赤旗2021年12月18日付
日本共産党の小池晃書記局長は17日の参院予算委員会で、岸田文雄首相の新型コロナ対策や賃上げ政策、「敵基地攻撃能力」保有の欺瞞(ぎまん)を鋭く批判しました。また、安倍政権時代からの異常な隠ぺい体質に徹底的にメスを入れ、コロナ対策に逆行した病床削減計画の中止、貧困と格差克服のための最低賃金の引き上げ、選択的夫婦別姓の導入や法制化を提案しました。
国交統計書き換え
国交相「(指示した)文書知らない」
小池氏「極めて無責任だ」
小池氏は、安倍政権時代からの異常な改ざん・隠ぺい体質に徹底的にメスを入れ、ウミを出し切るべきだと迫りました。
国土交通省では、統計調査の書き直し、二重計上していたことが発覚しています。小池氏は「統計をゆがめる異常なものだ」とただしました。
小池 書き換えを指示した文書があるのではないか。
斉藤鉄夫国交相 私自身、その文書を知らない。文書の存在を含めて第三者委員会で検証を行う。
小池 極めて無責任だ。19年に一斉点検されたが見落とされた。もう一度、全省庁の統計を点検し直す必要がある。
小池氏は、統計改ざんが始まったのは2013年の安倍政権の時だと指摘。「桜を見る会」の名簿シュレッダー、自衛隊のイラク派遣日誌の隠ぺい、裁量労働制のデータも改ざんなどが相次いだことをあげ、「政権の都合に合わせて改ざん、隠ぺいすることは許されない」と述べ、集中審議の開催を求めました。
森友問題
首相「説明責任果たす」
小池氏「具体的に何もしない」
小池氏は、森友問題について真相解明を求めました。森友問題で財務省の文書改ざんを強要され命を絶った近畿財務局職員の赤木俊夫さんの妻・雅子さんが損害賠償を求めた訴訟を政府が「認諾」で終結させたことをめぐって、妻・雅子さんが17日に財務省に抗議文を届けたとして、「雅子さんの求める再調査の要求に応えるべきだ」と岸田首相に迫りました。
首相 あらゆる場で説明責任を果たす。
小池 口では「説明責任」と言うが、具体的には何もしない。安倍・菅政権と同じだ。
小池氏は、国会で真相を明らかにすべきだとして、当時の理財局幹部らの参考人招致を求めました。
病床削減
首相「統廃合ありきではない」
小池氏「数値目標撤回せよ」
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空港検疫など水際対策に関して、小池氏が入国時のオミクロン株陽性者と入国3日後以降の陽性が判明した人数を質問。後藤茂之厚労相は、「空港検疫での新型コロナ陽性は89人。このうち3日目以降の検査では29人が判明した」と答えました。
小池氏は、オミクロン株の陽性者の3割が入国時に陰性だったと指摘。抗原定量検査より感度の高いPCR検査に切り替えるべきだと主張しました。
医療体制について小池氏は、政府が公立・公的病院にコロナ感染者の受け入れの病床確保を求めながら、「地域医療構想」の名で430病院の統廃合計画を進め、急性期病床20万床の削減をしようとしていると指摘。「パンデミック(世界的流行)対策に逆行する」とただしました。
岸田首相が「統廃合ありきではない」と述べたのに対し、小池氏は「統廃合ありきではないなら、数値目標は撤回するべきではないか」と迫りました。
そのうえで、小池氏は「地域医療構想」を策定した時点から急性期病床の削減は進んでおらず、病床削減計画の実態は2018年73万床、19年71・1万床、20年70・3万床だとして、次のようにただしました。
小池 病床削減が進んでいない理由は。
厚労相 新型コロナ対応もあり、関係者による協議が進んでいない。
小池 急性期病床がなくならないのは、地域のニーズがあるからだ。
小池氏は、いまの地域医療構想には、感染症対応が全く含まれていないことなどをあげ、「『医療提供体制に余裕がないと、感染症有事には備えられない』というのが、医療界の一致した見解だ」と、病院削減計画の撤回を強く求めました。
ケア労働
小池氏「自然増は全て人件費に回せるか」
厚労相「無理だと思います」
小池氏は、医療、介護、保育などのケア労働の大幅賃上げへむけ診療報酬の改定を迫りました。
岸田首相は介護士や保育士の賃金を月額9千円引き上げるとしています。しかし、他の職種にも配分してよい仕組みのため、1人当たりの賃上げ幅は限りなく下がっていきます。
小池氏は、都内の園児数93人の保育園では10人の保育士配置基準に加え、パート職員を含め25人の勤務体制だとして、次のようにただしました。
小池 お金は国の配置基準分しか配られない。手元に届くのは1人9千円でなく3千円程度。こういうことがおこりうる仕組みか。
野田聖子少子化担当相 各職員の改善額にばらつきが生じうる。
小池氏はケア労働者の賃金不足額は平均月額4万285円だというアンケート結果を紹介。現場の切実な声に応えるよう迫りました。
また小池氏は、看護師たちの願いは、人員を増やし、賃金の抜本引き上げだと強調。看護師の配置基準の患者7人に看護師1人では対応できず、実際には手厚く配置しており、日本看護協会は診療報酬を改定し、急性期医療では「5対1看護」加算などを求めているとして次のように迫りました。
