日本共産党 書記局長参議院議員
小池 晃

検索

国会ハイライト

国会質問・速記録・質問

公的医療保障を破壊 医療保険制度改悪法案/小池氏が批判 参院本会議

2015年05月14日

「赤旗」2015年5月14日付

 医療保険制度改悪法案が13日の参院本会議で審議入りし、質問に立った日本共産党の小池晃議員は「国民皆保険と、(いつでも受診できる)フリーアクセスを崩壊の危機にさらし、公的医療保障を破壊するものだ」と批判しました。 (質問)


写真

(写真)質問する
小池晃議員=13
日、参院本会議

国民健康保険の現状について、小池氏は、高すぎる保険料が払えなくて保険証が取り上げられ、病院に行けず亡くなるなど国民皆保険が空洞化していると述べ、引き下げられてきた定率国庫負担の引き上げを求めました。

安倍晋三首相は国庫負担引き上げでなく、国保の財政運営を市町村から都道府県に移し、「医療費適正化(抑制)にとりくむ自治体などに支援を行う」と強調。小池氏は「結局、保険料の引き上げか、医療費抑制かの選択を自治体に迫ることになる」と述べました。

小池氏は、医療費適正化計画や病床削減の「地域医療構想」とリンクさせて給付費を抑制させるものであり、上限規制の「キャップ制」の事実上の導入だと批判しました。

入院食費の負担増や、紹介状なしの大病院受診の定額負担義務化について、小池氏は「受診抑制はいっそう深刻化する」と強調。保険外診療を増やす「患者申し出療養制度」の創設で、安全性の不確かな治療が横行し、「自費負担できない多くの患者は置き去りにされる」と批判しました。安倍首相は「懸念に配慮する」と答えるのみでした。

小池氏は、財務省が高齢化に伴う5千億円以上の社会保障の自然増は認めないとしていることについて、3千億~5千億円の自然増削減になると指摘。「小泉政権時の削減をはるかに超える改悪で、国民の暮らしも健康も壊滅的な被害を受ける」と批判しました。安倍首相は、社会保障の自然増はすでに「年平均5千億円程度」に抑えこまれていると強弁。削減路線を継続・強化する考えを示しました。

