○小池晃君 日本共産党の小池晃です。
会派を代表して、岸田文雄総理に質問します。
総理は所信表明で、カイサン、いや、経済、経済、経済と連呼し、コストカット型経済の三十年ぶりの変革を果たすと大見えを切りました。しかし、コストカットのために非正規ワーカーを増やし、先進国で唯一、賃金が上がらない国にしたのは誰か。大企業減税を繰り返し、その穴埋めに消費税を立て続けに増税したのは誰か。どれもこれも自民党が財界言いなりにやってきたことです。必要なのは、反省、反省、そして転換ではありませんか。
経済対策の第一のポイントは供給力の強化ですが、具体策は専ら大企業向け減税です。しかし、これでは大企業の内部留保が五百兆円を超えて積み上がる一方、三十年にわたり働く人の賃金が上がらないというゆがみをますますひどくするだけです。内部留保を賃上げや設備投資に還流させる、具体的で実効性ある施策こそ必要ではありませんか。
我が党は、経済再生プランで、大企業の内部留保に時限的に課税し、五年間で十兆円程度の税収を中小企業支援に回し、最低賃金を、総理が言うような二〇三〇年代半ばではなく、速やかに時給千五百円に引き上げることを提案しています。
総理は二重課税に当たるから慎重にと言いますが、法律上、二重課税の定義はありません。禁止されてもいません。財界が二重課税だと反対するから手を出せないのですか。お答えください。
男女賃金格差の是正も急務です。
今年から始まった男女別の賃金公表制度の結果、日本経団連役員企業の女性の賃金は男性の四から八割と軒並み低く、企業規模が大きくなるほど男女格差が大きいことも判明しています。大企業は、コース別採用や全国転勤等を要件とした雇用管理、派遣、非正規化など様々な形で安上がりの労働力として女性差別を続け、女性の低賃金構造を温存してきました。
男女賃金格差の公表は一歩前進ですが、同一価値労働同一賃金の原則を徹底し、女性の低賃金をなくし、男女賃金格差を是正すべきではありませんか。答弁を求めます。
自公政権は女性活躍を掲げてきました。しかし、その結果は非正規雇用の増大でした。なぜ女性が非正規雇用の七割を占めているのか、なぜ男性より賃金が低いのか、総理にはその原因が男性には長時間労働、女性には家事、育児、介護という性別役割分業を前提とした雇用慣行にあるという認識はありますか。
日本共産党は、非正規ワーカーの待遇改善と賃上げのために非正規ワーカー待遇改善法を提案しています。フリーランスやギグワーカーを含め、非正規ワーカーに焦点を当てた待遇改善に踏み出すことは、ジェンダー平等を推し進め、男性も含む全ての人に人間らしい働き方、生き方を広げることにつながります。
総理、この課題に政府を挙げて取り組むべきではありませんか。
総理は、経済対策の第二のポイントとして、国民への還元を挙げています。しかし、期限付の所得税減税は場当たり的な対応にすぎません。しかも、減税の後には大軍拡のための増税が狙われています。一年限りの減税の直後に恒久的な増税などというのは、国民を愚弄するものではありませんか。
国民に還元するなら、何といっても消費税の減税です。消費税減税は確実に消費に結び付きます。家計支援になるのはもちろん、景気対策、とりわけ中小企業支援になります。
政府は、消費税は社会保障の財源だと言いながら、導入以来三十四年間の消費税収五百九兆円に対して、法人三税の税収は三百十七兆円減り、所得税と住民税は二百八十九兆円減りました。結局、大企業や富裕層減税の穴埋めになっただけではありませんか。
十月から始まったインボイス制度で、課税業者になった小規模事業者やフリーランスには年間十五万円もの負担が加わり、一か月分の収入が消えると悲鳴が上がっています。これは税率引上げを伴わない大増税です。政府が激変緩和措置などを打ち出してからも反対の声は広がり、ストップインボイスのネット署名は五十六万を超えました。総理はどう受け止めていらっしゃいますか。地域を支える業者の仕事や、文化芸術に取り組む人たちの夢が税制によって潰されることなど、あってはならないのではありませんか。
