2015年5月26日
参議院厚生労働委員会
○小池晃君 日本共産党の小池晃です。
この法案の背景にある社会保障に対する基本認識、総理に伺いたいというふうに思います。
今後の社会保障費の自然増について、財務省は、今後は高齢化による伸び相当の範囲内にするということで毎年五千億円に抑制するとしております。
総理は、昨年六月のこの委員会での私の質問で、かつて小泉内閣が行った社会保障削減路線については、社会保障費の伸びに機械的にキャップを掛けて抑制するという手法には副作用として様々な問題が発生した、安倍内閣としては単純に社会保障費の伸びを抑えるためのキャップを掛けるということはいたしませんと答弁をされています。
総理にお聞きしますが、今議論されている社会保障費の増加を五千億円という範囲内に抑制する、これはまさに社会保障費にキャップ、シーリングを掛けるということになるのではありませんか。
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 社会保障関係費の伸びについては、過去三年間、経済・雇用情勢の改善等の効果と制度改革の効果が相まって、消費税増収分を活用した社会保障の充実等を除き、平均〇・五兆円、五千億円程度と、高齢化による伸び相当の範囲内となっています。これは、それにキャップを掛けて抑えたのではなくて、様々な改革成果等々、経済が良くなっている結果等々も踏まえてこうなっているということでございます。
今後、団塊の世代が後期高齢者になり始める二〇二〇年初頭までに受益と負担の均衡の取れた社会保障制度を構築する必要があります。このため、引き続き、社会保障費の削減額を機械的に定めるやり方ではなく、国民皆保険を維持するための制度改革に取り組み、経済再生に向けた取組と併せ、社会保障制度を持続可能なものとする努力を続けていく必要があると考えております。
○小池晃君 私が聞いているのは、財務省が今言っている主張なんですよ。五千億円、この範囲内に抑えるというふうに言うわけじゃないですか。
高齢化の伸びの範囲は五千億円だから、そこに抑えると言っているわけではありませんか。改革積み上げて達成するというんじゃなくて、毎年五千億円というこの枠組みで抑制するということは、まさに総理がこの委員会で昨年否定をされたキャップを掛けて抑制するという手法ではないんですかというふうに聞いているんです。お答えください。
○内閣総理大臣(安倍晋三君) それは、今後の社会保障費の伸びの在り方については、現在、財政健全化計画の策定に向けて検討している最中であります。具体的なことは申し上げませんが、いずれにせよ、社会保障費の削減額を機械的に決めるやり方ではなく、国民皆保険を維持するための制度改革に取り組み、経済再生に向けた取組と併せて、社会保障制度を持続可能なものとする努力を続けていくという考え方で取り組む必要があると思います。
ですから、繰り返しになりますが、小泉政権のときに、伸びを例えば毎年毎年二千二百億ですか、伸びを二千二百億円カットすると、これ五年間やっていきますよ、まあ五年間できなかったんですが、という手法は取らずに、しっかりとサービスは維持しながら、しかし効率化は徹底していく、無駄を徹底的に省いていく、そしてそれをまたさらに制度的な改革を行っていくことによって、我々は大体こうした範囲内に収めていくことも、これは額ありきではなくて、そしてそういうことによって削減をしていきたいと、適正化していきたいと、こう考えているところでございます。
○小池晃君 私には今の説明では違いが全く分かりません。
先ほど、制度改革の効果が相まってこの三年間五千億になっているという話があったのでちょっと聞きたいんですが、厚労省に聞きますが、大臣、過去三年間、社会保障費の伸びは年間五千億円と言っているんですが、過去三年間の概算要求段階での自然増の見込みはどうだったんですか。
○国務大臣(塩崎恭久君) 今総理から結果として五千億ぐらいの増で来たということでありますが、今御質問の自然増の見通しはどうだったのかということでございますが、過去三年間見ますと、概算要求時点で社会保障関係費の自然増として政府全体で平成二十五年度は八千四百億円、平成二十六年度は九千九百億円、平成二十七年度は八千三百億円というふうに予想をしておったものでございます。
○小池晃君 これがやっぱり妥当な線なんですよ。
内閣府の甘利大臣も記者会見で、社会保障の自然増は八千億から一兆円が相場だと。実際にこの三年間の概算要求、そのとおりになっているわけですね。しかし、これまで三年間も、結果として、制度改革の効果が相まってというけど、五千億円に抑制してきたわけですよ。これが実態なんですよ。
これは、これからも五千億円に抑え込むということになれば、総理は先ほど小泉内閣の二千二百億とは違うと言ったけれども、もっとすごいですよ、これ。三千億から五千億の自然増の抑制をこれまでもやってきたし、これからもやっていくということになるではありませんか。違うというのであれば、きちっと説明してください。
