赤旗2020年10月31日付
参院本会議
日本共産党の小池晃書記局長は30日の参院本会議の代表質問で、菅義偉首相が日本学術会議の会員候補6人を任命拒否した問題や、新型コロナウイルス感染症対策、温室効果ガスの排出削減、沖縄の米軍辺野古新基地建設、ジェンダー平等、核兵器禁止条約など多岐にわたる国政の課題を取り上げ、菅首相の姿勢をただしました。
学術会議人事介入
「学問の自由」脅かす任命拒否の撤回迫る
「会員候補6人の任命拒否は、民主主義と法治国家のあり方に対する総理の基本姿勢を根本から問うものだ」―。小池氏は、日本学術会議法に反し、憲法が保障する「学問の自由」を脅かす任命拒否の撤回を迫りました。
会員が任命制になって37年間、学術会議推薦の会員が任命されなかったことはありません。小池氏は「任命拒否の理由を誠実に説明する責任がある」と追及しましたが、菅首相は一切答えませんでした。
小池氏は、「推薦の通り任命しなければならないわけではないと内閣法制局の了解を得た」という首相の主張について、「当時の学術会議会長にも、意思決定機関の幹事会にも伝わっていなかった」と指摘。「これでどうして首相の新たな権限行使が正当化できるのか」とただし、従来の国会答弁と異なる法解釈を政府が勝手に判断できるなら「国会審議の意味がなくなる」と追及しました。
菅首相は、「推薦の通り任命しなければならないわけではない」というのが政府の一貫した考えだと強弁しました。
小池氏は、任命拒否の理由として「民間出身者や若手が少ない。出身や大学に偏りがみられる」と首相が述べている根拠をただしました。菅首相は「旧帝国大学といわれる七つの国立大学に所属する会員が45%を占めている」などと新たな理由を持ち出して任命拒否を正当化。この間、学術会議が男女比や地域、特定大学への集中を是正させてきた努力には触れず、50代前半や女性、私立大学の研究者を任命拒否したこととの矛盾には答えませんでした。
コロナ対策
医療現場支援、暮らし・営業の危機打開を急げ
小池氏は、新型コロナウイルスの感染者が広がる中、国の政策の不備による「医療崩壊」が起こる事態はあってはならないと主張。政府は新型コロナ患者を受け入れた医療機関に支援の対象を絞っているが、コロナ患者を受け入れていない病院や診療所の受診抑制による深刻な経営危機の打開のため、全ての医療機関への減収補てんを求めました。菅首相は1次・2次補正予算での支援を述べただけで、減収補てんには一言も触れませんでした。
小池氏は、コロナの影響が長期化するなか、小口倒産、個人事業主の自己破産が増加しているとして「政府がやるべきは内部留保を抱える大企業ではなく、中小企業へ直接支援をすることだ」と指摘。年末に向けリストラが加速する可能性があるとして、「誰も路頭に迷わせない、どんな業者もつぶさないことが最大の経済対策だ」と迫りました。菅首相は事業継続、雇用維持に全力で取り組むと答えました。
小池氏は、中小企業への具体的支援として▽雇用調整助成金の特例措置の延長と拡充・手続きの簡素化▽持続化給付金の要件改善と複数回支給▽休業支援金の是正―を求めました。
また、多くの国民が失業や収入減などに苦しむ中、大資産家の資産は増加しているとして「巨大な格差を生み出す経済社会が長続きするのか、根本から問われている」と指摘。消費税の5%減税、財源は富裕層や大企業に応分の負担を求めました。しかし、菅首相は「消費税は社会保障に必要な財源」として減税を拒否し、国民の実態を見ない冷たい姿勢をあらわにしました。
温室効果ガス削減
石炭火発・原発ゼロに 再生可能エネ推進こそ
小池氏は、菅首相が「2050年までの温室効果ガス排出ゼロ」を述べたことについて、「30年先の『空手形』に終わらせないために今何をするかが重要だ」と強調しました。
小池氏は、建設中・計画中の石炭火力発電所が17基ある事実を示し、「50年まで稼働し続ければ、『ゼロ宣言』は絵に描いた餅で終わる」と指摘。「『石炭火力発電の政策を抜本的に転換する』というのであれば、建設の中止、既存発電所の計画的な停止・廃止の明言を」と迫りました。
同時に、先進国の中で遅れている再生可能エネルギーの本格的な導入が必要だと指摘。経済同友会や34道府県を正会員とする自然エネルギー協議会も求めるように、30年の発電に占める目標を少なくとも4割以上にするよう求めました。
菅首相は再エネを最大限導入するとし、石炭火力は「イノベーションを追求」と述べただけ。「将来像について集中的に議論する」との答弁にとどまりました。
小池氏は、東京電力の福島第1原発事故で発生した放射能汚染水の海洋放出について、「漁業者らから怒りの声が上がり、県内7割の議会が反対・慎重な対応を求めている」と指摘。菅首相が温室効果ガスゼロに原子力を含めていることについて、「生命の危機を引き起こす原発に頼るなど言語道断、時代錯誤の極みだ」と批判しました。
菅首相は汚染水問題について「先送りできない」と福島県民らの訴えに背を向け、原発に依存する姿勢を示しました。
