赤旗2024年12月5日付
日本共産党の小池晃書記局長が4日の参院本会議で行った石破茂首相に対する質問は次のとおりです。
日本共産党の小池晃です。会派を代表して、石破茂総理に質問します。
能登半島地震からもうすぐ1年、地震と9月の豪雨という二重災害によって、被災者は物理的にも精神的にも大きなダメージを受けています。しかも「災害関連死」は、地震などによる直接死を上回る247人にのぼります。
こうした痛ましい事態に至った原因を、政府はどうとらえていますか。災害関連死を防ぐためには何が必要ですか。
災害公営住宅の建設、医療・介護基盤の再建、農地の復旧など、住まいと生業(なりわい)の再建が急務です。能登で生きていく希望が持てるように国の支援を抜本的に強めるべきです。お答えください。
裏金づくりは組織的な犯罪 自民党総裁として解明を
総選挙で与党を過半数割れに追い込んだのは、裏金問題への国民の怒りでした。
総理は、派閥ぐるみの裏金づくりを、組織的な犯罪行為だと認識していますか。
なぜ、裏金問題で「非公認」とした候補者が代表をつとめる党支部に、公認候補者と同額の2000万円もの政党交付金を支給したのですか。「非公認」としながら、多額の資金を配るなど、国民をあざむく行為ではありませんか。
いつ誰が裏金づくりを始めたのか、いったい何に使ったのか、全容解明が必要です。
具体的にお聞きします。この間の裁判で、有罪が確定した安倍派の会計責任者は、パーティー収入の還流は「幹部の協議で再開を決めた」と証言しています。しかし西村康稔議員、世耕弘成議員らは、協議に参加しながら真相を明らかにしていません。偽証罪が問われる証人喚問が必要です。自民党総裁として、党に指示すべきです。明確にお答えください。
参議院政治倫理審査会に、27人の自民党議員が、今になって出席を希望しているようです。しかし、政倫審は「駆け込み寺」ではありません。真相が明らかにされる場にしなければなりません。
総理は自民党総裁として、政倫審に出席しようとする議員に対して、知っている事実を包み隠さず語ること、審査は全面公開とすることを、強く求めるべきではありませんか。
総理は、「個人献金も企業・団体献金も違いはない」と、企業・団体献金禁止に背を向けています。しかし、企業には、個人とは比べものにならない資金力があります。国民が、自分の支持する政党に寄付をするのは、政治に参加する当然の権利ですが、参政権を持たない企業が、多額の資金で政策をゆがめるのは、国民の参政権を侵害するものです。
総理はそれでも、「個人献金も企業・団体献金も違いはない」というのですか。
そもそも今回の裏金問題に至るまで、数多くの金権腐敗の原因となったのは、企業・団体献金です。この根を断たずに、再発防止と信頼回復ができると総理はお考えですか。
日本共産党は、企業・団体献金、政党助成金をいっさい受け取らず、党員、国民からの個人献金や事業収入で党を運営してきました。主権者・国民一人ひとりに依拠することこそ、国民主権の政治のあるべき方向だと、強く申し上げておきます。
「アベノミクス」による日本経済へのゆがみを正せ
「アベノミクス」は、日本経済に深刻なゆがみをもたらしました。
第一に、「異次元の金融緩和」による異常円安は、輸出大企業に過去最高の利益をもたらす一方、物価高騰を招いて国民の実質所得を低下させ、原材料費の値上げで、中小・下請け企業の倒産を急増させました。
多額の国債買い入れが続けられてきた結果、日銀の国債保有額は発行残高の半分を占めるに至り、日銀の財務を不健全にするとともに、国の借金を野放図に膨らませました。
総理。「異次元の金融緩和」の誤りを認めるべきではありませんか。
家計や中小企業への影響に十分配慮しつつ、金融を正常化するためにも、くらしを支える経済政策に転換すべきです。
第二に、実質賃金の低下が続く一方で、内部留保が積み上がり、経済に還流していません。自社株買いも膨らんでいます。大企業の内部留保を、賃上げや下請け企業支援に還元させる施策が必要ではありませんか。
競争力の弱い中小企業が賃上げに踏みだすためには、とりわけ労務費の価格転嫁とともに、直接支援が不可欠です。徳島県では知事が主導して、国の「目安」を大きく上回る最低賃金の引き上げとともに、中小・小規模事業者を対象に一時金を支給する直接支援を始めました。
国としても、社会保険料負担の軽減などの直接支援に踏み切るべきではありませんか。
総理は、「雇用の正規化を進める」と述べました。そこでお聞きします。