速記録を読む

○小池晃君 日本共産党の小池晃です。
私は、会派を代表して、ただいま議題となりました国民健康保険法等の一部を改正する法律案について質問します。
本法案には、国民健康保険制度の財政運営を市町村から都道府県に移管するという、一九六一年の制度創設以来、最大の改革が含まれています。
しかし、衆議院での審議は二十二時間足らずにすぎませんでした。参議院では、賛否を超えて徹底的な審議を行うことを強く求めます。
今、国民健康保険制度をめぐっては、所得二百五十万円、四人家族の国保料が年間四十万円を超えるなど、負担能力を超える保険料が住民生活を脅かしています。高過ぎる保険料の滞納は三百六十万世帯、そのペナルティーとして正規の保険証を取り上げられた世帯は百四十万を超え、生活困窮者への無慈悲な差押えも横行しています。
全日本民主医療機関連合会が、加盟する医療機関で行った調査によれば、保険証の取上げなど経済的な理由で病院にかかれず死亡した人が、昨年、五十六人に上ります。これは氷山の一角だと思います。
国民皆保険制度を支える国保制度に重大な危機が進行しつつあります。総理には、国民皆保険制度が空洞化しつつあるという認識はありますか。
国保料の異常な高騰は、一九八四年に国保財政の五〇%だった国庫負担を二三%にまで抑制したことが原因です。それが深刻な財政悪化をもたらし、加入世帯の貧困化と相まって、保険料高騰と収納率低下の悪循環を生じさせました。
国保の改革、基盤強化というなら、こうした事態の抜本的解決のため、国保財政への定率国庫負担の引上げが不可欠ではないでしょうか。総理の答弁を求めます。
本法案により、市町村が国民健康保険料を決める際には、都道府県が示す標準保険料を参照し、他の市町村と平準化を図ることが求められます。衆院での答弁で、政府は、これらが国保料引上げや徴収強化の圧力となることを否定しませんでした。これでは、保険料高騰や滞納者の増加、低所得者の受診抑制は一層拡大するのではありませんか。厚生労働大臣の答弁を求めます。
政府は、今回の制度改定に対応して、三千四百億円の財政支援を行うとしています。現在、国保財政に対して市町村が三千五百億円を一般会計から繰り入れていますが、今回、一旦国費を投入しても、それを機に市町村が一般会計繰入れを解消すれば、国保財政の危機は解決しません。
しかも、今後も高齢化や医療技術の進歩で医療給付費は確実に増大していきます。市町村による一般会計繰入れ分を補填するだけで、定率国庫負担を増やさなければ、更なる保険料高騰は避けられません。これでは結局、国保への公費負担を現行水準に抑えたまま、今後の給付費増については、保険料の引上げか医療費抑制かという選択を市町村に迫っていくことになるのではないでしょうか。
法案には、都道府県が策定する医療費適正化計画の強化も盛り込まれ、そこには今後目指すべき医療給付費の目標総額が明記されます。それを医療・介護総合法で導入した地域医療構想による病床機能の再編、削減とリンクさせて、給付費の伸びを抑制する仕組みです。
適正化計画による医療費抑制、地域医療構想による病床削減、そして国保運営方針による財政管理など、全ての権限が都道府県に集中し、国保の給付費抑制が強力に推進されることになってしまいます。これは、日本経団連など財界が要求し、経済財政諮問会議が導入を主張してきた医療給付費の総額管理、いわゆるキャップ制の事実上の導入にほかならないのではないでしょうか。
本法案には、入院食費の負担増、紹介状なしの大病院受診時の五千円から一万円の定額負担義務化など、患者負担増も盛り込まれています。ヨーロッパやカナダでは、公的医療制度の窓口負担は原則無料か少額の定額制であり、現役世代は三割、高齢者は一から三割という日本の窓口負担は国際的に見ても異常な高さです。入院食費の引上げは、一日六百円、一月一万八千円もの負担増となり、高額療養費制度による負担軽減の対象にもなりません。このような負担増が強行されれば、受診抑制は一層深刻化するのではありませんか。大臣は、衆議院の審議で、入院食費の負担増について、受診抑制をするということは、結果として医療費が増えるということは、それはあり得ると答弁しましたが、医療保険財政から見ても逆行ではありませんか。
以上、厚生労働大臣の答弁を求めます。
混合診療の全面解禁に道を開く患者申出療養の導入について聞きます。
総理は、難病に苦しむ患者のためと言いますが、日本最大の難病患者団体である日本難病・疾病団体協議会、JPAは、安全性の不確かな治療が横行し、高額の保険外負担が温存されかねないことに懸念の声を上げています。総理はこの声にどう応えるのでしょうか。
国立がん研究センターの調査では、患者申出療養の対象とされる国内未承認抗がん剤の多くは一か月当たりの薬剤費が百万円を超えており、新制度を活用できるのは裕福な患者に限られる可能性が指摘されています。これでは、自費負担ができない多くの患者は置き去りにされてしまうのではないでしょうか。有効で安全な治療は速やかに保険適用することに全力を挙げるべきではないでしょうか。
安倍政権は、日本再興戦略改訂二〇一四で、医療、介護などの健康関連分野を成長市場に変えていく方針を打ち出し、その一環として保険外併用療養費制度の大幅拡大を提言しています。戦略特区に指定された地域からは、医療産業の開発拠点の誘致や医療ツーリズムの推進を視野に、混合診療の解禁、医療への株式会社参入などを求める要望も出されています。
しかし、国民皆保険を守るということは、単に全国民が保険証を持っていることだけではなく、公的医療給付の範囲を将来にわたり維持すること、混合診療を全面解禁しないこと、営利企業を医療機関経営に参入させない、これが日本医師会を始め医療界の一致した認識です。総理はこの見解を是認されますか。
保険外併用療養の大幅拡大や医療への多様な経営主体の参画を推進する安倍政権の路線は、国民皆保険に大穴を空け、土台から掘り崩していくものであり、断じて容認できません。
日本医師会は、小泉政権時代の医療政策について、給付費抑制による国庫負担の軽減、保険料、窓口負担の両面による家計負担の増加、官による医療費コントロール手法の導入、民間企業への利益誘導という四点から、厳しく批判しました。安倍政権が今進めようとしている医療政策も、その基本方向は全く同じではないでしょうか。
財務省は、今後の社会保障の自然増のうち、高齢化に伴う増加である五千億円以上は認めないとしています。毎年八千億円から一兆円に上る自然増を五千億円しか認めないとなれば、削減額は三千から五千億円となります。これは、小泉政権が行った社会保障削減と同じシーリングではありませんか。しかも、当時の削減額二千二百億円をはるかに超える改悪を繰り返せば、国民の暮らしも健康も壊滅的な被害を受けるのではありませんか。
以上、総理の明確な答弁を求めます。
国民皆保険とフリーアクセスを崩壊の危機にさらし、公的医療保障を破壊する医療政策では、国民の命も健康も守ることはできません。
日本共産党は、憲法二十五条の生存権を保障するために、国民皆保険制度の根幹である国民健康保険制度に対する国の財政責任を果たす真の改革を実現する決意を述べて、質問を終わります。(拍手)

〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇、拍手〕

○内閣総理大臣(安倍晋三君) 小池晃議員にお答えいたします。
国保制度に対する認識についてお尋ねがありました。
国保は、他の医療保険制度に加入していない方を受け入れており、国民皆保険を支える重要な基盤ですが、低所得者が多く加入するなど構造的な問題があります。このため、低所得者の保険料軽減措置等を講じるとともに、滞納者に対しては、納付相談などを通じ、個々の実情に応じた対応を行っています。
今回の改革では、国保の厳しい財政状況に鑑み、追加的な財政支援を行うなど財政基盤を大幅に強化するとともに、財政運営の責任主体を都道府県とし、高額な医療費等のリスクを都道府県に分散するなど、国保制度の安定化を図ることとしています。こうした改革を通じて、今後とも国民皆保険を支える国保制度を堅持してまいります。
国保への定率国庫負担の引上げについてお尋ねがありました。
国保は、高齢の加入者が多く所得水準が低いなど、厳しい財政状況にあることから、保険給付費に対する五割の公費負担を維持するとともに、低所得者が多い自治体への財政支援を行うなど、これまでも累次の財政支援策を講じてまいりました。
今回の改革では、年約三千四百億円の追加的な財政支援を行うなど、財政基盤を大幅に強化することとしています。その際には、単に定率の国庫負担を増額するのではなく、医療費適正化に取り組む自治体や低所得者の多い自治体等に対し、地域の実情を踏まえ、効果的、効率的な財政支援を行うこととしており、これにより国民皆保険を支える国保の安定化を図ってまいります。
患者申出療養についてお尋ねがありました。
患者申出療養は、先進的な医療について、患者の申出を起点として、安全性、有効性を確認しつつ、身近な医療機関で迅速に受けられるようにするものであります。同時に、保険収載に向けたロードマップの作成等を医療機関に求めることとしています。
患者団体からは、安全性、有効性や先進的な医療が保険外にとどまることへの懸念が示された経緯もあり、これらにしっかりと配慮する必要があると考えています。このため、医療機関から実施状況等の報告を定期的に求めることなどにより、保険収載に必要な科学的根拠を集積し、安全性、有効性の確認を経た上で保険適用につなげ、広く国民が医療保険制度の中で先進的な医療を受けられるようにしていきたいと考えています。
国民皆保険制度についてお尋ねがありました。
全ての国民が一定の自己負担でどこでも安心して必要な医療を受けられる我が国の国民皆保険は、世界に冠たる制度であり、次世代にしっかりと引き渡していかなければならないと考えています。今後とも、給付と負担のバランスに配慮しつつ、必要な医療については、医療保険制度により適切に提供してまいります。
また、保険の対象となっていない医療技術等については、安全性、有効性が確認されれば、保険外併用療養費制度により保険診療と併用できることとされており、今後とも適切に運用してまいります。
株式会社の医療機関経営への参入については、患者が必要とする医療と株式会社の利益を最大化する医療とが一致せず、必ずしも患者に適正な医療が提供されないおそれがあることなどから、原則として認められておりません。引き続き、こうした非営利性の原則を踏まえながら、質が高く、効率的な医療の提供に向けた改革に取り組んでまいります。
医療政策の基本方向についてお尋ねがありました。
我が国の医療政策の基本は、国民皆保険にあります。急速な少子高齢化が進む中、将来にわたり国民皆保険を堅持していくためには、保険財政基盤の安定化のほか、保険料に関する国民の負担の公平、保険給付の対象となる療養の範囲の適正化等に取り組むことが必要です。
政府としては、不断の改革を通じて、国民が安心して必要な医療が受けられるように力を尽くしてまいります。
社会保障の自然増についてお尋ねがありました。
社会保障関係費の伸びについては、過去三年間、経済雇用情勢の改善等の効果と制度改革の効果が相まって、消費税増収分を活用した社会保障の充実等を除き、年平均〇・五兆円程度と、高齢化による伸び相当の範囲内となっています。
今後、団塊の世代が後期高齢者になり始める二〇二〇年初頭までに受益と負担の均衡の取れた社会保障制度を構築する必要があります。このため、引き続き、社会保障費の削減額を機械的に定めるやり方ではなく、国民皆保険を維持するための制度改革に取り組み、経済再生に向けた取組と併せ、社会保障制度を持続可能なものとする努力を続けていく必要があると考えます。
残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)

