赤旗2025年3月8日付
日本共産党の小池晃書記局長は6日の参院予算委員会で、大企業優遇の不公正な税制をただし、消費税減税の実現を迫るとともに、暮らしも平和も脅かす大軍拡の中止を石破茂首相に迫るなど、大企業中心と米国言いなりという自民党政治に「二つのゆがみ」に正面から切り込みました。同時に、国民の切実な声を取り上げ、訪問介護報酬の削減撤回や最低賃金引き上げのための中小企業への直接支援を要求。日本学術会議の会員候補6人の任命拒否撤回、学術会議法人化法案の提出断念を求めました。
![]() (写真)質問する小池晃書記局長(右)=6日、参院予算委 |
税制
消費税減税・金融課税強化こそ
小池氏は、自民・公明と維新の会が合意した所得税法の修正による減税額は大半の人が2万円ほどで、昨年の定額減税の半分程度だとして「政府与党は『財源がない』と言うが根本的な税のゆがみに切り込んでいない」と強調。「与党税調では、法人税改革は賃上げ、設備投資につながらず内部留保を積み上げただけと毎年指摘している。大義なきばらまきだ」とただしました。
首相は「賃上げや下請けなどの支払いが増えることを期待したが意に反しそうならなかった」と効果がなかったことを認めました。
小池氏は、大企業が求める研究開発減税について「研究開発は大切だが、減税額の9割が資本金1億円以上の大企業だ」と指摘。2023年度減税額トップのトヨタ自動車の減税額は828億円(全体の8・7%)にも上るとして、「トヨタは30兆円を超える内部留保をため込んでいる。この減税は必要ない」と迫りました。
23年6月の政府税調は、政策税制について「企業の一つの目的が利益の最大化にあるとすれば(中略)費用対効果の観点からは正当化されない」としており、小池氏は「多額の内部留保を抱える大企業への研究開発減税はやめるべきだ」と強調しました。
小池氏は「所得税の富裕層優遇も目に余る。中でも金融所得に対する税率が低い『1億円の壁』だ。所得が1億円を超えると所得税負担額が下がる壁を取り払うべきだ」と求めました。
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首相は「適切な税負担をお願いすることによって株価が動くことがあってはならない」と強弁。小池氏は「投資家全員の負担を増やせと言っていない。所得1億円を超える税率を引き上げるべきだ」と迫りました。
小池氏は「大金持ち・大企業へ優遇する一方、国民には重い消費税、インボイスの押しつけという不公平に対する怒りがマグマのようにたまっている」と強調。「石破首相はかつて格差拡大の中で、消費税もタブー視しない議論が必要だと述べた。税全体のあり方を見直し、消費税減税を実現させる議論が必要ではないか」と迫りました。
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首相は「消費税の引き下げという議論は論理的につながらない。一体に考えてはならない」と強弁。小池氏は「論理的につながる。消費税を増やし所得税を減らしたことで税の累進構造が崩れたと首相も認めている」と反論しました。
首相は、低所得者には社会保障で厚い給付があり、消費税は直接税と比べその安定的な財源になるとの主張を繰り返しました。小池氏は、暮らしが大変な低所得者から税を取り立てて低所得者の給付に充てるのは「自己責任論」だとして「給付というなら、もうかっている大企業からしっかり税を取り、困っている人に充てるのが再分配だ」と語りました。
大軍拡
米国の要求きっぱり拒否を
小池氏は、軍事費が第2次安倍政権の10年間の16倍ものペースで急拡大していると告発。日本の軍事費を国内総生産(GDP)比3%に引き上げるべきだとのコルビー米国防次官候補の要求(4日)について「年18兆円の予算になり暮らしも財政も破綻する。拒否すべきだ」と迫りました。石破首相が「他国に言われて決めるようなことはしない」と述べるにとどめたのに対し小池氏は、「米側が金額で言っていることに何も言わなければ認めることになる」と警告しました。
歴代政権は、戦時中に軍事費のために国債発行を乱発した反省から、国債を軍事目的に使わないとしてきました。しかし、岸田文雄前政権は軍事費のために、公共事業のための建設国債の発行を強行しました。
