日本共産党 書記局長参議院議員
小池 晃

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企業の責任で賃上げを 小池氏「強欲インフレ」指摘 参院財金委

2024年06月20日

20240620152646252赤旗2024年6月20日付

 

 

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(写真)質問する小池晃書記局長=18日、参院財金

 日本共産党の小池晃書記局長は18日の参院財政金融委員会で、企業がコスト増加分を上回る値上げで収益を増大させながら、賃金に還元しない「強欲インフレ」が起きていると指摘し、企業に社会的責任を果たさせ、具体的な賃上げ策を取るよう求めました。

 

 小池氏は、日本政策投資銀行の調査報告書が、2023年以降、物価上昇要因のほとんどが企業収益の増加によるもので、賃上げ要因はごくわずかだとしていることを示し、「強欲インフレ」の状況になっていると指摘しました。

 

 また、昨年12月の日銀の「生活意識に関するアンケート」調査によれば、物価上昇が続いた21年以降、今後1年間の支出を考えるにあたって物価を考慮するという人の割合が高水準を維持していると紹介。「このまま賃金上昇を伴わない強欲インフレ型の物価上昇が続けば景気を下押しする可能性がある」と強調しました。

 

 日銀の植田和男総裁は「物価の伸びが名目賃金の伸びを上回って推移する場合、個人消費に下押し要因となるのはその通り」と答えました。

 

 小池氏は、中小企業が賃上げどころか倒産している状況のもと、大企業の社会的責任が問われていると強調。5兆円の利益をあげたトヨタ自動車の、今年度の下請けなどへの賃上げ支援は3000億円にすぎない一方、株主への還元は2兆円にのぼり、この1年で内部留保である利益剰余金を4兆円以上積み増ししていると指摘しました。

 

 その上で、「中小企業も含めた力強い賃上げが実現しなければ経済が立ち行かない」として、大企業の内部留保の時限的課税など、ため込まれた利益剰余金を下請け支援や賃上げに還元するための手だてを取るよう要求。矢倉克夫財務副大臣は「サプライチェーンの隅々まで賃上げが必要」と答弁しました。