○内閣総理大臣(安倍晋三君) では、きちっと説明させていただきたいと思いますが、この自然増を八千三百億と見込んでおりました。しかし、私たちが進めた経済政策によって経済が良くなった、その結果、経済雇用情勢の改善等を反映した生活保護費、雇用関係費が減ったんですね。これ、二千五百億円減りました。これ、二千五百億円減ったわけでありまして、これはあらかじめ減ったんじゃなくて、経済環境が良くなったからこれは減ったということであります。のほか、また、介護報酬の改定を行いまして適正化をしたわけでありまして、そうした制度改革等を行った結果千七百億円出てきたということでありまして、その結果四千二百億円の増となったと、こういうことではないかと思います。
○小池晃君 介護報酬の削減は、削減じゃないですか。自然増の抑制ではありませんか。今言ったのは一年分だけですよ。その前、二年間はどうだったんですか、景気良かったんですか。結局、この間やっていることは、もう八千億円あるいは一兆円近い自然増を五千億円に抑えるということをやってきたから、日本の社会保障は今大変なことになっているわけですよ。それをこれから更に五千億でずっとやっていくということになれば、私は本当に大変なことになると思いますよ、これから。
しかも、財務省は、高齢化による伸びは認めるけれどもそれ以外は認めないとかと言っているんだけど、こんなの区別できるはずがないんですよ。
結局、自然増の中には医療技術の高度化の部分もありますから、そこは抑制するというふうに言うんだけれども、一〇〇%切るなんということはできないわけで、そうなれば結局高齢化の部分だって切り込んでいくことになるということは明らかだと思いますから、私はこんなやり方はきっぱりやめるべきだと申し上げたいと思います。
そして、総理、社会保障のために消費税を増税するというふうに言いながら、結局、増税した途端に、今日も経済財政諮問会議これからあるようですが、社会保障の歳出抑制路線がもうたがが外れて出てきていると。こういうだまし討ちのようなやり方で国民は納得すると思いますか。お答えいただきたい。
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 先ほど来答弁しておりますように、世界に冠たるこの社会保障制度、国民皆保険制度、こうしたものを次の世代にしっかりと引き渡していくために消費税を引き上げたわけでありまして、そして、消費税引上げによって、平成二十六年度予算において国民皆保険における低所得者の保険料軽減の拡充や、あるいは難病対策の充実などを実施しています。さらに、平成二十七年度予算では、子ども・子育て支援新制度の予定どおりの施行、国民皆保険を堅持するための国保の財政基盤の強化、認知症施策などを実施することとしているわけでございます。同時に、給付と負担のバランスの取れた持続可能な制度としていくためには、負担能力に応じて公平に負担いただくこととともに、必要な給付が適切に行われるように、制度の重点化、効率化といった不断の改革を進めていくことが重要と考えます。
保険料や税を負担し、社会保障制度を支え守っていくのは全て国民であり、改革の推進に当たり国民の皆様に理解をいただくことは欠かせないと、このように考えております。
○小池晃君 私の質問に全く答えていないですよ。
社会保障のために消費税を増税した、国民は、消費税増税された分は社会保障が良くなるんだろうなと普通は理解しますよ。ところが、今いろいろとおっしゃったけど、これやった、あれやったと言うけれども、昨年度でいうと五兆円の増税分のうち社会保障の拡充に回ったのは五千億円ですよ、一割ですよ。それから、今年度でいうと八兆二千億円の増税になりましたけれども、拡充に回ったのは一兆三千五百億円ですよ。ほとんどそれ以外は拡充になっていないわけですよ。
総理、消費税増税した分が社会保障の拡充に全部回れば、私は、これは国民は、消費税の分が、これで社会保障良くなったと実感できると思うけど、違うじゃありませんか。例えば、赤字国債の解消、あるいは今まで別の財源で社会保障をやっていたものを、これを消費税で賄ったと言ったらば、これは結局、その部分の財源はこれは社会保障以外に回るわけですよ。大企業の減税に回るかもしれない、あるいは軍事費に回るかもしれない、公共事業費に回るかもしれない。社会保障が充実するわけじゃないじゃないですか。これで国民が納得すると思いますかと私は総理に聞いているんです。総理、お答えください。
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 消費税の増収分は、当然、全額社会保障費に充当しています。これは何回も言っているとおりでございますが。
