日本共産党 書記局長参議院議員
小池 晃

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大軍拡やめ生活拡充を 中小企業支援 賃上げのカギ 小池書記局長が参院本会議代表質問

2025年02月10日

赤旗2025年1月30日付

 日本共産党の小池晃書記局長は29日、参院本会議で代表質問に立ち、軍拡と大企業支援に財源を優先的にあて、企業献金で政策をゆがめる石破政権を追及しました。能登半島の被災者や高額治療が必要な患者らの切実な声を示して国民生活を拡充する予算を提案。中小企業支援による賃上げ、農業支援、気候危機、教員の長時間労働、日本学術会議への介入、沖縄の基地など多岐にわたる問題を取り上げ、首相の姿勢をただしました。(質問全文関連記事

 


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(写真)代表質問に立つ小池晃書記局長。奥は石破茂首相=29日、参院本会議

 小池氏は、住宅再建のめどすら立たない能登の現況を示し、住宅「全壊」でも300万円の被災者生活再建支援金制度の不十分さを指摘。金額の大幅引き上げと支援対象の拡大を求めました。

 

 2025年度予算案について、社会保障費の伸び率が1・5%で物価上昇率を下回っていると強調。がん患者らは今夏からの高額療養費の上限引き上げで治療継続の断念を迫られるとして方針撤回を強く求めましたが、首相は「説明を尽くす」と述べ、患者らの訴えに背を向けました。

 

 小池氏は「大軍拡を中止しなければ、国民生活拡充の予算を確保できなくなっている」と強調。米トランプ政権に軍事費のGDP比3%への引き上げを求められた場合「決して受け入れないと表明すべきだ」と求めましたが、首相は3%への引き上げを否定しませんでした。

 

 小池氏は、賃上げのカギを握るのは中小企業への支援であり、県レベルで始まっている中小企業への直接支援を国も実施すべきだと主張。最も効果的なのは社会保険料の軽減だと提案しましたが、首相は「慎重な検討が必要」と述べるだけでした。小池氏はさらに、首相が自民党総裁選で掲げた「全国一律最低賃金制度」の公約実現を要求。消費税は廃止をめざし緊急に5%とし、インボイス制度を撤廃するよう求めました。

 

 政府が経団連の要求通りに進めてきた原発推進政策が、再生可能エネルギー比率の引き上げを抑えていると指摘。政策をゆがめる企業・団体献金の全面禁止と裏金事件の真相解明を強く求めました。

 

 公立学校の「教員残業代ゼロ制度」廃止と教員定数の引き上げを要求。政府が今国会に提出を検討している日本学術会議法案の内容には、学術会議が繰り返し懸念を表明しており、同会議の合意を得ない国会提出は許されないと述べました。

 

 小池氏は核兵器禁止条約への参加を要求。沖縄は米軍基地によって住民の尊厳と人権が蹂躙(じゅうりん)されているとして、辺野古新基地建設、沖縄の軍事要塞(ようさい)化の即時中止・撤回を求め、憲法9条を生かした平和外交を強く求めました。