速記録を読む

○小池晃君 日本共産党の小池晃です。
 日銀の政策決定会合で国債買入れ減額方針決まりましたが、具体的な計画は七月に先送りされて、結果的に円安進んだわけです。
 異常な金融政策から抜け出すことは、これは必要です。そのためには、やはり市場と丁寧なコミュニケーション大切だということはこれまでも主張してまいりましたとおりであります。出口戦略を進める際には、現在の我が国の経済状態に対する正確な認識が欠かせないと思うので、そういう点でお聞きしたいと思います。
 今回の政策決定会合でも賃金と物価の好循環が引き続き強まるとされていますが、先ほども質問ありましたけれども、実質賃金二十五か月連続で下がり続けていて、どうして賃金と物価の好循環が実現していると言えるのか。先ほどの、名目の賃金は上がっていると、しかし経済全体のデータはやっぱり見ていく必要があるというふうに総裁お答えになりました。それから、物価については足下でやや下がってきていて、実質賃金の低下も落ち着いていくんじゃないかという見通しを示されました。
 ということは、この賃金と物価の好循環は今実現しているというわけじゃなくて、これからだという御認識か、お聞きしたいと思います。
○参考人(植田和男君) やや繰り返しになりますが、名目賃金については、好調となりました春闘、あるいはその他のヒアリングでも入ってきましたところの、ある程度の小規模な企業でも前年を上回る賃金上昇を計画していたり、あるいは賃上げ実施した企業の割合が高まっているというような情報が本当にデータで確認できるかどうかを見ていきたいということでございます。インフレにつきましては、委員今おっしゃっていただいたとおりでございます。
   〔委員長退席、理事山田太郎君着席〕
 それを総合いたしますと、好循環という意味では、実質賃金が下落が続いてきたということはそうでございますけれども、その低下のペースは足下弱まってきていると思いますし、今後、名目賃金が本当に期待されたどおり経済にある程度広がるという事態になりますと、もう少しはっきりとした好循環の実現に向かうということだと思います。
 ただし、足下に来ての為替の円安や輸入物価の動向には注視していく必要があるというふうに考えております。
○小池晃君 その点でいうと、物価上昇の中身が非常に問題だと思うんです。
 ヨーロッパでは、企業、価格転嫁、便乗値上げで積み上げた利益がインフレ要因の五割を占めるとIMFも試算しておりまして、必要以上の値上げが要因だという見方出ています。企業がインフレで利益を上げながらそれに見合った賃上げをしない。物価高に賃金が追い付かない。強欲インフレ、グリードフレーションという言葉も出てきていますね。
 その強欲インフレの波というのは我が国にも広がりつつあるのではないか。企業がコスト増加分を上回る値上げで収益増大させています。一方で、賃金に十分還元していないという状況がヨーロッパだけでなくて日本でも広がっているんじゃないか。
 資料をお配りしております(資料)が、これは日本政策投資銀行の調査の報告書から引きました。
 二〇二三年以降は上昇要因のほとんどが企業利益の収益の増加によるものだというふうにこれ分析されているんですね。このGDPデフレーターの伸びを賃金要因と企業収益要因に分けて把握すると、これ日本見ていただくともう物価上昇のほとんどが企業収益が占めていると。賃上げに回った分はごく僅かなわけです。これ欧米を上回るようなそういう状況になっていると。
 総裁、我が国はやっぱり欧米以上の、言ってみれば強欲インフレという状態になりつつあるんではないか。まあ、端的に言うと、現状は賃金上昇を伴う物価上昇ではないという状況にあるのではないかと思いますが、いかがでしょうか。
○参考人(植田和男君) 委員御指摘のGDPデフレーターから見た賃金、物価の上昇要因という図でございますが、これなかなか振れの大きいデータでございまして、委員の図にございます二三年いっぱいに加えまして、その一つ右になりますけれども、今年、二四年の一―三月について計算いたしますと、日本については、ユニット・レーバー・コストの前年比は二%程度のプラスになって出てまいります。ということで、少し賃金の上昇率の部分に出てきているということは、一応、まだ一四半期のデータではございますが、現れております。
 ただ、全体を見てみますと、企業収益がこれまで改善を続ける中、さらにそれが既往最高水準で推移しているのに対して、名目賃金の上昇率が緩やかであったということは御指摘のとおりかと思います。
 ただ、労働需給が引き締まり続ける中で、企業の賃金設定行動には明らかに変化が見られると思いますし、春闘の結果も強いものでございます。繰り返しになりますが、これが今後より高めの名目賃金の伸び率に反映されていくというふうに考えております。
○小池晃君 春闘のお話ありました。確かに、春闘、三十数年ぶりの賃上げで、今五・〇八%と言われて、前年大きく上回っていますが、これ、それでも定昇を除いたベアでいうと二、三%程度にすぎないわけですね。中小企業は更に低い。
 昨年十二月の日本銀行の生活意識に関するアンケート調査では、一年前と比べて物価が上がったと感じる人の割合は高止まりしています。そして、今後一年間の支出を考えるに当たって物価を考慮するという人の割合も、物価上昇続いた二一年以降、高い水準続いているわけです。
 総裁ね、このまま賃金上昇伴わない強欲インフレ型の物価上昇というのが、まあちょっと良くなってきているとお話ありましたけど、二三年度は非常にそういう状況がもう明らかなわけですが、やはり消費を通じて景気を下押ししてしまうという可能性あると思いますが、そこはどう見ておられますでしょうか。
○参考人(植田和男君) 委員御指摘のように、物価の伸びが名目賃金の伸びを上回って推移する場合には、実質所得や消費者マインドの悪化を通じて個人消費に下押し要因となるということは、そのとおりかと思います。
 したがいまして、長い目で見て景気が回復を続けていくためには、物価上昇を上回る名目所得の増加を実現し、個人消費が増加傾向に入るということが不可欠であるというふうに考えてございます。