地方自治体では、「会計年度任用職員」など非正規職員が70万人をこえています。専門性・継続性が求められ、住民生活に寄り添う大切な仕事でありながら、低賃金と年度末での雇い止めなど不安定な働き方を強いられていることを放置できません。
雇い止めを禁止し、正規職員への転換を促進するなど、会計年度任用職員制度を抜本的に見直すべきではありませんか。
医療・介護は、政治の責任で賃上げができるし、切実に求められています。ところが先週、日本医労連は、医療・介護職場での年末一時金について、昨年よりも平均で約10万円の減少という深刻な実態を告発しました。介護でも、関係9団体の調査では平均の賃上げ率は2・5%と、全体の春闘相場より低くなっています。訪問介護は、国の報酬引き下げによって、事業所の倒産・撤退が相次ぐ事態です。
全世代型社会保障だといって、社会保障の予算を抑制したことが、賃上げに逆行する事態を生み、人手不足に拍車をかけ、介護崩壊が進んでいます。総理、この深刻な実態をどうとらえますか。訪問介護の基本報酬を元に戻すことをはじめ、国の責任で、医療・介護労働者の賃上げを緊急に促進すべきではありませんか。
第三に、大企業や富裕層を優遇してきた税制全体のゆがみを正すことです。
この29年間、所得税の課税最低限が据え置かれた一方で、消費税は3回も引き上げられました。生計費非課税というならば、課税最低限以下の低所得者からも容赦なく取り立てる、消費税の減税とインボイスの撤廃が必要ではありませんか。
所得税・住民税の最高税率も法人税率も連続して引き下げられました。さらに、研究開発減税や連結納税制度などの大企業優遇税制も拡大の一途をたどりました。政府税制調査会は、法人税率が連続して引き下げられたにもかかわらず、国内の設備投資や賃金は増えていないと指摘しています。結局、内部留保としてため込まれただけではありませんか。
国民の前に立ちふさがる壁は、103万円だけではありません。富裕層を優遇してきた「1億円の壁」をはじめ、税制全体のゆがみをただすため、生計費非課税、応能負担の原則に立った税制の抜本的な改革が必要ではありませんか。以上、答弁を求めます。
保険証の廃止をやめよ 生活保護基準は引き上げこそ
社会保障制度に関わって、二つの緊急課題について聞きます。
健康保険証の新規発行が、一昨日停止しました。しかし、マイナ保険証の利用はいまだ15%にとどまり、医療機関でのトラブルも止まりません。
総理は9月に、「期限が来ても納得しない人がいっぱいいれば、併用も選択肢として当然だ」と語っていましたが、保険証の廃止に納得していない人は「いっぱい」おられます。中医協の小塩隆士会長も、「新しい制度に移って何か混乱が起こり、メリットを受けられない人たちがいれば直ちに制度を改めることも必要だ」と述べました。
総理の以前の言明通り、従来の保険証も併用できるようにすべきです。現行の保険証が使用できるうちに、制度を見直すべきではありませんか。
いま一つは生活保護の問題です。物価高騰は低所得世帯や生活保護世帯に深刻な打撃を与えているのに、財務省は、生活保護基準の引き下げを要求しています。経済や生活の実態を無視した、血も涙もないものです。
そもそも賃上げと可処分所得の引き上げが政治の大きな課題となっているとき、なぜ生活保護世帯の手取り収入を削減するのですか。保護基準の引き下げなど言語道断であり、抜本的な引き上げこそ必要ではありませんか。お答えください。
人類の生存を脅かす気候危機 実効性ある対策を掲げよ
総理は、総裁選で「原発をゼロに近づける努力を最大限していく」と述べたにもかかわらず、これも、「最大限の利活用」と手のひらを返しました。
「原発依存度の低減」という方針を完全に投げ捨てるつもりですか。
気候危機の進行は、人類の生存さえ脅かしています。ところが日本はG7(主要7カ国)で唯一、石炭火力の撤退期限を示していません。パリ協定に基づく2035年の温室効果ガス削減についても、政府の13年度比で60%削減するという案は、まったく不十分です。
英国は90年比で81%削減という高い目標を宣言し、9月にはすべての石炭火力発電所が停止しました。日本も石炭火力から早急に脱却し、温室効果ガスを35年までに13年度比で75~80%削減する目標を掲げるべきではありませんか。答弁を求めます。
同性婚実現へ全ての人と共同
10月には東京高裁が、同性どうしの結婚を認めないことは、差別的であり憲法に違反すると断じました。昨年3月の札幌高裁につづいて2度目の高裁での違憲判決です。
