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「社保倒産」年金機構の非情 「会社つぶれても関係ない」 金庫とレジ開け100万円差し押さえ 猶予周知→滞納防止

2024年04月26日

赤旗2024年4月24日付

グラフ

 社会保険料を滞納した業者に対する無理な取り立てと財産の差し押さえは全国で激増しています。

 

 全国商工団体連合会(全商連)によると、2023年度上半期(4~9月)の時点で、日本年金機構による差し押さえ執行事業所数は約2万6300件に上ります。新型コロナ禍で特例(法定)猶予制度が実施された20~21年度は激減しましたが、22年度は2万7784件に急増。23年度は上半期だけで22年度に並ぶ勢いです。(グラフ)

 

 東京商工リサーチの調査(4月8日発表)では、23年度の「税金滞納(社会保険料を含む)」に起因する倒産は82件。コロナ禍後の最多記録で、22年度の3・4倍に急増しています。

 

 差し押さえ急増の要因について、全商連の牧伸人常任理事は「滞納者に対する方針を日本年金機構が変更し、それを厚労省が容認していることが大きい」と言います。

 

 年金機構は22年度の事業計画書で滞納に対し「法定猶予制度の案内を徹底」するとしていました。しかし、23年度以降はこの表現を削除し、社会保険料の収納率向上のため「滞納の長期化を防止する施策を実施する」としています。

 

 各地の民商に、強引な取り立てと差し押さえについての相談が寄せられています。東京都新宿区の美容施術業者は、新宿年金事務所から社会保険料滞納分の全額納付を再三要求されました。昨年末には職員が「財産調査」と称して営業中の店内に押しかけ、写真を撮り、金庫・レジを開けさせて100万円を差し押さえました。ほかにも▽分納を拒否され「会社がつぶれようが関係ない」と言われた(神奈川・サービス業)▽3カ月以内に全額支払わないと「売掛(近いうちに回収が見込める現預金)などに差し押さえを行う」と言われた(京都・建設業)―などの事例があります。

 

 社会保険料の徴収や滞納処分には、国税徴収法が準用されます。また同法は、減収した事業主には納付の猶予や分割が申請できる「換価の猶予」などの緩和制度があります。

 

 年金機構を管轄する厚労省は15年、厚生年金保険料の納付猶予の取り扱いについて地方厚生局長あてに▽滞納者の実情で納付困難となった場合は、納付猶予や滞納処分の停止などの緩和措置を講じる▽事業所から納付について相談があった場合は実情を聴取し、納付方法の相談に丁寧に応じる―などの周知徹底を図る通知を出しています。

 

小池氏が3度にわたり追及

 

写真

(写真)「社保倒産」関連の問題で質問する小池晃書記局長=11日、参院財金委

 日本共産党の小池晃書記局長は、参院財政金融委員会で3度にわたって「社保倒産」の問題を国会で追及してきました。

 

 小池氏は3月12日の質疑で、岩手の大手タクシー会社が倒産し、従業員85人全員が解雇された事例を紹介。社会保険料の滞納があったと、年金事務所がタクシーを差し押さえたことが破産のきっかけだったと指摘しました。

 

 社会保険料の滞納整理は、国税徴収の手続きを定めた「国税徴収法」に基づき行われます。小池議員の質問に対し、国税庁は「最長で4年間の(納付)猶予が認められる」「(差し押さえ対象は)事業の継続に支障が少ない財産」などと答弁。厚労省側は「納付の猶予などを適用し、実情に即しつつ適切な処理をしたい」と答えました。

 

 3月22日には、都内のIT企業の事例を取り上げました。同社は新型コロナウイルス感染拡大に伴う納付猶予の特例措置が終了した後、保険料を分納してきました。しかし、昨年2月に年金事務所は他社からの売掛金を年金機構に振り込ませた上に、今年3月には同社社長が他社と共同経営している別会社の銀行口座まで差し押さえてしまいました。

 

 小池氏は社会保険事務所の一連の行為について、法律を無視したものだと告発。「社保倒産の解決抜きに、中小企業の賃上げは実現できない」「政府が意識を持って取り組むべきだ」と迫りました。

 

 鈴木俊一財務相は「コロナ禍を生き延びた中小企業が、こういうことで追い込まれることはあってはならない」「(保険料の)徴収は、事業所の状況に応じたていねいな対応をするように、政府全体として取り組まなければならない」と述べました。

 

 4月11日の質疑では、保険料の強引な取り立てが起きている背景について指摘しました。小池氏は、コロナ特例猶予を受けた企業が特例終了後に滞納した場合、納付猶予の申請が納付期限の6カ月以内との規定があるため、猶予を受けられないからではないかとして、国税の場合の対応をただしました。

 

 国税庁は「期限を過ぎても税務署長の職権で、分割納付などを認めることができる」と答弁。小池氏は「社会保険料も、国税に準じて対応することが基本的な考え方だ」と述べて、財務相の見解をただしました。鈴木財務相は「滞納者に対する配慮は、社会保険料についても基本的には同じなのがふさわしい」と答弁しました。

 

直接支援・保険料引き下げこそ必要

 

小池書記局長コメント

 

 多くの中小企業はコロナ後も売り上げが戻らず苦境に陥っています。物価高騰の中でゼロゼロ融資の返済も本格化し、税や社会保険料を払いきれずに事業が破綻するという事態が各地で起こっています。法令すら無視した日本年金機構による社会保険料の取り立て、差し押さえは目に余ります。

 

 国会での質疑のあと、小池事務所にも相談が何件も来ています。苦しみながら相談もできずに思い悩んでいる中小企業家が大勢います。社会保険料を払いきれず命を絶とうと考えていたという方もおられました。国会答弁を交渉などに生かしてほしいと思います。

 

 国がやるべきことは、中小企業を破綻に追い込むような取り立てではなく、事業を再生するための直接支援であり、社会保険料の引き下げこそ必要です。財源は、大企業がため込んだ内部留保への時限的課税で生み出すべきです。

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