赤旗2025年1月30日付
日本共産党の小池晃書記局長は29日の参院本会議の代表質問で、過去最大の軍事費と大企業への大盤振る舞いという2025年度予算案の根本問題を告発し、抜本的転換を求めました。能登半島地震の復旧・復興や消費税減税・インボイス撤廃、企業・団体献金の全面禁止、教員の長時間労働是正、沖縄の軍事要塞(ようさい)化の中止など国民の切実な要求を示して提案を行いました。
能登半島地震の復興支援
生活再建支援 拡大せよ
![]() (写真)代表質問に立つ小池晃書記局長=29日、参院本会議 |
石破茂首相は施政方針演説で、能登半島地震の「復旧・復興への着実な取り組み」により、「農林水産業や輪島塗の再開も進みつつある」と述べました。
16日に現地を調査した小池氏は▽水田が昨年9月の豪雨でさらに大きな被害を受けている▽多くの漁港が海底の大規模な隆起で船を出せない▽輪島塗も地震前の売り上げに戻っていない▽道路や水道の整備も遅れている―などの実態を示し、「それでも復旧・復興は順調だというのか」とただしました。
石破首相も「引き続き取り組まなければならない課題は数多く残されている」と答えざるを得ませんでした。
小池氏は「とりわけ住宅再建にはめどすら立っていない」とし、住宅の「全壊」でも300万円が上限の被災者生活再建支援金の大幅な引き上げと対象拡大を求めました。
石破首相は「(同支援金は)災害による財産の損失を補てんするものでなく見舞い金的な性格」と強弁しました。
社会保障と軍事費
大軍拡やめ充実に回せ
2025年度予算案の社会保障費は24年度比1・5%増で、3年連続して物価上昇率を下回っています。小池氏は「介護報酬引き下げで介護事業所の倒産は過去最高になり、病院の倒産・廃業も過去最高、年金も物価を下回る実質マイナス」だと指摘しました。
小池氏は、高額療養費の上限引き上げについて、20代のがん患者の悲痛な声を紹介し、「がんや心臓病など深刻な病に苦しむ人々へのあまりに冷たい仕打ちだ」と批判。「長期にわたって継続した治療が必要な患者・家族は、負担引き上げで生活が成り立たなくなり、治療継続の断念を迫られる」と撤回を求めました。石破首相は「保険料負担の抑制につなげるため」と正当化しました。
一方、25年度予算案の軍事費は過去最大の8・7兆円で、安保3文書以降の3年で3・3兆円も増加。小池氏は、5年で軍事費をGDP比1%から2%へと倍増させるために、歳出削減、税外収入、決算剰余金の活用など国のあらゆる財源を優先的に軍拡に充てる仕組みを構築していることを明らかにし、「これでは社会保障や教育を充実させようとしても、他の予算を削るか、新たな財政負担を国民に強いる以外にない。大軍拡を中止しなければ国民生活拡充の予算を確保できなくなっている」と強調しました。
小池氏は、米トランプ政権が軍事費のGDP比3%への引き上げを求めた場合、石破首相が「結果としてそういう数字になることを全否定はしない」と述べたことに対し、「このような要求は決して受け入れないと表明すべきだ」と追及。石破首相は「あくまでわが国の判断で行うもの」と開き直りました。
中小企業への賃上げ直接支援
全国一律の最賃1500円を
小池氏は、来年度予算案は大企業への大盤振る舞いだと批判。半導体企業には1・9兆円もの支援をし、7割の人が働く中小企業予算は軍事費の50分の1にすぎないとして、賃上げのカギを握る中小企業への抜本的な支援が必要だと強調しました。2014年に小規模企業振興基本法が全会一致で採択された時の付帯決議「社会保険料の負担軽減への効果的な支援策の実現を図ること」を示し、「国会の意思に応えるべきだ」とただしました。
石破首相は「中小企業の社会保険料は労働者を守る事業主の責任のため、慎重な検討が必要だ」と答えるにとどまりました。