総理は、複数税率の下で適正な課税を行うためとインボイス実施を正当化しますが、複数税率になってから四年間、インボイスなしで対応できています。重大な支障があったというなら具体的にお示しいただきたい。政府が反対の声に耳を貸さずインボイス制度に固執するのは、今後更なる消費税増税を行うための地ならしだからではありませんか。
消費税は廃止を目指し、五%に緊急減税し、複数税率をやめてインボイス制度は廃止すべきです。お答えください。
マイナンバーカードと一体化したマイナ保険証は、利便性の向上どころか手間が増大し、トラブル続出です。マイナ保険証の登録件数は増えていますが、利用率は低下する一方で、八月は僅か四・七%でした。利用率が減り続けている原因は一体どこにあるのですか。国民がマイナ保険証を信頼していないことの表れではありませんか。
全国保険医団体連合会の調査では、回答があった七千七十の医療機関のうち、八七・八%が来年秋以降も健康保険証の存続を求めています。総理に聞く力が残されているのであれば、現場の声に応えるべきではありませんか。答弁を求めます。
政府は、来年度の介護保険改定に向け、現行では一割負担となっている人の利用料を二倍にすることなどを検討しています。物価高騰と年金の目減りにあえぐ高齢者に、医療費に続く負担増の追い打ちを掛けようというのですか。
政府は、これらを現役世代の負担軽減のためと説明していますが、介護を必要とする高齢者が負担増によってサービスの利用を減らしたり断念したりすれば、そのしわ寄せは介護離職などで現役世代にのしかかります。総理にはそうした認識がありますか。
厚生労働大臣が、来年度の報酬改定による介護職の賃上げについて、月六千円程度が妥当と発言したことが介護関係者の驚きと失望を呼んでいます。厚労省の統計でも、介護職の平均給与は全産業平均より月七万円も低くなっており、月六千円では一桁足りないという声が上がるのは当然ではありませんか。介護人材の確保と定着のためには、抜本的な処遇改善策が必要ではありませんか。お答えください。
持続可能な経済社会にする上で、食料の自給は最重要課題です。しかし、日本の農業は深刻な危機に直面をしています。低い米価に苦しむ米農家、搾れば搾るほど赤字になる酪農家。豪雨災害、豪雨被害、夏の猛暑、干ばつ、高温障害が追い打ちを掛け、生産者は悲鳴を上げています。
今、政府に求められているのは、懸命に頑張っている生産者を離農に追い込まないような緊急支援ではないか。答弁を求めます。
コロナ危機に加えて、ロシアによるウクライナ侵略で、世界の農産物需給は不安定化し、食料危機が現実的になっています。ところが、我が国の食料自給率はカロリーベースで三八%、六割もの食料を外国に依存しています。しかも、この十年間で農業者は三割減少し、東京都に匹敵する面積の農地が失われました。危機的な状況ではありませんか。
食料・農業・農村基本法は、食料自給率の向上、国内生産の増大を掲げていますが、今まで食料自給率目標を一度も達成したことがなく、その検証も分析もされていません。自給率の目標達成を政府の責務にすべきではありませんか。答弁を求めます。
大阪・関西万博は、工事が遅れ、建設費用も膨れ上がっていますが、総理はオールジャパンで進めると述べています。しかし、日本国際博覧会協会は、遅れ解消に向けて、来年四月からの建設労働者の時間外労働の上限規制を万博工事だけ適用除外するよう政府に要請したといいます。法律を守れば建設ができない、労働者の命を犠牲にしなければならない、こんな事業は既に破綻しているのではありませんか。
会場建設費用は二千三百五十億円と当初見積りの二倍近くに膨らみ、これで収まるかどうかも分かりません。国民の身を切るような事業に理解が得られると思いますか。お答えください。
そもそも、建設工事の遅れと費用の上振れの原因は、軟弱地盤と土壌汚染の夢洲での開催に固執したことにあります。その狙いは、夢洲カジノ計画の推進です。莫大な費用が掛かり、カジノ業者だけでは到底不可能なインフラ整備を、国策である万博を口実に公費で進めるためにほかなりません。