2025年度防衛省予算案のうち、建設国債の発行対象と金額について横山信一財務副大臣は「自衛隊基地の整備費、護衛艦や潜水艦などの経費に計7148億円だ」と答弁。前年度比で約2000億円超もの増額です。
1965年に福田赳夫大蔵相(当時)は「公債を軍事目的に活用することは絶対にしない」と明言していました。首相は著書で「倍増する防衛費を国債でまかなっていくと、もはや歯止めがきかなくなる」と主張。別の著書でも「国民に対してまともな説明もないまま、冷静さを欠いた言説で危機感ばかりをあおり予算規模だけ膨らんでいく、といった状況を許してしまえば、それは民主主義国家の政府として不誠実と言われても仕方がない」としています。小池氏は「本ではいいことばかり言うが、実際にやっていることは違う」とただしました。
首相は「今でも国債に頼って防衛費を捻出することに反対だ。なるべく頼らないで捻出したい」と弁解。小池氏は「『なるべく頼らない』と言いながら増やしており、矛盾している。これでは暮らしも平和も守れない」と強調しました。
訪問介護
報酬の削減を撤回せよ
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昨年、訪問介護の基本報酬が引き下げられ、介護事業者の倒産は過去最多となりました。
小池氏は、厚生労働省の資料を基にした「しんぶん赤旗」の調査で、訪問介護事業所ゼロの自治体が107町村、そこで暮らす高齢者は14万人以上いる実態を告発。事業所が残り一つしかない自治体は272市町村で、そのうち石破首相の選挙区がある鳥取県は八つあると強調し、「こういう実態でよいのか」と首相に質問しました。
石破首相は答えることができず、福岡資麿厚労相が「新規開業や再開は(休廃止と)同程度あり、事業所の総数としてはやや増加している」などと答弁。小池氏は「(事業所が)増えているのは都市部で、地方は減っている」と反論しました。
小池氏は、訪問介護事業所がない自治体が昨年4月の報酬引き下げ後に急増していることを指摘。1年前の予算委員会で、基本報酬を引き下げたら事業所が地域から消えてしまうと警鐘を鳴らしたことを紹介し、「その後の経過は、私が言った通りだ」と首相の決断で介護報酬の引き下げを元に戻すよう求めました。
石破首相は「訪問介護職員の処遇改善がきちんと図られていないと意味がない。厚労省で詳細を精緻に把握する」と答弁。小池氏は「(処遇改善が)なされていないからこういう事態になっている。中山間地域でどんどん事業所が減って、訪問介護を受けられない地域が増えている」と指摘しました。
最賃
引き上げへ直接支援を
小池氏は、賃上げの問題でも財源を含めた具体策を示し、十分な賃上げを妨げる石破政権の姿勢を追及しました。
首相が「2020年代に最低賃金を全国平均1500円にする」としていることに対し、速やかに1500円に上げ、さらに増やすべきだと強調。「今年の引き上げ額は51円で、このペースでは29年までに1500円にも到達しない。どうするのか」とただし、物価高で利益が出ないなど中小企業の窮状を突き付けて、賃上げのため「国として、雇用を支えて頑張っている中小企業を直接支援すべきだ」と迫りました。
現行の最低賃金の全国平均時給1055円を1500円に引き上げた場合、社会保険料など従業員1人当たりの事業主負担は年間どれだけ増加するのかとの質問に、厚生労働省の岸本武史労働基準局長は約13万3800円だと答弁。小池氏は「これが賃上げの大きな障害になる」と指摘しました。
与党税制調査会も中小企業の6割は赤字で「税制措置のインセンティブが効かない」と動機づけとならなかったと認めており、10年間実施して効果のなかった「賃上げ促進税制」ではなく、赤字法人にも恩恵があり中小企業団体も求めている社会保険料の事業主負担軽減が「賃上げ対策としてもっとも効果的だ」と強調しました。
さらに、安倍晋三政権以来200兆円以上も増えた大企業の内部留保への5年間の時限的課税で10兆円の財源をつくり、中小企業の賃上げを支援する日本共産党の具体策を提示。「他に方法はあるか」とただすと、赤沢亮正経済再生担当相は、今までの法人税改革のもとでは賃上げや設備投資が「期待したほど伸びていない」と認めましたが他の方策は示せませんでした。
