策大綱では、自殺未遂者対策として、一つは、精神科救急も含む救急医療体制、それからもう一つは、ネットワーク、相談体制、地域において総合的なケアができる体制ということを掲げておりますが。
内閣府にお聞きしますが、全国でどれぐらいの医療機関、自治体が自殺未遂者支援に取り組んでいるのか、全国の取組状況、これを教えていただきたいと思います。
○政府参考人(安田貴彦君) 自殺総合対策大綱におきましては、自殺未遂者の再度の自殺企図を防ぐという観点から、緊急医療施設における精神科医による診療体制等の充実や家族等の身近な人の見守りに対する支援等を盛り込み、関係機関において取組を進めているところでございます。
内閣府におきましても、地域自殺対策緊急強化事業を活用いたしまして、緊急告示病院との連携等、自殺未遂者支援の取組を行っている自治体を支援させていただいているとともに、そのような先進的な取組に対して、事例集の作成等を通じて他の自治体にも周知をしているところでございます。
なお、お尋ねの全国のどのぐらいの医療機関や地方公共団体において自殺未遂者支援の取組を行っているかにつきましては、内閣府において全てを網羅的に把握しているわけではございませんが、少なくとも、都道府県別で見ますと四十六都道府県において地域自殺対策強化事業を活用して自殺未遂者支援の取組を行っていると承知をしております。
こうした取組を通じまして、関係省庁や地方公共団体等と密接に連携しながら、自殺未遂者の支援を今後も進めてまいりたいと思います。
○小池晃君 四十六ということで、鳥取が入っていないようですけど、鳥取も、基金は使わないけれども未遂者対策はやっているというふうにはお聞きをしているわけであります。
全体としてこれを取り組まれているというんですが、その中身がやっぱり問われていると思いまして。
自治体で、私、東京の荒川区がこれをやっているということで担当者にお話を聞きました。これは、荒川区は担当部局任せにせずに区を挙げて取り組んでいるというふうにおっしゃっています。
ゲートキーパー研修といって、窓口とか電話の対応、訪問時に区民の方にそういうサインがあるかどうか、気付いたらば適切な相談機関につなげられるような研修をやる。あるいは荒川区社会福祉協議会、生活支援センター、ライフリンクやBONDプロジェクトなどというNPOなどと年三回、定期的に実務担当者会議をやって、連携、情報交換をやっていると。それからさらに、未遂者支援連絡会をほぼ毎月、年間十回ぐらい開催をして、日本医大の高度救命救急センターあるいは東京女子医大の東医療センターの救命救急センターの担当者あるいは精神医学の専門家等々出席をして、事例検討や情報交換を行っているというんですね。
具体的には、日本医大や女子医大の救命救急センターに搬送された未遂者に精神科医が再企図防止のために区の支援が受けられるということを伝えて、本人の同意が得られたら区の担当者が訪問して、あるいは窓口に来ていただいたりして支援をしている。二〇一〇年から現在までに約百名弱支援やっておられて、残念ながら、再度自殺で亡くなった方が四名、再度未遂に至った方が四名いらっしゃるということなんですが、そういう取組をやっているというんですね。
担当者の方は、これは未遂者支援のためには連携と情報共有が必要で、それに基づくきめ細かい対策につなげていく、例えば就労支援であるとかあるいは福祉の支援であるとか、そこにつなげていくことが大事だというふうにおっしゃっておられます。
しかし、未遂者というのは、日本医大や女子医大などの三次救急だけじゃなくて、二次救急あるいは初期救急の段階にも行きます。区外の医療機関にももちろん行かれます。区の独自の取組だけではとてもつかみ切れないと。区の担当者は、これは、自殺総合対策未遂者支援は区だけではとてもできない、地域自殺対策緊急強化基金を活用しているけれども、更に充実してほしいというふうに言われているわけですね。
ちょっとそのお金のことを、私、こういう取組やられているところがある中で、実際に、先ほどもちょっと議論ありましたけれども、これは三年間の基金として始まって、補正予算で積み増し、延長を続けてきて、それで今年度は東日本大震災の被災者、避難者向けの事業に限定するということになってきていて、これでいいんだろうか、やはり恒常的、安定的な財政基盤のために恒久財源がどうしても必要ではないかというふうに思うんですね。
財源の問題も含めて、今後、厚労省でこの問題しっかりやっていただかなければいけないわけで、その問題についての大臣の御決意を改めて伺いたいというふうに思います。
