日本共産党 書記局長参議院議員
小池 晃

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広範な市民と力あわせ くらしと平和守り抜く 大軍拡やめ、成長の果実 賃上げに 小池書記局長が代表質問

2023年01月31日

赤旗2023年1月28日付

参院本会議

 

 日本共産党の小池晃書記局長は27日、参院本会議で代表質問にたち、岸田政権が推進する敵基地攻撃能力保有と大軍拡の危険性を追及しました。危機に直面する酪農家の声などを示し、市民の苦しみに寄り添った支援策や打開策を提案。「広範な市民と力をあわせ、民主主義、立憲主義を取り戻し、くらしと平和を守りぬく」と表明しました。(代表質問全文)(関連記事)


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(写真)代表質問を行う小池晃書記局長=27日、参院本会議

 

 小池氏は、政府の安全保障3文書について「歴代政府が建前としてきた専守防衛さえ投げ捨て、敵基地攻撃能力保有に踏み切るものだ」と指摘しました。

 

 自衛隊のミサイル基地建設などが進められている沖縄の現状を示し「沖縄が戦場になることを想定した日米一体の戦争態勢づくりだ。本土決戦を遅らせるため『捨て石』にした沖縄戦の過ちを繰り返すのか」と追及。沖縄だけでなく全国各地の自衛隊基地の司令部の地下化が予算案に組み込まれているとして「市街地の中心部の基地も攻撃対象になると想定しているのか」と迫りました。

 

 岸田文雄首相は「自衛隊施設の抗たん性(攻撃に耐え、基地機能を維持する能力)の向上といった取り組みは重要」と述べ、攻撃を想定していることを認めました。

 

 実質賃金は8カ月連続でマイナスです。小池氏は、大企業の内部留保に課税し、賃上げを実現する党の政策を紹介。「二重課税」を理由に拒否してきた首相に対し、財務省は「二重課税の定義はない」と述べていることを示し、「『成長の果実を賃上げに』というなら、言葉通りに実行すべきだ」と求めました。首相は「二重課税にあたる」との答弁を繰り返しました。

 

 さらに小池氏は「日本から酪農の灯が消えかねない深刻な危機という認識があるか」と追及。肥料も飼料も2年前より5割上がるなか「牛乳を搾るほど赤字」という酪農家の窮状を訴えました。これまで牛の増産を求めながら、今度は牛を減らしたら補助金を出すという政府の理不尽を批判し「他方で乳製品の輸入には一切、手をつけない。補助金は牛を殺すためでなく、生かすために出すべきだ」と迫りました。

