「赤旗」3月6日付け
日本共産党の小池晃副委員長が4日の参院予算委員会で行った基本的質疑(大要)は次の通りです。
小池 集団的自衛権の行使は日本が攻撃されなくても武力行使を可能にする
首相 そういう定義だ
(写真)質問する小池晃議員 =4日、参院予算委 |
小池 集団的自衛権について質問します。
まず、集団的自衛権とは何か。そして日本国憲法に照らして集団的自衛権が行使できないとしている理由を説明してください。
小松一郎内閣法制局長官 集団的自衛権とは、自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を自国が直接攻撃されていないにもかかわらず、武力を行使して阻止することが正当化される地位、国連憲章第2条第4項の定める武力行使の一般的禁止に対する違法性阻却事由であると一般に理解されております。
次に、集団的自衛権の行使と憲法との関係に関する従来からの政府の見解をご説明申し上げれば、次の通りです。
憲法第9条の文言は、わが国として国際関係において、実力の行使を行うことを一切禁じているように見えるが、政府としては、憲法前文で確認している日本国民の平和的生存権や、憲法第13条が生命、自由、および幸福追求に対する国民の権利を国政上尊重すべきこととしている趣旨を踏まえて考えると、憲法第9条は、外部からの武力攻撃によって国民の生命や身体が危険にさらされるような場合に、これを排除するために必要最小限度の範囲で実力を行使することまでは禁じていないと解していると。これに対して、集団的自衛権を行使するということは、わが国にではなく、他国に加えられた武力攻撃を、武力を行使して阻止することを内容とするものでございますので、憲法上許容されない、以上が従来の政府見解でございます。
小池 集団的自衛権の行使を可能にするということは、わが国に対する武力攻撃が行われていないにもかかわらず、武力行使に参加をする。これを憲法9条が禁止しているのは自明のことです。
そこで、こうした憲法解釈にもとづく、これまでの日本の自衛隊の活動について聞きます。
2001年のアフガン戦争、そして2003年のイラク戦争のさいにも、自衛隊派遣するために特措法を制定しました。いずれの場合も、武力行使をしない、戦闘地域に行かないと第2条の2項、3項に書き込みました。条文を読み上げてください。
法制局長官 (テロ対策特別措置法、イラク特別措置法の第2条第2項、3項=別表=を読み上げる)
小池 このイラク特措法、あるいは旧テロ特措法第2条第2項、3項は、米軍などに協力支援活動を実施するけれども、その場合も外国の領域で憲法が禁じている武力行使はしない、武力行使と一体化する活動は行わないという意味ですね。確認です。
法制局長官 憲法9条の解釈として、従来政府が申し上げておりますことは、それ自体が武力行使に当たらない活動であっても、外国が行う武力行使と一体化する行動を行うことは、わが国があたかも武力行使を行ったと同じように評価される恐れがある。そういう武力行使の一体化という法理を従来、政府はとってきておりまして、そのこととの関係で、いま申し上げたような規定になっているわけでございます。
小池 総理に聞きますが、いままでのことも踏まえて、これまで政府は、憲法に照らしてわが国に対する武力攻撃が発生しないときには、海外での武力行使も、他国の武力行使と一体とみなされるものもできないっていうふうにしてきたんですね。これは間違いない。いまも確認されました。集団的自衛権を行使できるようにするということは、日本が武力攻撃を受けていないときにも武力行使を可能にすると。これはあくまで基本的な定義についておうかがいします。そうですね。
安倍晋三首相 集団的自衛権の行使についての一般的な定義については法制局長官から答弁したとおりでございまして、集団的自衛権の行使についても同じ認識でございます。
それをわが国ができるかということですか。それも従来の答弁については法制局長官から答弁したところであります。