速記録を読む

○小池晃君 日本共産党の小池晃です。
 会派を代表して、石破茂総理に質問します。
 総理は、施政方針演説で、能登半島地震の復旧・復興への着実な取組により農林水産業や輪島塗の再開も進みつつあると述べましたが、実態はどうか。
 私は、十六日、現地を訪れました。震災後四回目ですが、水田は九月の豪雨で更に大きな被害を受け、多くの漁港は海底の大規模な隆起で船を出せず、輪島漆器商工業協同組合の理事長は、ようやく仮設工房ができたが、地震前の売上げには戻っていないと語りました。道路や水道の整備も遅れています。それでも復旧復興は順調だと言うのでしょうか。
 とりわけ、住宅再建にはめどすら立っていません。支援金に義援金を合わせても、とても家など建てられないという悲鳴をあちこちで聞きました。被災者生活再建支援金制度は三十年前の阪神大震災の被災者の運動で創設されましたが、いまだに住宅の全壊でも三百万円です。これが十分な水準だとお考えですか。大幅な引上げと対象拡大が必要ではないか。答弁を求めます。
 来年度予算案について、社会保障費が伸びたと言いますが、伸び率一・五%で、三年連続して物価上昇率を下回っています。介護報酬引下げで介護事業所の倒産は過去最高になり、病院の倒産、廃業も過去最高、年金も物価を下回る実質マイナスです。
 高額療養費の上限引上げは、がんや心臓病など深刻な病に苦しむ人々への余りに冷たい仕打ちです。多くの若年がん患者は、抗がん剤治療などを受けながら就労して、ぎりぎりの生活を送っています。全国がん患者団体連合会のアンケートには、二十代のスキルス胃がん患者から、子供のために少しでも長く生きたいが、毎月更に多くの医療費を支払うことはできません、死ぬことを受け入れ、子供の将来のためにお金を少しでも残す方がいいのか追い詰められていますという悲痛な声が寄せられています。
 長期にわたって継続した治療が必要な患者、家族は、負担引上げで生活が成り立たなくなり、あるいは治療継続の断念を迫られます。方針の撤回を強く求めます。お答えください。
 一方で、物価をはるかに上回って伸びているのが軍事費です。来年度は過去最大の八・七兆円、安保三文書以降の三年間で三・三兆円も増えました。その結果、防衛予算は文教予算の二・一倍となっています。
 政府は五年間で軍事費をGDP比二%へと倍増させ、そのために歳出削減、税外収入、決算剰余金の活用など、国のあらゆる財源を優先的に軍拡に充てる仕組みを構築しています。これでは、社会保障や教育の予算を拡充しようとしても、ほかの予算を削るか、新たな財政負担を国民に強いる以外にありません。大軍拡を中止しなければ国民生活拡充の予算を確保できなくなっているということを認めますか。
 ところが、総理は、更なる軍拡の可能性も否定しておりません。米トランプ政権にGDP比三%への引上げを求められた場合の対応を問われ、必要であれば防衛費を増額し、結果としてそういう数字になることを全否定はしないと述べました。とんでもありません。このような要求は決して受け入れないと表明すべきではありませんか。
 来年度予算のもう一つの大問題が大企業への大盤振る舞いです。
 半導体大企業には、補正予算と合わせて一・九兆円もの支援。振る舞うべきは七割の人が働く中小企業なのに、中小企業予算は軍事費の五十分の一にすぎません。
 賃上げの鍵を握るのは、中小企業への抜本的な支援です。岩手県や徳島県などで中小企業の賃上げへの直接支援が始まっています。国としても、中小業者の賃上げのための直接支援を実施すべきではありませんか。
 最も効果的な支援策は社会保険料の軽減です。二〇一四年、小規模企業振興基本法が全会一致で採択されたときの附帯決議には、社会保険料の負担軽減への効率的な支援策の実現を図ると明記されました。国会の意思に応えるべきです。答弁を求めます。
 総理は、最低賃金を二〇二〇年代に全国平均で千五百円に引き上げると言いますが、二〇二九年にようやく千五百円では余りに遅過ぎます。これではいつまでたっても実質賃金はプラスになりません。
 こうした中、各地で最賃の引上げ努力が始まっていますが、積極的に取り組む県知事は、異口同音に現在の最賃の決定方法に疑問符を投げかけています。
