日本共産党 書記局長参議院議員
小池 晃

検索

国会ハイライト

国会質問・速記録・質問

退職金増税方針 撤回迫る 参院委 小池書記局長「課税最低限引き上げを」

2025年03月26日

赤旗2025年3月25日付

写真

(写真)質問する小池晃書記局長=24日、参院財金委

 日本共産党の小池晃書記局長は24日の参院財政金融委員会で、所得税の課税最低限の引き上げを求めるとともに、退職金に対する増税方針の撤回を政府に迫りました。

 

 小池氏は、欧米の主要国の基礎控除が米国234万円、英国243・1万円、ドイツ196・1万円、フランス194・2万円と日本よりもはるかに高い水準だと指摘。単身の若者に必要な生計費は年収300万円程度だとの全労連の試算を示し、「最低生計費を保障するためには課税最低限を大幅に引き上げる必要がある」と主張しました。

 

 小池氏は、課税最低限の考え方を巡り政府がかじを切ったのが、2000年の政府税調「中間答申」で、「国民の所得水準が上昇」したので、「生計費の観点のみでなく、公的サービスを賄うための費用を国民が広く分かち合う」べきだとしたが、「これは痛みを『分かち合う』ということだ。貧困と格差が広がってきたのだから、生計費非課税の原則で課税最低限を抜本的に引き上げるべきであり、何より消費税を減税すべきだ」と主張しました。

 

 小池氏は、石破茂首相が退職金課税の見直しを主張し、勤続年数20年超で控除額が増える現行の退職金課税について1年当たりの控除額を一律とすることが検討されているとし、1年当たりの控除額を「一律40万円」にした場合、勤続40年で現行の控除額2200万円がいくらになるかと質問。財務省の青木孝徳主税局長は1600万円に減ると答えました。

 

 小池氏は「大増税になる」と批判。「退職金や私的年金は、公的年金とあわせて退職後の老後の糧であり、長年働いてきた労苦にきちんと税制で報いるものでなければならない」と撤回を要求。加藤財務相は「ただちに結論を出すものではない」としながら、見直しを否定しませんでした。