命と安全が守られず、多大な負担を国民に押し付ける大阪・関西万博は中止し、カジノ計画はきっぱり断念すべきです。答弁を求めます。
政府が統一協会への解散命令を裁判所に請求したのは、被害者の声が動かした結果です。二つのことを求めます。
一つは、財産保全のための特別な法律制定に向けた与野党協議です。被害者を泣き寝入りさせてはなりません。統一協会の持つ財産を海外に流出させず、急いで保全しなければなりません。総理は各党の動きを注視すると言いますが、それでいいのか。党派を超えて実現する先頭に立つべきではありませんか。
いま一つは、統一協会と自民党との癒着の全体像を解明することです。文部科学大臣は遅くとも昭和五十五年頃から被害があったと述べています。ならば、癒着の実態も過去に遡って徹底調査するべきではありませんか。お答えください。
来年度概算要求における軍事費は、米軍再編経費を加えると八兆円です。三十年近く五兆円前後で推移してきたものが、岸田政権発足後、僅か二年で二・五兆円もの増加です。二・五兆円あれば一体何ができるか。義務教育の給食費を無償化し、高校授業料の完全無償化をし、大学入学金を廃止し、大学学費を半分にすることができます。税金の使い方が完全に間違っているんじゃないでしょうか。
イージスシステム搭載艦は、昨年、安保三文書を決定したときには、今後五年間で四千億円と説明していたのに、今年度二千二百億円、来年度三千八百億円、合計六千億円を既に盛り込んでいます。一年もたたないうちになぜ二千億円も上回ることになったのか。GDP二%という総額ありきの大軍拡で、完全にたがが外れているのではありませんか。暮らしも平和も財政も危機にさらす大軍拡は中止すべきです。答弁を求めます。
今、沖縄では、敵基地攻撃可能な長射程ミサイルの配備によって、再び戦場にされることへの不安と怒りが広がっています。
今月十四日から行われている日米共同訓練では、沖縄県の二度にわたる自粛要請を無視して、陸上自衛隊のオスプレイが初めて新石垣空港に降り立ち、負傷兵を後方に輸送する訓練が行われました。まさに沖縄が戦場になることを想定した訓練ではありませんか。
玉城デニー知事は、六月、敵基地攻撃を可能とする装備の県内配備を行わないよう政府に要請をいたしました。沖縄への配備はもちろん、敵基地攻撃能力の保有そのものをやめるべきではありませんか。
政府は、辺野古新基地建設のための設計変更を知事に代わって政府自ら承認するための代執行訴訟を提起しました。強権的なやり方を絶対に認めるわけにはまいりません。
沖縄の米軍基地は、米軍占領下、国際法にも違反して、住民の土地を一方的に奪って造られたものであります。その下で、沖縄県民は、米軍機の墜落や昼夜を分かたぬ爆音、環境汚染、米軍関係者が引き起こす事件、事故に苦しめられてきました。沖縄県民が辺野古新基地建設に一貫して反対の意思を示してきたのは、それはこうした歴史を無視し、新たな基地を押し付け、将来にわたって固定化するものだと言わなければなりません。
政府の計画自体に根本的な問題があるにもかかわらず、それを受け入れないからといって、国が強権を発動し、知事の権限を取り上げて基地建設を強行することなど、決してやってはならないことではありませんか。
県民は、三度の県知事選挙や県民投票などで新基地建設反対の意思を明確に示してまいりました。県民の民意を正面から受け止め、普天間基地の即時運用停止、閉鎖、撤去、辺野古新基地建設の断念を決断すべきであります。総理の答弁を求めます。
イスラエル・ガザ紛争による人道危機が深刻です。
日本政府は、無差別攻撃を行ったハマスを非難する、もちろんです。しかし、それだけではなく、イスラエルが今ガザ地区を封鎖し、水も食料も断ち切り、住民を、子供たちを大量に殺りくしていることをなぜ厳しく批判しないのですか。最悪の人道危機をもたらす大規模侵攻を中止させるべきではありませんか。
政府は、イスラエル、パレスチナ双方に外交関係を持ってきました。こういう優位性を生かして停戦に向けた交渉を促すべきであります。答弁を求めます。