小池 財務省は診療報酬をちゅうちょなく下げよと言っている。財務省は自然増5400億円で看護師2・5%の賃上げができるというが、自然増は全て人件費に回せるか。
後藤茂之厚労相 無理だろうと思う。
小池氏は自民党の「国民の医療を守る議員の会」も診療報酬の大幅なプラス改定を求めていると強調。党派を超えた声に応えるべきだと主張しました。
最低賃金
小池氏 各国参考に1000円実現を
首相「経済状況はさまざまだ」
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コロナ禍でさらに広がる格差と貧困を克服するために政府にできる賃上げ策が最低賃金の引き上げです。
政府は「骨太の方針2021」で「感染症下でも最低賃金を引き上げてきた諸外国の取り組みも参考に」「感染症拡大前にわが国で引き上げてきた実績を踏まえ」、早期に全国加重平均1000円とするとしてきました。
小池氏は、「感染症拡大前のわが国の実績」(年率3%程度)なら最低額の時給820円が1000円を超えるのは7年後になってしまうと指摘。一方、諸外国では今年イギリスが6・6%、ドイツが8・85%引き上げたが、諸外国を参考に日本も7・5%引き上げれば、全国平均が来年1000円になると指摘しました。
小池 第一歩として全国どこでも時給1000円をただちに実現すべきだ。
首相 各国とも経済状況はさまざまだ。
小池氏は最賃の地域間格差が10年で2倍以上に拡大していると批判。国際労働機関(ILO)によれば、地域別最賃制度の国は中国、カナダ、インドネシアと日本の4カ国だけだと指摘し、全国一律に踏み切るよう求めました。
小池氏はまた、時給1500円への最賃引き上げ目標を明確にして、そのために中小企業を支援すべきだと力説。フランスでは毎年2兆円超の社会保険料の事業主負担を軽減して最賃を引き上げていると指摘し、日本でも中小企業にとっては法人税よりはるかに負担が重い社会保険料の事業主負担の補てんを行うなど、最賃引き上げに政策を総動員するよう求めました。
夫婦別姓
小池氏 早期実現の責任果たせ
首相 明確に答えず
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選択的夫婦別姓に話を進めた小池氏は、地方議会からの推進を求める意見書が307件に達していることを指摘。政府は、結婚前の姓を併用する「通称使用」の拡大に力を入れているが、二つの名前を管理することは実務的にも経済的にも負担となるなど、「世界でも通用しないやり方だ」と強調しました。
小池氏は「結婚で夫婦同姓を強制させる今の制度は人権侵害だし、姓を変えること自体が大きな負担になる」と選択的別姓導入を求めました。
総選挙で当選した自民党衆院議員へのアンケートでは、261人のうち「どちらかといえば」を含め「反対」は73人。自民党でも少数派です。岸田氏も同党の「選択的夫婦別氏制度を早期に実現する議員連盟」の呼びかけ人を務めていました。
小池 総理は早期実現を呼びかけた責任を果たすべきではないか。
首相 国民はみんな理解しているのか確信が持てない。議論は否定していない。
小池 どの世論調査でも6割以上の国民が選択的別姓に賛成だ。議論を否定しないなら国会で法案の議論を。それが国民への責任だ。
敵基地攻撃能力
小池氏「歯止めなき軍拡競争」
首相「国民の命守るため」
小池氏「生活支える予算圧迫」
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「敵基地攻撃能力について検討する」―。首相として初めて相手国のミサイル発射拠点を直接たたく「敵基地攻撃能力」保有の検討を公言した岸田首相。小池氏は全面戦争につながる重大な危険性に迫りました。
小池氏は敵基地攻撃について、「一般的にどのようなオペレーションを必要とするのか」と追及。岸信夫防衛相は、他国領域での制空権確保、基地無力化など「一連のオペレーションを行う必要があるという旨答弁している」と述べ、小池氏が敵基地攻撃のオペレーションとして示したパネルの内容を確認。岸田首相も「示してもらったのも一つの例。さまざまなパターンが考えられる」と認めました。
小池氏は「一発ミサイルを撃つという話ではない。相手の領域まで乗り込み、ミサイル基地をしらみつぶしに攻撃するものだ」と告発しました。
さらに小池氏は、岸田首相が、極超音速滑空兵器や変則軌道で飛翔(ひしょう)するミサイルが進化していることを敵基地攻撃能力保有の理由としていることに言及。ミサイル開発競争の背景には、「米国の弾道ミサイル防衛(BMD)に日本も加わることで他国の対抗策を招き、軍事対軍事の悪循環の危険に進んできたことがある」として、次のように追及しました。
小池 敵基地攻撃能力の保有に踏み出せば、いっそう歯止めなき軍拡競争となる。
首相 国民の命や暮らしを守るため、どういった対応が必要か議論をしたい。
小池 国民の命を守るというが、大軍拡の道を進んでいったら国民生活を支える予算はさらに圧迫される。
小池氏は、F35、護衛艦いずもの空母化・長距離巡航ミサイルの導入など、先制攻撃も辞さない大転換の下、軍事費GDP2%以上の大軍拡に道を開いていると主張。「安保法制に続く、憲法の平和主義・立憲主義の破壊を断じて許さない」と訴えました。