日本共産党 書記局長参議院議員
小池 晃

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労働者の保護に懸念 事業性融資推進法案 参考人質疑 参院財金委で小池書記局長

2024年06月03日

赤旗2024年5月30日付

 参院財政金融委員会は5月30日、新たな担保制度を創設する事業性融資推進法案の参考人質疑を行いました。日本共産党からは小池晃書記局長が質問しました。

 

 新設の「企業価値担保権」は、企業が将来生み出す価値も含めた総財産を担保とするもの。法案は、この新たな担保により、不動産担保や経営者保証に頼らず、事業性と将来性に基づく融資(事業性融資)を進め、金融機関に融資先への継続的な「伴走支援」を促します。

 

 小池氏は「企業価値を基準とする融資の推進は大事だ。ただ労働契約上の地位を含む担保であり、労働者の保護に懸念を持つ」と発言。「伴走支援で金融機関による経営への影響が強まれば、労働者の処遇への関与も強まり、金融機関の使用者性の検討が重要になる」として、使用者性の判断基準などを質問しました。

 

 竹村和也弁護士(日本労働弁護団事務局長)は「部分的に決定する地位があれば団体交渉への応諾義務が課されるとする、一定意義のある裁判例はあるが、実際の運用が限定されている」「伴走支援には、人事に関する合理化施策は当然入ると思われ、その際に労組と金融機関が協議する場が必要だ。本案では、その点の手当が不十分ではないか」と述べました。

