日本共産党 書記局長参議院議員
小池 晃

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M&A促進する懸念 事業性融資法案 小池氏が質疑 参院財金委

2024年06月19日

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(写真)質問する小池晃書記局長=6日、参院財金委

 「企業価値担保」を創設する事業性融資促進法案が6日の参院財政金融委員会で、自民、公明などの賛成多数で可決しました。日本共産党、立憲民主党などは反対しました。

 

 企業価値担保は、企業が生み出す価値全体を担保とするもの。金融機関に対し、経営者保証等によらず、事業性と将来性に基づく融資(事業性融資)を進め、融資先への「伴走支援」を促します。

 

 日本共産党の小池晃書記局長は質疑で、企業価値担保による貸し手となることで、金融機関の優位性はいっそう強まり、「事業の将来性を厳しく評価し、廃業やリストラを促すことも可能だ」と指摘。企業の自主的な取り組みを支援する事業性融資が、理想通りにいかないリスクについて、金融庁の認識をただしました。

 

 金融庁の井藤英樹企画市場局長は「金融庁の監督指針で、伴走支援において金融機関は顧客企業の自助努力を最大限支援する旨明記されており、経営への過剰な介入は想定されていない」と答弁しました。

 

 小池氏は、事業性融資と廃業の促進が一体となって議論された金融庁設置の「金融仲介の改善に向けた検討会議」では「地域金融機関の役割は…強い産業を伸ばし、競争力に劣る企業は転廃業を進めること」などの意見が出ているとして、事業再生での早期の企業価値担保の実行が、廃業や企業の合併・買収(M&A)を促進するとの懸念を表明しました。