性的指向は、本人の意思で選択・変更できるものではありません。性的指向が同性だからと、パートナーと家族になれず、相続権や配偶者控除なども認められません。コロナ禍の病院で家族と認められず、愛する人の最期にさえ立ち会えなかった同性パートナーもいます。こんな不合理と悲しみが同性カップルに重くのしかかるのは、個人の尊厳、婚姻の自由の侵害であり、法の下の平等に反するのではありませんか。
日本共産党は、選択的夫婦別姓の実現や同性婚の法制化をはじめ、日本社会をジェンダー平等社会につくりかえようとしている全ての人々と力を合わせる決意を表明します。
破綻した辺野古基地計画 中止・撤回しかない
総理は2013年11月、自民党幹事長として、沖縄県選出の党国会議員5人を党本部に呼びつけ、「辺野古容認」へと屈服させました。記者会見を行う総理の脇でうなだれる5人の姿に、「平成の琉球処分」だと県民は怒りの声をあげました。
先日総理は、当時を振り返り、「十分に沖縄の皆さまの理解を得て決めたかというと、必ずしもそうではなかった」とわびました。ところが、所信表明演説では、辺野古新基地建設を推進する考えを重ねて示しました。総理のおわびは、言葉だけだったのですか。
辺野古の新基地建設計画は、政治的にも技術的にも破綻しています。政府は代執行後の今年1月を起点に12年で新基地は完成するとしていますが、水深が浅く、地盤改良が必要ない辺野古側でも、当初の計画の10倍の期間を要しています。超軟弱地盤により難工事が予想される大浦湾側で、計画通りに進む保証がどこにあるのですか。辺野古への固執が、普天間基地を固定化させているのではありませんか。お答えください。
日本に配備された米軍オスプレイはすでに3機が墜落し、民間空港への緊急着陸も日常茶飯事です。昨年11月の屋久島沖への墜落も、根本的な事故原因が特定できないまま、政府は飛行を容認しました。
陸上自衛隊のオスプレイも与那国島で、エンジンの出力を上げるスイッチを押し忘れて、地面と接触する事故を起こしました。ところが、ボーイング社や米海兵隊は、このスイッチの使用を「推奨しない」とのことです。スイッチを押しても押さなくても事故を起こす、まさに欠陥機というほかありません。
オスプレイを全面撤去し、辺野古新基地建設を中止・撤回すべきではありませんか。国際法に違反して、県民の土地を奪って構築した普天間基地はただちに無条件で撤去すべきです。総理の明確な答弁を求めます。
沖縄をはじめ全国各地での基地強化や長射程ミサイル配備などのための、5年間で43兆円もの大軍拡は、アジアに新たな緊張をもたらし、国民の暮らしも財政も押しつぶします。大軍拡もそのための軍拡増税も撤回すべきではありませんか。
日米同盟絶対、アメリカ言いなりの政治を根本から転換し、ASEAN(東南アジア諸国連合)と力を合わせ、米中を含むすべての関係諸国を包摂し、憲法9条を生かした平和の枠組みを発展させることに力を尽くすべきです。答弁を求めます。
旧長生炭鉱の水没事故 国として発掘調査を始めよ
1942年2月3日に山口県宇部市の旧長生炭鉱で起きた水没事故では、183人が犠牲となり、そのうち136人が朝鮮半島から強制動員された人々でした。2004年の日韓首脳会談では、戦時中の民間徴用者の遺骨返還について、当時の小泉純一郎首相は「何ができるか真剣に検討する」と答えていますが、これまで政府は、長生炭鉱の遺骨の埋没位置は不明のため発掘は困難だと答弁してきました。
しかし、市民団体が募金を集め、炭鉱の入り口を掘り出し、10月にはダイバーが坑道内の潜水調査を行い、遺骨は収集できると手応えを語っています。国として発掘調査を始めるべきです。82年もの間、冷たい海底に眠るご遺骨を、可能な限り速やかに、ご遺族のもとにお届けし、尊厳の回復をはかるべきです。真摯(しんし)な答弁を求めます。
ガザの即時停戦待ったなし 日本も具体的措置を
パレスチナのガザでの即時停戦は待ったなしです。ハマスによるイスラエルへの襲撃は許されませんが、イスラエルによるガザでのジェノサイドは、まったく正当化できません。国際刑事裁判所はネタニヤフ首相に対し、戦争犯罪、人道への罪の容疑で逮捕状を出しました。日本も逮捕義務を果たすと宣言すべきではありませんか。
9月の国連総会決議は、各国に対し、市民や企業・団体にイスラエルの無法を支援させない措置、武器や関連機器の提供・移転の禁止などを求めました。
日本はこの決議に賛成したのですから、決議が求める措置を具体化すべきです。防衛省はイスラエル製ドローンの導入検討を、中止すべきです。イスラエルに軍事支援を続ける米国に対し、ジェノサイドへの加担をやめるよう迫るべきです。以上、答弁を求めます。
くらしと平和を守りぬく決意を表明して、質問を終わります。