赤旗2024年5月23日付
日本共産党の小池晃書記局長は22日の参院予算委員会で、自民党の裏金事件の再発を防ぐには、真相の徹底解明と、企業・団体献金の全面禁止が必要だと岸田文雄首相に迫りました。
衆参の政治倫理審査会が裏金に関与した自民党議員計73人の出席を求めたのに、誰一人出席しようとしていません。小池氏は、出席を求める議決は自民党議員も賛成して全会一致で行ったとして「自民党として疑惑の議員が出席する必要があると考えているのだな」と迫りました。岸田首相は「政倫審として意思を示す議決に賛成した」と認めざるをえませんでした。
小池 ならば、首相として出るべきだと言うべきだ。
首相 当事者が対応を判断する。
小池 全く無責任だ。丁寧に説明するどころか説明する気ゼロだ。自民党、岸田首相には真相解明する意思も能力もない。
首相 “言い訳”も破綻
小池氏は「再発防止というなら企業・団体献金の全面禁止が必要だ」と強調しました。
岸田首相は、1970年の最高裁判決を持ち出し「企業にも政治活動の自由がある」と強弁しています。小池氏は、同判決には「大企業による巨額の寄附は金権政治の弊を産む…弊害に対処する方途は、さしあたり、立法政策にまつべきこと」(別項)とも書かれていると示しました。
小池 この判決は、企業・団体献金を禁止する立法を否定しているわけではない。
岸田 一定の量的制限、質的制限の下で(企業・団体献金が認められるなど)、一定の対応が図られている。
岸田首相は、判決が企業・団体献金を禁止する立法を否定しているかは答えず、言い訳に終始。小池氏は、1993年11月の衆院政治改革特別委員会での元最高裁長官の岡原昌男氏の発言(別項)を示しました。
判決について岡原氏は「一部だけを読んで企業献金差し支えない、何ぼでもいい、こう解釈しておりますが、あれは違います」と答弁。また、日本共産党の吉井英勝議員(当時)への答弁で「あれは(自民党を)助けた判決」と述べています。小池氏は「だからこそ、判決後の政治改革の議論で『企業・団体献金の禁止』がいつも課題になってきた」と主張しました。
首相 解明の意思なし
企業・団体献金が政治をゆがめているとの指摘に対して岸田首相は、政策をつくるにあたり有識者や関係省庁、国会での議論を行っているとして「賄賂性があるとの指摘はあたらない」などと主張しています。
小池氏は、自民党政権が繰り返してきた大企業向けの法人税減税をあげ「国民の声に応えるプロセスを経た政策なのか」とただしました。
岸田首相が「一つの団体や企業の献金が結果に影響を及ぼすものではない」と強弁したのに対し、小池氏は2015年3月の『税務弘報』を示しました。この中で当時の日本経団連の常務理事は「法人税本法については、財務省が中心となり、あとは納税者代表として経団連が意見を出しています」と発言。主要企業データによるシミュレーションも行い、「減税までにはならなくても増税ではない、というふうにしたい」と述べています。
小池氏は「経団連が『納税者代表』となって、主要企業にあてはめたシミュレーションまで行って有利な方向に導いてきたと赤裸々に語っている」と強調。自民党の政治資金団体「国民政治協会」に対する2022年の企業・団体献金24億5000万円の大半が経団連加盟企業のものだと指摘しました。
小池 一部の企業や団体の献金が全体の政策を左右しているではないか。
首相 企業献金は個別の政策に対しての献金ではない。
小池氏は、岡原元最高裁長官が“もうけにならない献金は株主への背任となり、見返りを要求すれば汚職になる恐れがある”と述べていることをあげ「首相には真相を解明し、悪を一掃する決意が全くないことがはっきりした」と指摘。徹底した真相解明と企業・団体献金の全面禁止を重ねて求めました。
別項
▼八幡製鉄政治献金事件の最高裁判決(1970年)抜粋
「大企業による巨額の寄附は金権政治の弊を産むべく、また、もし有力株主が外国人であるときは外国による政治干渉となる危険もあり、さらに豊富潤沢な政治資金は政治の腐敗を醸成するというのであるが、その指摘するような弊害に対処する方途は、さしあたり、立法政策にまつべきこと」
▼岡原昌男元最高裁長官の発言(1993年11月2日、衆院政治改革特別委員会)
「企業献金の問題につきまして、例の昭和45年の最高裁判決がございますけれども、あの読み方について自民党の中で非常にあれをルーズに読みまして、その一部だけを読んで企業献金差し支えない、何ぼでもいい、こう解釈しておりますが、あれは違います。(中略)私の立場から申しますと、あの企業献金というのは、法人がその定款に基づかずして、しかも株主の相当多数が反対する金の使い方でございまして、これは非常に問題がある」
「これだけ企業献金がその当時、あれは昭和35年の事件でございます、行き渡っておったのでは、最高裁があれをやれるわけがないです、違憲であるとか違反であるというふうなことに。全部の候補者がひっかかるような、そういうことは実際上としてやれない。したがって、あれは助けた判決、俗に我々助けた判決というものでございます」