小池氏は、石破首相が2020年代に、最低賃金の全国平均1500円を目指すとしたのに対し、「29年にようやく1500円では遅い。これではいつまでも実質賃金はプラスにならない」と批判。賃金引き上げに取り組む県知事は、異口同音に現在の最賃決定の方法に疑問を投げ掛けているとして、「昨年の総裁選で『全国一律最低賃金制度の実現』を掲げた公約を守るべきだ」とただしました。
石破首相は、公約については触れず、「地域間格差を是正する。20年代に平均1500円を目指す」とこれまで通りの答弁を繰り返しました。
小池氏は、「税負担が重すぎるという願いは切実だ。情け容赦ない最悪の不公平税制が消費税だ。廃止を目指し緊急に5%に減税する。インボイスを撤廃すれば中小企業支援になり、最も効果的だ」と強調。「大企業や富裕層への行き過ぎた減税を元に戻し、所得1億円を超えると税負担が逆に下がる『1億円の壁』こそ取り払うべきだ。税制全体のゆがみをただす抜本改革こそ財源も確保できる」と示しました。
石破首相は「消費税、インボイスの廃止は考えていない。所得税は、投資家が投資しやすい環境が重要だ」と背を向けました。
農業支援・気候危機
米価格・所得補償今こそ
小池氏は、コメも野菜も大幅に値上がりしていると述べ、10年でコメの生産量が139万トン減ったと指摘。「供給量が減ればわずかな需給変動で米価は乱高下する。価格保障と所得補償に踏み切るべきだ」と述べ、「農林水産予算は80年代から1兆円も減っている。農業予算を抜本的に増やすよう求める」と迫りました。
米国のトランプ政権がパリ協定から脱退したことに、小池氏は「気候危機に取り組む若者や専門家から厳しい批判上がっている。黙って見過ごすのか」と指摘。「日本政府は2035年度の温室効果ガスの削減目標を13年度比の75~80%への野心的な目標に引き上げるべきだ」とただしました。
石破首相は「アメリカの動向を注視する」と述べるにとどめました。
政治ゆがめる企業・団体献金は禁止
裏金問題の真相究明を
企業・団体献金で「政策がゆがめられた記憶はない」と主張する石破首相に対し、小池氏は、経済産業省が発表した新たな「エネルギー基本計画」の原案には原発の最大限活用、廃炉にした原発を敷地内で建て替える方針が盛り込まれたことを指摘。これらは経団連が2017年に「今後のエネルギー政策に関する提言」を発表して以降、政府に再三要求してきたものだとして、「福島の苦しみには背を向け、経団連の要求通りに政策を進めてきた」と追及しました。
経団連が毎年行う各党の政策評価で、自民党の政権復帰後、消費税増税と法人税減税などの政策を11年連続で「高く評価」し、会員企業に自民党への献金を呼びかけ、企業献金の95%、年間24億円が同党につぎ込まれてきたと告発。「禁止より公開」を繰り返す首相に対し、「営利目的の企業による献金が必然的にわいろ性を帯びているとの自覚も反省もないのか」「こうした疑念払拭のためにも、企業・団体献金の全面禁止が必要だ」とただしました。
石破首相は「特定団体の意向のみ踏まえたとの指摘は全く当たらない」と開き直り、企業・団体献金も「わいろ性は全くない」と正当化しました。
小池氏は、政治倫理審査会に「自民党議員が『駆け込み寺』かのように列をなしたものの真相究明しようという議員は一人もいない」と批判。自民党の東京都議会議員26人のパーティー収入の不記載が明らかになった事件にも言及。「自民党は国政、地方政治の全体について明らかにする政治責任がある」とし、安倍派幹部の証人喚問と会計責任者の国会招致を強く求めました。
石破首相は「都議会自民党は会見を開き説明した」など従来の主張を繰り返しました。
教員の長時間労働
解決に向け二つの提案
