「赤旗」2015年2月4日付
日本共産党の小池晃参院議員(副委員長)は3日の予算委員会で介護報酬の削減問題を取り上げ、その撤回を迫るとともに、社会保障の自然増削減路線の転換を強く求めました。
報酬削減は処遇改善に逆行
「介護の現場は非常に厳しい。人手不足も進んでいる。月3万円プラス1万2000円の待遇改善を図ることにした」。介護報酬の処遇改善加算(月1万2000円)をめぐる安倍晋三首相の答弁ですが、事実はどうでしょうか。
介護報酬全体では2・27%のマイナス。処遇改善加算などの上乗せを除けば、介護事業者に入る報酬はマイナス4・48%です。消費税増税や物価高も考慮すれば過去最大の引き下げ。「賃上げしろといっても、手足を縛って泳げというようなもの」(小池氏)です。
―月給は1万2000円上がったけど、経営悪化でボーナス減。
―経営悪化で人員が削減され、仕事がかえってきつくなった。
報酬削減によって、こうした事態が当然に予想されます。実際、厚労省の局長通知をみても、賞与などが「業績に連動して変動することを妨げるものではない」としています。
小池 介護報酬全体の削減は処遇改善に逆行する。
塩崎恭久厚労相 制度の持続可能性が大事だ。保険料も今後3年で15%上昇するはずだったのが、10%程度に抑制できる。低所得者の保険料も現行と同水準で維持できる。
小池 介護も医療も年金も負担増、給付減をやりながら、こういう時だけ「保険料の負担が大変だ」というのはご都合主義だ。
そもそも、処遇改善加算を始めたのは麻生政権下の補正予算(2009年)です。加算分は、保険料ではなく、国費を充当しました。
小池 保険料が上がるのが心配なら、そう(国費の充当)やればいい。
厚労相 麻生内閣は緊急的に(処遇改善が)必要だったからそうやった。基本は介護保険という保険制度のもとでやるべきだ。
小池 いまだって緊急に必要だ。
全国の事業者の不安を招く
小池氏は、法人実効税率の1・6兆円もの減税や5兆円規模の軍事費などを示し、「歳出も歳入も、見直す余地はたくさんあり、財源は十分ある」と強調しました。
さらに、“介護施設の収支差率(利益率)が良好だから報酬削減にも耐えうる”との首相の主張について「社会福祉法人は儲(もう)かりすぎだとペナルティをかけるほど愚かな行為はない」「閉鎖する法人が急増し『介護崩壊』を招く」との自民党・末松信介参院議員のブログを紹介しました。
小池 自民党内からも、こうした声がでている。こうした道理ある指摘を無視して、介護報酬削減を強行していいのか。
首相 給付費自体は毎年5%増えている。介護保険制度の持続可能性を確保するためにも、制度の重点化・効率化が必要だ。施設の状況があるから、十分に目配りしていく必要がある。
小池 一律に介護報酬を下げたら丁寧な対応になるわけがない。だから、みんな大変だと声をあげている。その声にどう応えるのか。
塩崎厚労相は「あくまでも参考として収支差を見ながらであり、決めるのはこれからだ」と答弁。
小池氏は「あくまで参考ですとは何だ。それを基に、日本中の介護事業者が不安になっている報酬引き下げをする。そんな無責任なことを言ってはいけない」と批判しました。
自然増分の削減は“破滅の道”
「事態の深刻さがわかっていない」。小池氏はこう述べ、介護現場の実態を突きつけました。
東京都の介護職員の有効求人倍率は10・5倍まで急増し、10施設が1人の職員を奪い合う状態。特養ホームの半数は職員定数を満たしていません。
さらに小池氏は、14年10月には東京都北区で介護施設の建設が突然中止となり、同区がその第一の理由に「介護報酬の引き下げ」と発表していることを示しました。
小池 介護報酬の引き下げが、求められている介護の基盤整備に重大な支障をきたすようなことになりかねない。
厚労相 今のケースを一つとりあげ、全部(建設)が止まっているというような一般化は、大きい話にすぎる。
小池 報酬引き下げを心配し、こういう例が生まれ始めていると言っている。
小泉政権時代の「構造改革」では、診療報酬の引き下げが強行され、中小病院の閉鎖・撤退が相次ぎ、地域から産科や小児科がなくなるなど「医療崩壊」の事態となりました。
小池氏は「教訓から何も学んでいない。報酬引き下げは、現場に深刻なメッセージを与える。今からでも遅くない、撤回すべきだ」と首相に迫りました。
首相 何よりも大切なことは、(介護制度を)持続可能にしていくことだ。
小池 「持続可能」と言うが、こんなことやったら、国民の暮らし、介護施設の経営、介護労働者の暮らしも持続可能にならない。
安倍首相はまた、社会保障費の自然増分を毎年2200億円削減した小泉「改革」のような「全体にキャップ(上限)をかける発想とはまったく別だ」などと主張しました。
小池氏は、安倍政権は「骨太の方針」(14年6月)で社会保障費自然増の削減を打ち出し、介護報酬引き下げ以外にも、年金の「マクロ経済スライド」の発動や医療費の負担増、生活保護費の減額などを進めようとしていることをあげて、「社会保障全体にキャップをかける、まさに小泉政権と同じようなことを始めようとしている」と告発。09年2月、当時の麻生太郎首相が「限度に来ている」として、小泉・社会保障抑制路線を転換したことを指摘し、「『限度に来ている』と言っていたものを復活すれば、限度を超える。まさに破滅の道だ。社会保障の自然増削減路線は撤回すべきだ」と求めました。