「赤旗」2015年5月28日付
27日の参院本会議で採決された医療保険制度改悪案に対する日本共産党の小池晃議員の反対討論(要旨)は次の通りです。
反対理由の第一は、高すぎる国民健康保険料(税)のさらなる負担増を招き、医療費削減の新たな仕組みを導入するものだからです。
都道府県による国保財政の管理、「標準保険料率」の提示、保険料平準化の推進などは、市町村を保険料引き上げに駆り立て、無慈悲な取り立ての強化につながりかねません。
さらに都道府県が策定する「医療費適正化計画」に医療給付費の目標総額を明記し、「地域医療構想」による病床削減とリンクさせ、新たに導入する「都道府県国保運営方針」も「適正化計画」と整合させるよう義務づけています。都道府県を司令塔にした、強力な医療費削減の仕組みづくりにほかなりません。
受給権の保障を
削減されてきた定率国庫負担を抜本的に増やすことで、せめて協会けんぽ並みの保険料へ引き下げ、低所得者の負担軽減、受給権の保障を図るべきです。
第二は、協会けんぽの国庫補助削減と保険料値上げへのレールを敷き、中小企業の苦境に追い打ちをかけるからです。国庫補助率の下限を13%と本則に明記するなどの制度改変は、国の責任を後退させ、保険料引き上げに転嫁するものです。
第三は、受診抑制と重症化をもたらす、入院食費などの患者負担増です。高額療養費とあわせた1カ月の入院費用は12万円、平均給与の3割を超えます。
介護施設や療養病床の負担増の際にいわれた“生活の場だから在宅との公平を図る”という論理で説明できないことを厚労省も認めざるをえません。「公平」の名で“高い方”にあわせるだけの、ご都合主義の負担増は、国民皆保険の基盤を危うくするものです。
紹介状を持たずに大病院を受診した場合の5千円から1万円の定額負担は、一度は撤回を表明した受診時定額負担にほかならず、「将来にわたって7割給付を維持する」とした健康保険法違反です。
第四は、患者申し出療養の導入が、混合診療の全面解禁に道をひらくものだからです。
現在の6カ月という審査期間を、最初の実施では6週間、前例があれば2週間という超短期で承認し、施設基準もない医療機関でも実施し、適格基準から外れた患者にも適用して安全性が守られるのか、納得のいく説明はなされませんでした。
政府は、将来の保険収載が大前提と繰りかえしましたが、どれだけ収載されるのか見込みも示せません。
「保険収載」に至らない医療技術がどんどん増え、保険のきかない医療が滞留していくことになれば、混合診療の実質的解禁とどこが違うのか。こうした疑問を残したまま、やみくもに突き進むのはあまりに無責任です。
企業利益を優先
法案は、社会保障費の自然増削減路線のもと、国庫負担を抑制しながら、保険者、自治体を医療費削減へ駆り立て、患者負担増の一方で、「医療の産業化」の名で保険会社や製薬企業の利益を最優先にするものです。国民皆保険に大穴をあけ、土台から掘り崩す暴走と言わざるをえません。
審議では、すべての野党から問題点の指摘が相次ぎました。問題だらけの重大法案は廃案とすべきです。
安倍政権は、小泉政権時代の社会保障自然増抑制路線を完全復活させつつあります。「社会保障のための消費税」だと言って増税を強行する一方で、小泉政権の2200億円をはるかに上まわる削減を進める。国民へのだまし討ちのようなやり方を、断じて許すわけにはいきません。