速記録を読む

○小池晃君 日本共産党の小池晃です。
 今回、認定事業性融資推進機関が導入される、専門的知見を有して事業者や金融機関等を助言、指導を行うということでありますが、一昨日の質疑で、これ全銀協とか日本商工会議所などと協議しているという答弁がございましたが、これ新たな団体をつくるんでしょうか、それとも既存の団体を想定しているのでしょうか。
○政府参考人(井藤英樹君) お答え申し上げます。
 支援機関の担い手についてですけれども、これは、新たな団体を創設することは考えてございませんで、既存の団体を想定してございます。
 その上で、まず、事業性融資において具体的に求められる支援の内容や支援のために必要な能力について、法案成立後に、例えば全国銀行協会や日本商工会議所など、各種業界団体等と共通の認識をつくった上で、担い手の候補となる関係者と丁寧に相談してまいりたいというふうに考えてございます。
 繰り返しになりますが、新たな団体を創設することは考えてございません。
○小池晃君 それから、この企業価値担保の想定活用ケースということでいうと、スタートアップなどの成長していく企業、あるいはその事業承継、事業再生。これは、この間の衆参の質疑でも、一定のやっぱり規模以上の企業であるという、そういう答弁を繰り返されてきているんですが、ちょっとイメージでいうとどのくらいのものを想定されているのか、例えば年商数億円以上とか、何かそういうイメージをお示しいただければと。
○政府参考人(井藤英樹君) 今回の法案で導入する企業価値担保権についてでございますが、これまでも、有形資産に乏しいスタートアップ企業ですとか、現経営者に設定している経営者保証の後継者の引継ぎが困難であることを理由として事業承継が進んでいない企業、あるいは、その事業再生を通じた潜在的な回復可能性はあるものの担保余力が乏しい企業など、様々な活用場面が想定してございます。
 他方、その活用が想定される企業の規模感についてでございますが、これ、一概に申し上げることはなかなか難しいんですけれども、これまで、金融機関等との様々なやり取りの中では、例えば売上高が数億円といった企業などへの融資案件における活用が想定しやすいというような意見があったものと承知してございます。
 金融庁といたしましては、いずれにせよ、こうした企業価値担保権を積極的に使っていただきたいというふうに考えてございますが、金融機関における体制整備等の好事例の把握、公表等を通じまして、企業価値担保権を活用される場面や企業の規模感等の裾野が拡大していくよう、金融機関の取組を後押ししてまいりたいというふうに考えてございます。
○小池晃君 だから、当初から零細企業まで含めてみたいな感じじゃなくて、かなり想定されるケースというのは限定的じゃないかなというふうに思うんですが。
 ただ、こうした場合でも、担保権者となれば、これは専門的な能力持つ貸し手である金融機関の優位な立場は一層強まると思うんですね。一方で、企業は経営実態を細かいところまでこれ査定される、把握される。金融機関の側が、事業の将来性厳しく評価して、廃業やリストラを促すということも可能になってくるんじゃないか。
 事業性融資によって企業のもう自主的な取組をサポートするというのは、これはあるべき姿なんですけど、これは理想どおりにはいかないんじゃないかというリスクもあると思うんですね。今までの事業性融資にもそうした二面性はあったと思うんですが、その点は金融庁としてはどう認識されているんでしょうか。
○政府参考人(井藤英樹君) 事業性融資に伴う金融機関の伴走支援に関してのお尋ねだというふうに理解しましたけれども、金融庁の監督指針におきましては、金融機関は、顧客企業に対しまして伴走支援を行う際には、顧客企業の主体的な取組について、その自助努力を最大限支援していくことが求められる旨、明記してございます。
 また、事業性融資に伴う伴走支援では、金融機関と顧客企業の密接な協力関係が重要であるため、金融機関が顧客企業の意向を踏まえず廃業やリストラを強要するなど、企業、顧客企業の経営に対して過剰に介入することは基本的には想定されない状況だというふうには考えてございます。
 その上で、企業価値担保権が設定されている場合に限らず、現在も含めまして、金融機関が取引上の優越的な地位を不当に利用し、取引の条件又は実施について不利益を与えるような行為は、銀行法令等において禁止されているところでございます。
 金融庁といたしましては、事業性融資を実施する金融機関が、こうした法令等を遵守しつつ、制度趣旨を踏まえて、事業者との緊密なコミュニケーションを通じて、事業者の状況に応じた伴走支援を適切に行っていくことが重要だというふうに考えてございまして、悪い例もあるんじゃないかという御懸念かと思いますが、適切にモニタリングしてまいりたいというふうに考えてございます。
○小池晃君 そういう御懸念があるんですよね。金融庁が設置した研究会でも、事業性融資と廃業の促進というのは結構一体となった議論がされているんですよ。金融仲介の改善に向けた検討会議では、企業の新陳代謝の促進と担保、保証依存の融資からの転換ということをテーマにされて、その中で、やはりその地域金融機関の役割は強い産業を伸ばして競争力に劣る企業は転廃業を進めることだというような、そういう意見も出されているんですね。
 そもそも、この今回導入される企業価値担保権に伴う伴走支援、モニタリングも、これ大変なコストが掛かる。で、金融機関にとってみれば、これは、この担保制度で早期再生に着手するきっかけになるけれども、いわゆる早期に担保実行して廃業、MアンドAを促進すると、そういう傾向が強まる危険もあるんではないかと思うんですが、いかがでしょうか。