速記録を読む

○小池晃君 日本共産党の小池晃です。
 私どものこの法案に対するまずスタンスなんですけど、目的としているその不動産担保や、あるいはその経営者保証によらずに企業価値を基準とする融資、これは推進することは大事なことだと思っていますし、それは、資産に乏しい新規企業などが資金調達を円滑にするという面もあるし、そもそも、この日本のやはり融資の慣行というか、資産の担保あるいは経営者保証に依存してきたというやっぱりあしき慣行があると思うので、それを改めるという点では意味があると思っているんですね。
 ただ、やはりその労働契約上の地位も含む総資産に担保権を設定するという仕組み自体があるものですから、やはりその労働者の保護というのはどうなっているのだろうかということに対して大変懸念を持っているわけであります。
 その点で、今日、まず井上参考人にお伺いしたいんですけど、QアンドAという形で、包括的な担保によって労働者の権利が害されるのではないかということに対して、雇用主の地位も担保の対象になる方が労働者から事業が切り離されずに済むため雇用が守られやすいという御指摘がありました。こういう面も確かにあるとは思うんです、私。
 ただ同時に、先ほど言ったように、やっぱり労働契約も含まれるということでいうと、この企業価値担保でその設定、期中、実行時、それぞれの段階でやはりきちんと労働者の保護が、あるいは労働組合とのコミュニケーションがきちんと保証されなければいけないのではないか。その問題点、竹村参考人から様々御指摘があったわけですけど、井上参考人は、そういうその労働者の保護あるいは労働組合とのコミュニケーションという点で、今回のこの法案、万全であるというふうにお考えなのか、それとも、まだ課題、こういう課題が残っているというふうにお考えなのか、もし解決すべき課題があるとすればどういうところなのか、お聞かせいただければと思います。
○参考人(井上聡君) 御質問ありがとうございます。
 労働者と経営側がコミュニケーションよくするというのは一般論として非常に重要なことだと思いますけれども、この担保の設定に関しては、やや意見が分かれるところかもしれませんが、私は、労働契約の地位が入っていることでむしろ労働者の保護が図られるというふうに考えております。何で労働者の地位を担保に入れるんだという感情的なというか感覚的なものは分からないではないんですけれども、むしろ、そのある中小企業が労働関係をそのままにした上で、基本的に担保に入れるというのは金目のもの、重要なものを担保に入れるのが普通ですので、企業の重要な不動産、重要な契約関係、重要なライセンスといったものを個別の担保に入れて、それが実行される場合と比較しますと、むしろこの担保の方が労働者の保護は図られているのではないか、必要な財産が全部処分されて、ある意味、労働者は担保の対象になっていないがゆえに取り残される状態との比較でいえば、私自身はむしろこの担保の設定というものが労働者に与えるインパクトは少ないんじゃないかと思っておりまして、もちろんコミュニケーションを取ることは重要なんですけれども、コアとなる不動産、あるいはコアとなる他の知的財産などを担保に入れるときこそ、むしろよりコミュニケーションが必要なのかもしれないというふうに思っているくらいでございまして、そう考えると、この関係で、この担保の関係で特別ほかで手当てをしないで設定、実行、あるいは期中の何らかの義務を協議、あるいは情報提供の義務を課すというのはやや違和感があって、竹村参考人がおっしゃるように、一般的な、何といいますか事業判断における情報提供の議論としてした方がいいのではないかというふうに考えております。
○小池晃君 竹村参考人、今の井上参考人の御意見に対して何かおっしゃりたいことあれば聞かせていただけますか。
○参考人(竹村和也君) ありがとうございます。
 一般論として、この制度に限らず、情報提供なり協議、通知というのをどんどん設けていくというのは、井上先生御指摘のとおりかと思います。
 ただ、ここは井上先生もされているとおり、意見が分かれるところなんですが、私としては、労働契約も含めて担保に入れるというのは、やはり従来の担保制度にない大きな特徴だと考えております。それは将来的に雇用が守られるのかどうかという部分はありますが、やはり労働者が影響を受けるという点においては変わりはありません。そうしたときに、やはり労働者の納得がなければ、その後の事業価値の向上もあり得ませんので、是非、今回の法案において制度化すべき点だというふうに思っております。
 ちょっとその点で加えさせていただきますと、やはり労働者が使用者でないほかからこの担保設定を知ったときどういう感覚に陥るかという点だと思います。やはりそれは勘違いだというふうに御指摘があるかもしれませんが、やはり驚くと思います。それが使用者から通知されていないことへの不信感にもつながると思います。そうじゃなく、井上先生がおっしゃるように、これは労働者保護にも資するんだというのであれば、使用者、設定者の方からそこをしっかり説明する、通知するというのをやった方が、この制度のうまくいくことにつながるというふうに考えております。
○小池晃君 ありがとうございます。
 今、使用者という問題がございました。それで、使用者性の問題についてちょっとお聞きしたいんですけど、これは伴走支援がすごく大事な制度に、あっ、竹村参考人にお伺いしますが、伴走支援が非常に大事だと思うんですけど、やはり、その点で、使用者性の問題というのをきちんと検討することがこの制度導入に当たっては非常に大事だと思います。
 これまでも、使用者性ということは、これいろんな議論になってきた問題で、労働者側は、これは概念拡大をすべきだと、貸し手である金融機関、出資者であるファンドなどの使用者性を認めるようにって求めてきたけど、裁判ではかなり限定的に解釈されてきたという経過があるかと思います。
 この問題、これまでどのような議論がされてきたのか、また、やはり今回の企業価値担保の導入に当たってどのような課題があるというふうにお考えか、お聞かせいただければと思います。
○参考人(竹村和也君) ありがとうございます。
