赤旗2024年4月24日付
新型コロナウイルス禍などをきっかけに社会保険料の納付が滞った中小・零細事業者に対し、日本年金機構と年金事務所が無理な取り立てや資産の差し押さえを行っています。資産を差し押さえられて資金繰りが破綻する「社保倒産」も続出し、事業者が悲鳴を上げています。(山本健二)(関連記事)
「会社を終わらせた方がいいのか、と何度も考えました」―。東京都中央区で映像制作会社を営むAさん(30代)は2月末、同区の中央年金事務所から財産差し押さえの予告を受けました。
映像の世界に憧れ、100万円の資金を基に創業したのが6年前。3人の正社員やアルバイトの従業員とともにテレビやインターネットの番組、CMなどの制作に取り組んできました。企画したCMが広告賞を受賞するなど実績を積みましたが、新型コロナウイルス感染拡大に伴い受注が減り、売り上げが伸び悩みました。
仕事が減っても、従業員の賃金は払わなければなりません。加えて、年金や健康保険の保険料も重くのしかかってきます。
滞納額が約1400万円になった昨年6月ごろ、年金事務所と協議した返済計画は、新規と滞納分の合計60万円を月々納めるもの。資金繰りが困難な中、計画通りに納められませんでした。
年金事務所から届いた差し押さえ予告の通知書は、数日後の指定期日までに約350万円分を納付しなければ「誠意がないものと認め」、財産の差し押さえを執行するという内容でした。とても無理だと、担当者に納付期日の延期を訴えますが、担当者は「無理です」の一点張りでした。
絶望的な状況に追い詰められる中、インターネットで探し当てたのが東京商工団体連合会(東商連)でした。相談に応じてくれた中央民主商工会(中央区)の加藤博司事務局長とともに、3回にわたって交渉したものの、年金事務所は「払えなければ差し押さえる」と繰り返すばかりでした。
しかし、4月になると状況が一変しました。年金事務所が「月々の新規分を支払い、滞納分については今後相談したい」というAさんの要望を受け入れたのです。
「3月に日本共産党の小池晃参院議員が差し押さえの問題を国会で追及していました。社会問題化したことで対応が変化したのだと思います。民商さんに相談して、あきらめずに交渉して良かった」(Aさん)