   〔理事山田太郎君退席、委員長着席〕
 ただ、繰り返しになりますが、今後名目賃金が期待されるとおり伸び率を高めていくというふうに考えておりますが、一方で、既往の輸入物価上昇を起点とした価格転嫁の影響は落ち着いていくというふうに見ていますので、実質所得の前年比は徐々にプラスに転化していくというふうに見込んでいます。これが消費を下支えするというふうにも思っております。
 ただし、これも繰り返しで恐縮ですが、円安や輸入物価の動向には引き続き注視していく必要があると考えております。
○小池晃君 それと、ちょっと心配なのは中小企業なんですね。東京商工リサーチの調査では、五月の企業倒産は千件超えています。非常に、やっぱり中小企業の今後は、もう賃上げどころか倒産という状況が出てきている。
 今後金利がある世界に入っていけば、融資利息の引上げなどで更に苦境に追い込まれるのではないか。政策金利の引上げが中小企業に及ぼす影響、それへの対応、どうお考えでしょうか。
○参考人(植田和男君) 確かに、中小企業、特に零細企業ですが、賃上げの動き、あるいは、これまでそして今後、場合によっては実現していく金利の上昇等で、なかなか苦しい状況に追い込まれる、あるいは追い込まれているところが既に発生しているということはヒアリング等でよく把握してございます。
 ただ一方で、非常に元気な中小企業もあるということも事実でございます。こうした中小企業の状況については、様々な観点から私ども引き続き丁寧な把握に努めたいと思っております。
 その上で、今後の金利上昇、その他の影響でございますが、結果的にそれが物価安定の実現につながるといたしますと、それが、物価安定の実現が成ったということが持続的な経済成長の基盤づくりとなって、中小企業を含む幅広い経済主体にプラスの影響を及ぼし得るんではないかなというふうに私どもは考えてございます。
○小池晃君 ちょっと風が吹けばおけ屋がもうかる的な感じを受けるんですが、ちょっと現状でやっぱりすぐやるべきことが私はあると思っていて、大企業の社会的責任なんですね。
 例えば、この間、トヨタ自動車は五兆円という空前の利益を上げています。しかし、トヨタが今年度、下請などの賃上げ支援は三千億円だと。五月十日に日本商工会議所の小林健会頭、こう言っています。例えば某自動車は何兆円もうけて、本当はその実もうけの中に下請に値増し分を払ってやる分が一兆円ぐらいあってしかるべきだ。私は本当にそのとおりだと思うんですね。一方で、トヨタは、今後、自社株買いの設定枠一兆円、昨年度の一兆円の配当、株主還元二兆円なんですね。
 やっぱり、日本の名立たる大企業が巨額の利益を上げながら、その多くを下請単価の引上げよりも株主還元に優先させている、こういう傾向続く限り、私、日本経済の回復期待できないんじゃないかと思いますが、一般論で結構ですけど、総裁、いかがですか。
○参考人(植田和男君) 委員御指摘のとおり、これまで賃金、物価がなかなか上がりにくいという状況の中で、それを前提とした考え方や慣行が根強く残っていたというふうに思います。それは、企業間取引でもコスト上昇の価格転嫁をしにくいということにつながってきましたし、賃金が上がりにくい一因にもなってきたというふうに認識しております。
 しかし、最近では、企業収益の改善や労働需給の引き締まり、さらには政府からの適切な価格転嫁を促す取組もありまして、企業の賃金、価格設定行動には従来よりも積極的な動きが見られているというふうに判断しております。
 こうした動きが広まりまして、労務費を含めたコスト上昇の適切な転嫁が実現していくことが、私どもの二%の物価安定の目標の持続的、安定的な実現にも重要であるというふうに考えております。
○小池晃君 そう、転嫁できればいいんですよ、できればいいんですよ。しかし、そうした責任をやっぱり大企業果たしているかと。トヨタはこの一年で内部留保を四兆円以上積み増しているわけですね。私たちは、やはりこれ、いつまでたってもこういう状況続くわけだから内部留保に時限的な課税をすべきじゃないかということを言って、財務省はずっともう、二重課税だ、二重課税だと言ってやる気がないわけですね。
 しかし、中小企業も含めた力強い賃上げが実現しなければ、日銀の出口戦略だって立ち行かない、経済も財政も立ち行かない。財務省として、やはりため込まれた利益剰余金、財務省としてというか、これ政府全体としてですけど、これは下請支援、賃上げに還元するためのやはり具体的な手だてがいよいよ必要なんじゃないかと思いますが、いかがですか。
○副大臣(矢倉克夫君) 答弁いたします。
 今ほどの、具体的な方法として企業の内部留保への課税ということは、今委員もおっしゃっていただいたとおり、二重課税という指摘もあることから慎重な検討が必要であると考えております。
 その上で、個々の企業が企業利益をどう分配するか、これは経営戦略ですので、個別のことはコメントを差し控えますが、やはり賃上げ原資、中小企業の賃上げ原資をしっかり確保していくという方向性はもう重要なことであるというふうに思っており、政府としても、今、植田総裁もおっしゃっていた、このサプライチェーンの隅々まで適切に価格転嫁がなされる、こういうことを通じて、雇用の約七割を占める中小企業において賃上げが実現されるための取組をこれしっかり行っていかなければいけないと思っております。
 そのため、具体的にこれまで、中小企業において労務費の価格転嫁が確実に行えるように、労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針の周知徹底、独占禁止法と下請法に違反する事案に対する厳正な対処といった取組を、これ講じていっているところであります。
 引き続き、先生の御趣旨も踏まえて、中小企業の賃上げ原資を確保するため、政府一丸となって価格転嫁対策に取り組んでまいりたいと思います。
○小池晃君 終わります。

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