 徳島県の後藤田知事は、最賃法第一条には支払能力だとか原資を考えなければならないと書いてあるが、一丁目一番地は憲法二十五条の生存権に基づいた最低限の暮らしを守るためにある、岩手県の達増知事は、論理的には全国一律の最賃による引上げが理屈に合っている、秋田県の佐竹知事は、最低賃金を決めるシステムは競争でイタチごっこ、完全に制度疲労していると述べています。こうした知事たちの声に、どう総理は答えますか。
 総理は、昨年の自民党総裁選挙で、全国一律最低賃金制度の実現を掲げました。公約を守るべきではありませんか。答弁を求めます。
 税負担が重過ぎるという願いは切実であり、三十年間据え置かれてきた課税最低限は引き上げるべきです。しかし、今の政府案では、例えば年収二百万から三百万円の方の減税額は年間五千円程度にすぎません。しかも、年収百三万円に届かない三千万人以上は取り残されてしまいます。そうした人にも情け容赦なく掛かってくる最悪の不公平税制が消費税です。廃止を目指し、そして緊急に五%に減税し、インボイスを撤廃する。そして直接の物価高対策になり、中小企業支援にもなります。最も効果的な減税ではないでしょうか。
 恒久減税には恒久的な財源が必要です。大企業や富裕層への行き過ぎた減税を元に戻すとともに、所得一億円を超えると証券優遇税制で所得税の負担が逆に下がる一億円の壁こそ取り払うべきです。税制全体のゆがみを正す抜本改革でこそ、財源も確保できます。答弁を求めます。
 食は命の源です。しかし、米の店頭価格は五キロで四千円前後、昨年から一・七倍で、暮らしに深刻な打撃となっています。
 なぜ米価が高騰するのか。この十年間で、生産者が減り、米の生産量が百三十九万トンも減ったからです。供給量が減れば、僅かな需給変動で流通は混乱し、米価は乱高下してしまいます。
 農水大臣は、国が買い戻すという条件付で、政府備蓄米を放出する方針を出しました、示しました。しかし、市場任せの方針を維持するなら、びほう策にしかなりません。今こそ価格保障と所得補償に踏み切るべきではありませんか。答弁を求めます。
 米だけではありません。キャベツも白菜も高騰しています。生産者も消費者も支援が必要なのに、来年度の農林水産予算は僅か二十億円しか増えておりません。八〇年代から一兆円も減っております。
 安心できる食料は日本の大地から。食料自給率を高め、国内生産を増大させるため、農業予算を抜本的に増やすように求めます。お答えください。
 世界気象機関が、昨年の世界の平均気温が産業革命前を一・五五度上回ったとする推計を発表いたしました。深刻な事態になる下で、米国トランプ政権がパリ協定から脱退したことに、気候危機に取り組む若者や専門家から厳しい批判の声が上がっています。総理は、昨日もこの問題で何のコメントもしませんでした。黙って見過ごすつもりなんですか。お答えいただきたい。
 日本政府の姿勢も問われています。我が国は、いまだに石炭火力発電の廃止期限を決めておりません。そして、二〇三五年までの温室効果ガスの削減目標は、一三年度比で六〇%削減にとどまっています。目標の引上げは国際社会と未来の世代への責任です。エネルギー消費を六割減らし、電力の再エネ比率を八割にして、一三年度比で七五から八〇%の野心的な目標に引き上げるべきではないか。答弁を求めます。
 再エネ比率の引上げを抑えているのが政府の原発推進政策です。経済産業省が発表した新たなエネルギー基本計画の原案は、原発の最大限活用を明記し、廃炉した原発を敷地内で建て替える方針を盛り込みましたが、これらは、日本経団連が二〇一七年に今後のエネルギー政策に関する提言を発表して以降、政府に再三要請してきたものであります。今も続く福島の苦しみには背を向けて、経団連の要求どおりに政策を進めてきた、それが事実ではありませんか。
 総理は、献金で政策がゆがめられたとの記憶はないと述べました。しかし、記憶を呼び起こしていただきたい。経団連は毎年各党の政策を評価し、自民党の政権復帰後は、消費税増税と法人税減税を始めとした政策を十一年連続で高く評価し、会員企業に自民党への献金を呼びかけ、企業献金総額の九五%、年間二十四億円が注ぎ込まれてきたのです。こうした経過を見れば、金で政策がゆがめられたと言われても仕方がないのではないでしょうか。