速記録を読む

○小池晃君 日本共産党の小池晃です。会派を代表して、岸田文雄総理に質問します。
 年頭所感で総理は、積み残してきた多くの問題、先送りできない問題に正面から立ち向かい、一つ一つ答えを出すと述べました。
 積み残した問題というなら、自民党と統一協会との癒着を徹底的に解明し、統一協会に対する解散命令を速やかに請求すべきではありませんか。先送りできない問題に立ち向かうというなら、自民党議員に相次ぐ政治と金の問題の責任を認め、メスを入れるべきではありませんか。
 ところが、総理は、こうした課題にはまともに向き合おうとせず、暮らしも平和も憲法も踏みにじる大暴走を始めています。
 政府が年末に閣議決定した安全保障三文書は、歴代政府が建前としてきた専守防衛さえ投げ捨て、敵基地攻撃能力の保有に公然と踏み切るものです。
 重大なことは、これが集団的自衛権の行使を可能にした安保法制の下で具体化されようとしていることです。三文書は、敵基地攻撃能力を、我が国に対する武力攻撃が発生した場合だけでなく、存立危機事態、すなわち集団的自衛権の行使として使用できるとしています。ならば、自分の国は自分で守るという政府の言い分は全く成り立たないのではありませんか。
 日本が攻撃を受けていないにもかかわらず、アメリカとともに他国領土にミサイルを撃ち込むことがどうして反撃能力なのですか。相手国からすれば事実上の先制攻撃であり、憲法九条の下で絶対に許されない海外での武力行使そのものではありませんか。
 先日の日米共同声明は、日本の反撃能力の開発と効果的な運用について協力を強化する方針を確認しました。日米2プラス2では、自衛隊が統合司令部を設置して、日米の司令部機能を更に一体化することも確認しています。
 アメリカが同盟国と推進する攻撃と防御が一体となった統合防空ミサイル防衛、IAMDの下で日本の長射程ミサイルが使用されれば、米軍の指揮統制の下で自衛隊が米軍の相手国に先制攻撃することになります。その結果、報復攻撃で日本は焼け野原になってしまうのではありませんか。
 総理は、施政方針演説で、南西地域の防衛体制の抜本強化を進めると述べました。沖縄に寄り添うとの言葉も消えてなくなってしまいました。
 凄惨な地上戦を体験した沖縄で、陸上自衛隊の増強、長射程ミサイルの配備、そのための嘉手納弾薬庫の共同使用や新たな補給拠点の設置、民間空港、港湾の軍事利用の拡大などが計画されています。宮古、石垣、与那国島ではミサイル基地建設が進んでいます。米軍も海兵隊を改編し、無人の地対艦ミサイルを配備しようとしています。
 これらはまさに、沖縄が再び戦場になることを想定した日米一体の戦争体制づくりではありませんか。本土決戦を遅らせるための捨て石にした沖縄戦の過ちを繰り返すのですか。敵基地攻撃兵器の配備に反対している玉城デニー沖縄県知事や石垣市議会の声に総理はどう応えるのですか。
 危険が襲うのは沖縄だけではありません。来年度予算には、那覇駐屯地などとともに、熊本市内の健軍駐屯地や福岡の築城、宮崎の新田原基地などの司令部の地下化が盛り込まれています。今後、全ての自衛隊司令部の地下化を進めるのですか。市街地の中心部にある自衛隊基地も攻撃対象になると想定しているからですか。明確な答弁を求めます。
 五年間で四十三兆円もの大軍拡を進めることにも大きな批判が寄せられています。来年度予算では、社会保障の自然増が一千五百億円も抑制され、中小企業対策費も農業予算もマイナスです。五年後には軍事費が文教予算の二倍以上となります。軍事費が文教予算の二倍という国が平和国家だと言えるんでしょうか。そのための大増税など、言語道断ではありませんか。お答えください。
 昨年、総理も参加した東アジア・サミットの議長声明は、全ての関係当事国の平和的な対話の継続と平和的対話に資する空気の増進で問題を解決していくとしています。敵基地攻撃と大軍拡は、平和的対話に資する空気の増進に反するのではありませんか。
 東南アジア諸国連合、ASEANは、東アジアの全ての国を包み込む平和の枠組みを強化し、東アジア規模での友好協力条約の締結を提唱しています。そして、先日の日米首脳会談も、ASEAN・インド太平洋構想を支持していくといたしました。