小池 私が聞いたのは、集団的自衛権を行使できるようにするということは、武力攻撃を受けていなくても武力行使が可能になるということですねと聞いているんです。
首相 いま安保法制懇において議論を重ねているわけです。わが国を取り巻く安全保障環境がいっそう厳しさを増しており、大量破壊兵器や弾道ミサイルの脅威は深刻度を増している。またサイバー攻撃のような国境を越える新しい脅威も増大をしているなかにおいて、脅威は容易に国境を越えてくるわけであります。集団的自衛権につきましても、個別的な事例に即して分類をしながら議論を重ねているところでございます。
小池 やるのかどうかと聞いているんじゃないですよ。日本が集団的自衛権を行使できるようになるということは、日本に武力攻撃が加わっていなくても、武力行使が可能になるということですね、という言葉の意味を私は確認している。お答えください。
首相 言葉の定義ということについては、そういう定義であります。
小池 アフガン戦のNATOのように武力行使の可能性あるな
首相 可能かどうか議論
小池 結局、否定できない
小池 テロ特措法の国会審議の際に、当時の小泉(純一郎)首相はこう述べています。
「NATO(北大西洋条約機構)は集団的自衛権の行使として対米支援活動をするといっている」「NATO諸国は日本と違って、彼らはアメリカと一緒に武力行使することを辞さないと言っている。明らかに日本とは違うんです。日本は武力行使もしないし、戦闘行為にも参加しないんです。戦場にも出ていかないんです」「日本としても苦労しているんです。国際社会の一員としての責任をどうはたそうか」という答弁(2001年10月10日、参議院予算委員会)をしています。
そもそもアフガン戦争は、われわれは断じて認めません。テロを戦争でなくすことはできないことはいまの事態を見ても明らかです。
しかし、当時の日本政府は、集団的自衛権が行使できなかったから、自衛隊の派遣はしたけれども武力行使はしません、戦闘行為に参加しません、戦場には出ませんという立場をとったわけですね。もしも、日本が集団的自衛権を行使できるようになれば、アフガニスタンのような戦闘地域で、NATO諸国と同じように武力行使も可能になるということじゃないですか。実際にそうするかどうかを聞いているんじゃないんですよ。可能になるということは間違いないんじゃないですか。
自民党の石破茂幹事長は(近著の)「日本人のための『集団的自衛権』入門」のなかで、アフガン戦争についてこう書いています。「論理上は、日本の集団的自衛権の行使が可能になっていたならば、あの戦いに自衛隊が参加した可能性はゼロではない」。そういうことですね。
首相 いま安保法制懇でどういう議論がなされているかといえば、アフガンの例をだされましたが、実際に戦闘に参加する議論ではなく、たとえば医薬品、弾丸等を運ぶことができるかどうかの議論はなされているわけです。
小池 ごまかさないでくださいよ。はっきり言っているじゃないですか、石破さんだって。
議論をすり変えている。たとえば昨年末に閣議決定をされた「国家安全保障戦略」では、「ペルシャ湾及びホルムズ海峡、紅海及びアデン湾からインド洋、マラッカ海峡、南シナ海を経てわが国にいたるシーレーン」について「わが国と戦略的利害を共有するパートナーとの協力関係を強化する」というふうに言っているわけです。このもとで集団的自衛権を行使すれば、これは当然、地球規模での戦闘協力になっていく可能性はある。可能性ですよ、私が聞いているのは。
要するに集団的自衛権を行使できるようにするということは、さきほどお認めになった、わが国に対する直接の武力攻撃がなくても、わが国が武力行使できるようになると。そうすると、結局、アフガニスタンのような戦闘地域には絶対行かないといえるんですか。NATO諸国と同じように、集団的自衛権が行使できるようになる可能性があるじゃないですか。国民とちゃんと議論するというのなら、そういうことをはっきり言わないと。これは可能性はあるでしょう。どうですか。