 総理は、企業・団体献金を禁止より公開だと言いますが、そんなことで国民の政治への信頼を回復することができるとお考えなのか。総理には、営利目的の企業による献金が必然的に賄賂性を帯びていることの自覚も反省もないんでしょうか。こうした疑念を払拭するためにも、企業・団体献金の全面禁止が必要だと思いませんか。お答えください。
 政治倫理審査会には、駆け込み寺であるかのように自民党議員が列を成しましたが、自ら真相を解明しようとする方は一人もおらず、言い訳のオンパレードです。
 総理は、党総裁として、これまでの政倫審で自民党への国民の疑念が解消したとお考えでしょうか。
 自民党東京都議会議員二十六名のパーティー収入の不記載も明らかになりました。これも一昨年、共産党の機関紙、しんぶん赤旗がスクープしていたものです。
 裏金づくりを、誰が、いつから、何のために行い、何に使われたのか、自民党には国政と地方政治の全体について明らかにする責任があるのではありませんか。お答えください。真相の徹底解明のため、安倍派幹部の証人喚問と、会計責任者の国会招致を強く求めるものであります。
 教員の長時間労働の問題について聞きます。
 公立小中学校の教員は、平均で約十一時間半働き、休憩は僅か数分。まさに異常な長時間労働です。多くの教員が体を壊し、精神性疾患による病休者も急増し、授業準備や子供と関わる時間がないと訴えています。
 私たちは、二つのことを政府に求めます。一つは、公立学校の教員残業代ゼロ制度の廃止です。残業には割増し賃金を払う、そのことで長時間労働にブレーキを掛ける、これが世界のルールです。しかし、自民党政府は一九七一年、公立学校教員給与特別措置法、給特法により、公立学校の教員を残業代制度から除外しました。当時、全ての野党が、そんなことをしたら教員の労働時間が青天井になると反対いたしました。
 総理、その後の展開は、野党の主張どおりになったと思いませんか。このことを反省して、教員残業代ゼロ制度を廃止すべきではないでしょうか。
 いま一つは、教員定数の抜本的な引上げです。一九五八年に定数が定められたときは、授業に見合った教員数が配置され、授業負担は一日四こまでしたが、今は一日五こま、六こまが当たり前になり、授業以外の仕事を勤務時間後にやらざるを得なくなっています。解決するには緊急に一日四こまに戻すことが必要であり、そのためには基礎定数を一・二倍にすべきであります。答弁を求めます。
 政府が提出を予定して、検討している日本学術会議法案について質問します。
 政府は、二〇二〇年に菅義偉首相が学術会議会員候補六名を任命拒否したその暴挙を、いまだに何の反省もしていません。任命拒否の撤回が全ての前提ではありませんか。
 昨年十二月に内閣府の有識者懇が発表した報告書は、主務大臣任命の評価委員会や監事を定め、学術会議の活動をチェックすること、外部者が学術会議に意見を述べる選考助言委員会や運営助言委員会を設置することなどを求めました。これらは、学術会議の活動や会員選考を政府や外部勢力によって方向付け、独立して職務を行うという現行制度の根幹を掘り崩すものであります。
 日本学術会議は、これらの問題に対して繰り返し懸念を表明してこられました。学術会議の合意を得ていない法案を国会に提出することなどは許されないのではありませんか。答弁を求めます。
 今年は戦争終結から八十年の節目を迎えます。戦後の日本の出発点は、二度と戦争しないことを世界に誓った日本国憲法でした。
 ところが、今、政府は、歴代政府自身が憲法上許されないとしてきた集団的自衛権の行使容認に踏み切り、外国領土を直接攻撃する長射程ミサイルの導入や、日米の指揮統制の一体化などを推し進めています。
 日米同盟絶対、この名の下にこのような態勢づくりに加わることが、日本国憲法に照らしてどうして許されるのですか。政府がやるべきことは、いかなる国によるものであれ、地域の緊張を高める言動を厳しく退け、当事者間の平和的な話合いを促進する外交努力なのではありませんか。唯一の被爆国として核兵器禁止条約に参加することではありませんか。