じゃ、例えば、二十七年度消費税増収分の内訳でありますが、これは八・二兆円でございます、増収額計。このうち、まず三兆円は基礎年金の国庫負担割合の二分の一への引上げであります。そして次に、先ほどるる申し上げました社会保障の充実、子ども・子育て支援の充実や医療、介護の充実や年金制度の改善であります、これは一・三五兆円。そして、消費税引上げに伴う社会保障費四経費の増、これに〇・三五兆円掛かります。これは、診療報酬や介護報酬、年金、子育て支援等々、物価上昇に伴う増であります。そして、もう一つは後代への負担の付け回しの軽減であります。高齢化等に伴う自然増を含む安定財源が確保できない既存の社会保障費でありますが、これは三・四兆円、これを足し込んでいくと八・二兆円になっていくということでございます。
○小池晃君 いや、それは私、分かって聞いているんですよ。今、前段で言ったじゃないですか。
いろいろと言うけれども、その分は別の財源でやっていたんだから、そこに消費税入れたと言ったって、その財源は今度は別に使われるということになれば消費税増税が社会保障の充実になっていないでしょうと。これについては全く答えられないということですよ、やっぱり。
結局、建前すら投げ捨てて、そして更にこれからもっと大規模に社会保障を削減する、こんなこと、やっぱり私は絶対許せないと。今度の法案はそのやっぱり第一歩になるというふうに言わざるを得ないと思います。
安倍政権は、社会保障の削減には非常に熱心なんですが、一方で、医療を成長産業に位置付けるということにも大変熱心であります。しかし、これは一体何を目指すものか。健康・医療戦略というのを掲げておられますが、内閣府に聞きますが、この健康・医療戦略室の、民間から十二名参加をしている、この前職、簡潔にお答えください。
○政府参考人(中垣英明君) お答えいたします。
内閣官房健康・医療戦略室、私どもの部屋に常駐する職員につきましては、民間企業、大学等から専門的な知見を持った者を任用しているところでございます。
御指摘の十二名の前職でございますが、損害保険ジャパン日本興亜株式会社、大日本住友製薬株式会社、第一三共株式会社、富士フイルム株式会社、株式会社東芝より二名、アステラス製薬株式会社、株式会社日立製作所、テルモ株式会社、国立研究開発法人理化学研究所、慶應義塾大学、国立大学法人東京工業大学となっております。
以上でございます。
○小池晃君 保険会社、製薬企業、医療機器メーカーばっかりじゃないですか。
総理、このメンバーでバランスの取れた議論ができると思いますか。総理、総理ですよ、これは。
○内閣総理大臣(安倍晋三君) それぞれ見識を持った方々にお集まりをいただいたと、このように思っております。
そしてまた、言わば創薬について、もちろん、いいお薬ができて、そのお薬が廉価に安定的に患者さんの手に届くということも重要でありますが、当然この創薬の分野においても、しっかりとした成長産業として成長していきながら、国際社会の競争に打ち勝って、国内にしっかりとそうした創薬メーカーが存在するということも私は重要ではないかと、そういう観点から見識を持った方々にもお集まりをいただいているということではないかと思います。
○小池晃君 私は、製薬企業の人が一人も入っちゃいけないとは言いませんよ。しかし、十二名のうち、ほとんど全てじゃないですか、そういうメーカーが。医師団体からも病院団体からも一人も入っていない。見識のある人というのは製薬企業とか医療機器メーカーにしかいないんですか。私は、もっと医療・健康戦略というのを立てるのであれば、バランスの取れた人材でやるべきだと思うし、こんなことでやったら、結局、この健康・医療戦略というのが、こうした企業の収益拡大の場を提供するための戦略だというふうに言われても仕方ないんじゃないですか。
○委員長(丸川珠代君) 安倍内閣総理大臣、時間でございますので、簡潔に答弁をお願いします。
○内閣総理大臣(安倍晋三君) じゃ、簡潔に。
これは単に製薬メーカー等々だけではなくて、アカデミックな世界の方々からも入っていただいておりましてバランスが取れていると、このように思います。
○小池晃君 一言。
こういうやり方では私は許されないということを申し上げます。
終わります。
○小池晃君 日本共産党の小池晃です。
患者申出療養が評価療養の一形態なのかそうでないのか、政府の答弁も混乱しておりますが、しかし、その評価療養との違いは三点。患者の申出が起点、迅速性、地方の身近な医療機関で受けられる、そういう説明です。
この三点について聞きたいんですけど、まず第一点の患者の申出が起点。ところが、参考人質疑で日医の中川副会長はこう述べています。主治医が、何々さん、今の普通の保険適用の治療ではもう治りませんよ、しかし今、先進医療としてやっているからどうだろうと、その有効性、安全性について十分に説明して、理解、納得した上で、形として患者さんから申し出たという形で先進医療を受けたいと言って受けることができるようになるというんですね。私も、実際には現場ではこれが主流になると思うんですよ。主治医の方からこれどうだろうかといって受けると。ならば、あくまで起点はこれ主治医であって、起点が患者申出ではありませんよね。
これは何で患者申出が起点だというふうに言い張るんですか。