首相 そもそも、わが国の自衛権につきましても必要最小限という制約がかかっているわけであります。いままで集団的自衛権については行使できないということになっていたわけですが、その制約のなかに入るものはあるかどうかということも含めて議論がなされているわけです。ほかの国と同じように集団的自衛権が行使できるということとは違うわけで、明確に違うといってもいいんだろうと思うわけです。
小池 いや、だから最初に認めたじゃないですか。集団的自衛権の行使というのは、わが国に対する実際の武力攻撃がなくても武力行使できるようになるという定義はお認めになったわけですから。実際に、わが国に武力攻撃が加わっていなくても武力行使をする可能性があるということですよね、と聞いているんですよ。これはどうですか。
首相 最初に問われたのは一般的な定義としてお答えをさせていただいたわけです。日本がすべてそれができるというふうには、安保法制懇で議論がされていないわけでありまして、その特定の制約のなかにおいても、何ができるかということについて議論が出されていて、「たとえば」ということで、先ほど申し上げたわけです。
小池 何でもできると私は一言も言っていないですよ。制約があると、総理はおっしゃった。その制約が、これは集団的自衛権の行使ができるとできないとでは違ってくるわけでしょ。最大の問題は、わが国に対する武力の攻撃、武力攻撃がなくても武力行使ができるようになると。それが可能になるということではありませんかと聞いているんですよ。間違いないじゃないですか、これは。総理、可能性はあるっていうことはきちんと認めて、国民と議論すべきだと私は思います。
首相 ともあれ、いま安保法制懇で議論をしているわけでありますから、私が予断をもって、申し上げることは今の段階では控えさせていただきたいと思います。
小池 総理は、さっきから同じことしか繰り返さない。国際法上の概念として、集団的自衛権の行使の定義をお認めになったわけでしょ。
だとすれば、それが可能になるということは、まさに日本だけ特別なことではないじゃないですか。だから、石破幹事長も、論理上は集団的自衛権行使可能になっていたならば、あのたたかいに自衛隊が参加した可能性は「ゼロではない」と。この石破さんの記載は間違いなんですか。
首相 私が、間違っているとか間違っていないとか論評する立場ではございませんが、石破幹事長はおそらくその定義の論理的帰結について述べておられるのかもしれません。
日本は憲法第9条の制約を認めているなかにおいて個別的自衛権についてはあるわけでありますが、集団的自衛権について、いま世界情勢が変わってきているなかにおいて、可能となるものがあるかどうかということについての議論がなされているということです。
小池 「可能になるものがあるかどうか」とおっしゃった。要は可能なんです、可能になるわけです。いままでの自民党政権は、そういう場合でも絶対に武力行使はしないといってきたわけです。われわれは、一体化するということは、結局武力行使ではないかという追及はした。しかし、われわれがこう追及をすると、いや武力行使はしません、その可能性はないと言ってきたんです。
いま、総理は”可能性も含めて検討する”と言った。集団的自衛権の行使を可能にするということは、結局、日本に対する攻撃がなくても、海外で武力行使をする可能性があるということです。そういう新しい道に進もうというのが、まさに集団的自衛権の行使じゃないですか。
結局、海外で武力行使を、戦闘に加わるということになる可能性があるということは否定できないわけです、いまのやりとりをしても。それはしませんとはいいませんからね。で、”可能性も検討している”とおっしゃったわけですから。
元内閣法制局長官の阪田雅裕さんは、「集団的自衛権の行使は、海外で戦闘に加わるということだ。自衛隊員に犠牲者が出ることや、隊員が他国の軍人を殺傷することも起こりうる」と言っているわけですよ。
民間人の犠牲は1・7万人。自衛隊が外国人の命を奪うのか