速記録を読む

○小池晃君 日本共産党の小池晃です。
 質問に入る前に、先ほど、参議院の与党幹部会合で暫定予算を編成しないと確認をされた。
 財務大臣、了解はされていますか。
   〔委員長退席、理事船橋利実君着席〕
○国務大臣(加藤勝信君) 済みません、ちょっと、私、ずっとこっちおりましたので、今のお話、承知しておりませんので何ともコメントできませんし、また、今言った、与党間とおっしゃいましたかね。(発言する者あり)与党間という、要するに政党間ということでございますので、政府としてコメントする立場にはございません。
○小池晃君 目の前に当事者の松山幹事長もいらっしゃるんですが、これ、平成三年自社公民の合意で、暫定予算のことについては一日たりとも空白はつくらないという合意があるわけですね。予算委員会の質問時間も積み上がっていない。野党は様々な事態に備えて暫定予算編成の準備に入るべきだということを、今朝、参議院の野党国対では確認をしているんですよ。
 そういう中で、国会の意思を無視するというやり方には、ちょっとこっちじゃなくてあっちなんですけど、質問できないんですが、抗議をしたいというふうに思います。
 質問入りますが、所得税の基礎控除、これ四十八万円ということなんですが、今回これを見直して大きく変わる。
 財務省にお聞きします。基礎控除の理念とは何でしょうか。今までなぜ四十八万円だったんでしょうか。
○政府参考人(青木孝徳君) お答えします。
 基礎控除は、一定の額までの少額の所得については負担能力を見出すに至らないと考えられることから、原則全ての納税者に適用されます基礎的な人的な控除の一つでございます。この基礎控除などから構成されます課税最低限については、生計費の観点とともに公的サービスを賄うための費用を国民が広く分かち合う必要性などを踏まえまして総合的に検討されてきており、その中で基礎控除の額も決定されてきたものと承知しております。
 具体的には、財政事情なども踏まえつつ、物価の水準の変化などに照らして見直しが行われてきたものと承知しておりまして、直近では、平成三十年度の税制改正におきまして、働き方の多様化を踏まえ、給与所得控除から基礎控除への十万円の振替を行い、現在の四十八万円となっております。
○小池晃君 配付している資料(配布資料)は欧米の主要国の基礎控除を国会図書館に調査していただいたものですが、これによると、米国二百三十四万円、英国二百四十三・一万円、ドイツは百九十六・一万円、フランスは百九十四・二万円と。これ、購買力平価を考慮したとしても日本よりもはるかに高い水準だと思います。
 財務省に。なぜ日本の基礎控除額というのは欧米に比べてこんなにも低いんでしょうか。
○政府参考人(青木孝徳君) 諸外国との比較についての御質問でございます。
 例えば、米国の標準控除、この中に含まれております標準控除につきましては各種の所得控除を含む概算控除であるため、日本の基礎控除の額との比較がなかなか難しいという点もございます。
 その上で、政府としては課税最低限での比較が最も参考になるものとして考えておりまして、その上で、基礎控除などから成る日本の所得税の課税最低限については、生計費の観点や公的サービスを賄うための費用を国民が広く分かち合う必要性などを踏まえて総合的に検討されてきており、生計費の観点からは物価が勘案されてまいりました。諸外国においても、物価に応じた調整を行っている国が多いものと承知しております。
 我が国におきましては、物価上昇が続いた昭和四十年代においてはほぼ毎年課税最低限の引上げを行ってきた一方、平成七年以降におきましては、物価上昇率が直近の状況を除きほぼ横ばいで推移してきたため見直しを行ってこなかったという経緯がございます。その上で、今般は、最近の物価上昇等を踏まえて、政府案と衆議院修正を合わせまして、課税最低限を百六十万円まで引き上げることとしております。
   〔理事船橋利実君退席、委員長着席〕
 その上で、諸外国と比較する場合は物価や賃金の状況が異なり、また為替の影響を受けることから、単純に実額で比較することはなかなか難しいというふうに考えておりまして、例えば平均賃金比で見ますと、二〇二四年一月時点の税法に基づいて計算行いますと、米国が二〇%、英国が二九%、ドイツが三三%、フランスが五三%であるのに対しまして、日本についてはこれまでの二五%から今般の改正により三八%になるため、必ずしも諸外国に比べて低いものとは考えておりません。
○小池晃君 いろいろ言い訳するけど、低いですよ、これは。いろんなことを足し合わせてもね。課税最低限で比べたってやっぱりこれは日本は低いですよ、これ。
 全国労働組合総連合、全労連が行っている最低生計費調査、これだと、単身の若者暮らしていくのに必要な生計費は全国どこでも時給千六百円から千八百円、月額で二十四万円から二十五万円とされていて、やっぱり年収では二百万から三百万ぐらい。
 大臣、最低生計費を保障するためにはやっぱり課税最低限大幅に引き上げる必要があると思いますが、いかがですか。
○国務大臣(加藤勝信君) 生計費に関しては様々な調査があるというふうに思いますが、今回、衆議院の修正の結果、給与収入二百万円相当以下の者に対し、基礎控除の特例として三十七万円の上乗せを行うこととされ、これにより政府案と合わせて課税最低限百六十万となるわけでありますが、この百六十万という数字については、生活保護基準の最低生活費の中でも東京二十三区を含む全国で最も高い一級地の一の額を超える水準となっており、最低生活費にも十分配慮した水準になっているものと認識をしております。