○政府参考人(唐澤剛君) これは、もちろん先進医療でも患者さんが理解と納得していただくことは当然なんですけれども、この患者申出療養は、特にやっぱりその点に重点を置くと申しますか、今の先進医療では、患者さんが例えば臨床研究中核病院のような大きな病院に行ったり、あるいは大学病院に行って、東京の大きな病院ではこういう治療法をしているようですけど私はこれについてお伺いしたいんですがと言っても、別にそれについて説明をしてくれる部署というのはなかなかないわけでございます、枠組みもですね。そういうものを私はこの患者申出療養の場合はきちんと受けていただくという観点からも、やはりこれは患者さんが起点だというふうに考えております。
○小池晃君 いや、じゃ、聞き方を変えますけど、先ほどから局長は答弁で、患者申出でなくても、結局最終的に患者が同意すればこれは患者申出療養になるんだと言いましたよね。そういうことですね。
○政府参考人(唐澤剛君) はい。これは、理解と納得をきちんとしていただくということが患者の起点ということでございます。
○小池晃君 だから、これ患者申出療養じゃないんですよ。結局、どこが出発点になったって、患者が同意すれば患者申出療養だというわけでしょう。しかも、同意なんていうのは当たり前じゃないですか。保険診療だって同意がなけりゃ医療行為はできないんですよ。だから、この患者申出が起点だというのは全く意味のない定義だということを私は申し上げたい。だから、これはもう除外すべきだと。
そうすると、残るのはあと二つです。迅速性と、どこでも受けられる。これ、大問題ですよ、逆に。
迅速性ということでいうと、患者申出療養というのは治療法を限定していないわけで、国内未承認、実験的医療、これも対象になり得るわけで、現在でもこれは、臨床例が数例でも先進医療の評価療養の対象になっているものはたくさんあります。今の評価療養もこれは六か月なわけで、実際にはそれ以上掛かっている例もあるわけで、今回のように六週間、こんなことで安全性確保する。
だとすれば、私は、これは抜本的な体制強化がなければ安全性なんか確保できないと思う。
大臣、厚労省としては、今回のこの患者申出療養の導入に当たって、これは課一つぐらいつくるぐらいの人員要求しなきゃできないはずですよ。
やったんですか。どういう人員要求したのか、結果として何人増えましたか。
○国務大臣(塩崎恭久君) 患者申出療養の創設に当たっては、厚生労働省としても十分な体制を取って臨まないといけないというふうに考えております。
昨年の十月には、患者申出療養を含む業務を取り扱うために、保険局医療課に医療技術評価推進室という室を設けまして、十二名体制で業務を行っております。これは、本務の者が五名、それから医療課を本務とする併任者が七名、合計十二名体制でこの室を設けたわけでございます。二十七年度の組織・定員要求、これにおきましては、医療技術評価推進室の担当者三名の増員要求を行って全員が認められたところでございまして、この増員は平成二十七年、今年の十月からということを予定をしております。
今後も、患者申出療養などの対応を十分に実施できるよう、体制の確保に努めていきたいというふうに考えております。
○小池晃君 三名増員だと、今年の予算でいうと。
これでは本当に心もとない。
結局、体制強化なしに迅速性追求すれば絵に描いた餅になるし、逆に、体制強化もせずに迅速性追求すれば、私は、安全性後回しになって、犠牲になるのは患者さんだということになりかねないんではないかというふうに思うんですね。
それから、地方の身近な医療機関で受けられると言うんですが、現在の先進A、Bでは、実施医療機関の施設基準があったり、あるいは国が承認するわけですが、今回の患者申出療養を実施する身近な医療機関には施設基準はあるんでしょうか。
国による承認手続はなされるんでしょうか。
○政府参考人(唐澤剛君) これは、患者申出療養として実施をしていただくということになりますれば、もちろん、その医療技術の内容にもよりますけれども、先進医療の場合では、今先生御指摘いただきましたように、ある技術を実施するための例えば施設設備としてどういうものが必要かだとか、あるいは人員の、医師の基準がどうかというようなことがございますので、それは技術の内容によって必要なものは求めることになろうと思います。
○小池晃君 いや、ごまかさないでください。身近な医療機関の基準は、これは臨床中核病院が認めればどこでもなれるんでしょう。国として施設基準があるんですか。国が承認する手続がこの中にあるんですか。身近な医療機関ですよ。
○政府参考人(唐澤剛君) これは当然、最初の一例目の承認をしたときの基準というのがあるわけでございますから、臨床研究中核病院と全部同じにはならないまでも、当然一定のレベルが必要と。したがって、がんにつきましては、がん診療連携拠点病院クラスまでが考えられるということをお話ししているところでございます。
○小池晃君 私が聞いていることに答えていないんですよ。
この一例目はそうかもしれないけれども、これどんどん拡大するわけでしょう、協力医療機関は。