小池 実際にそんなことになったら、いったいどういう事態になるのか。外務省にお聞きをします。アフガン戦争に派兵した主な国別の犠牲者の数を示していただきたい。
岸田文雄外相 主要メディアが引用いたします独立系サイト、アイカジュアルテーズによりますと、2014年3月3日現在のアフガンにおける外国軍の犠牲者数は3425名と掲載されております。主要国では、米国2313名、英国447名、ドイツ54名、イタリア48名となっております。
小池 3000人を超える犠牲者が出ているし、さらに、アフガニスタンの民間人の犠牲者数は、国連アフガン支援団の資料によれば、2007年以降だけで1万7700人を超えている。そして、いまだに泥沼です。
日本に対する武力攻撃も発生していない時に、自衛隊員を武力攻撃に参加させて、その生命を危険にさらす。自衛隊員が外国人の命を奪うことになる。この重大な問題を、憲法解釈の変更で進めるということなど、私は断じて許されないというふうに申し上げたい。
憲法解釈の変更について、2004年(6月18日に)閣議決定した答弁書の該当部分を読んでください。
法制局長官 「憲法を始めとする法令の解釈は、当該法令の規定の文言、趣旨等に即しつつ、立案者の意図や立案の背景となる社会情勢等を考慮し、また、議論の積み重ねのあるものについては全体の整合性を保つことにも留意して論理的に確定されるべきものであり、政府による憲法の解釈は、このような考え方に基づき、それぞれ論理的な追求の結果として示されてきたものであって、諸情勢の変化とそれから生ずる新たな要請を考慮すべきことは当然であるとしても、なお、前記のような考え方を離れて政府が自由に憲法の解釈を変更することができるという性質のものではないと考えている。仮に、政府において、憲法解釈を便宜的、意図的に変更するようなことをするとすれば、政府の憲法解釈ひいては憲法規範そのものに対する国民の信頼が損なわれかねないと考えられる」
「このようなことを前提に検討を行った結果、従前の解釈を変更することが至当であるとの結論が得られた場合には、これを変更することがおよそ許されないというものではないと考えられるが、いずれにせよ、その当否については、個別的、具体的に検討されるべきものであり、一概にお答えすることは困難である」
以上でございます。
閣議決定では憲法の根幹にかかわる解釈変更を認める余地はない
小池 首相はアジア情勢の変化などを解釈変更の理由に挙げています。しかし、答弁書にあるように、たとえ情勢の変化を考慮したとしても、政府が自由に憲法の解釈を変更することができるという性質のものではないとしたのが、従来の政府の立場であります。
集団的自衛権の行使を可能にするなどという、憲法の根幹に関わる解釈の変更など、この答弁書で認める余地はまったくないじゃありませんか。
首相 いまの小松法制局長官の答弁を最後まで聞いていただければ、前段においてはそう簡単なことではないということでありますし、私もその通りだと思っております。しかし、それがまったくその可能性がないのかといえば、そんなことはないということを、趣旨のことを最後は小松長官が述べていたわけです。
小池 この閣議決定は、よく読めば、憲法解釈の変更がなぜできないのかという理由を列挙した上で、「このようなことを前提に検討した結果、憲法解釈を変更することがおよそ許されるものではない」としているにすぎないわけです。その理由はなんと言ってきたか。”情勢が変わったからといって政府が自由に解釈を変えることはできない””政府が憲法解釈を便宜的、意図的に変更するようなことをすれば、政府の憲法解釈ひいては憲法規範そのものに対する国民の信頼が損なわれかねない”としているわけですね。これが検討の前提なんですよ。
この前提に照らせば、今の憲法のもとで集団的自衛権行使が可能になるなどという、そんな変更がおよそ許されるはずがないじゃありませんか。
小池 解釈改憲には保守層からも反対・見解の対立ある
首相 さまざまな見解ある中、議論
小池 集団的自衛権と憲法の関係について、もう一つ答弁があります。2004年2月27日、参議院本会議での当時の小泉首相の答弁を紹介してください。