○小池晃君 その最低生活費と国民みんなで分かち合うって、その議論が私はちょっとこれはよく分からぬのですよ。
 結局、課税最低限というのは、最低生計費といいながら、同時に国民みんなが広く分かち合うものだという考え方でやってきたと。でも、今回はその最低生計費でこういろいろ考えているみたいな説明するわけじゃないですか。私は、この考え方がやっぱりはっきりしていないと思うんですね。
 結局、国民みんなが広く分かち合うものという議論というのは、これは公共サービスの受益に応じて税を払うという応益負担ですよ。これは応能負担の原則に反するんじゃないですか、この国民広く分かち合うという考え方は。大臣、いかがですか。
○国務大臣(加藤勝信君) 基礎控除を含む各種の所得控除は、負担能力としての所得の大きさを調整することによって、所得に適用される累進税率と相まって応能負担の実現に寄与しているものと考えておりますし、今回の衆議院修正では、先ほど申し上げたように、その基準も引き上げたところでございますので、こういった意味において、低所得者層の税負担に対して配慮をしたものと認識をしております。
○小池晃君 この戦後の税制の在り方、考え方、戦後はやっぱり応能負担できたと思うんですね。それが政府として明確にかじを切ったのは、やっぱり二〇〇〇年の政府税調の中期答申。ここで、こう言っているんですね。
 かつて我が国の国民の生活水準が国際的に低かった時期には、生計費からの観点が重視される傾向にありました、としながら、国民の所得水準が上昇したので、生計費の観点からのみでなく、個人所得課税を通じて公的サービスを賄うための費用を国民は広く分かち合う。広く分かち合うってきれいな言葉で言うけど、結局痛みを分かち合うということじゃないですか。
 私、これ、考え方、やっぱりこれだけ貧困と格差が広がってきたんだから、やっぱりきちんと生計費非課税という原則で課税最低限決めていくということをしっかり据えていくべきだと思いますよ。そのために、やっぱり課税最低限を引き上げていくと。やっぱり、この二〇〇〇年に決めてから、失われた三十年で貧困と格差これだけ広がったんだから、私は税制の在り方についても考え方を改めるべきだと思いますが、いかがですか。
○国務大臣(加藤勝信君) 私どもが承知している範囲で申し上げさせていただきますと、平成、あっ、失礼、昭和二十七年には、当時の大蔵大臣から、基礎控除というものは最低生活費を引くべきものであるということばかりに限定するのはいかがかと思う、財政の需要の点からも考えなければならないといった見解が示され、制度創設間もない頃から生計費以外についても勘案されていたものと承知しておりますし、政府税制調査会の答申では、平成六年の税制改革についての答申においても、課税最低限に関し、個人所得課税は広く国民に負担を求めることが適当とされており、委員御指摘のように、平成十二年においてそうした考え方が変わったというものではないと認識をしております。
○小池晃君 いや、でもこの政府税調の中間報告には、これまでの考え方変えたというふうに書いてあるわけですから。何か古い文書いろいろ調べて引っ張ってきて何か説明されていますけど。
 私は、やっぱり税制の在り方を今の貧困と格差の広がりの中できちんと見直すべきだと思いますし、最低生計費に課税しないというんだったら、何より消費税の減税こそが必要だというふうに思います。
 その上で、退職金課税について、石破総理が、参議院の予算委員会で、見直すべきだ、勤続年数が二十年超えると一年当たりの控除額が増加する仕組みはどうなんだというふうに言われています。
 現行の退職金課税で、その仕組みいろいろありますが、勤続年数二十年までは一年につき四十万、二十年超えたら一年につき七十万控除するという仕組みですよね。
 大臣は、予算委員会で、この見直しの議論として、勤続年数が二十年を超えると一年当たりの控除額が増加する仕組みが転職などの増加に対応していないということを紹介しています。しかし、実際に退職金というのを意識するのは五十代以降じゃないですか。退職金課税が有利になるから転職やめるという人が一体どれだけいるんだろうか。むしろ、転職というのは、より良い職場環境、あるいはその待遇、働きがいを求める、それぞれの人生設計に基づくものだと思うんですね。
 財務省に聞きますが、退職金の税金が有利になるから転職やめるという人はどれだけいるというふうに想定しているんですか。
○政府参考人(青木孝徳君) お答えします。
 転職などの労働移動の円滑を阻害しているとの指摘があるという、指摘があると、あくまで指摘を紹介したものとして、二〇二三年の新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画での指摘をされております。
 政府税調におきましては、こうした指摘があることも踏まえつつ、実態を可能な限り把握しながら税制の在り方について御議論をいただくことが重要であるというふうに考えておりますが、政府として、現時点で退職所得課税と転職の関係について何か見解を持っているというわけではなく、ないということでございます。