それについての基準はあるんですか。国がそれを一つ一つ認定する仕組みになっていますか。なっていないじゃないですか。臨床中核病院が認めればそこでできるんでしょう。
○政府参考人(唐澤剛君) もちろん、この審査をするのは臨床研究中核病院が二例目以降をやるわけでございますけれども、医療技術の内容に応じてどの程度の医療機関が、レベルが、体制でございますけど、必要かということについては、国の方でも示す必要があろうというふうに考えております。
○小池晃君 それは、その目安を示すだけで、この仕組みの中では認定という作業はないわけですよ。
国の施設基準もない、国が承認もしていない医療機関で実施して有害事象が実施したら、これ国が責任取れるんでしょうか、こういうことで。実験的医療すら行われる可能性があるのに、そんな無責任な体制でこれを進めてしまっていいんでしょうか。
○政府参考人(唐澤剛君) これは、国とそれから臨床研究中核病院、そして有識者による患者申出療養における会議におきまして、きちんとしたガイドラインを定めたいというふうに考えております。
○小池晃君 それも全然まだ決まってないわけですよね。私は、少なくとも患者申出療養を実施する協力医療機関については、せめて大学病院本院あるいは同程度の機能を持つ病院に限定すべきだという意見がありますけれども、私はこれは妥当性があるんじゃないかと思いますが、どうですか。
○政府参考人(唐澤剛君) 一般的な医療技術の水準ということで考えますと、大学病院、特定機能病院でございますけれども、臨床研究中核病院は当然ですけれども、特定機能病院クラスということが考えられると思います。
ただ、がん診療につきましては、がん診療の連携拠点病院まで一遍に全部拡大できる力が全部に付いているかどうかという御議論がまた別途ございますけれども、そうしたところまで拡大することができればかなり身近なところで御利用いただけることも期待できるのではないかと考えているわけでございます。
○小池晃君 私は、こういうのは厳格な基準を設けなければ非常に大変なことになると。特に有害事象なんかが起きたときに、じゃ、誰がその責任を取るのかということがこれは大問題になってくると思いますよ、こんなのスタートさせたら。
それから、先進医療患者申出療養の実施計画の適格基準外の患者さん、先ほどから議論になっています。これも患者申出療養として認める仕組みになるわけですね。確認しますが、その場合は、実施計画の変更、新たな実施計画を作成する、国が改めて一例目と同様の審査を行うということでよろしいですね。
○政府参考人(唐澤剛君) 適格基準外の患者さんをこれまでの計画に追加をするに当たりまして、既存の計画を変更する場合、あるいは更にもっと大きく新しい計画を作らなければいけない場合につきましては、改めて国の患者申出療養における会議におきまして個別に審査をさせていただきたいと考えております。
○小池晃君 そうすると、適格基準外の患者さんに対応しようとする、実態としてはこれ目の前の患者さんの状態に合わせた実施計画にならざるを得ないと思うんです、私。これはあらかじめ計画を作るということとは言い難いのではないか。
かつて選択療養が議論になったときに、厚労省は規制改革会議に対してこう言っています。データの蓄積は行うものの計画が事前に策定されていないため症例報告が中心になると考えられる、蓄積したデータに基づいて行った後ろ向き研究では検証的治験を行う前提となる有効性、安全性を確認することは難しい。
結局、こういう形で適格基準外の患者さんに一々この計画を作るってやっていったら、厚労省が規制改革会議に対して出した批判がそのまま跳ね返ってくるんじゃないですか。そうではないというんだったら説明してください。
○政府参考人(唐澤剛君) これは、適格基準外の患者さんにつきましては、非常に末期に近い段階の方で単に治療法が全くないような患者さんという方がいらっしゃるわけでございまして、そうした方に対してこの患者申出療養を適格基準外として実施をすることがあろうと思います。それがそのまま、確かに先生の御指摘のように、保険収載やエビデンスにそのまま該当するのかと言われれば、なかなかこれは難しい面がございますけれども、最初の御指摘でございましたように、非常に困難な状態にある患者さんでございますので、そうした御要望というものについてもやはり考えていく必要はあるのではないかというふうに考えているところでございます。
○小池晃君 保険収載が前提だと言ったじゃないですか。結局、こんなことをやり始めたら、保険収載を度外視にした治療がどんどんどんどん広がっていくということになりますよ。そういったことはやっちゃいけないということを言っていたのが厚労省だったんじゃないんですか。こんな後ろ向きの研究では、これは何の役にも立たないというふうに自分で言っていたじゃないですか。