辺野古新基地
沖縄の歴史に向き合い断念と「普天間」撤去を
米軍普天間基地(沖縄県宜野湾市)の「一日も早い危険性除去」を口実に、名護市辺野古の新基地建設を「着実に進める」という菅首相。しかし、軟弱地盤の改良工事に伴い、政府の試算でも完成まで12年かかります。
小池氏は、日米両政府の普天間基地全面返還合意から来年4月で25年だとし、「そのうえ12年以上もかかる計画のどこが『一日も早い危険性除去』なのか。破綻は明白だ」と迫りました。菅首相は「辺野古が唯一の解決策」と、硬直した考えに固執しました。
小池氏は、政府の埋め立て土砂採取計画で、沖縄戦の激戦地だった本島南部の糸満市と八重瀬町が土砂調達可能量の7割を占めることについて、戦後75年を経ても戦没者の遺骨が発見され、遺族に送り届ける活動が続いている地域だと指摘。沖縄戦遺骨収集ボランティア「ガマフヤー」の具志堅隆松代表の「戦争で亡くなった人の遺骨を岩ズリと一緒に軍事基地の埋め立てに使うなど戦没者への冒涜(ぼうとく)だ」との声をぶつけましたが、菅首相は「法令で認められた採石場から調達される」と冷たく言い放ちました。
小池氏は、戦後の米軍統治下で基地が造られた経緯を語り、新基地中止を訴えた翁長雄志前知事に当時官房長官だった菅首相が「戦後生まれで沖縄の歴史はわからない」と述べたことにふれ、「この姿勢が県民に寄り添うと言えるのか」と追及。「沖縄の苦難の歴史に向き合い、新基地断念と普天間基地の閉鎖・撤去に正面から取り組むことこそ政府の責任だ」と主張しました。
核兵器禁止条約
唯一の被爆国として速やかに署名・批准を
批准国が50に達し、発効が確定した核兵器禁止条約。小池氏は、核兵器の開発・実験・生産・保有から使用と威嚇まで違法化し、核兵器に「悪の烙印(らくいん)」を押す画期的な国際条約だとして、「日本共産党は、被爆者をはじめとする『核なき世界』を求める世界の声が結実した巨大な一歩を心から歓迎する」と表明しました。
一方、政府が同条約に背を向けていることは「唯一の戦争被爆国としてきわめて恥ずべきこと」と批判。ノーベル平和賞を受賞した、核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)のベアトリス・フィン事務局長が「日本が(この条約に)加われば、世界にとてつもない衝撃を与える。その決断は、核保有国の姿勢を擁護している他の国々が核兵器を拒絶する引き金になる」と述べていることを紹介し、「この声にどうこたえるか」とただしました。
菅首相は、核保有国・非保有国の「支持が得られていない」などと主張し、「抑止力」を強調して「同条約に署名する考えはない」と述べました。
小池氏は、日本が核兵器廃絶に向けた「国際社会の取り組みをリードする」というなら、すみやかに条約に署名し批准すべきだと求めました。
杉田水脈議員暴言
自民党の総裁として議員辞職させるべき
小池氏は、性暴力被害に関わって自民党の杉田水脈衆院議員の「女性はいくらでもうそをつけますから」との暴言を批判。性暴力被害者を再び深く傷つけ、性暴力根絶を求めるフラワーデモなどの運動に冷や水を浴びせるものであり「断じて許されない」と訴えました。
杉田氏は何度も暴言を繰り返しているとして、「度重なる暴言を今回も容認するのか。自民党総裁として議員辞職させるべきだ」とただしましたが、菅首相は「コメントは差し控える」と述べるだけでした。
小池氏は、日本が国連の「女性差別撤廃条約」に批准して35年たつのに、世界の男女格差の度合いを示すジェンダーギャップ指数は121位と年々後退していると告発。条約の実効性を強化するための選択議定書について、「もはや先送りは許されない。年内に閣議決定される第5次男女共同参画基本計画で、これまでのように『真剣な検討』などではなく、ただちに批准すべきだ」と迫りました。
菅首相は、日本の司法制度や立法政策との関係で対応を検討すべき論点があり、「早期締結について真剣に検討している」と答弁しました。
首相は逃げまくっていた 持続化給付金要求ありがとう
小池書記局長の代表質問に反響
日本共産党の小池晃書記局長が30日の参院本会議で行った代表質問に対し、「素晴らしかった」などの多くの反響が党本部に電話などで寄せられました。
学術会議問題での質問について東京都の男性は「小池さんの質問は鋭いところをついており、大変分かりやすかった。菅首相は都合の悪いことには答えず、まったく答弁不能だった。来週の予算委員会でも引き続き徹底的に追及してほしい」と述べました。
東京の別の男性は「小池さんの代表質問は大変良かった。菅首相は憲法15条を繰り返すだけで、必死に逃げまくっていた。よほど痛いところを突かれたのでしょう。これからも頑張ってください」と話しました。
また、神奈川県の男性は「コロナ禍が続く中、小池さんが持続化給付金を複数回出すよう迫ったのが、非常に良かった。ありがとうございます」と述べました。