 これこそ前進させるべき平和の道ではありませんか。憲法九条を持つ日本こそ、ASEANと力を合わせ、東アジア・サミットに集まった米中を含む全ての関係諸国を包摂した平和の枠組みづくりに力を尽くすべきです。答弁を求めます。
 実質賃金は八か月連続マイナスとなりました。総理は、持続的に賃金が上がる構造をつくり上げるとしながら、その方法は財界にお願いすることなのですか。財界にお願いするだけで、働く人の七割がいる中小企業がどうして賃上げできるのでしょうか。
 我が党の提案は、五百兆円を超えた大企業の内部留保から、賃上げ分や設備投資分を控除した上で時限的に課税し、大企業の労働者の賃上げを促すとともに、五年間で十兆円生まれる財源を中小企業の賃上げ支援に充て、最低賃金を全国どこでも時給千五百円に引き上げ、大企業も中小企業も賃上げを可能にするものです。
 総理は、二重課税だと拒否しますが、財務省は国会で、二重課税の定義はない、関係する経済団体からの指摘だと答弁しました。二重課税などという言い訳は金輪際やめるべきではありませんか。
 総理、内部留保がどんどん積み上がるような社会をこのままにしていいのか。成長の果実を賃上げにというなら、言葉どおりに実行すべきではないか。そもそも、所得再分配の主体は、民間企業ではなく政府です。税制と社会保障制度により、所得配分のゆがみを正すのが政府の責任ではありませんか。お答えください。
 来年度の公的年金は実質〇・六%の目減りで、そのうち〇・三%は過去二年間の削り残し分です。物価高騰のただ中に、積み残しを含めた削減率を機械的に適用する、こんなことでは年金不信は更に高まり、持続不可能な制度になってしまいます。
 民間企業に対して足下で物価上昇を超える賃上げが必要というなら、政府も年金を物価上昇を超えて引き上げるべきではありませんか。答弁を求めます。
 十二月の消費者物価指数は、四十一年ぶりに前年同月比で四%の上昇でした。この深刻な物価高に対して施政方針演説で総理が示した方針は、二次補正予算の早期執行だけです。しかし、物価高騰は、政府が支援対象とする電気代やガス代だけにとどまらず、広範な品目に及び、一世帯当たり十四万円もの負担増です。
 深刻な物価上昇から家計を守る最も有効な方法は消費税の減税です。コロナ禍で世界百か国と地域が実施している付加価値税、消費税の減税に踏み切るべきではありませんか。
 十月に迫ったインボイス導入は、小規模な事業者やフリーランスなど、数百万人もの人々に多大な負担をもたらします。インボイスが導入されたら廃業せざるを得ないという悲鳴が上がり、地方議会で採択された意見書は昨年末で三百八十九自治体に広がっています。導入はきっぱり中止すべきではありませんか。
 総理は、所得が一億円を超えると所得税の負担率が逆に下がってしまう一億円の壁の是正を掲げていたのに、今回提案されているのは所得三十億円以上の超富裕層だけで、申告納税者では二百人余り、税率の引上げも僅かです。一億円の壁を崩すどころか、三十億円の壁に小さな穴を空ける程度で不公平が是正されるとお考えか。なぜ金融所得への低い税率には手を着けなかったのか。住民税と合わせて二〇%の税率を、少なくとも高額所得者には欧米並みの三〇%以上を適用すべきではありませんか。答弁を求めます。
 危機に直面する酪農について質問します。
 酪農家は今、肥料も飼料も二年前より五割アップする一方、乳価はそれに見合わず、牛乳を搾れば搾るほど赤字が増えるという状態です。総理には、日本から酪農の灯が消えかねない、深刻な危機だという認識はありますか。
 政府は一連の対策を取ったと言いますが、未曽有の危機に対応するものになっていません。政府は酪農家を見殺しにするのかという叫びはその表れです。従来の対策の延長でなく、酪農家が生き残れる抜本的な支援策を緊急に打ち出すべきです。飼料、肥料、燃油などの価格高騰前との差額を政府の責任で補填すべきではありませんか。答弁を求めます。
 これまで牛を増やせと言ってきた政府が、生乳が過剰だとして、牛を減らしたら補助金を出すと言います。他方で、乳製品の輸入には一切手を着けない。これで農家の納得が得られると思いますか。牛は生きています。生きている限り、搾乳続けなければなりません。搾った生乳を泣く泣く捨てたり牛を処分せざるを得ない酪農家の苦悩が、総理、分かりますか。補助金は、牛を殺すためではなく、生かすためにこそ出すべきです。お答えください。