結局、こういう適格基準外も認めるなんていうことになったら、本当に止めどなく広がっていくということになるし、今おっしゃったように、本当にわらをもすがるというような状態の患者さんだと思います。それでも治療していこうというふうになれば、結果的にこれは有効性、安全性も度外視するということになりかねない、データも集まらない、保険収載にもつながらない。これはちょっととんでもないと思いますよ、私。
金沢大学が行っていたカフェイン併用療法、これ、適用基準外の最大八十人の患者さんへ治療が行われる。これ、カフェイン併用療法は臨床研究指針違反によって中止になりました。並木幹夫金沢大学病院長は記者会見で、ルールを厳守せず患者にリスクを負わせてしまったと謝罪しました。
カフェイン併用療法だけじゃありません。ほかの先進医療でも、これは倫理指針違反が見付かって中止になった例はございます。金沢大学附属病院は治験中核病院として指定をされ、臨床研究中核病院を目指す医療機関でしょう。もちろん国の審査を受けてカフェイン併用化学療法の実施機関となったにもかかわらず、こういう問題が起きた。
倫理審査基準違反を見逃していた、あるいは見逃す可能性がある病院が更にほかの医療機関の実施体制を審査する、こんなことでは、私は、今よりも国の関与は後退しますからね、患者の安全を守る担保など何もないというのがこの事件の教訓ではありませんか。いかがですか。
○政府参考人(唐澤剛君) この金沢大学のカフェイン併用療法につきましては、これは誠に当初のプロトコールを無視した研究実施になっていたということで、これは大変問題であろうと思いますし、それに対応した措置をとらせていただいたわけでございます。
この点につきましては、医療法の関係に関連する行政とも連携をさせていただきまして、きちんとした審査をしていただけるように、私どもは患者申出療養会議の枠組みなども考えてまいりたいと思いますし、こうした問題のある事例に対してはきちんと厳しく対応させていただきたいと考えております。
○小池晃君 あなたの決意表明では患者の命は守れないんですよ。問題は制度なんですよ、これは。
中医協の資料を見ると、先進医療として実施されていない療養もこれは患者申出療養の対象となる医療のイメージとして挙げられているわけで、そうなると、迅速審査、共同研究を行う協力医療機関は広げられる、先進医療よりも緩いです、これ。容易です。結局、患者申出療養が先進医療を置き換えてしまうということになるんじゃありませんか。
○政府参考人(唐澤剛君) これはこの委員会でもいろいろ御議論ございましたけれども、先進医療というもの、それから患者申出療養というもの、あるいは国家戦略特区における研究なども、それぞれの役割分担をどういうふうに考えていくかということであろうというふうに思っているわけでございます。
もちろん、患者申出療養につきましても、国内未承認の医薬品の使用あるいは適用外というようなものもかなり考えられるわけでございますので、どういったものが患者申出療養の主流のものになってくるかはまだ予断は持てませんけれども、私どもは、未承認、適用外などの抗がん剤の使用などはかなり多くなってくるのではないかというふうに考えているところでございます。
もちろん、先進医療で箇所数の少ないものもあろうと思いますが、これはかなり高いレベルがないと実施がなかなか難しいかなと思っております。
○小池晃君 私の質問に全然答えていないと思いますよ。
先進Bは薬よりも医療技術の方が多いですからね、実態としては。これ、実態としてはそっちに広がっていく可能性があるんじゃないか。
大前提は保険適用だ、その問題。先進的な医療技術を保険適用する、これが前提だと。ロードマップ作ります、安心してください。しかし、先日から言われているように、先進医療でも保険収載に至ったものは少数です。それに比べて今度の患者申出が保険収載に結び付きやすい制度なんですか、これ。
参考人質疑では、名古屋大学の石黒直樹病院長はこう言っています。患者申出療養制度の保険収載に向けたデータの集積については、審査体制と管理体制がないところでの医療機関、それがしっかりとして外形的に認められない以上は、そういうところでやれば必ずデータの信頼性は疑われる可能性があるし、 指摘される可能性はある、データの信頼性を持たないものが果たして保険収載のときに審議対象になるのかと。私も本当にそのとおりだと思いますよ。そんなことないと言うんだったら、説得力のある反論をしてください。
○政府参考人(唐澤剛君) これは、私も参考人質疑を拝見しておりましたけれども、石黒先生からそうした御指摘をいただいておりましたものをお聞きをしておりました。
もちろん、先生のおっしゃるように、きちんとしたプロトコールに従ってそれを遵守してデータを集めて、そして保険収載に向かっていくのが望ましいわけでございますけれども、しかし、中には、先ほどお話し申しましたように、適格基準外の患者さんから強い御希望があるというようなことも生じようと思います。それを臨床現場でどのように御判断いただくかということは大変難しいわけでございますが、私どもは、それはもう最初から受けないんだと、この制度では対象にしないんだということまでは決めるところまでは私どもは考えていないということでございます。