 沖縄は、国体護持を至上命令とした大本営の方針により、本土決戦を遅らせるための捨て石とされ、住民を巻き込んだ凄惨な地上戦の場となりました。その後二十七年間にわたり米軍の直接統治下に置かれ、憲法が適用されない無権利状態の下で広大な米軍基地が建設をされ、今に続く軍事優先社会がつくられました。そして、米兵による相次ぐ性暴力事件が女性の尊厳と人権をじゅうりんし続けています。
 ところが、政府はこうした歴史を無視をして辺野古新基地の建設を強行し、将来にわたって沖縄を基地に縛り付けようとしています。さらに、自衛隊のミサイル部隊を次々と配備し、沖縄の戦場化を前提とした日米共同作戦計画の策定と合同軍事演習を推し進めています。
 沖縄を再び捨て石にすることなど断じて許されません。沖縄の苦難の歴史に向き合い、基地のない平和な島の実現に努力することこそ政府の責務です。辺野古新基地建設、沖縄のミサイル基地化、軍事要塞化は直ちに中止、撤回すべきではありませんか。明確な答弁を求めます。
 政府がやるべきことは、国連憲章に基づく平和の国際秩序を守ることです。日米軍事同盟の強化ではなく、ASEANと協力し、東アジアを戦争の心配のない地域にしていくための憲法九条を生かした平和外交です。日本共産党はそのことを強く強く求めて、質問を終わります。
 御清聴ありがとうございました。(拍手)
   〔内閣総理大臣石破茂君登壇、拍手〕
○内閣総理大臣(石破茂君) 小池晃議員の御質問にお答えを申し上げます。
 能登の復旧復興についてお尋ねをいただきました。
 これまで、地元の方々を始め多くの方々の御尽力により、復旧復興は一歩一歩前に進んでまいりました。
 農林水産分野では、営農や製材工場、ズワイガニ漁などの漁業が順次再開をいたしております。地盤隆起などの甚大な被害がありました十六漁港のうち七漁港で仮復旧工事を完了いたしました。九月の豪雨災害に対しましても地震被害と同様の支援を措置し、被災農地約四百ヘクタールのうち約百七十ヘクタールについて、この春、今春の作付けに間に合うよう復旧を進めております。
 輪島塗につきましては、仮設工房八十三室を設置いたしました上で、九月豪雨により床上浸水した仮設工房の被害にも対応し、あわせて、製造再開に必要な道具、原材料などの確保や需要拡大への取組の支援も行ってまいりました。
 道路の復旧につきましては、昨年末までに、九月豪雨での被災箇所を含め、国道二百四十九号線の通行とともに、全ての集落などへのアクセスを再度確保をいたしております。
 水道につきましては、建物倒壊地域などを除く全ての地区で昨年末に断水を解消しており、今後は被災市町の意向を踏まえつつ、水道施設の本復旧を支援してまいります。
 引き続き取り組まねばならない課題はまだ数多く残されております。今日の昼にも石川県の馳知事が御来訪になりまして、多くの課題についてのいろんな御要請を賜ったところでございます。生活となりわいの再建、被災地の創造的復興に政府一丸となって今後とも取り組んでまいります。
 被災者生活再生、失礼、被災者生活再建支援金についてでございます。
 能登半島地震の被災者の皆様の生活再建につきましては、引き続き、被災者生活再建支援金と地域福祉推進支援臨時特例交付金、さらには復興基金を活用した事業という総合的な枠組みにより支援をいたしてまいります。
 被災者生活再建支援金は、災害による財産の損失を補填するものとしてではなく、いわゆる見舞金的な性格のものとして被災者を側面的に支援するものと、このように位置付けられております。この拡充などにつきましては、これが都道府県の基金を活用しており、その財源の半分を全国の都道府県が負担をしていること、東日本大震災などの過去の震災や現在も支給が継続されているほかの災害における被災者との公平の確保といった点につきまして、よくよく考えなければならないと考えておるところでございます。
 高額療養費制度の見直しについてでございますが、高額療養費制度は医療費の自己負担に上限額を設ける重要なセーフティーネットでございます。高齢化や高額薬剤の急速な普及などによりその総額が年々増加する中で、現役世代を中心に保険料負担が大きな課題となっております。