○国務大臣(塩崎恭久君) この問題につきましては、先ほど来、何人かの先生からもお尋ねがございました。
もちろん、大綱で、全国で画一的な取組から地域レベルでしっかりと実践的な取組へ転換しろと、それから、自殺未遂者の、今先生がお取り上げになっていらっしゃる再度の自殺企図を止めるということを重要施策とされているわけでありまして、厚労省としては、医療機関において自殺未遂の段階で、先ほど申し上げたとおり適切な支援を行うということは重要で、今また新たな試みもしているということでありますけれども。
問題は、今お話がございました財源のことでございますけれども、今すぐにという一つの方向性を申し上げることはなかなか難しいわけでありますけれども、やはり今御指摘があった問題を含めて、重要課題がこうして自殺関連で未遂を含めてあるということであれば、二十八年度からの自殺対策の事業を内閣府から引き継ぐ際に、この基金の取扱いを含めて、現在自殺対策を所管をしている内閣府と十分に連携をしながら、まだ所管にはなっておりませんので、厚労省は、政府として必要な予算の確保に、年末に向けてしっかりと努めてまいらなければならないというふうに考えております。
○小池晃君 恒久財源というふうに言っていただきたかったんですけれども、それは引き続き私ども求めていきたいと思います。
清水参考人にお伺いしますが、自殺未遂者の対策強化、大綱でも言っている、この現状について参考人はどのように見ていらっしゃいますでしょうか。
○参考人(清水康之君) 自殺未遂者支援というのは、まだ始まったばかりだというふうに考えています。荒川区と日医大病院や女子医大病院のような、地域と医療機関の連携というのは例外的にできているだけであって、全国的に見たらまだまだ珍しいケースです。
自殺未遂者というのは、これは自殺のリスクが非常に高いことが明白な人たちなわけですから、自殺未遂者への支援というのは、ピンポイントで確実に行うことができる自殺対策、生きる支援なわけですね。しかも、自殺念慮を抱えている人たちというのは、死にたいと生きたいのはざまで揺れ動いていて、十分な支援を受けることができれば多くは生きる道を選ぶんですね。
ただ、しかしながら、ほとんどの地域ではそうした未遂者あるいは未遂者の家族への支援というものが行えておらず、そうした中で、生きる道を選べずに亡くなっている人が今たくさんいるという、そういう現状だと思いますので、受皿も人材もまだまだ著しく不足していて、そうした状況の中で、未遂者支援はまだ始まったばかりであるし、非常に遅れているという、そういう捉え方をしています。
○小池晃君 おっしゃるような実態があると思うんですね。
大臣、今のお話も踏まえて、この自殺未遂者対策、これは徹底的なやっぱり体制強化が必要ではないか。二次医療圏ごとにきちっと支援ができる拠点病院を定めるとか、あるいはその拠点病院が各医療機関と連携するような体制をつくるとか。
それから、未遂者親族、ここへの支援もこれは大事だと、やっぱり未遂されたということはもう大きな衝撃になるわけで、これを日常的に見守り続ける親族がこれは支援を受けられる体制をつくることも大事だと思うんですが、大臣、ちょっと端的にお答えいただきたい。
○国務大臣(塩崎恭久君) やはり御家族も含めて支援をするということになれば、例えばPSWであるとか、もちろん精神科医療の御専門の方のお力も借り、そしてまた複数の医療機関、関係をしてくる方々もおられると思うので、そういった協力をしっかりと得ながら、この新しい自殺対策、これは未遂を含めてしっかりやっていかなきゃならないんじゃないかということで、また、その自殺企図を防ぐということは、やっぱりかなり高度な知識を持った上で対応していかなければいけないのではないかと思いますので、こうした今いろいろ試行事業もやっておりますので、進捗状況を踏まえながらこの実情に応じた支援体制の構築に向けて取り組んでいかなければならないと思います。
○小池晃君 清水参考人にちょっと今後の未遂者対策聞こうかと思ったんですけど、ちょっと時間が来てしまったということなんでこれで終わりにしますが。
十年目の節目に決議を行うことは非常に大きいと思いますが、これにとどまらずに、やはり自殺対策基本法、そして大綱の更なる見直しという方向に向かってやはり引き続き努力をしていくということが大切だと思いますので、そういう立場で頑張りたいというふうに思います。
ありがとうございました。