法制局長官 答弁の関連部分をそのまま読み上げさせていただきます。
「集団的自衛権と憲法の問題ですが、現行憲法施行後の国際情勢の推移を踏まえて、集団的自衛権と憲法の関係についてさまざまな議論があることは承知しております。憲法上の問題について、だれもが受け入れる状況の変化の中で時間の経過とともに制定時とは異なる憲法解釈が定着していくというものであれば、解釈の変更も一つの問題解決の方法となりえるものであると考えております」
「しかし、解釈変更の手段が便宜的、意図的に用いられるならば、従前の解釈を支持する立場を含めて、解釈に関する紛議がその後も尾を引くおそれがあり、政府の憲法解釈、ひいては憲法規範そのものに対する国民の信頼が損なわれることが懸念されます。その意味で、私としては、憲法について見解が対立する問題があれば、便宜的な解釈の変更によるものではなく、正面から憲法改正の議論をすることにより解決を図ろうとするのが筋だろうと私は考えております」
以上でございます。
小池 集団的自衛権の行使を可能にするような重大な解釈変更は「誰もが受け入れる状況の中で」なければならないし、「見解が対立する問題があれば」正面から改憲の議論をすべきだと。この国会答弁はその後の閣議決定で再確認をされているわけです。
憲法の解釈を便宜的、意図的に行えば、最高法規としての憲法に対する信頼が揺らいでしまう。だから、戦後日本の保守政治は、保守なりの節度を持ってこのことに臨んできたわけですよ。だからこそ今回の憲法解釈の変更に対しては、立場の違いを超えて怒りの声、疑問の声、懸念の声が広がっているわけです。
自民党では、村上誠一郎さん、古賀誠、野中広務元幹事長、公明党の漆原良夫国対委員長、そして阪田雅裕元法制局長官、憲法を変えるという立場の小林節慶応大教授も疑問の声を上げています。(右面の表)
いまの状況は、閣議決定で言うような「誰もが受け入れる状況の変化」なんですか。「見解の対立がない状況」だと、総理はおっしゃるんですか。
首相 さまざまな見解があるわけでありまして、そのなかで現在安保法制懇で議論がなされているわけであります。
小池 安保法制懇で議論しているだけではない。(安倍首相自身が)憲法解釈の変更をやろうとしているんじゃないですか。
ニューヨーク・タイムズの社説(2月19日付)はこう述べています。
「安倍氏は先の国会で、国民は次の選挙で彼に審判を下すこともできると暗に示したが、それは立憲主義の誤った見方である。安倍氏は当然、日本国憲法を修正する動きに出ることもできるはずである。そのための手続きが面倒すぎるとか、国民に受け入れられないと言ったことは、法の支配を無視する理由にはならない」
「最高の責任者は私です」などといって解釈改憲に踏み切れば、国民の自由や権利を守るため政府を縛る憲法の否定、すなわち立憲主義の否定になる。これが世界から寄せられている声であります。
総理、安保法制懇で議論していますで済む話じゃないんです。あなたはこれを閣議決定をして、変更していくということをおっしゃっているわけです。これだけ見解が対立しているなかで、解釈を変えれば憲法の最高規範性が損なわれる。それでもやると、総理はおっしゃるんですか。
首相 いま安保法制懇でさまざまな分類について議論をしているわけです。その結論をへた上で、政府・与党で議論を重ね法制局を中心に、もし解釈(変更)が必要であれば、どういう解釈をすべきかを最終的に決定をするわけです。しかし、それで直ちに自衛隊が活動できるということにはならない。法改正を行い、さらには政策的選択肢としてそれを取るかどうかという判断がなされるということになるんだろうと思います。
小池 日本を戦争する国にするのは断固反対
小池 行使する権利を持つということが、戦後の政治の根幹を変えることになるんです。
日本共産党は、集団的自衛権の行使、すなわち、海外で戦争できる国にすることには断固として反対です。もちろんそれは、憲法の明文そのものを変えることにも反対であります。
