赤旗2024年3月22日付
日本共産党の小池晃書記局長は21日の参院財政金融委員会で、所得税法等改定案で創設される新たな法人税の減税制度について、「大企業減税を加速させ、『租税原則のゆがみ』をますますひどくする」と批判し、大企業優遇税制を根本から見直すよう迫りました。
大企業向けの研究開発減税は、もともと研究費を増やさなければ減税されない仕組みでしたが、2003年に研究開発費の総額に減税する「総額型」が導入されました。政府税制調査会は14年の答申で見直しを主張しましたが、実現しませんでした。小池氏は、経団連が税制改正のたびに減税を迫ってきたことを示し、「経団連の抵抗で答申が実現しなかったのではないか」とただしました。鈴木俊一財務相は「政府税調の提言に沿った改正だ」と正当化しました。
小池氏は、経団連の要求が優先されるのは、減税の恩恵を受ける業界団体が自民党に高額献金をしているからだと指摘しました。
研究開発減税の22年度分の実績総額7636億円のうち、減税額が最も大きい企業は約802億円です。小池氏は「1社で減税額の1割以上を占める企業はトヨタ自動車以外にあり得ない。この現状でいいのか」と追及。鈴木財務相は「対象企業の分布の是非ではなく、政策効果で見極める」と強弁しました。
小池氏は、自民党へのトヨタの献金額は6億1520万円(13~22年)に上り、同時期の研究開発減税の総額は8700億円だと指摘。「開発減税は企業献金の最悪のキックバック(還付)と言われても仕方ない」と批判し、企業・団体献金の全面禁止を求めました。
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○小池晃君 日本共産党の小池晃です。
昨年六月の政府税調は、法人税の租税特別措置について、租税の公平原則や中立原則の大きな例外だとして、とりわけ減収額が最大の研究開発税制について、恩恵を享受するのは全納税法人約百九万社のうち一万社程度、租税原則のゆがみだと指摘をしております。そして、廃止を含めてゼロベースで見直す必要があるとしたわけですね。
大臣、今回の法案にはそうした見直しは盛り込まれているんでしょうか。
○国務大臣(鈴木俊一君) 令和六年度税制改正におきましては、御指摘がございました研究開発税制に関して、研究開発費が減少した場合の控除率を段階的に引き下げることにより、めり張り付けを強化しつつ縮減をすることとしているほか、所得金額が対前年度比で増加している大企業について、一定の賃上げや国内設備投資を行わない場合には研究開発税制の適用を停止する措置について適用期限を三年間延長するとともに、その対象を拡大するとの見直しも行っております。このほかにも、今回の税制改正では、租税特別措置を四件廃止することとしているほか、適用期限を延長する租税特別措置についても必要に応じ要件の見直し等の縮減を行うこととしております。
租税特別措置につきましては、御指摘のとおり、公平、中立、簡素という租税原則の例外であるということを踏まえて、必要性や政策効果を検討しながら、不断の見直しを行わなければならないと考えます。
○小池晃君 不断の見直しとおっしゃるんですけど、でも、それでも研究費を大幅に減らさなければもう減税続く仕組みが残った。ゼロベースとはとても言えないと思うんですね。しかも、今回、増税どころか、新たな法人税の減税制度が創設されるわけです。戦略分野国内生産促進税制、それからイノベーションボックス税制ですが、局長、簡潔に、平年度ベースの減税額と、そのうち大企業分は何%かだけ、お答えください。
○政府参考人(青木孝徳君) お答えします。
戦略分野国内生産促進税制の平年度ベースの減収額は二千百九十億円、そのうち大企業の占める割合はほぼ一〇〇%と見込んでおります。また、イノベーションボックス税制の平年度ベースの減収額は二百三十億円、そのうち大企業の占める割合は約九六%と見込んでおります。
○小池晃君 現状でも大企業への集中度高いわけですけど、更に加速させることになるんではないか。租税原則のゆがみがますますひどくなるんではないかと思うんですね。
どうしてこういう仕組みが続くのかについてこれまでのちょっと経緯を振り返りたいんですが、この研究開発減税は、二〇二二年度実績で減税額が七千六百三十六億円、そのうち上位十社で二四・七%を占めます。そして、研究開発減税の九五%を占めるのは一般型。
局長、この一般型、簡潔に御説明ください。
○政府参考人(青木孝徳君) 研究開発税制の一般型でございますが、企業が支出する試験研究費について、試験研究費の増減割合に応じて変動する控除率を適用して法人税額の一定割合に相当する額を上限として税額控除を行う制度でございます。