○政府参考人(井藤英樹君) 企業価値担保権の実行手続におきましては、裁判所の監督や管財人への報酬、事業譲渡に係るデューデリジェンスの費用など、相当の費用を要するということになります。
 したがいまして、こうした実行手続に相応の費用が掛かることに鑑みれば、経営改善支援など他の手段による事業の継続、再生が見込まれる場合には、実行手続の申立てを行わず、再生等を通じた事業価値の向上を図る方が融資の弁済可能性が高まると考えられるため、基本的に、こうした機会を放棄して極めて早期に実行手続の申立てを行うことは、経済的観点から想定しにくいんじゃないかというふうに考えてございます。
 いずれにいたしましても、金融庁としては、金融機関が、企業価値担保権の適切な活用も行いながら、真に事業者のニーズに応え、持続的な成長に資する対応を行っていくことはこの制度提案の眼目でもございますので、そうした観点からモニタリングをしっかりと行ってまいりますし、金融機関を促してまいりたいというふうにも考えてございます。
○小池晃君 金融庁の事業性融資の研究会に参加している大手銀行のメンバーは、フリーキャッシュフローがポジティブである局面において、それが小さくなる見通しであれば早期のMアンドAを促すのが合理的な選択だという、そういう発言もあるんで、やっぱりその懸念は消えないわけであります。
 現状、中小企業は、担い手不足、コロナ、物価高騰で本当に苦しんでいる。本来、地域金融機関は、中小企業への本業支援、コンサルティング機能、これを期待されているわけですね。で、例えば、浜松いわた信用金庫というところでは、これは伴走型支援による経済波及効果、二〇二一年度に静岡県西部の六市一町で、企業の生産活動による利益、新規雇用者数、給与の増加分、二百二十七億円の経済効果を生んだということを公表している、こういう事例もあるわけです。
 大臣、やはり、金融庁この間努力してきたいわゆるリレーションシップバンキング、これを実現させるためには、やはり金融機関に、より一層事業者に寄り添う姿勢が求められると思いますが、いかがですか。
○国務大臣(鈴木俊一君) 基本的にはそのとおりだろうと思います。
 地域金融機関、これは地域経済を支える要でありますので、事業者に寄り添いながら、地域経済への貢献を含め、金融仲介機能発揮に積極的に取り組むこと、これが重要なことであると、そういうふうに認識をいたしているところであります。
 今、足下では、御指摘のとおり、担い手不足でありますとか、物価高騰、コロナ禍で積み上がった債務の返済などにより、厳しい環境に置かれている事業者がいること、そのことを踏まえまして、本年四月に監督指針を改正をして、一歩先を見据えた経営改善、事業再生支援の促進でありますとか、コンサルティング機能の強化等に取り組んで、事業者の実情を踏まえた更なる支援を徹底するように金融機関に促しているところであります。
 金融庁としては、引き続き、金融機関に対しまして、事業者に寄り添いながら、金融仲介機能をより一層発揮して、地域経済や事業者の成長、発展に貢献していくよう促していきたいと考えています。
○小池晃君 今やはり金融行政に求められるのは、やっぱりそういう努力を徹底してやることであって、こういう制度を導入することではないんではないかということを改めて申し上げておきたいと。
 最後、ちょっと別件なんですが、国税庁が、申告書などの控えの収受日付印の押捺、これ来年一月からやめると言っていることについてなんですが、これ、補助金を申請する際にも収受日付印のある確定申告書の控え、これ出してくれって言われるわけですね。これ、融資の審査でもこれ必要とされてきた。
 今後、金融機関や行政から控えに代わる証明出してくれとなったらどうなるのかと聞くと、国税庁は、日付を入れたリーフレットを渡すから大丈夫だと。だったら判こ押せばいいじゃないかと。何でやめるんですか。
 紙の申告書控えには、収受日付印が押捺されてこそ、提出したことを証明する事実性が担保されるわけですよ。これ、廃止には税理士会からも反対の声が上がっています。やはり納税者が求めた場合は判こを押すと、そうすべきじゃないですか。
○政府参考人(星屋和彦君) お答え申し上げます。
 国税庁におきましては、経済社会のデジタル化を踏まえ税務行政のDXを進めておりまして、e―Taxの利用率の向上やDXの取組の進捗も踏まえまして、令和七年一月以降、書面の申告書等の控えへの収受日付印の押捺を取りやめることとしたところでございます。
 なお、申告等を行った事実につきましては、収受日付印によらずとも、電子申告の場合にはe―Tax上で確認可能であるほか、書面申告の場合も含めまして申告書のイメージデータを取得できる申告書等情報取得サービスや納税証明書など様々な確認方法を整備し、納税者の方々の利便性を高めてきたところでございます。
 その上で、今回の見直しにつきましては、関係行政機関や税理士会、関係民間団体、金融機関等に対しても丁寧に説明を行っておりまして、御理解をいただいていると認識しております。令和七年一月以降は、各種の事務におきまして収受日付印が押捺された申告書等の控えの提出を求めないよう要請しているところでございます。
 今後も、納税者、関係機関等に丁寧に周知、広報を行ってまいりたいと考えてございます。
○小池晃君 質問しませんが、理解得られていないから私質問しているんで、判こ押せば済む話なんだから、希望されたら判こ押す、そのくらいのことをやるべきだということを申し上げて、これちょっと引き続き取り上げたいと思います。
 終わります。

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