 このような状況を踏まえまして、制度のセーフティーネットとしての役割を将来にわたって維持しつつ、保険料負担の抑制にもつなげますため、見直しを行うということにいたしたところでございます。
 その際、負担能力に応じて引上げ率を緩和するなど、低所得の方、長期にわたって医療を受けておられる方の経済的負担に十分に配慮をいたしており、引き続き、見直しの趣旨、内容について説明を尽くしてまいります。
 防衛費についてでございます。
 国家安全保障戦略では、二〇二七年度において防衛力の抜本的強化とそれを補完する取組を合わせ、そのための予算水準がGDPの二%に達するよう所要の措置を講ずることといたしております。
 これらの取組を通じて強化された防衛力を維持していくために必要な安定財源を確保する一方、社会保障や教育を含め、各種の施策に必要な予算を措置いたしており、防衛力の強化によってほかの分野の予算が確保できないという御指摘は全く当たらないものでございます。
 また、我が国の安全保障に係る予算水準につきましては、これは我が国自身の判断として必要な防衛力の内容を積み上げた上で決定をいたした結果でございます。今後につきましても、我が国自身の判断で決定していくことは言うまでもございません。
 私が申し上げましたのは、必要であれば防衛費を増額し、結果としてそういう数字になることを全否定はしないということを申し上げたのでございますが、これはあくまで我が国の判断において行うものでございます。そうならないことも十分にあるということは当然のことでございます。
 中小企業の社会保険料についてのお尋ねでございます。
 中小企業に対しての社会保険料の事業主負担を軽減すべきとの御提案につきましては、社会保険料が医療や年金の給付に充てられ、労働者を支えるための事業主の責任であると、このようなことから慎重な検討が必要でございます。
 また、中小企業に対しましては、非正規雇用労働者を正社員に転換した事業主に対するキャリアアップ助成金による支援など、政策目的に応じて助成金などによる支援を行っておるところでございます。
 賃上げが実現できるよう、中小企業に利益を上げていただくための適切な価格転嫁や生産性向上を支援しながら、社会保険につきましては、年齢にかかわらず適切に支え合うことを目指す改革を着実に行うこと、これが重要であるというふうに認識をいたしております。これらを着実に進めてまいります。
 最低賃金法におきましては、通常の事業の賃金支払能力のみならず、地域における労働者の生計費などを考慮しなければならない、このように定められております。公労使三者構成の最低賃金審議会で、地域の実情も踏まえて引上げ額について御議論をいただくと、このようにいたしておるところでございます。
 今年度は、過去最大額となる五十一円の引上げを実現するとともに、地域間格差も十年連続で縮小する改定が行われました。政府といたしましては、引き続き、最低賃金法に基づき、二〇二〇年代に全国平均千五百円、この高い目標に向かってたゆまぬ努力を続けてまいります。その際、地域別最低賃金の最高額に対する最低額の比率を引き上げるなど、地域間格差の是正を図ってまいります。
 消費税率引下げ、インボイス制度の廃止及び今後の税制の在り方についてでございます。
 消費税は、急速な高齢化などに伴い社会保障給付費が大きく増加する中において、全世代型社会保障制度を支える重要な財源に位置付けられております。そのため、政府といたしまして、その引下げを行うことは適当ではないと考えております。
 インボイス制度は、複数税率の下で課税の適正性を確保するために必要なものでございまして、廃止は考えておりません。事業者の御不安等に対しましては、事業者からの御相談を受けるなど、引き続き丁寧に対応をいたしてまいります。
 所得税につきましては、公平性の確保が重要である一方、投資家が投資しやすい環境も損なわないようにすることが重要でございます。これらを総合的に考えてまいります。
 法人税につきましては、法人税率を引き上げつつターゲットを絞った政策対応を実施するなど、めり張りのある法人税体系を構築していくという与党税制改正大綱で示された考え方を踏まえながら対応をいたしてまいります。