 従来とは次元の異なる子育て支援を行うというなら、教育費負担の軽減こそ求められます。ならば、高過ぎる学費を半減させ、入学しないのに取られる入学金制度を廃止し、給付制奨学金制度を大幅に拡充し、小中学校の給食費は憲法どおりに国の責任で無償化すべきです。答弁を求めます。
 安心、安全な保育体制の確保も待ったなしです。
 この間、バス置き去りなど悲惨な事件も起きていますが、背景には諸外国と比べても大きく立ち遅れている保育士の配置基準があります。スウェーデンでは四、五歳児の子供十八人に保育士三人という基準ですが、我が国では子供三十人に対し保育士一人で、一九四八年の児童福祉法制定時から七十年以上変わっておりません。多くの保育所は独自に保育士を配置するなど努力していますが、求められているのは国基準の見直しです。
 子供たちの命を守る保育士の配置基準を見直し、処遇改善を進めるべきではありませんか。お答えください。
 日本を少子化社会にした根源の一つがジェンダー差別です。しかし、総理の少子化対策にはジェンダー平等を推進するための社会システムの改革、転換という視点が全くありません。
 明治憲法下での家父長制、男尊女卑の家族制度を美しい国と美化する自民党政治の下で、女性たちの声が反映されない政治と慣習が引き継がれてまいりました。少子化の原因は晩婚化と女性ばかり責任を押し付け、子育ては社会が担うのではなく家族が担うものだと、児童手当に所得制限を復活させ、家事、育児、介護などは専ら女性に担わせる一方で、低賃金と不安定な雇用によって男女の生涯賃金格差は一億円。こうした政治が子供を産み育てることを困難にしてきたという認識が総理にはありますか。
 選択的夫婦別姓の実現や同性婚の法制化を始め、日本社会をジェンダー平等社会につくり変えるべきではありませんか。答弁を求めます。
 先日、自民党の麻生太郎副総裁が原発の死亡事故はゼロだと発言しましたが、全く事実に反します。関西電力美浜原発などで死亡事故は起きています。東京電力福島第一原発の事故では、関連死が二千名を超えています。
 総理も、麻生氏のように、原発事故による被害は大したことがないという認識なのですか。原発の再稼働だけではなく、新たな原発まで造り、六十年を超える老朽原発まで動かそうと原発回帰への大転換を打ち出したのは、そのような認識だからでしょうか。そうでなければ、いまだに多数の方が避難を続け、ふるさとを奪われ、なりわいも奪われた福島の人々の苦しみに対して、こんな方針転換などできるわけがないではありませんか。
 原発回帰は、再生可能エネルギーも後景に追いやり、気候危機対策にもエネルギーの海外依存からの脱却にも逆行します。一体どこがグリーンか。
 総理は、日本には再エネ適地が少ないと言いましたが、世界有数の地震・津波国で、実際に地震、津波で世界最悪の原発事故を起こした日本ほど原発に適さない国はありません。原発の再稼働と新増設方針を撤回し、原発ゼロと石炭火力からの撤退を決断し、純国産の再生可能エネルギー大量普及でエネルギー自給率の向上を図るべきです。答弁を求めます。
 原発回帰の方針は、昨年参院選での自民党の、原発の新規建設は考えていないという公約に完全に反します。政府と与党で検討したから問題ないというのは、議会制民主主義を無視した暴論であります。総理が日本の安全保障政策の大転換とする安保三文書も、国会では答弁を避け続け、閉会後に閣議決定し、真っ先に米国に報告をしました。これが民主主義国家のやることですか。これでまともな主権国家と言えるのですか。
 内閣府が十二月に公表した日本学術会議の改革方針について、学術会議は、独立性が侵害されるおそれがあるとして強く再考を求める声明を発表し、多くの学会が賛同する声明を上げています。総理は透明性の確保のためだと言いますが、ならば、まず政府がやるべきことは、会員六名の任命拒否の経過と理由を明らかにすることではありませんか。あのような、あのような暴挙に無反省のまま、問題をすり替え、学術会議の変質を強行する方針は撤回すべきではありませんか。答弁を求めます。
 日本共産党は、広範な市民と力を合わせ、この国の民主主義、立憲主義を取り戻し、暮らしと平和を守り抜いていく決意です。そのことを表明して、質問を終わります。
 ありがとうございました。