同時にいま、憲法9条を守ろうという人も、変えてもいいという人も、日本の中だけでなく世界からも、安倍首相のあまりに乱暴な憲法解釈変更に懸念と不安、怒りが広がっている。「法の支配」を粉々に壊してしまっていいのか。憲法の規範性をなきものにしてしまっていいのか。この安倍政権の暴走をくいとめて、日本の民主主義の根幹を守るために、いま、与野党を超えて、心あるすべての人が力を合わせる、立場の違いを超えて声を上げるときだというふうに思います。
最低賃金――引き上げへ直接支援を
小池 全国一律1000円をめざすのは先送りできない課題
首相 共産党と同じ考えだ
小池 続いて景気回復のカギを握る賃上げの問題に移ります。
日本共産党は賃上げのための三つの提案をしておりますが、まず第一に、内部留保を活用した賃上げ。大企業の内部留保はこの1年間で15兆円以上も増えました。275兆円です。「収益が改善したら賃上げを」と先送りするのではなく、内部留保の一部を活用してまず賃上げを、とこの間、何度も申し上げてきました。
そして、「賃下げ政策」にほかならない労働者派遣法など労働法制の改悪をやめ、人間らしく働けるルールをつくることも求めております。
きょうは、さらに一つ、最低賃金の問題を取り上げたいと思います。
私たちは、厚労省と総務省の統計をもとにフルタイムの一般労働者で時給1000円未満の労働者がどれだけいるのか計算してみました(グラフ上)。これをみますと、若年者、高齢者、そして全体を通じて女性です。フルタイムであってもこれだけの低賃金が広がっているわけです。
私は、最初に総理に基本的な認識をうかがいたいんですが、年収200万円に満たないワーキングプアの広がりは日本社会の未来にとってきわめて重要な課題だと思いますが、総理の認識をまずお答えください。
首相 ワーキングプアの方々は、非正規雇用である場合が多いと考えられるわけでありまして、賃金水準が低いことに加え、能力開発の機会が乏しい、セーフティーネットが不十分とさまざまな課題があると認識しております。このため、キャリアアップ助成金の活用などによって非正規から正規への移行支援等の取り組みを進めるとともに、こうした方々が就労以外のさまざまな生活上の問題を抱えている場合には、昨年成立した生活困窮者自立支援法に基づきまして、生活資金の貸付の斡旋(あっせん)等の支援を行うなどの取り組みを行っております。
小池 私はもうちょっと大きな認識を聞いたんですが。
こういう低賃金の広がりは社会の本当に病理現象ともいえる深刻な状況だと思うんですよ。この打開のためには、最低賃金の抜本的引き上げがきわめて重要だと思います。
最低賃金の大幅引き上げは、必ずこれは消費に結びついてまいりますし、内需の活性化に最も効果的な景気対策であり、企業の経済活動にもプラスになります。
岸元首相も効果あると答弁
小池 1959年に最低賃金制を導入した当時の岸信介首相も、最低賃金制によって「中小零細企業の劣悪な労働条件が改善され、能率も上がり、事業も安定し、過当の競争もなくなる」「中小企業対策としても効果がある」と答弁をされているわけです。
欧米諸国も最低賃金の引き上げを経済政策の柱にすえております。軒並み時給1000円以上です。(グラフ下)
アメリカのオバマ大統領は最低賃金の引き上げで817円を1100円を超える水準へと呼びかけていますし、ドイツも今度の政権合意で、全国一律最低賃金制度の導入を決めています。
これに比べて日本は圧倒的に遅れているわけですよ。もちろん、中小企業は大変です。ほんとに必死の経営でやっている。賃金を上げるのはそんなに簡単なことではないことは私も十分承知をしています。しかし、中小企業に対しても、本気で抜本的な支援を行うこととあわせて、これをやることは中小企業の経営にとってもいいんだと。岸元首相の答弁にある通りだと私は思うんです。