 御指摘いただいた使用者性とは、集団的労使関係、いわゆる労働組合法上の使用者のことだと思います。私のレジュメですと二ページ目のところに記載しておりますが、この点、御指摘のとおり、朝日放送事件という裁判例がございまして、この裁判例は、雇用主ではなくても、雇用主と部分的とはいえ同視できる程度に現実的かつ具体的に支配、決定できる地位にある場合には労働組合法上の使用者に当たるというふうな判断、枠組みを示しております。
 御指摘にあったとおり、従来、その支配力説など、もっと積極的に使用者性を認める見解や実務もありましたが、それとは少し限定はされてはいるものの、部分的に支配、決定する地位があれば団体交渉に応じなければいけないという意味では、一定程度、意義のある裁判例だと思います。
 ただ、実際にはこの裁判例がどのように活用されているかというと、かなり厳しく運用されているというのが我々の実務的な感覚です。例えば子会社の組織再編などについては、そのオーナー企業、一〇〇%親会社が実質的に組織再編を判断していくことになるんですが、中労委や裁判例は、組織再編に関する事項だけでなく、子会社の労働者への労働条件の支配決定を強く求める、そういうことでない限り団体交渉応じる義務がないというふうにしておりますので、なかなかこれで突破するというのは難しいと思っております。
 実際、今回の法案でも、具体的にその経営改善指導が労働条件や人員削減等につながっているときに労働組合側がその支配決定の地位にあることを立証するというのは難しいと考えています。
 ただ、実際の実務においては、私の感想なんですが、人事に関する合理化施策というのもこの伴走支援に入ってくるというのは当然のことではないかというふうに思っています。そういったときに、やはり積極的に労働組合と、金融機関も含めて協議する場というのが必要ではないかというふうに考えているんですが、その点の手当てが少し不十分ではないかというふうに考えている次第です。
○小池晃君 ありがとうございます。これもう本当に大きな課題ではないかなと思っております。
 それから、企業価値担保権の実行の手続では、もう裁判所から管財人が選任されて、しかし善管注意義務を負うんだと。労働者の地位も含めて関係者の最善の利益を確保しながら事業譲渡をするようになるということになってはいるんですが、これ、竹村参考人は日本航空の管財人不当労働行為事件を担当されています。この経験から、今回のこの企業価値担保権実行後の管財人の在り方について、二年前の金融審議会においても発言をされていると思います。
 ちょっとこの点について御説明をしていただければと思うんですが。
○参考人(竹村和也君) ありがとうございます。
 恐らくワーキンググループに呼んでいただいた際に発言した点を御指摘いただいているんだろうと思います。この点についても、レジュメでいうと二ページ目に、真ん中の方に日本航空の件を書いているかと思います。
 労働組合法上の使用者の地位も当然に就く、受け継ぐという点ですが、この事件、会社更生手続中であった日本航空において、その管財人であって出資者であった機構の方が、労働組合が争議権の確立投票を行っている際に、争議権確立すると、それが撤回するまで更生計画案で予定されている出資はできないというふうに発言をしたと、そこが支配介入の不当労働行為に当たるというふうな、された事案で、東京都の労働委員会、東京地裁、東京高裁でも不当、支配介入が認められて確定しているものです。
 今回のその善管注意義務との関係で指摘したいのは、その善管注意義務を負っている管財人においてもある意味その労働基本権を否定するような支配介入行為が行われた事例があるという点です。それが支配介入行為であるとして裁判所で確定するまでにどれぐらい掛かるのかという点も是非考えていただきたいんですね。
 この事件だと、済みません、うろ覚えなんですが、たしか支配介入があってから最高裁で確定するまで六年以上も掛かっていると思います。取り返しが付くんですかという点なんですね、争議権という重要な権利が侵害されている点で。
 本法案の企業価値担保権の実行手続中で会社再建のために御尽力いただく際、勢いその労働組合の労働基本権を奪うということはあってはならないということは何らかの形で強く周知すべきことかなというふうに考えております。
○小池晃君 ありがとうございました。
 井上参考人に最後になるかもしれませんがお聞きしたいんですが、この担保権者の要件なんですけど、要件、担保権者は要件定められているんですが、債権者については制限がこれないわけですよね。例えば、商社のようなものもあり得るし、サービサー、ファンド、想定されています。
 ワーキンググループの審議の中では、債権者については登録制度などで絞った方がいいんじゃないかという意見も出されたと聞いております。できるだけ伴走できるだけの体力と知見を持った方にやってほしいと。
 金融庁に聞くと、これは債権者の平等のためだというふうに言うんですけれども、やはり債務者のリスク考えれば一定の制限を課すということもあったんではないかと思うんですが、いかがでしょうか。
○参考人(井上聡君) ありがとうございます。
 そうですね、債権者というのは、貸付けを行うという意味でいうと、貸金業登録も何もないというところはちょっと考えられないので、その意味では、誰でもとか個人でもということでは、一般的な個人でもということではないとは思います。ただ、おっしゃるように、貸金業者、特に商社とかベンチャーデットと言われるようなファンドというようなものが広く含まれるということになろうかと思います。
 これは、一定程度目利き力のあるところに限定するという考えもあると思いますけれども、そこは最終的には目利き力を育てていっていただくべきものというふうにした上で広く設定しておくということで、最初から入口は狭めないという選択だったと思います。両様あり得るのですが、先生おっしゃるように、やはり間口を広げた以上は、担保権者を介在させることで弊害を回避するというだけではなくて、レンダーとしての能力をきちんと備えているかどうかということについてのありようをきちんとモニタリングしていくというのが必要だろうとは思います。
○小池晃君 ありがとうございました。
 様々課題があるということがよく理解できました。今日は本当にありがとうございました。
 終わります。

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