 

○内閣総理大臣(岸田文雄君) 小池晃議員の御質問にお答えをいたします。
 自民党と旧統一教会との関係、旧統一教会の解散命令請求についてお尋ねがありました。
 自民党においては、各議員それぞれが旧統一教会との過去の関係を八項目に分けて詳細に点検、報告をし、新たな接点が判明した場合にはその都度追加的に報告、説明を行い、今後は関係を持たないということを徹底することを、これを方針としています。
 大切なことは、未来に向かって関係を絶つことであります。自民党においては、旧統一教会及び関連団体と一切関係を持たない方針であることを踏まえ、ガバナンスコードを改訂し、この方針について、党所属全国会議員及び全国都道府県連に対して通知をしたところであり、これを徹底してまいります。
 また、旧統一教会においては、宗教法人法に基づき、報告徴収・質問権を三回にわたり行使し、必要な資料の提出を求めているところです。
 御指摘の解散命令の請求の可否を判断するためには、まずは報告徴収・質問権を効果的に行使するとともに、被害者の方々などから丁寧に情報収集すること等を通じて、具体的な証拠や資料などを伴う客観的な事実を明らかにし、法律にのっとり、必要な対応を行っていくものと承知をしております。
 いずれにせよ、所轄庁たる文部科学省においてスピード感を持って適切に対応する、していく方針であります。
 そして、政治と金の問題についてお尋ねがありました。
 政治の信頼に関わる問題が立て続けに生じ、国民の皆様から厳しい声をいただいたことについては重く受け止めております。政治家は、自らの政治資金を関係法令にのっとって適切に取り扱い、国民から疑念を持たれないようにしなければならないこと、これは言うまでもありません。
 自民党の取組についてあえて申し上げれば、党のガバナンスコードを定め、党所属の国会議員の政治資金の取扱い等に関するコンプライアンス上の疑義があった場合には、その議員が国民に対して丁寧な説明を行うほか、党も厳正に対処することとしております。党改革実行本部においても、今後も引き続き党改革について議論を続けてまいります。
 いずれにせよ、信頼と共感の政治の実現のため、政治家はその責任を自覚をし、常に襟を正していかなければならないと考えております。
 存立危機事態における反撃能力の行使についてお尋ねがありました。
 まず、反撃能力を含む我が国の武力の行使は、いかなる事態であれ、武力行使の三要件に基づき、あくまで我が国の国民の命と平和な暮らしを守り抜くための必要最小限の自衛の措置として行使するものです。これらは憲法、国際法、国内法に従って行われ、専守防衛の考え方を変更するものではなく、先制攻撃は許されない、これは言うまでもないことであります。
 なお、政府としては、従来から、一九五六年の政府見解でお示ししておりますように、憲法上、誘導弾等による攻撃を防御するのに他に手段がないと認められる限り、誘導弾等の基地をたたくことは法的、法理的に自衛の範囲に含まれ、可能であるとしてきております。
 そして、統合防空ミサイル防衛能力についてお尋ねがありました。
 国家防衛戦略においては、統合防空ミサイル防衛能力を強化し、我が国に対するミサイル攻撃については、ミサイル防衛システムを用いて迎撃をし、迎撃しつつ、反撃能力を持つことにより、ミサイル防衛と相まってミサイル攻撃そのものを抑止していくこととしております。
 その際に、日米の連携は重要であると考えます。しかし、自衛隊及び米軍は、各々独立した指揮系統に従って行動します。そして、自衛隊は、憲法、国際法、国内法に従って行動することから、米軍の指揮統制の下で、自衛隊が米軍の相手国に先制攻撃するなどということはありません。
 南西地域の防衛体制の強化、そして米軍再編及び沖縄県における反対の声についてお尋ねがありました。
 戦後最も厳しく複雑な安全保障環境に対峙していく中で、自衛隊の部隊の増強等により、南西地域の防衛体制を強化いたします。これは、国民保護の観点からも重要な考え方です。
 同時に、今回の米海兵隊の改編を含め、安全保障上極めて重要な位置にある沖縄に米軍が駐留することは、日米同盟の抑止力、対処力を構成する重要な要素です。
 厳しい安全保障環境や沖縄の戦略的重要性、三文書の考え方について、丁寧に沖縄県にも説明をしていくことが重要であると考えております。
 自衛隊司令部の地下化についてお尋ねがありました。
 自衛隊があらゆる事態において各種活動を継続的に実施できるよう、自衛隊施設の抗堪性の向上といった取組は重要です。防衛力整備計画に記載されているように、主要司令部の地下化を進めてまいります。