○小池晃君 ですから、研究費増やさずに維持しただけでも減税されることになるし、もしも減ったとしても、控除率は下がりますけど減税は続くということになるわけですね。
元々そうじゃなかったわけですよ。研究開発減税始まったときは、増額分に控除率を掛ける、すなわち研究費増やさなければ減税にならなかった。
これは、小泉政権のとき、二〇〇三年に研究費の総額に控除率を掛ける総額型というのが導入された。この総額型は、二〇一四年、安倍政権時代の政府税調が、大胆に縮減して、研究開発投資の増加インセンティブとなるような仕組みに転換すべきだとした。しかし、その後、一般型というふうに名前は変わったけれども、研究費増やさなくても、維持しているだけでも減税になるということで、この二〇一四年の政府税調が答申で求めたものとはなっていないと思うんですね。
その背景に何があったかというと、日本経団連が二〇一四年の政府税調答申を、試験研究費の増加にこそ価値があり、税制上のインセンティブを付与する対象としてふさわしいとの発想が読み取れる、こういう発想ですよ。間違ってないと思うんですね、この発想はね。でも、こう批判をした。そして、経団連は、二〇一五年度改正で総額型維持したことを評価し、二〇一七年度改正で一般型に改正したことを発展的改組だと、言わば賛美をしている。
大臣、この一連の経過を見ると、やはりその二〇一四年の政府税調の提言というのは生かされなかった。やっぱり経団連の抵抗によって実現できなかったのではないか。経団連の主張が大きく影響したということは間違いないと思いますが、いかがですか。
○国務大臣(鈴木俊一君) 研究開発税制の平成二十九年度の改正につきましては、与党税制調査会において御議論をいただきました結果、企業の研究開発投資の一定割合を単純に減税する制度から試験研究費の増減割合に応じた税額控除率とする仕組みとすることで、研究開発投資を増加させるインセンティブの強化を図っているものでございます。
〔委員長退席、理事山田太郎君着席〕
この点、御指摘の政府税制調査会の提言の趣旨にも沿った改正であると考えておりまして、特定の団体の抵抗によって実現できなかったとは思っていないところであります。
○小池晃君 でも、その趣旨がやっぱりきちんと反映されたとは言えない結果だと私は思いますよ。結局、今もこの一般型は残されているわけです。
昨年の政府税調もこう言っています。企業の一つの目的が利益の最大化にあるとすれば、政策税制がなかったとしても利益をもたらす経済活動はおのずと行われるはずであり、そういったものを政策税制の対象とすることは、費用対効果からも正当化されません。まさにそのとおりだと思うんですね、これね。
特に、大手大企業は巨額の内部留保持っているわけです。財政基盤は盤石なんです。だから、政策減税なくなったら研究費を減らすとは到底思えない。やっぱり、企業の発展にとってやっぱり研究費必要ですから、当然研究費増やしていきますよ。
政府税調は、租特について廃止を含めたゼロベースの見直しを求めたわけですね。ならば、研究開発減税の一般型については、大企業、とりわけ資本金百億円以上とか十億円以上という巨大企業についてはせめてこれ廃止をするということをやるべきではないかと思いますが、大臣、いかがですか。
○国務大臣(鈴木俊一君) 研究開発税制でありますけれども、規模の大きい企業を含め幅広い企業において将来の経済成長の礎となる研究開発を推進することを目的としておりまして、一部の大企業のみを除外すること、これは適切ではないと考えます。
〔理事山田太郎君退席、委員長着席〕
その上で、本税制はこれまでの税制改正においても、その必要性や有効性を踏まえつつ必要な見直しを行ってまいりました。例えば、令和五年度税制改正では、研究開発費の増減に応じて税額控除率や税額控除上限などのめり張りを強化をし、さらに、今般の改正におきましては、研究開発費が減少した場合の税額控除率を段階的に引き下げること等によりまして、投資を増加させるインセンティブを一層強化することとしております。また、賃上げや投資に消極的な大企業につきましては研究開発税制を適用しないこととしており、今回の改正ではその期限を令和八年度末までに延長をしております。
今後とも、研究開発税制を含め租税特別措置につきましては、有効性、政策効果、これを適切に見極めまして、必要な見直しを行いたいと思っております。
○小池晃君 政府税調が言ったことに全く応えてないんじゃないかなというふうに思いますね。
やっぱり、そもそも企業というのは利益最大化する。そういったところにわざわざ減税までして、研究開発促進する必要ないじゃないかと言っているわけで、これ、根本的な問題提起だと思いますよ。何かちょっといじったらいいという世界の話ではないと私は思うんです。