○小池晃君 見解を持っていないんだったら、こんな政府税調の文書とかに書かないでほしいんですよね。これを一つの根拠にしてやろうとしているじゃないですか。で、石破さんはそれを答弁しているわけですよ。これは財務省の見解じゃないってちゃんと石破さんに言ってください。
 退職金課税見直して一年当たりの控除額が例えば一律五十万円になった場合、勤続年数三十年超えると今より控除額が減っていきます。一律四十万円になると、勤続二十年を超えると今より控除額が減っていきます。機械的に計算するとですよ、一年当たりの控除額が一律五十万円になった場合、四十年間勤めると現行の控除額二千二百万円は一体幾らになるか、一律四十万円になった場合は幾らになるか、お答えください。
○政府参考人(青木孝徳君) お答えします。
 今御指摘のあった点についてあくまで機械的な試算ということで申しますと、一年当たりの所得控除額を一律五十万とした場合は合計で二千万円、一年当たりの控除額を一律四十万円とした場合は合計で一千六百万円というふうになりますが、退職所得課税に係る議論につきましては、長年にわたり形成された期待を伴う高齢期の人生設計にも密接に関係することなども十分に踏まえながら、財政が厳しいから財源を確保するといった視点ではなく、純粋に働き方への中立性や活力、公平といった、公正といった観点から行われるものでございます。
 委員御指摘のような、一律五十万とか四十万といった幅広く課税強化になるような案をこれまで私どもとして検討した事実はございませんので、今後の検討に当たっても、納税者への影響を十分にしんしゃくしながら議論を進めていただく必要があるというふうに考えております。
○小池晃君 一律五十万円にすると二千二百万円が二千万円、一律四十万円にすると千六百万円という控除額になってしまうわけで、これ大増税ですよね。
 しかも、今回、iDeCoの五年ルールの変更で、退職所得控除を二回使うことが難しくなった。これも問題なんですけど、この上さらに、退職金課税見直されると、iDeCoで積み立てたお金、あるいは自営業者の退職金づくりの制度である小規模企業コウシ共済の共済金、一時金で受け取った場合、これも課税見直しの対象になるということですね。確認です。
○政府参考人(青木孝徳君) お答え申し上げます。
 御指摘をいただきましたiDeCoや小規模企業共済の一時金につきましては、現行の所得税法上は退職手当などとみなした上で退職所得課税の対象としております。
 他方で、退職課税の在り方については、現在、政府として具体的な見直し案をお示ししているわけではございません。こうした制度への見直しの影響については、政府として現段階で見解を申し上げることは難しいということでございます。
○小池晃君 ただ、やっぱり、これ退職金課税見直せば、サラリーマンではなく幅広く影響が出てくる、そういう危険性もある、そういうものだということだと私は思うんですね。
 退職金課税の在り方は多くの人の人生設計に大きな影響を及ぼします。退職金あるいは私的年金、これ、公的年金と合わせて退職後の老後の糧です。私は、長年働いてこられた労苦にきちんと税制で報いるということは必要なことだと思うんですよ。だから、やっぱり、勤続年数が長くなれば控除額増やすというのは、当然やるべきことなんじゃないかなと。
 大臣、いろいろこういう議論が今飛び交っているわけです。総理も予算委員会でこういったことを口にしているわけですね、見直すべきだとはっきりおっしゃっているんですよ。やっぱりこういうことでいいのかと。やっぱりこれ、きっぱり撤回すると、財務省としては、じゃ、もうこれやらないというんだったら、やらないとはっきり言ってください。撤回すると、撤回すると言ってください。
○国務大臣(加藤勝信君) 退職金等に係る課税については、政府税制調査会に設けられた専門家会合において、財政が厳しいから財源を確保するという視点ではなく、純粋に働き方への中立性や活力、公正といった観点から、経済社会の変化に対応できるよう、また実際の、今の経済社会の実態もあるんだろうと思いますが、検討されていくものだと考えており、課税強化を企図したものではなく、また直ちに結論出すというものでもないというふうに承知をしております。
 退職金の在り方、先ほどから申し上げておりますように、長年にわたり形成された期待を伴う高齢期の人生設計にも密接に関係することなども十分に踏まえる必要性があることも指摘をされております。今後はこうした観点も踏まえながら議論が続けられるものと考えております。
○小池晃君 増税を目的としたものではないんだということが言われましたけれども、大変不安が広がっています、この問題については。きちんとしたやはり情報を出していくということと、やっぱりこういう方向で増税するんだということはしないんだということをはっきり表明していただくと。
 この間のやっぱり財務省のいろいろやっていることを見ると、やっぱり増税になるんじゃないかという不安が広がるのは当然だと私思いますよ。宮沢先生は何か違う違うとさっきからおっしゃっていますけど、でも、やっぱりそういう不安広がっていますから、これはきっぱりやらないということを言明していただきたいということを申し上げて、質問終わります。

閉じる

資料

ご意見・ご要望