○小池晃君 ちょっと、じゃ、ちゃんと答えていただきたい。全く今の反論していないじゃないですか。結局、反論できないと思いますよ。これ、こうなりますよ、こんな制度をつくったらね。患者申出だというその冠付ければ何でも許されるみたいなことは、私はこれおかしい。
もう一回聞きますけど、今の先進よりも保険適用になる、保険収載される可能性が何で高いんですか。施設基準はない、より先進的だ、そしてデータの集積だって今までの仕組みのがっちりしたものに比べればかなり緩い。そして、局長自ら認めたように、もうわらをもすがるという、もうほとんどデータにはならないようなケースだっていっぱい入ってくる。
どうして今までの先進医療よりも今度の患者申出療養は保険収載に結び付きやすいのか、言ってください。
○政府参考人(唐澤剛君) 一概に全て結び付きやすいかどうかという御議論はございますが、私どもが考えておりますのは、やはり先進医療で物を、患者申出療養でかなり普及していくということも考えられるのじゃないかと思うわけでございます。現実には、先進医療は、中川副会長の御発言にもございましたけど、やっぱり三か所ぐらいで実施をしているところがございますので、基本的にはやはり症例を集めてきちんと普及させていくということが考えられるのじゃないかと思います。
○小池晃君 めろめろですよ、はっきり言って。
これ結局、保険収載に行く行くと言うけれども、私は、これが起こったらどうなるかといったらば、その保険収載というゴールに至らない医療技術がどんどんどんどん増えて、もう言ってみれば引込線みたいのがどんどんどんどんできていって、そこに医療技術がどんどんどんどん入っていくということで、先はないと。これ結局、こんなことをやったらば、混合診療の実質的な解禁以外の何物でもないじゃないですか。
私、これ本当に危険だと、こんなこと。本当はやりたくないから何かまともに説明できないのかもしれないけど、上から言われてやっているからそういうことになるんじゃないかと思いますが、私はこういうことを本当、通しちゃいけないというふうに思います。
ちょっと残る時間、ヘルスケアポイント、保険料の傾斜設定のことを聞きたいんですが、保険者が加入者の予防、健康づくりに応じてヘルスケアポイント、その取組例として厚労省は、中国地方のある自治体で一年間受診しない場合に一万円キャッシュバックするというのを事例として紹介しておりますが、健保連の白川副会長は、現金渡すということは実質保険料の変更であって、これは反対だと、健康な人の保険料を下げるということは、病気の人の保険料を上げるということで、そういう世の中であってはならないと言いました。
私も全くそのとおりだと思いますが、いかがですか。
○政府参考人(唐澤剛君) 参考人質疑も私も拝見しておりましたけれども、白川副会長からの御意見で、個人の健康状態に応じて保険料の差を設けることは皆保険の趣旨に反するのではないかと、そういう御指摘がございました。これはそうした御懸念を表明されたものと思います。
私どもが今回の改正で考えておりますのは、個人の主体的な予防、健康づくりの取組を促すことを目的とした一部の医療保険者で実施をされております、これは保健事業の中で、レベルですけれども、実施されておりますヘルスケアポイントの提供する仕組み、あるいは予防、健康づくりに加入者に対する保険料面での支援などを考えているところでございますが、これは、疾病リスクによって加入者の保険料に差を設けるというようなものにこれはつながってはなりません。それから、医療機関への受診抑制につながってはなりませんので、そうしたことにならないように設定をしていくということが重要であろうと思っているところでございます。
○小池晃君 つながってはならないと言うけれども、そういうつながるようなものを提案しているじゃありませんか。キャッシュバックと傾斜保険料、どう違うんですか。
おっしゃるように、リスクに見合ったものでなくて負担能力に見合ったものにするのは社会保険の保険料の大原則ですよ。それを壊すことになるんじゃないですか、このキャッシュバックなんということをやり始めたら。
それで、財務省がこれ言っているわけですよ、保険料傾斜設定。大臣、やっぱり今回のこのヘルスケアポイント、保険料支援、こんな提案をやれば、私は、社会保険原理の否定、民間保険化につながると思います。たとえ限定的なものであっても、こんな呼び水みたいなものを、財務省が狙っているような傾斜保険料みたいなものにつながるようなものは撤回すべきじゃありませんか。
○国務大臣(塩崎恭久君) 国民皆保険である我が国の医療保険制度において、相互扶助の理念の下で、疾病リスクにかかわらず、誰もが必要な医療を受けられることを原則としているわけであって、このために、疾病リスクによって保険料に差を設けるという、今お話が出ましたが、設けるということは、やはり結果としてリスクの高い方が保障を受けられなくなるおそれがあるということでありますから、やっぱりこれは適当ではないというふうに考えておりまして、御指摘の財務省の提案は、具体的な内容は我々もよく明確ではないので分かりませんが、厚労省としては、国民皆保険としての医療保険制度の趣旨も踏まえれば、疾病リスクなどの個人の属性を評価するんじゃなくて、個人の主体的な予防、健康づくりを推進するというポジティブな観点からインセンティブ提供の具体的な方法等について考え方を整理をしていきたいというふうに考えておるところでございます。