 米価への対応、農業者支援、農業予算についてでございます。
 消費者の皆様に米を安定的に供給し、価格を落ち着かせるため、一定期間後に買い戻すことを条件といたしますが、政府備蓄米を集荷業者に売り渡すことができる仕組みを導入することといたしました。
 農業者への支援の在り方につきましては、今後、新たな食料・農業・農村基本計画の策定や、令和九年度に向けた水田政策の在り方の検討の中で議論を深めてまいります。
 我が国の食料安全保障を確保しつつ、農業をもうかる産業とするとの観点から、令和七年度農林水産関係予算を有効活用し、実効性を伴う施策を展開をいたしてまいります。
 アメリカのパリ協定離脱についてでございますが、気候変動は人類共通の待ったなしの課題でございます。主要排出国を含む全ての国の取組が重要であることに変わりはございません。世界の気候変動対策へのアメリカの関与は引き続き重要であります。
 今後につきましては、アメリカの動向を引き続き注視する必要がありますが、我が国といたしましては、アメリカと協力していく方法を探求しつつ、気候変動問題に積極的に取り組みます。
 電力の再エネ比率引上げについてでございます。
 AI時代の電力需要増加が見込まれる中、安全性を大前提として、安定供給、経済成長、脱炭素のバランスを取っていかなければなりません。
 政府の審議会におきまして、こうした考え方を踏まえ、二〇四〇年度におけるエネルギーミックスとして、再エネ四から五割程度、原子力二割程度、火力三から四割程度という見通しを示したところでございます。
 次期温室効果ガス削減目標につきましては、二〇五〇年ネットゼロに向けまして、パリ協定の一・五度目標と整合的であり、かつ野心的な、二〇三五年度六〇%、二〇四〇年七三%削減を目指す案を取りまとめておるところでございます。
 第七次エネルギー基本計画案における原子力の方針についてお尋ねをいただきました。
 東京電力福島第一原子力発電所事故の経験、反省と教訓を肝に銘じ、政策を進めていくことがエネルギー政策の原点であり、福島の復興再生は政府の最重要課題であります。原子力を利用する上では安全性の確保を最優先とし、安全神話に陥って悲惨な事態を防ぐことができなかったという痛切な反省をいっときたりとも忘れてはなりません。このことは第七次エネルギー基本計画案においても明記をしておるのは御案内のとおりでございます。
 その上で、第七次エネルギー基本計画案につきましては、昨年五月に議論を開始して以来、百回以上にわたって関係審議会などにおいて様々な専門家から御意見を伺いながら丁寧に議論を進めており、特定の団体の意向のみを踏まえて政策を進めてきたとの指摘は全く当たりません。
 企業・団体献金についてでございますが、政府の政策は、国民各界各層からいただく様々な御意見を踏まえ、必要性や優先度なども十分に検討した上で、国会での御議論なども経て決定しているものであり、企業・団体献金を受けていることを理由として決定しているものではございません。ましてや、自民党が受領いたしております献金は賄賂というものでは全くなく、民主政治の健全な発達を希求して拠出される国民の浄財を不当におとしめることは適当ではございません。
 我が党といたしましては、政治資金規正法の趣旨からも、禁止より公開という考え方により、企業・団体献金も含めた政治資金の透明性を一層確保する取組を進めておるところでございます。
 このような考え方につきまして、国民の皆様方のより深い御理解をいただきたいと、このように思い、努力をいたしてまいります。
 現在、透明性を更に向上させますための法案について自民党内での議論を進めておるところでございまして、引き続き、この問題につきまして率先して議論を進めてまいります。
 企業・団体献金についてでございます。
 政治倫理審査会の審査に関する所感等につきましてお尋ねがございました。
 政治倫理審査会における審査は現在もまだ継続中である、このように認識をいたしておるところでございますが、審査会の場における各議員の弁明に対する評価は、同審査会、審査結果の報告を受ける各議院、ハウスの方でございますが、各議院、さらには国民の皆様方が行うべきものであります。