日本国憲法の前文は、「全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。」と平和的生存権を定めています。そして、憲法九条は、一切の戦争と武力の行使、武力による威嚇を放棄し、他国に先駆けて戦力の不保持、交戦権の否認を規定し、国際社会での積極的な軍縮推進を憲法上の責務として我が国に課しております。今こそ、この憲法の理念に基づく平和外交の出番ではありませんか。お答えいただきたいと思います。
日本共産党は、憲法を変えるのではなく、実現することこそ、今の日本政治の最優先課題であると考えております。そのことを強く訴えて、私の質問を終わります。
御清聴ありがとうございました。(拍手)
〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇、拍手〕
○内閣総理大臣(岸田文雄君) 小池晃議員の御質問にお答えいたします。
これまでの経済の振り返りや反省の必要性についてお尋ねがありました。
我が国経済は、一九九〇年代のバブル崩壊以降、長引くデフレ等を背景にコスト型経済が続いてきました。この間、アジア通貨危機、不良債権問題、ITバブルの崩壊、リーマン・ショックなど様々な外生的危機や困難に見舞われ、消費と投資の停滞を招きました。
こうした中、アベノミクスの成果の上に立ちながら新しい資本主義の取組を進めることで、三十年ぶりの三・五八%の賃上げ、過去最大規模の名目百兆円の設備投資、五十兆円ものGDPギャップの解消など、明るい兆しが現れ始めていると認識をしています。
三十年ぶりに巡ってきた新たな経済ステージに移行できる大きなチャンスをつかみ取り、低物価、低賃金、低成長のコストカット型経済から持続的な賃上げや活発な投資が牽引する成長型経済への変革を実現してまいります。
内部留保の還流についてお尋ねがありました。
コストカット経済の下で投資や賃金までが抑制されてきた中で、結果として、大企業を中心とした高水準の企業収益を背景に内部留保が増加しています。
新しい資本主義実現のためには、企業がこうした収益を現預金として保有するのではなく、成長のために賃上げ、人への投資、設備投資などの形で未来に向けてしっかり活用していくようになることが重要であると考えています。そして、そのための兆しが見えてきていると感じています。
賃上げ税制の強化、三位一体の労働市場改革など、生産性を引き上げる構造的な改革を加え、改革に加え、戦略物資について投資全体の予見可能性を向上させる過去の、過去に例のない投資減税、また特許などの所得に関する新たな減税制度、また人手不足に苦しむ中堅・中小企業の省力化投資に対する補助制度などにより、抜本的な供給力強化を実現し、持続的で構造的な賃上げにつなげてまいります。
そして、内部留保への課税についてお尋ねがありました。
企業の内部留保への課税については、二重課税に当たるとの指摘があることから慎重な検討が必要であると考えています。そして、他方で、企業の抱える現預金を人への投資や設備投資などに活用いただくこと、これは重要であり、政府としては、これまで賃上げ促進税制や研究開発税制等を通じて、賃上げや投資に向けた企業の積極的な取組を後押ししてまいりました。
引き続き、あらゆる政策により、こうした未来への投資、促してまいります。
男女間の賃金格差についてお尋ねがありました。
男女、失礼、女性活躍は我が国の経済社会の持続的発展に不可欠であり、新しい資本主義の中核にも、女性活躍と所得向上、これを位置付けています。このため、男女間賃金格差の情報公開や同一労働同一賃金の遵守徹底等に取り組み、女性の所得の向上や男女間賃金格差の是正を図ってまいります。
また、性別役割分担意識は男女間賃金格差が解消されない要因の一つであり、長時間労働の是正や男女共に仕事と育児、介護を両立しやすい職場環境の整備を進めてまいります。
そして、非正規雇用労働者の処遇改善についてお尋ねがありました。