〔国務大臣塩崎恭久君登壇、拍手〕

○国務大臣(塩崎恭久君) 小池晃議員から四点お尋ねを頂戴をいたしました。
まず、国保の保険料率などについてのお尋ねでございます。
今回の改革では、都道府県は、市町村ごとの標準保険料率を示すとともに、各市町村がそれを参考に保険料率を定めることとしております。今回の財政支援の拡充により、保険料の伸びの抑制などの負担軽減が図られるものと考えており、標準保険料率の仕組みの下で、市町村には保険料の適切な設定などに取り組んでいただきたいと考えております。
受診抑制に関する御指摘につきましては、特別の事情がなく一年以上保険料を滞納している方には資格証明書の交付を行いますが、これは納付相談の機会を確保するためのものであり、個々の滞納者の実情を把握した上で適切に対応されるべきものと考えております。
国保への財政支援の在り方についてのお尋ねがございました。
今回の改革において、国保への毎年約三千四百億円の追加的な財政支援を行いますが、赤字額に応じた支援を行うのではなく、自治体の実情を踏まえた効果的、効率的な財政支援を行うこととしております。こうした規模の財政支援により、一般会計からの繰入れの必要性は相当程度解消し、国保の財政基盤の強化が図られるものと考えていますが、各市町村においては、今後とも、医療費適正化の取組を行うとともに、保険料の適切な設定に取り組んでいただきたいと考えております。
医療費適正化についてのお尋ねがございました。
医療保険制度を将来にわたって持続可能なものとしていくためには、医療費の適正化を進めていくことは重要な課題であると考えております。
今回の改革では、都道府県が策定する医療費適正化計画は、将来のあるべき医療提供体制を定める地域医療構想を踏まえて医療費目標を定めるものであり、また、都道府県が国保運営方針に医療費適正化に関する取組等を定める際には、医療費適正化計画における指標や取組との整合性を求めるものであり、いわゆる医療費のキャップ制を導入するものではありません。
受診抑制の懸念についてのお尋ねがございました。
紹介状なしで大病院を受診する場合の定額負担の導入は、フリーアクセスの基本は守りつつ、大病院の外来は紹介患者を中心とするよう、外来の機能分化を更に進めることを目的としております。
入院時の食事代の見直しは、在宅との公平を図るためのものですが、必要な受診が抑制されないよう、低所得者の負担を据え置くなどの配慮を行ってまいります。したがって、これらの措置により、重症化や医療費の増加を招くとの御指摘は当たらないと考えております。(拍手)

○議長(山崎正昭君) これにて質疑は終了いたしました。

閉じる

ご意見・ご要望