最低賃金制を導入した、この歴史をさらに前に一歩進める。そういう決意はありませんか。全国一律で最低賃金を引き上げることによって地域格差も解消する。このことは大事な政策ではないか。やっぱり最低時給1000円以上と。これを目指して、そのための中小企業支援を行う。先送りにはできないと思いますが、いかがですか。
首相 最低賃金が引き上がっていく状況をつくっていくことについては、共産党の小池先生も岸信介も私も同じ考え方といってもいいんだろうと思います。その考え方のもとに、昨年度は15円最低賃金を引き上げたところであります。
最低賃金を引き上げていくうえでは、中小企業、小規模事業者もその支払い能力がなければならないということも重要であります。だからこそ第1次安倍政権のとき中小企業、小規模事業者の生産性を上げていくという支援をさせていただいたところでございます。そのため、企業の収益を向上させ、それが雇用の拡大や賃金の上昇につながる経済の好循環をつくっていくことによって、そういった環境をつくっていきたいと思います。
小池 最低賃金を引き上げたとおっしゃるんですが、全国平均で5年前の703円から764円です。ペースは若干上がってきていますが、毎年10円ちょっとの引き上げなんです。この5年間のぺースでいくと、1000円になるのにあと20年かかるわけです。
「ワタミは最賃でバイト募集。 指導を」
小池 実は最低賃金額に張り付いているのは決して中小企業だけではないんです。大企業のグループ企業で最低賃金に張り付いているケースは少なくありません。
たとえば、ワタミグループが経営する居酒屋のアルバイト時給。ホームページで私は全国を調べました。全国47都道府県のうち13都道府県の店舗でその地域の最低賃金の募集をかけているんです。
総理。「中小企業だから」という言い訳は通用しないと思う。総理、十分な体力のある大企業グループが最低賃金ぎりぎりで雇用しているような状況をこのまま放置していいんでしょうか。何とかすべきではないでしょうか。
首相 最低賃金については、それぞれの県において適切な引き上げが行われる状況をつくっていきたいと思っているところでありますが、最低賃金に張り付いている企業がなかなか人材が集まらない、人が集まる状況をつくっていくなかにおいて、そうした賃金における待遇、職場環境の改善に努力を傾注していかなければならないと考えております。
小池 なんかちょっと頼りない答弁ですね。もっときちんとガツンというべきじゃないですか。体力が十分あるような大企業グループで、最低賃金ぎりぎりなんていうことはもうだめだとはっきりいうべきですよ。
神奈川県のマクドナルドで15年間働いている36歳の男性はこういっています。
「シフト制で週5日8時間働いている。時給860円。15年前に800円で働き始めて、毎年10円上がったけれども、2006年以降860円のまま。交通費も有給休暇もない。月収13万円から14万円で病院に通っていて月1万3000円から1万4000円の医療費がかかっている。親と暮らしているが、結婚もしたいし、子どももほしいが、この給料では望めない。せめて時給は1000円以上に」と。
「支払い能力が…」なんていうから最低賃金が上がらないんです。きちんと経済の発展の原動力と位置付けるべきだ。
小池 中小企業への直接支援は、賃金・消費の向上に
首相 気持ちはわかるが
小池 実際の行動求める
小池 もちろん、中小企業に対する支援も必要だと思います。私たちは、政府のデータをもとに計算をしてみました(グラフ)。最低賃金を時給1000円以上に引き上げる場合に、雇用者全体の約2割にあたる932万人が賃上げの対象になってまいります。
そのために必要総額は約2兆2000億円。そこで、従業員規模100人未満の企業を対象として最低賃金を900円に引き上げる段階では最大で4000億円程度。1000円に引き上げる段階でも9000億円。もちろんこの中には黒字企業もあるでしょうから、すべてを助成しなくてもできると思うんですね。
今回、賃上げを期待して復興特別法人税の前倒し廃止。その規模は1兆円だというんです。しかし、法人税というのは黒字企業しか払っていないわけであります。