非正規雇用労働者の処遇改善や賃上げを図っていくことは重要な課題であると考えます。このため、最低賃金の引上げや賃上げしやすい環境整備に取り組むとともに、同一労働同一賃金の遵守徹底を図ってまいります。
また、希望する方が正社員として働くことができるよう、正社員化に取り組む事業主への支援を講ずるとともに、フリーランスの方が安心して働ける環境整備に取り組んでいきます。
こうした取組を通じて、男女問わず全ての方が多様な働き方を選択でき、生きがいを持って働くことができる社会づくりに取り組んでまいります。
そして、防衛力強化の財源と消費税についてお尋ねがありました。
防衛力強化に係る財源確保のための税制措置のうち、所得税については現下の家計の負担増にならないような仕組みとしているほか、全法人の九四%を対象外とするなど手厚い配慮をした上で法人税への付加税や、特殊な嗜好品であり一定の税収が確保できる物資としての性格に着目したたばこ税の引上げ、これらが予定されています。その実施時期については、昨年末に閣議決定した令和九年度に向けて複数年掛けて段階的に実施するとの枠組みの下、行財政改革を含めた財源調達の見通しに加え、景気や賃上げの動向及びこれらに対する政府の対応を踏まえて判断していくこととしております。
いずれにしても、我が国経済は、三十年来続いてきたデフレを脱却できる千載一遇のチャンスを迎えているとはいえ、現時点では賃金上昇が物価高に追い付いておらず、放置すれば再びデフレに戻りかねません。デフレ脱却を確実なものにする一時的な措置として国民の可処分所得を直接に下支えし、物価高による国民の負担を緩和していく必要があると考えています。
なお、各税目の税収については、それぞれ制度の改正や経済情勢の要因などにより変動しており、また消費税は社会保障の財源となっていることから、消費税が大企業や富裕層減税の穴埋めになったという御指摘は当たらないと考えています。
インボイス制度と消費税減税についてお尋ねがありました。
インボイス制度の延期、中止を求める署名については、中小・小規模事業者の方が抱かれている不安や御懸念の表れであると受け止めており、引き続き事業者の立場に立って柔軟かつ丁寧に対応してまいります。
インボイス制度導入前の四年間では、例えば、八%対象の食料品と一〇%対象の酒を仕入れた事業者が全て一〇%対象として税額控除をしたことによって納税額が低くなっていたという事例が複数例把握されていると承知をしています。インボイス制度は、将来の更なる消費税率引上げを見据えて導入するものではなく、こうした事例を防止するために必要な制度として導入したものであり、これを廃止することは考えておりません。
また、消費税については、急速な高齢化等に伴い社会保障給付費が大きく増加する中で、全ての世代が広く公平に分かち合う観点から、社会保障の財源として位置付けられており、その税率を引き下げることは考えておりません。
マイナ保険証等についてお尋ねがありました。
マイナ保険証利用率の減少の原因については、ひも付け誤り等により国民の皆様が不安を感じられたことや、マイナ保険証のメリットが国民の皆様に十分浸透していないことなどがあると考えています。
このため、国民の皆様の不安払拭のための措置を着実に進めるとともに、マイナ保険証のメリットを実感いただけるよう、利用促進に向けた取組を積極的に行ってまいります。
その上で、現行の健康保険証の廃止は国民の不安払拭のための措置が完了することを大前提との方針にのっとって、ひも付けの総点検とその後の修正作業の状況も見定めた上で、更なる期間が必要と判断された場合には必要な対応を行ってまいります。
そして、介護保険についてお尋ねがありました。
高齢化と人口減少という大きな社会の変化を迎えている中、介護保険制度が全ての世代にとって安心なものとなるよう、サービスの質を確保しつつ制度の持続可能性を維持すること、これは重要な課題です。
介護保険における利用者負担の在り方等については、骨太の方針二〇二三において年末までに結論を得ることとしており、利用者が必要なサービスを受けられるよう丁寧に議論、進めてまいります。