 私の立場で所感を申し述べることは差し控えますが、その上で、自民党における旧派閥や政治団体、都議会自由民主党の収支報告書の不記載をめぐりましては、第三者である検察により厳正な捜査が行われ、法と証拠に基づき刑事事件として取り上げるべきものは立件されてきたものと認識をいたしております。
 また、党本部や都議会自由民主党におきましても、可能な限りの調査を行い、その結果を国民の皆様に報告書や会見の場で説明をいたしてまいりました。このようなことを繰り返さないため、改正されました政治資金規正法を遵守いたしますとともに、引き続き、自民党として政治改革の議論を率先して行うものでございます。
 給特法についてでございます。
 給特法につきまして様々な御議論があることはよく承知をいたしております。教職調整額の率を引き上げるための給特法改正案を今国会に提出いたしますとともに、時間外在校等時間が月二十時間程度に達するまでに幅広い観点から諸課題の整理を行うと、このようにいたしております。
 教員についてでございます。
 教師の負担軽減を図る観点からは、業務の仕分を行った学校・教師が担う業務に係る三分類に基づく業務の更なる厳選、見直しや、標準を大きく上回る授業時間の見直し、校務DXの加速化を進めるとともに、学校の指導、運営体制の充実により、教師の時間外在校等時間を削減をいたします。
 日本学術会議法案についてでございます。
 二〇二〇年の日本学術会議の会員任命につきましては、日本学術会議法に沿いまして、任命権者である当時の内閣総理大臣が総合的、俯瞰的な活動を確保する観点から判断を行ったものでございまして、一連の手続は終了しておるものと、このように承知をいたしております。
 お尋ねの日本学術会議の在り方に関する有識者懇談会の最終報告書は、日本学術会議の会長などにも毎回御参加をいただき、日本学術会議の御意見も聞きながら、丁寧に議論を積み重ねて取りまとめられたものでございます。
 政府といたしましては、有識者懇談会の報告書の内容を踏まえ、日本学術会議の機能の強化に向けてその自律性を高めるため、独立した法人格を有する組織とする法案を今国会に提出すべく、現在、学術会議ともコミュニケーションを取りながら作業を進めておるところでございます。
 日本国憲法と我が国の外交、また核兵器禁止条約に関する対応についてのお尋ねでございます。
 我が国は、憲法第九条及び前文に示されておる平和主義の理念の下、平和国家として戦後一貫して国際社会の平和や繁栄に努めてまいりました。
 現在の厳しく複雑な国際環境におきましても、こうした姿勢を貫き、日米同盟を基軸に、友好国、同志国の輪を広げますとともに、各国との対話を重ね、地域及び国際社会の平和と安定に貢献すべく、外交努力を重ねておるところでございます。
 御指摘の核兵器禁止条約の対応につきましては、様々な要素を考慮し、検証を続けております。
 その上で、戦後最も厳しく複雑な安全保障環境に対峙していく中で、スタンドオフ防衛能力の強化を含む防衛力の抜本的強化は、我が国の独立と平和、国民の命と平和な暮らしを守るために不可欠なものでございます。
 これらの取組は、我が国の主体的なものとして、憲法、国際法及び国内法の範囲内で、専守防衛の考え方を堅持して進めていくものであり、平和国家としての我が国の歩みをいささかも変えるものではございません。
 普天間飛行場の返還、南西地域の防衛強化についてのお尋ねをいただいております。
 普天間飛行場につきましては、辺野古移設が唯一の解決策であるという方針に基づき着実に工事を進めていくことが、その一日も早い全面返還を実現し、危険性を除去することにつながると考えております。引き続き、基地負担の軽減に全力で取り組んでまいります。
 南西地域の防衛強化を含む防衛力の抜本的強化、日米同盟の対処力の強化は、抑止力を向上させ、我が国に対する武力攻撃そのものの可能性を低下させることにつながります。
 日本国の独立と平和、国民の命に、国民の命と平和な暮らしを守り抜くための取組は着実に全力で進めてまいるものでございます。
 以上であります。(拍手)

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