赤旗2022年12月24日付
日本共産党書記局長 小池晃
日本共産党の小池晃書記局長は23日、2023年度政府予算案について、次の談話を発表しました。
一、本日、岸田内閣が閣議決定した2023年度予算案は、「戦後の安全保障政策の大転換」を掲げて「専守防衛」を完全にかなぐり捨てることを宣言した「安保3文書」にもとづいて、5年間で43兆円という大軍拡を進める初年度予算であり、「戦争国家づくり元年予算」というべきものとなった。
軍事費は、再来年度以降の軍事費に充てる「防衛力強化資金」(仮称)への繰り入れを含めて前年度比4・8兆円増の10・2兆円に膨れ上がった。歳出総額114兆円の9%、歳出増加額7兆円の7割が軍事費関係に充てられるという異常な軍拡予算となり、そのために暮らしの予算が犠牲にされている。まさに、憲法と平和、暮らしを破壊する、戦後最悪の予算案にほかならない。
一、予算案は、「安保3文書」が明記した敵基地攻撃能力の保有を具体化する項目が目白押しとなっている。イラク戦争で米軍が先制攻撃に使用した長距離巡航ミサイル「トマホーク」の購入、国産12式地対艦誘導弾を長射程化するための開発と量産、高速滑空弾の研究・量産、極超音速誘導弾の開発、トマホーク以外の外国製ミサイルの取得などである。「3文書」では、日本が攻撃されていない米国の戦争でも、自衛隊がこれらの兵器で相手国に攻め込むことが可能とされており、そうなれば甚大な報復攻撃を受けて日本の国土が焦土と化すことになる。
一、軍事費は「防衛力強化資金」への繰り入れ分を除いても6・8兆円で、対国内総生産(GDP)比で1・2%となった。政府は、これまで60年以上にわたって、軍事費を少なくとも当初予算では「GDP比1%以内」にとどめてきたが、これを公然と踏みにじるものである。さらに、「軍事費は建設国債の対象としない」というこれまでの政府方針を変更して自衛隊の艦船整備に建設国債を充てるなど、侵略戦争への反省の上に立って築かれた財政のルールを投げ捨て、なりふり構わず軍拡財源を確保しようとする予算となっている。
一、軍拡のために、暮らしの予算は軒並み削減された。社会保障費は医療費の削減と負担増、雇用対策費の削減によって1500億円も圧縮され、年金給付は実質削減となった。中小企業予算、農業予算も連続の削減となった。軍事費の倍増ばかりが優先され、岸田首相が掲げた「子育て予算倍増」は、まったく看板倒れとなった。国立病院などの積立金や、コロナ対策資金の一部まで、「防衛力強化資金」の財源に充当された。物価高騰が国民を苦しめている最中に、暮らしの予算を削って軍事費につぎ込むという、血も涙もない悪政である。しかも、数年後からは、復興特別所得税まで軍事費に流用し、国民に軍拡増税を押し付けることも予定されている。文字通り「軍事栄えて民滅ぶ」予算にほかならない。
一、物価高騰やコロナ危機への対応はまったく不十分なうえ、国会にはからず政府が勝手に使用できる予備費5兆円を計上するという財政民主主義に反する手法が今回も繰り返されている。岸田首相が掲げる「新しい資本主義」の正体も、ますます明らかとなった。富裕層優遇の象徴とも言える「1億円の壁」の是正はまったく名ばかりのものとなった。「GX(グリーントランスフォーメーション)経済移行債」を1・6兆円発行するとしているが、原発維持を目的とした「次世代革新炉」などへの投資も予定されており、環境対策の名に値しないものである。
一、いま日本が取り組むべきことは、大軍拡と戦争準備ではなく、憲法9条を生かした平和の外交戦略を進めることである。日本共産党は、2023年度予算案に断固反対し、平和と暮らしを守る予算への抜本的な組み替えを求めて、たたかうものである。