また、介護職員の賃上げについては、岸田政権は特定価格の見直しを掲げ、これまで累次の処遇改善を講じてきております。引き続き、ICT機器の活用による生産性向上の取組、経営の協働化等を通じた職場環境の改善、これらに加えて、次期改定に向けても、必要な処遇改善の水準の検討と併せて、高齢化等による事業者の収益の増加等が処遇改善に構造的につながる仕組み、これを構築してまいります。
離農を防ぐ支援と食料自給率についてお尋ねがありました。
近年、我が国の農業経営については、肥料、飼料等の価格高騰や度重なる自然災害の発生など、厳しい環境に直面してきたものと認識をしています。
このため、収入保険等の経営安定対策に加えて、肥料、飼料等の価格高騰対策を機動的に実施するほか、迅速な災害復旧に努めるなど、営農環境の改善、安定に取り組んできたところです。
さらに、先日策定した食料安定供給・農林水産業基盤強化に向けた緊急対応パッケージにおいて、水田における麦、大豆等の畑作物等への転換支援や飼料の供給強化に向けた耕畜連携への支援など、早急に取り組むべき施策を取りまとめたところであり、これらを今般の経済対策に盛り込んで速やかに実行に移してまいります。
また、食料自給率については、需要に応じた農業生産の実現など、農業生産と食料消費に関する様々な課題に関し、政府だけではなく、生産者や食品事業者など関係者が一体となって取り組むことによって解決していくことを目指し、これが実現した場合に達成可能な水準を目標として示しているものであります。
食料安全保障上のリスクが高まる中、担い手の育成、確保や、農地の確保と有効利用、海外依存度の高い小麦、大豆、飼料等の国内生産の拡大などによって、官民連携して自給率目標の達成に向けて取り組んでまいります。
そして、大阪・関西万博の工事の遅れについてお尋ねがありました。
万博の工事の遅れについては、ドバイ万博の一年延期に伴う参加国側の設計等の遅れや、日本国内の施工事業者の需給逼迫といった事情で生じたものであり、参加国への個別伴走支援や施工環境の改善といった対策により対応する予定と承知をしております。建設工事を時間外労働の上限規制の適用対象外にするといった要請を受けて政府として検討しているという事実はありません。
また、会場費、建設費の増額については、西村経産大臣と自見万博担当大臣が大阪府知事、大阪市長、経済界代表とともに博覧会協会から必要額について説明を聴取したところと承知をしています。現在、両大臣を中心に、その内容について適切なものとなっているか必要な精査を行っているところであり、しっかり確認した上で大阪府、大阪市、経済界とも対応を協議いたします。
いずれにせよ、国民の理解が得られるよう、政府を挙げて取り組んでまいります。
なお、IR整備は万博とは別のプロジェクトであり、これ引き続きIR整備法等に基づき適正に対応してまいります。
そして、旧統一教会による被害の救済のための財産保全や過去の統一教会との関係の調査についてお尋ねがありました。
政府としては、旧統一教会の資産状況を注視しつつ、速やかに被害者の救済が図られるよう、現行法上のあらゆる制度を活用し、被害者救済のために最大限取り組んでまいります。
その上で、議員立法の法案や被害者救済の実効性確保について与野党各党において様々な動きがあると承知をしており、こうした動きに注視してまいります。
また、自民党においては、既に各議員それぞれが旧統一教会との過去の関係を八項目に分けて詳細に点検、報告するとともに、新たな接点が判明した場合にはその都度追加的に報告、説明を行い、今後は関係を持たないということを徹底する、このことを方針としているところであります。大切なことは、未来に向かって関係を絶つということであり、引き続きこの方針を徹底してまいります。
イージスシステム搭載艦の経費及び防衛体制の強化に係る経費についてお尋ねがありました。
イージスシステム搭載艦は、我が国を弾道ミサイルの脅威から防護するために必要であり、その二隻の取得経費については、昨年末時点での積算に対し、その後の設計の進捗、為替レートの変動、物価上昇などにより経費の上昇につながったと承知をしています。