小池氏は、教員の異常な長時間労働の解決について二つの提案を政府に示しました。
一つ目は、公立学校の「教員残業代ゼロ制度」の廃止です。小池氏は、1971年に自民党政府が公立学校の教員を残業代制度から除外し、当時すべての野党が「そんなことをしたら教員の労働時間が青天井になる」と反対したことを紹介。「その後の展開は野党の主張の通りになった」と指摘しました。
二つ目は、教員定数の抜本的な引き上げです。小池氏は、58年に定数が定められた時、授業負担は「1日4コマ」だったのが、現在は「1日5コマ、6コマ」が当たり前になり、授業以外の仕事を勤務時間後にやらざるを得なくなっていると指摘。「緊急に『1日4コマ』に戻すことが必要で、そのために基礎定数を1・2倍にすべきだ」と主張しました。
石破首相は、「教師の時間外在校等時間を削減する」と述べましたが、残業代ゼロ制度廃止や教員定数の引き上げには触れませんでした。
日本学術会議法案
合意なき法案撤回せよ
政府は、日本学術会議を法人化し、政府による介入・統制を可能にする日本学術会議法案の今国会提出を狙っています。小池氏は「2020年に菅義偉首相が学術会議会員候補6名の任命を拒否した暴挙を、いまだに何の反省もしていない」と批判。「『任命拒否の撤回』がすべての前提だ」と指摘しました。
昨年末の内閣府の有識者懇談会の報告書は、活動のチェックや、外部者が学術会議に意見を述べる選考助言委員会の設置などを求めています。小池氏は、これらは学術会議の活動や会員選考を政府や外部勢力によって方向づけるもので、「独立して職務を行う」という現行制度の根幹を掘り崩すものだと指摘。日本学術会議はこれらの問題に繰り返し懸念を表明しているとして、「学術会議の合意を得ていない法案を提出することは許されない」と迫りました。
石破首相は、任命拒否の「一連の手続きは終了した」と撤回を拒絶し、「同法案を今国会に提出すべく、作業を進めているところだ」と言い放ちました。
戦後80年
軍拡でなく外交努力を
「戦後の日本の出発点は二度と戦争をしないと世界に誓った『日本国憲法』だった」―。小池氏は、戦争終結80年の節目だが、政府は歴代政府が憲法上許されないとしてきた集団的自衛権の行使容認、長射程ミサイルの導入、日米の指揮・統制の一体化などを推し進めていると強調。「『日米同盟絶対』の名のもとに、このような態勢が日本国憲法に照らし、どうして許されるのか」と迫りました。
石破首相は、「防衛力の抜本的強化は不可欠だ」と大軍拡を強調しながら、「専守防衛の考え方を堅持して進めていく」と開き直りました。
小池氏は、政府がやるべきことは、地域の緊張を高める言動を厳しく退け、当事者間の平和的な話し合いを促進する外交努力だと強調し、唯一の被爆国として核兵器禁止条約への参加を求めました。石破首相は、「検討を続ける」とするのみで、条約参加について答えませんでした。
小池氏は、沖縄は、本土決戦を遅らせるための捨て石とされたうえ、戦後も軍事優先社会のもと、「米兵による相次ぐ性暴力事件が女性の尊厳と人権を蹂躙(じゅうりん)し続けている」と告発しました。石破政権は歴史を無視し、米軍辺野古新基地建設を強行し、将来にわたり沖縄を基地に縛り付けようとしていると厳しく批判。「沖縄を再び捨て石にするなど断じて許されない。沖縄の苦難の歴史に向き合い、基地のない平和な島の実現に努力することこそ政府の責務だ」と迫り、新基地建設、自衛隊のミサイル部隊配備などによる軍事要塞(ようさい)化の中止・撤回を求めました。石破首相は「辺野古移設は唯一の解決策」とし、着実に工事を続けると強弁しました。
「日米同盟の対処力の強化は抑止力を向上させる」などと述べる石破首相に対し小池氏は、「やるべきは日米軍事同盟の強化ではなく、憲法9条を生かした平和外交だ」と強調しました。