研究開発減税の二〇二二年度分の実績が公表されましたが、減税額の多い上位十社、これ企業名を伏せられたまま公表されております。このトップの企業の減税額と減税全体に占める割合を述べていただきたいと思います。
○政府参考人(青木孝徳君) お答えします。
研究開発税制における二〇二二年度の減収額の最も大きい企業について、その減収額は八百二億円、この金額は研究開発税制全体の減収額の一〇・五%となっております。
○小池晃君 このトップ企業はトヨタ自動車だと思いますが、違いますか。
○政府参考人(青木孝徳君) 租特の適用実態調査の報告書におきましては、租特の利用状況を明らかにして政策の企画立案に役立てていくということを目的としていることから、個別企業まで公表する必要はないという整理が本報告書の根拠法である租税透明化法の立法当時からなされておるものでございます。
○小池晃君 一社で減税額の一割以上を占めるような企業は日本にトヨタ自動車以外にあり得ないですよ、どう考えたって。
トヨタ自動車ですね、これ十年間の、あっ、全体の十年間の研究開発減税額の累計六兆二千七百億円、この十年間、これトップ続けているのはトヨタです。トヨタ自動車だけで八千七百億円です、減税額、十年間で。
これ、二〇一九年三月の当委員会で我が党の大門実紀史議員が、トヨタ一社だけでそのとき一二%でした、この偏りを指摘したのに対して、当時の麻生財務大臣は、十何%はトヨタじゃないかという事実としてそれは挙がっていますと、認められたんですね。それをもう少しほかのところにもっと行くようなためにどうするかといった、トヨタだけ駄目というわけにいきませんから、やり方をちょっと考えないといけないと答弁されているんですよ。麻生大臣の答弁から四年たちます。大臣、大企業への集中は是正されていないんですね。
これ、トヨタかどうかはもうともかくおいておきますよ、おいておくけれども、一社だけで減税額の一〇%を占める、一〇%以上を占めるという現状をこのままでいいというふうにお考えでしょうか。
○国務大臣(鈴木俊一君) 一般論になりますけれども、研究開発税制につきまして一定の企業の適用額が大きいこと、これは事実であるわけでありますが、どうしてそうなっているかといえば、これは、これらの企業の所得が大きいために法人税も多く負担しており、適用要件を満たす研究開発投資を積極的に行っていることに由来するものと考えております。利用件数を見ますと、中小企業も含めて幅広く利用されているものと認識をいたします。
いずれにいたしまして、研究開発税制を含めた租税特別措置については、対象企業の分布の是非ではなく、経済社会全体として求められる政策効果を発揮しているか否かによってその必要性や仕組みの在り方を検討すべきものでありまして、この点をよく見極めて不断の見直しをしていく必要があると考えます。
○小池晃君 売上高が大きいから減税額大きいって、そんな減税しなきゃいいじゃないですか。それだけ売上げがあるんです、余裕あるんです。そういったところにわざわざ減税をするということ自体、やっぱりこのままにしておいていいのかと。
安倍政権以降十年間の自民党の政治資金団体である国民政治協会に企業献金、これ見ますと、トヨタ自動車は企業献金、常にトップです、個別企業としてはトップですね。二〇一三年から二〇二二年度までで六億一千五百二十万円献金しています。この十年間で八千七百億円研究開発減税されているんですよ。結局、研究開発減税はこれ企業献金のキックバックだと、そういうふうに言われても仕方がないんじゃないかというふうに思うんですよ。もっと出すべきだと、もっと減税しろということですか。そりゃないでしょ。これはやっぱり本当のキックバックですね、これね。大臣、こういうことでいいんだろうか。
河野洋平さん、元自民党総裁も務められましたが、こうおっしゃっています。政治改革の議論が起こったときは経団連も傘下の会員に企業献金は慎もうと言っていたのに、最近の経団連は自民党に献金してくださいと進んで言うようになっているから、この頃は企業献金が多いから、税制を始めとしていろいろな政策がゆがんでいる、庶民から企業の方へ政策のウエートが掛かって企業献金が政策のゆがみを引き起こしているから、それをやめろということだったと述べている。こういうふうにおっしゃっているんですね。私はそのとおりではないかなと思いますよ。
この二〇二二年の自民党への団体としての献金、トップはどこか。日本自動車工業会七千八百万円、二位が日本電機工業会七千七百万円、これも結局、研究開発減税の恩恵を最も受けている業種団体が並んでいるわけですね。まさに河野元議長のこの発言の正しさを、私、裏付けているというふうに思いますよ。