小池氏は、積み上がった内部留保が「小泉・竹中改革」以前には禁止されていた、自社の株を買って株価をつり上げる「自社株買い」に使われており、「自社株買い」上位10社の取得額は4兆円と賃金総額の2倍が株主還元に回っていると告発。米国やフランスで「自社株買い」への課税に踏み切ったように日本でも規制するよう要求し、労働者が頑張ってつくった利益が賃上げなどに回らず内部留保や役員報酬、「自社株買い」による株主還元に回る構造をただせと迫りました。
裏金問題
石破首相、食い違い認める
自民党裏金事件を巡り、旧安倍派会計責任者の松本淳一郎氏は衆院での参考人聴取で、派閥の政治資金パーティー収入の還流再開について安倍派幹部会合で「意見の対立はなかった」と証言していますが、同派幹部は「結論は出なかった」「松本氏の認識とは異なる」などと述べています。
小池氏が発言の矛盾を追及したのに対し、石破茂首相は「食い違いがある」と認めました。小池氏は「どういう経緯で違法行為が再開されたかはこの問題の核心だ」と強調し、会合に出ていた下村博文、西村康稔、世耕弘成、塩谷立の幹部4氏の証人喚問を要求しました。
小池氏は、参院議員の改選の年のパーティー券代金全額還流について、首相が「適法に使われたことを説明する責任が私どもにある」と述べたことにも触れ、「何に使ったのか明らかにせず、今夏の参院選での公認はあり得ないのではないか」とただしました。
首相が「主な使途は会合費、人件費、交通費などと聞いている」と答えたのに対し、小池氏は6年前の選挙の1カ月前に、選挙区内の自民党県議に30万円ずつ配ったと報道された議員もいると示し、首相の言う使い道と違うと反論。このまま公認すれば、責任が問われると厳しく批判しました。
小池氏は、首相が衆院で安倍派の裏金づくりが「20年以上前から行われていたこともうかがわれる」と述べたことに触れ、「20年以上前は森喜朗元首相が派閥会長だった時だ」として、「真相解明のためにも森氏に説明を求める必要がある」と追及。「疑念が払拭されたとはいえない」と認めた首相にたいし、森氏の証人喚問を求めました。
学術会議
法人化法案提出許されぬ
「日本学術会議の会員任命拒否の撤回もせずに、学術会議も合意できないような法案提出は許されない」―。小池氏は、2020年秋の菅義偉首相(当時)による6人の会員任命拒否と、政府が今国会への提出を狙っている学術会議法人化法案の問題を追及しました。
小池氏は「任命拒否は学術会議法に違反し、学問の自由を脅かす暴挙だ」と批判。拒否理由を明らかにするよう迫りましたが、首相は「任命権者である総理大臣が総合的俯瞰(ふかん)的な活動を確保する観点から判断したもので、既に一連の手続きは終了している」と従来の政府答弁を繰り返しました。
小池氏は、法律家らが起こした情報公開請求訴訟の中で示された、6人の名前が読み取れる20年6月12日付の行政文書について質問。この文書について国は「任命権者側から日本学術会議事務局に、令和2年(20年)改選に向けた日本学術会議会員候補者の推薦に係る事項として伝達された内容を記録した」ものと説明していると指摘し、学術会議が会員候補を推薦した8月より前の「6月の時点で6人を外す働き掛けがあったのか」とただしました。
相川哲也内閣府学術会議事務局長は文書の存在を認めた上で、政府からの働き掛けについては「お答えしかねる」と答弁。小池氏は「あったとすれば選考手続きへの事前の政治介入だ」と強調しました。
これまでの政府答弁は、9月に当時の杉田和博官房副長官から菅首相に6人を外す相談があり、首相が了承したとしています。小池氏は「杉田副長官が6人を選別したのなら、その根拠を明らかにする必要がある」と述べ、杉田氏の参考人招致を求めました。
さらに小池氏は、首相が昨夏に出版した自著で「従来の内閣が推薦候補者全員をそのまま任命するとしてきたのであれば、なぜそれが変わったのかについては、政府側が十分な説明を尽くす必要がある」「どういう手続きが踏まれたのかも明確にしておいた方がいい」と主張しているとして、現在の姿勢との矛盾を指摘。首相は「当時そのような判断がなされた」などと、まともに答えませんでした。
小池氏は「政府は任命拒否問題を学術会議のあり方の問題にすりかえ、学術会議の独立性を損ない、政府の意向に沿う組織に変質させる法人化法案を国会に提出しようとしている」と批判。学術会議の光石衛会長は法案に懸念を表明しているとして、「法案の閣議決定はやめるべきだ」と強調しました。