 こうした取組により、自衛隊の抑止力、対処力を向上させることで、武力攻撃そのものの可能性を低下させることができると考えております。
 防衛費の増額についてお尋ねがありました。
 防衛費の規模については、戦後最も厳しく複雑な安全保障環境に対峙していく中で、国民の命を守り抜けるか、極めて現実的なシミュレーションを行い、必要となる防衛力の内容を積み上げ、導き出してきたものであります。
 これらは、憲法及び国際法の範囲内で専守防衛の考え方を堅持した上で、あくまで国民の命と平和な暮らしを守り抜くために必要となるものです。そのため、我が国の平和国家としての歩みをいささかも変えるものではありません。
 抜本的に強化される防衛力は将来にわたって維持強化していかなければならず、これを安定的に支えるため、令和九年度以降、裏付けとなる毎年度約四兆円のしっかりとした財源が必要となります。財源確保に当たっては、国民の御負担をできるだけ抑えるべく、政府としてあらゆる行財政改革の努力を最大限行った上で、それでも足りない分については、将来の世代に先送りすることなく、令和九年度に向けて、今を生きる我々が将来世代への責任として対応すべきものであると考えております。
 その際、歳出改革については、骨太方針に基づき、社会保障関係費以外の経費を対象とし、これまでの歳出改革の取組を実質的に継続する中で防衛力強化のための財源を確保するものです。
 御指摘の中小企業対策費、農林水産関係予算、文教予算を始めとする個々の予算については、経済、物価動向等も踏まえた上で必要な額を措置してまいります。また、税制措置については、国民の負担感をできるだけ抑える観点から、個人、中小企業への影響に最大限配慮する仕組みとすることとしております。
 こうした内閣の方針について、国民の皆様に御理解を深めていただけるよう、国会での議論を含め、引き続き丁寧に説明を行ってまいります。
 そして、ASEANとの協力を通じた平和への取組についてお尋ねがありました。
 御指摘のアジア・サミットの議長声明はカンボジアが議長国の権限で発したものですが、その上で、我が国が新たに策定した国家安全保障戦略においても、外交を通じて地域の平和と繁栄を維持していくこと、これを基本としております。今回の防衛力強化はそうした外交の裏付けとなるものであり、これは平和的な対話の継続、増進と矛盾するものではありません。
 また、我が国は、自由で開かれたインド太平洋、FOIPと本質的な原則を共有するインド太平洋に関するASEANアウトルック、AOIPを一貫して強く支持してきており、そのことは先般の日米共同声明でも確認をしています。
 我が国としては、ASEANを含む関係国と緊密に連携しつつ、FOIPを推進していくとともに、AOIPに示されているような地域の平和と繁栄に積極的に貢献をしていく考えです。また、日米同盟の抑止力、対処力の強化も地域の平和と繁栄に貢献するためのものであると考えております。
 賃上げについてお尋ねがありました。
 賃上げは新しい資本主義の最重要課題であり、まずはこの春の賃金交渉に向け、物価上昇を超える賃上げに取り組んでいただくべく、民間だけに任せることなく、政府としても政策を総動員して環境整備に取り組んでいます。
 具体的には、賃上げ税制や補助金等における賃上げ企業の優遇などの取組に加え、公的セクターや政府調達に参加する企業で働く方の賃金引上げなどにより取組を進めるとともに、中小企業における賃上げ実現に向けて、生産性向上などへの支援の一層の強化や、公正取引委員会や中小企業庁における下請Gメンの大幅な増員による下請取引の適正化、価格転嫁の促進、こうしたことに取り組んでまいります。また、最低賃金については、できる限り早期に全国加重平均千円以上となることを目指し、引き続き取り組んでまいります。
 なお、御指摘の内部留保への課税については、御指摘のように、二重課税に当たるということから、慎重な検討が必要であると考えております。何よりも大切なのは、企業の抱える現預金を人への投資やあるいは設備投資などに活用いただくということであると考えています。そのために、あらゆる政策により、この未来の投資を促していきたいと考えています。
 所得再分配と公的年金についてお尋ねがありました。
 税制や社会保障制度には所得再分配の機能があり、今後とも必要な機能が果たせるよう取り組んでまいります。