引き続き、装備品全般の取得経費の低減に向けた努力を継続してまいります。
また、我が国の防衛体制の強化に係る経費については、戦後最も複雑な安全保障環境に対峙していく中で、国民の命を守るため必要となる防衛費の規模を積み上げ、そして導き出したものであります。このような経費を基に防衛力の抜本的強化を速やかに実現し、国民の命と平和な暮らし、そして我が国を断固として守り抜いてまいります。
沖縄における日米共同訓練、反撃能力の保有、普天間飛行場の辺野古移設及び代執行訴訟についてお尋ねがありました。
今月、新石垣空港において日米共同訓練を実施し、事態対処や国民保護、災害対処における衛生機能や輸送能力の向上を図りました。本訓練は、特定の地域における事態の発生を念頭に置いたものではありません。反撃能力については、相手からの武力攻撃そのものを抑止するものであり、万一相手からミサイルが発射される際にも、反撃能力により相手からの更なる武力攻撃を防ぎ、国民の命と平和な暮らしを守り抜く、こうしたものです。
その上で、反撃能力としても活用し得るスタンドオフミサイルの配備先については、現時点では決まっておりません。
普天間飛行場の辺野古移設については、世界で最も危険と言われる普天間飛行場が固定化され、危険なまま置き去りにされることは絶対に避けなければなりません。これは地元の皆様との共通認識であると思っています。辺野古移設が唯一の解決策であるという方針に基づき、着実に工事を進めていくことが、普天間飛行場の一日も早い全面返還を実現し、その危険性を除去することにつながると考えています。
その上で、御指摘の代執行訴訟については、既に最高裁判所において変更承認申請に関する司法の最終判断が示されており、直ちに承認処分が行われるべきであるため、国土交通大臣において必要な対応をしたものであると認識をしております。
いずれにせよ、今後とも、様々な機会を通じて地元の皆様への丁寧な説明を行いながら、普天間飛行場の一日も早い全面返還を実現し、そして基地負担の軽減を図るため、全力で取り組んでいきます。
現下のイスラエル・パレスチナ情勢における我が国の対応についてお尋ねがありました。
我が国は、ハマス等のテロ攻撃を断固として非難した上で、人質の即時解放、一般市民の安全確保、全ての当事者が国際法を踏まえて行動すること、事態の早期鎮静化、これを一貫して求めてきています。
イスラエルに対しても、上川外務大臣からコーヘン・イスラエル外相に対し事態の早期鎮静化を働きかけたほか、十月十六日には辻外務副大臣が、二十五日には堀井外務副大臣が、それぞれ駐日イスラエル大使に対し、一般市民の保護の重要性、国際人道法に則した対応、人道支援活動を可能とする環境の確保等の協力を要請いたしました。
また、パレスチナとの間でも、上川外務大臣がマーリキー外務・移民庁長官との電話会談やカイロにおけるアッバース大統領との意見交換において引き続き事態の早期鎮静化に向けて取り組んでいくことを確認するなど、これまで様々なやり取りを行ってまいりました。
日本としては、こうした関係を生かして、引き続き、刻々と動く現地情勢に応じつつ、イスラエル及びパレスチナを含む関係国や関係者等との間で意思疎通を行い、在留邦人の安全確保に万全を期しながら、事態の早期鎮静化や人道状況の改善に向けた外交努力を積極的に続けてまいります。
そして、平和外交についてお尋ねがありました。
我が国は、憲法九条及び前文に示されている平和主義の理念の下、平和国家として、戦後八十年近くにわたって国際社会の平和や繁栄に貢献してきました。この取組は高く評価されています。
今なお続くロシアのウクライナ侵略などにより、国際秩序の根幹が揺るぎ、世界が歴史の転換点にある中で、今後ともこうした平和国家としての取組を続けていきたいと考えております。(拍手)
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