一方、こうした最低賃金引き上げのための直接支援を行えば、確実に賃金上昇につながる。ワーキングプアの解消になる。消費に回る賃上げになるから企業の収益向上にも貢献する。全国一律最低賃金制で地域格差の解消にもなる。まさに好循環じゃないですか。
いろんな財源があると思う。たとえば、雇用保険には5兆円の積立金がある。これも活用できるのではないか。賃金が上がれば、雇用保険にはさらに保険料が入ってくるわけですから。
総理。私は現実的、具体的、前向きな提案をしているんですよ。「日本経済の好循環」というのであれば、ぜひ、こういう低賃金を解消する施策に足を踏み出すべきじゃないですか。総理、総理答えてください。
田村憲久厚生労働相 賃金が上がりにくい、むしろ下がっているなかで最低賃金が上がってきているわけですから、当然、スピードが遅いといわれる部分があるかもわかりません。ただ、いま賃金が上がるような形で「アベノミクス」をやっているわけです。最低賃金が景気の好循環の中で上がっていくということをわれわれは期待していますし、いろいろ施策を打っているわけです。
雇用保険は事業主と労働者の保険料の積立金です。積立金といっても国庫に入っておりませんから、それを国が勝手に使うということはなかなか理解は得られないだろうなと思います。
小池 (最低賃金引き上げの)スピードが遅いと認めながら、ああだこうだと言い訳している。これだからダメなんですよ。これだから最低賃金が上がらないんですよ。厚生労働省がこんな態度をとっているからだめなんですよ。岸元首相がいったように、これこそが中小企業の活性化なんだという立場でやらなければだめじゃないですか。
私は、こういう発想ではいけないと思うんです。雇用保険の積立金は5兆円もたまっているのに使えない。思い切って雇用のために活用するということがいま求められているんじゃないですか、といっているんです。
それから口では「賃上げ、賃上げ」といいながら、政府がすぐにやれることをやっていないと私は思う。
たとえば、官公庁の求人状況を調べてみました。厚生労働省職業安定局の京都府宇治市のパート職員・時給890円です。厚労省福岡労働局・時給888円。長野労働局も愛媛労働局も834円。財務省旭川財務事務所・809円。松江も新潟も808円。防衛医科大学校790円。政府のおひざ元でこんな状況なんですよ。企業に賃上げを、賃上げをと要求するんだったら、まず隗(かい)より始めよなんじゃないですか。
米大統領は政府関連の賃上げに署名。日本も見習うべきだ
小池 アメリカのオバマ大統領は、今年の一般教書演説の中で、最低賃金の引き上げを企業に訴えるだけでなく、こう訴えています。
「連邦政府との契約を結んでいる業者に対して、公正な賃金として時給10ドル10セント(日本円にして1100円以上)を支払うよう求める」と。そして先日大統領令に署名したんですね。
オバマ大統領は、政府の仕事に取り組む人が貧困の中に暮らすことがあってはならないといい、「さあ、アメリカに賃上げを」と訴えたんですよ。国で雇っている人たちがまともな賃金で暮らせるようにする。これをまず総理はやるべきじゃないですか。
首相 小池委員のいっておられる気持ちは私はわかりますよ。しかし、財政の厳しい状況の中においては、公務員のみなさま方においてもさまざまなことをお願いをしているわけでございますが、復興のためにご協力をいただいたパーセンテージについては、元に戻させていただいたところでございます。
小池 「気持ちがわかる」で済む話じゃないんですよ。気持ちをわかってもらうだけじゃ何の意味もないんです。実際の具体的な行動が求められているんですよ。
私は、やっぱり日本を賃上げ社会にするための本気で具体的な行動が求められていると思います。それができるのは総理なんです。企業に求めるだけじゃなくて、総理自身ができることがあるわけです。最低賃金を全国一律時給1000円以上にするための中小企業の直接支援を、国や自治体の仕事で適正な賃金の保障を、公契約法の実現もあわせて訴えて私の質問をおわります。