 年金については、マクロ経済スライド等により、長期的な給付と負担のバランスを確保することで将来にわたって持続可能な仕組みとしており、この仕組みの下で着実に支給をしてまいります。
 一方、物価高への対応については、年金受給者を含め、住民税非課税世帯への五万円給付など、きめ細かく対策を重層的に講じてまいりたいと思います。
 そして、消費税減税についてお尋ねがありました。
 足下の物価高騰の要因は、基本的にはエネルギー、食料品を中心とした物価高であり、こうした分野に重点を置きながら、これまでスピード感を持ってきめ細やかな対応を行ってまいりました。
 特に、家計への影響が大きい低所得者、低所得世帯に対しては、昨年六月から、低所得の子育て世帯に対して児童一人当たり五万円を給付し、昨年十月頃から、住民税非課税世帯への五万円給付が開始され、現時点で対象世帯の約九割に、失礼、約七割に給付金が支給されるなど、重層的な支援策を切れ目なく講じてきました。
 こうした対策によって、物価高から国民生活を守り抜いてまいります。
 その上で、消費税については、急速な高齢化等に伴い社会保障給付費が大きく増加する中で、全ての世代が広く公平に分かち合う観点から、社会保障の財源として位置付けられております。
 このような消費税は、社会保障制度を支える重要な財源であるため、減税は考えておりません。
 インボイス制度についてお尋ねがありました。
 インボイス制度は、複数税率の下で適正な課税を確保するために必要なものです。御指摘のような小規模事業者の方々の御懸念について、様々な声に耳を傾け、政府一体で連携して丁寧に課題を把握しながら、きめ細かく対応してまいります。
 具体的には、フリーランスの方々を含め、免税事業者を始めとした事業者の取引について、取引環境の整備に取り組むとともに、令和四年度補正予算においてインボイス対応のための支援策の充実を盛り込み、さらに、令和五年度税制改正において新たな負担軽減措置を講ずることとしております。
 引き続き、制度の円滑な実施に向けて万全の体制を図ってまいります。
 一億円の壁についてお尋ねがありました。
 いわゆる一億円の壁と呼ばれる問題については、税負担の公平性を確保する観点から、市場への影響も踏まえ、総合的な検討を行うこととしてきました。
 今回の措置は、一億円を超える所得の実態等も踏まえつつ、与党税制調査会において総合的な観点から御議論いただいた上で決定したものであり、これによって税負担の公平性の確保に向けて一定の対応が図られたものであると認識をしております。
 酪農についてお尋ねがありました。
 酪農については、肥料、飼料の高騰や新型コロナによる需要の減少により、大変厳しい経営環境にあると認識をしております。
 政府は、これまで、累次にわたりきめ細かい肥料、飼料の生産コスト抑制策を講じてきたところであり、先般も、配合飼料コストを抑制するための追加策を講ずる指示をしたところであります。
 その上で、総合経済対策で講じた生乳の生産抑制の取組支援に加え、前年比二割以上増加している牛乳、乳製品の輸出拡大の更なる支援、加工原料乳向け補助金単価の引上げ、こうしたことにより酪農経営の安定化を図ってまいります。
 教育費の負担軽減についてお尋ねがありました。
 教育費の負担軽減については、幼児教育、保育の無償化や高校等の授業料支援、高等教育の無償化などを行ってきました。さらに、令和六年度からは、給付型奨学金等について、多子世帯や理工農系の学生等の中間層への対象を拡大するとともに、出世払い型の奨学金制度の導入に取り組むこととしております。
 その上で、今般、子ども・子育て政策を最重要政策と位置付け、まずは、今の社会において必要とされる子ども・子育て政策の内容、具体化してまいります。
 保育士の配置基準の見直し、処遇改善についてお尋ねがありました。
 保育士等の配置改善については重要な課題であると考えており、平成二十七年度から三歳児に対する職員の配置改善に取り組んでいます。更なる配置改善についても引き続き努力をしてまいります。
 そして、令和五年度予算案においては、現場の保育士の負担軽減を図るために、大規模な保育所においてチーム保育推進加算の充実を行うほか、見落としなどによる園児の事故を防止するための支援員の配置、これを推進することとしております。
 保育士等の処遇改善については、給与を恒久的に三%程度引き上げるための措置など、これまでも累次の処遇改善を講じてきたところですが、今後も、公的価格評価検討委員会の中間整理を踏まえ、見える化を図りながら、現場で働く方々の処遇改善や業務の効率化、負担軽減、これらを進めていきたいと思います。
