赤旗2022年6月2日付
参院予算委
政府は、安保法制に基づく集団的自衛権行使として敵基地攻撃を行うことを認めました。日本共産党の小池晃書記局長が5月31日の参院予算委員会で岸信夫防衛相を追及し、岸氏が答えたもの。日本に対する攻撃がないのに、米国を攻撃する第三国に対する集団的自衛権の行使は、第三国との関係では先制攻撃となります。しかも、米国に対する攻撃の有無を日本が独自に判断できるのかという問題があり、米国に対する攻撃の有無さえ不明確なまま、米国主導で日本が戦争参加し、日本に対する反撃を招くという重大な危険があります。
新3要件根拠に
小池氏は、「安保法制に基づく集団的自衛権の行使にあたっても敵基地攻撃は可能か」と追及。岸氏は、以前から誘導弾の基地等をたたくといった他国領域における武力行動は許されうるとされてきたとしたうえで、「その後の平和安全法制(安保法制)の成立により、武力行使の要件はいわゆる新3要件となった。わが国の武力の行使は新3要件に基づいて行われると認識をしている」と答弁しました。
新3要件のもと、まさに集団的自衛権の行使として、敵基地攻撃が行われることを認めたのです。
同29日のNHK日曜討論では、自民党の小野寺五典元防衛相が敵基地攻撃をする場合とは「日本が攻撃されているということだ」と発言していました。小池氏は、「いまの答弁で言うと、日本が攻撃されていない集団的自衛権行使の場面でも敵基地攻撃はあり得るということになる」としたうえで、岸田文雄首相に「わが国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃の『着手』とは、どういう事態を言うのか、いったい誰が、どのようなことをもって着手と判断するのか」とただしました。
首相は、集団的自衛権の行使として敵基地攻撃がありうることは否定せず、「(着手は)その時点での国際情勢、相手方の明示された意図、攻撃の手段、対応によって判断する。事態の個別具体的な状況に即して持ちうる全ての情報を総合し、客観的合理的に判断する」などと答えました。
これに対し小池氏が「判断する主体はどこか」と質問。松野博一官房長官は「わが国と密接な関係にある他国との間において、当然情報交換、情勢分析、意見交換等のやりとりを緊密に行う。武力攻撃の発生のタイミングに関わる判断は、政府として実際に発生した事態の個別具体的な状況に即して、このようなやりとりにより得られたものも含め、持ち得る全ての情報を総合して客観的合理的かつ主体的に判断する」などと述べました。
米の情報に依拠
小池氏は、「他国への攻撃の着手を判断すること自体、極めて困難なことだ」と指摘。「日本に対する武力攻撃ではなく、アメリカなどの同盟国に対する武力攻撃の着手を、日本がどうやって主体的に判断するのか。圧倒的な情報収集能力を持っているアメリカの判断に依拠することになることは明らかだ」と批判しました。
松野氏は「情報を総合して、客観的合理的にわが国の主体的な判断による」とおうむ返ししました。
小池氏は「無理筋だ」と一喝。「アメリカの武力攻撃に、いままで日本は反対したことが一度もない。主体的な判断ができないではないか。結局、日本に対する武力攻撃がなくても、アメリカがどこかの国と戦争を始めたら、自衛隊が一緒になって、相手国の基地だけではなく、指揮統制機能、すなわち相手国の中枢まで攻撃することになる。これが、憲法が禁止した、放棄した戦争でなくて何なのか」と重ねて厳しく批判し、安保法制の廃止を改めて求めました。