大臣ね、税制をゆがめるようなやっぱり仕組みは改めるべきではないですか。私は、企業・団体献金は禁止をするということが、この間のパーティー券の問題もありますけれども、最大の問題は、こうして政治をゆがめているんではないかということなんですよ。ここはやっぱり見直すべきではないか。いかがですか。
○国務大臣(鈴木俊一君) 先日、二月六日の予算委員会におきまして岸田総理が、献金と政策が直結しているようなことはないと、その旨を答弁をされましたけれども、租税特別措置についても、政治献金の有無ではなく、あくまで政策的な必要性等に基づき講じられているものでありまして、献金と租税特別措置は直結するものではないと考えております。
その上で、企業・団体献金の在り方につきましては、政治団体の政治活動の自由と密接に関連する問題であり、民主主義、これには一定のコストも掛かりますので、そのコストを社会全体でどのように負担していくべきかという観点も踏まえながら検討されるべきものと認識をいたしております。
○小池晃君 企業献金は税制をゆがめていないとおっしゃるけれども、例えば二〇一五年の税の専門誌に、経団連の当時税制担当の常務がインタビューでこう言っているんです、二〇一五年度の税制改正のプロセスについてですね。
昨年の夏頃から、税率引下げのために課税ベースの部分をどこまでできるか、主要企業データによるシミュレーションに掛けて、ここを直したら増税幾ら、減税幾らと、税率と課税ベースの範囲を見極め、税率は下がったけれども課税ベース拡大で結局増税だというところも出てきてしまう、できるだけそれは避け、減税までにはならなくても、少なくとも増税でないというふうにしたいと、こんなことを言っているんですね。
結局やっぱり経団連のところでこの税制の問題についてあれこれ計算してシミュレーションまでやって、それで要望を出してきていると、そして献金しているということが事実としてあるわけですよ。その結果どおりの形で、先ほど言ったように、やはり研究開発減税の見直しも政府税制が言ったことすら実現しなかったという、こういう経過があるわけですね。
また聞いても同じ答弁になると思うので、これ以上やりませんが、でも、私は、明らかにこの企業献金というのは日本の税制をゆがめている、これははっきりしていますから。企業・団体献金はきっぱり禁止をするということでこの政治と金の問題には決着を付けるということを強く求めて、質問を終わります。
(以下、3月28日参議院財政金融委員会での所得税法等改正法案への反対討論)
○小池晃君 日本共産党の小池晃です。
所得税法等改正案に反対の討論を行います。
反対理由の第一は、今回の税制改正が物価を上回る賃上げを最優先課題としながら、効果の乏しい賃上げ減税の小手先の見直しに終始し、賃上げのための直接支援に背を向けているからです。
今、中小・中堅企業が社会保険料を払い切れずに倒産する社保倒産が広がっています。コロナ禍で始まった実質無利子無担保のゼロゼロ融資が一昨年終了し、返済負担が重くのしかかる一方、借換え融資など政府の支援策はハードルが高いことも多くの中小企業を苦しめています。政策総動員どころか、国の政策が中小企業の賃上げの足を引っ張っています。
この状況を打開するには、社会保険料の事業主負担の減免など、中小企業の賃上げへの直接支援が不可欠です。大企業の内部留保への時限的課税で財源をつくり、最低賃金を時給千五百円へ引き上げ、非正規ワーカーの待遇改善と正社員化を図ることで大幅な賃上げを実現すべきです。
反対理由の第二は、政府と与党の税調が累次の法人税減税が失敗だったと認めているにもかかわらず、新たな法人税の大減税に踏み出しているからです。
昨年、政府税調は、法人税の租税特別措置について、租税の公平原則や中立原則の大きな例外だとし、特に研究開発税制については、廃止を含めてゼロベースで見直す必要があるとしました。
ところが、今回新設される戦略分野国内生産促進税制は減税額の全て、イノベーションボックス税制は九五%が大企業向けで、大企業への集中が一層強まります。最大の政策減税である研究開発税制も、税額控除率を見直すだけの小手先の改正にとどまりました。大企業優遇という税制のゆがみをもたらす背景にある企業・団体献金は全面禁止すべきです。
なお、今回盛り込まれている所得税、住民税の定額減税も、一回のみのばらまきで、毎年上がり続ける現在の物価高騰対策としては極めて不十分なものです。
今必要なのは、消費税の減税とインボイス制度の廃止です。そして、行き過ぎた大企業や富裕層への減税を見直し、応分の負担を求めることです。これこそが最も求められる税制改正であることを申し述べ、反対討論を終わります。
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