 そして、少子化の原因に関する認識についてお尋ねがありました。
 少子化の背景には、個々人の結婚や出産、子育ての希望の実現を阻む様々な要因が複雑に絡み合っていると認識をしておりますが、御指摘のような仕事と子育ての両立の難しさも大きな課題の一つであると挙げることができます。そして、少子化対策に当たっても、働き方改革の推進とそれを支える制度の充実を図り、男女共に働きやすい環境を実現すること、これが重要です。
 これまでの取組により女性の就労は大きく増え、いわゆるM字カーブの問題は解消に向かっていますが、いわゆるL字カーブの解消や男女間の賃金格差の是正、これは引き続き喫緊の課題です。
 男女間の賃金格差に係る情報の開示や女性に多い非正規雇用労働者の待遇改善、正規化の促進等により男女間の賃金格差の是正に取り組むとともに、女性の就労の壁となっている制度の見直し、男女共にこれまで以上に育児休業を取得しやすい制度の導入、これらを進めてまいります。
 ジェンダー平等社会についてお尋ねがありました。
 女性活躍、男女共同参画は、全ての人が生きがいを感じられる、多様性が尊重される社会の実現に重要です。先ほど申し上げたいわゆるL字カーブの解消や男女間の賃金格差の是正に加え、配偶者による暴力防止の取組を強化するため、DV防止法の改正に取り組むなど、政府一体となって全力で取組を進めてまいります。
 なお、選択的夫婦別氏制度の導入については、現在でも国民の間に様々な意見があることから、しっかりと議論をし、より幅広い国民の理解を得る必要があると感じております。また、同性婚制度の導入については、我が国の家族の在り方の根幹に関わる問題であり、極めて慎重な検討を要するものであると考えております。
 エネルギー政策とその議論の進め方についてお尋ねがありました。
 歴史上初の世界エネルギー危機に直面していると言われる中、エネルギー政策については、いわゆるSプラス3Eの原則の中で、近年は脱炭素に重きを置いて検討を進めてまいりましたが、これからはエネルギーの安定供給と脱炭素をいかに両立させるか、これが重要です。再エネ導入を最優先としつつ、原子力を含めたあらゆるエネルギー源の活用を進める必要があります。
 原子力については、万一事故が起こってしまった場合の被害が大したことがないというようなことは決して考えてはおりません。安全神話に陥ってしまった東京電力福島第一原子力発電所事故の反省を踏まえ、いかなる場合もゼロリスクはないという認識に立ち、安全性の確保を最優先として取り組んでまいります。
 石炭火力については、二〇五〇年カーボンニュートラルの実現に向けて、安定供給を大前提に、いたずらに延命させず、できる限り電力、失礼、発電比率を引き下げていく方針であり、二〇三〇年に向けて非効率石炭火力のフェードアウトを着実に進めてまいります。
 また、GXや国家安全保障戦略等の議論の進め方については、これまで政府・与党において活発な議論を積み重ね、その集大成として、政権与党としての方針を、年末にGXに向けた基本方針に取りまとめ、また三文書の閣議決定の形で、それぞれお示しをしたものであります。
 議院内閣制の下では政権与党が国政を預かっており、まず政権与党において議論を掛けて、丁寧なプロセスを経て方針を決定をいたしました。この決定を踏まえて、今国会に関連予算案等を提出し、与野党との活発な国会論戦を行い、それによって更に国民の皆様への丁寧な説明も行うこととしており、議会制民主主義を無視しているという御指摘は当たらないと考えております。
 日本学術会議についてお尋ねをいただきました。
 令和二年十月の日本学術会議の会員任命については、日本学術会議法に沿って、任命権者である当時の内閣総理大臣が判断したものであると承知をしております。また、会員の任命は、一般の公務員と同様、その理由については、人事に関することであるから、お答えは差し控えます。
 そして、日本学術会議が国民から理解され信頼される存在であり続けるためには、国費が投入される国の機関でありながら独立して職務を行う以上、徹底した透明性、そしてガバナンス機能の強化が必要とされます。対話機能の強化、科学的助言機能の強化、会員選考における透明性の向上などについて、政府の考え方を学術会議に丁寧に説明しながら、更なる改革を進めていきたいと考えております。

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