○小池晃君 僕はやっぱり、この厚労省の提案は財務省のにつながっていく。
経済財政諮問会議でも、民間議員が保険料の傾斜設定を主張して、大臣は、考え方は民間議員とそう変わらないと言ったそうじゃないですか。今日これからあるんでしょう、経済財政諮問会議で。
結局、ずるずるこういう方向に持っていかれるんじゃないですか。
こんなことの呼び水になるようなこの法案は、これはもう廃案しかないということを改めて申し上げて、質問を終わります。
○小池晃君 私は、日本共産党を代表して、国民健康保険法等の一部を改正する法律案について反対討論を行います。
反対理由の第一は、本法案が高過ぎる国保料の更なる負担増を招き、医療費削減の新たな仕組みを導入するものだからです。
本法案による国保制度の改革が実行されても、協会けんぽの一・三倍、組合健保の一・九倍という保険料の水準は全体として変わらず、逆に今後、給付費増による保険料高騰が避けられません。保険料徴収により所得が生活保護基準以下に落ち込む境界層の問題、子供が多い世帯ほど負担増となる応益割の問題なども本案によって何ら解決されません。
都道府県による財政管理、標準保険料率の提示、保険料平準化の推進など、本法案に盛り込まれた改変が市町村を保険料引上げに駆り立て、無慈悲な取立ての強化につながることは、法案の内容を先取り実施している大阪府の実態からも明らかです。
しかも、本法案は、都道府県が策定する医療費適正化計画に医療給付費の目標総額を明記し、それを地域医療構想による病床削減とリンクさせ、新たに導入する都道府県国保運営方針も適正化計画と整合させるよう義務付けています。まさに都道府県を司令塔にした強力な給付費削減の仕組みづくりにほかなりません。
国保改革というのなら、全国知事会など関係諸団体が求めるとおり、削減されてきた定率国庫負担を抜本的に増やし、せめて協会けんぽ並みに保険料を引き下げ、低所得者の負担軽減、受給権の保障を図るべきです。
反対理由の第二は、協会けんぽの国庫補助削減と保険料値上げのレールを敷き、中小企業の苦境に追い打ちを掛けるからです。
国庫補助率一三%の本則への明記、高齢者医療支援金の総報酬制による国庫補助削減、一般保険料率の上限の引上げなど、法案に盛り込まれた制度改変は協会けんぽに対する国の責任を後退させ、それを保険料引上げに転嫁するという政府の方針を体現しています。実質賃金の低下や経営難に苦しむ中小企業の労働者、事業主に更なる打撃を与えることは許されません。
反対理由の第三は、受診抑制と重症化をもたらす患者負担増です。
本法案が実施されれば、高額療養費と入院食費を合わせた一か月の入院に掛かる費用は十二万円、平均給与の三割を超えてしまいます。今回の食費負担増が、介護施設や療養病床の負担増の際に言われた生活の場だから在宅との公平を図るという論理で説明できないことを厚労省も認めざるを得ませんでした。公平の名で高い方に合わせる御都合主義の負担増は、患者の困難に追い打ちを掛け、国民皆保険の基盤を危うくするものだと言わねばなりません。
紹介状なしの大病院受診時の定額負担が厚労省の言う外来の機能分化に役立たないことも、審議の中で裏付けられました。選定療養の義務化と言いますが、事実上の受診時定額負担の導入にほかなりません。
反対理由の第四は、患者申出療養の導入が混合診療の全面解禁に道を開く危険があるからです。
審議の中でも、安全性、有効性の審査を置き去りにする患者申出療養の問題点が浮き彫りとなりました。保険収載が前提といいながら、制度上の担保はありません。製薬大企業や医療機器メーカーのもうけを最優先に、保険給付や医療の安全性を切り縮めていく安倍政権の医療の産業化、競争力強化は国民皆保険を危うくするものであります。
以上のように、本案の内容は、社会保障費削減という安倍政権の路線の下、医療への国庫負担を抑制、削減しながら、保険者、自治体を医療費削減へ駆り立て、患者負担増と医療の規制緩和を進めるものです。まさに国民皆保険に大穴を空け、土台から掘り崩す危険な暴走と言わざるを得ません。
衆参両院における本法案の審議中にも、財政制度等審議会や経済財政諮問会議では、医療、介護の次なる負担増、給付減案が怒濤のように提案されています。参議院で法案が審議されている最中にその成立を前提に次の課題を打ち出すなど、国会審議を愚弄するものにほかなりません。
改めて、このような問題だらけの重大法案は廃案とすべきであり、不十分な審議のまま採択に付すことは断固反対します。
なお、無所属クラブ提案の修正案は患者申出療養の導入を削除するものであり、賛成であることを申し述べて、討論を終わります。