赤旗2020年8月10日付
日本共産党の小池晃書記局長は9日のNHK「日曜討論」で、新型コロナウイルス感染症対策や「敵基地攻撃能力」の保有をめぐって各党の幹事長らと議論しました。
■感染拡大
自民党の稲田朋美幹事長代行は歯止めがかからない感染拡大について、「気がかりな状況」だとしつつ「重症者数や病床占有率は(4~5月の)緊急事態宣言下とは違う」との見方を示しました。
これに対して小池氏は「重症者が少ないのは、医療現場の必死の奮闘の結果だ。その医療現場は4月よりも疲弊し、医療はひっ迫している。このまま高齢者に感染が広がれば一気に重症者が増える。深刻な事態の瀬戸際だ」と指摘しました。
「感染が集中している感染震源地から、クラスター(感染者集団)が広がっている。感染震源地の住民や働く人全体を対象に、面としての検査をやり、陽性者を隔離・保護するという、検査戦略の抜本的な転換が必要だ。検査と保健所の体制、感染者の療養施設を拡充するためには新たな財政措置も必要であり、臨時国会を開くべきだ」と求めました。
稲田氏も検査の拡大については「認識は一致している」と認めました。
■帰省や旅行
続いて、感染拡大の下での帰省や旅行が議題になりました。
小池氏は、政府の「Go To キャンペーン」について、「ウイルスは人が運ぶ。人の移動を促進するような政策をやれば感染を広げることになる」と批判。夏休みの帰省についても、「各自の判断任せでは国として無責任だ。これ以上の感染拡大を抑えるためには、流行している地域からの帰省やそこへの帰省を控えるよう、政府として統一した方針を示すべきだ。何より徹底した検査で感染を収束させて、誰もが安心して旅行や移動ができるようにするのが政府の責任だ」と求めました。
■予備費
雇用や経済対策として予備費から1兆円の支出が閣議決定されました。
小池氏は「なぜ医療体制の強化に使わないのか。PCR検査体制の強化はわずか330億円。税金の使い方が間違っている」と批判。持続化給付金も雇用調整助成金も休業給付金も必要な人に必要な額が届いておらず「さらなる財政措置はまったなしだ」と指摘しました。その上で、「9月で切れる雇用調整助成金の特例措置の延長を今日、言明してほしい」と求めました。
雇用調整助成金について、公明党の斉藤鉄夫幹事長は「政府はそういう(延長する)方向だと聞いている」と明らかにしました。
■特措法改定
新型インフルエンザ等特措法の再改定をめぐり、小池氏は「罰則の新設が前面に出ている。西村大臣はすでに事実上の補償はやっているといっており、補償抜きの罰則だけの休業要請という最悪のものになりかねない」と批判。「“今でもできることをやっていない”のが大問題だ。法改正しなくても補償はできる。休業要請の実効性をもたらすための補償をしっかりやる、その財源として、地方からは臨時交付金の増額という要求が出ており、まず、これに応えるのが政府の責任だ」と指摘しました。
国民民主党の泉健太政調会長、立憲民主党の福山哲郎幹事長も、罰則ではなく補償の充実を優先すべきとの考えを示しました。
■国会開会
野党側が臨時国会の開会を強く求めたのに対して、与党側は、与野党が閉会中審査で合意したことや、審査すべき法案の整理などをあげ、否定的な姿勢に終始しました。
小池氏は「東京都医師会の尾﨑治夫会長は、『コロナウイルスには夏休みはない』と喝破した。国会議員にも首相にも夏休みはいらない。野党は憲法に基づく臨時国会の開会を要求したのだから、これに応じないのは憲法違反だ」と強く求めました。その上で「国会には立法だけではなく行政監視機能がある。Go To キャンペーンの前倒しなどは総理が決めたと聞いている。総理が国民の疑問や不安にこたえるべきだ。閉会中審査をやるなら、総理出席の予算委員会の集中審議が絶対に必要だ」と指摘しました。
泉氏も「憲法に基づく要請ということは大きい。政府は重く受け止めるべきだ」と要求。福山氏も「小池さんが言ったように、予算委員会で総理が出て説明するよう与党としても検討すべきだ」と求めました。
■敵基地攻撃
「敵基地攻撃能力」保有などを求めた自民党の提言をめぐって議論になりました。
稲田氏は「相手領域内で(ミサイル攻撃を)阻止する能力の保有」を強調。小池氏は「すでに政府は長距離巡航ミサイルや事実上の空母を保有しようとしている。領域内阻止能力といって攻撃的兵器を保有することは、『自衛のための最小限度の範囲を超えることになり、いかなる場合も許されない』としてきた、政府の憲法上の立場を踏みにじることになる。ウォール・ストリート・ジャーナルは、日本は軍事的先制攻撃オプションに踏み出すと報じており、国際的には先制攻撃とみなされる。果てしない大軍拡になり、軍事費もますます膨れ上がる。最優先で取り組むべきはコロナ感染から国民の命を守るために予算を振り向けることだ」と求めました。
その上で「今日は長崎の被爆の日。二度とあのような悲劇を繰り返さないために、憲法9条を生かした平和外交こそ日本の果たすべき役割だ」と訴えました。
泉氏は「今は可動式ミサイルが当たり前になっており、これをピンポイントで攻撃するためには、ものすごい予算が必要になる」と指摘し、大軍拡になるとの見方を示しました。福山氏も「先制攻撃といわれるリスクは高い」と懸念を示しました。