赤旗2020年5月2日付
日本共産党の小池晃書記局長は4月30日の参院予算委員会で、2020年度補正予算(同日成立)をめぐって、新型コロナウイルス感染症の危機から国民の命と生活、営業を守るために安倍政権の姿勢をただし、抜本的な支援強化を求めました。質疑の内容を詳報します。
小池「学生の学ぶ権利が瀬戸際にある――緊急の対応が必要だ」
文科相「補正予算案が十分とは考えていない」
小池「それなら直ちに財政措置をとるべきだ」
安倍内閣の7億円では1600人に1人しか学費減免にならない
小池氏は、新型コロナ感染症の影響で、大学生らに深刻な経済的困難が広がっている問題をとりあげ、政府に緊急の対策をとるよう求めました。
小池 「高等教育無償化プロジェクトFREE」のみなさんが、コロナ危機の中で、退学を検討している学生が5人に1人にのぼるという調査結果を発表しました。そして今、全国170を超える大学で授業料の減額や返還などを求めるオンライン署名が自然発生的に湧き起こり、広がっています。総理には、コロナ禍のもとで学業をあきらめる若者が広がりかねない、瀬戸際にあるという認識はありますか。緊急の対策が必要ではないでしょうか。
安倍晋三首相 4月に入学したが、実際に授業が行われず、授業料の負担が出てくる。当然、減免、先延ばしてもらいたいという気持ちもあるでしょう。またアルバイトで学費を稼ぎながら対応していきたいと思っていた学生のアルバイトの場がなくなっている。そういう学生の学びの場、生活費も含めて必要な方々に支援していきたい。
小池 いま大学教員のみなさんは、オンライン授業の準備に追われています。通常の授業ができないからといって、支出が大幅に減るわけではありません。むしろサーバーの増強など新たな支出が発生している。そういうなかでも、大学側は、学生の要求に応えて、学生への経済的支援を強めようと努力しています。たとえば、立命館大学は25億円かけて1人3万円支給。東洋大学は15億円、中央大学13億円、立教大学10億円。こうした大学の努力に応えて、自粛を要請した政府が、協力している学生や大学への支援を抜本的に強化すべきだと思います。
お聞きしますが、補正予算7億円の授業料減免。これで減免可能な学生数は何人でしょうか。
伯井美徳文部科学省高等教育局長 仮に予算額の規模から単純に計算すると、国立大学は、すべて全額免除を行うと仮定すると、約700人の免除が可能、私立大学等は各大学の授業料減免の実績に基づく平均額から算出すると約1600人の金額と試算されます。
小池 国立、私立あわせて2300人。大学、短大、専門学校生は369万人です。1600人に1人分の授業料減免にしかならない。
高等教育無償化の予算は当初いくらかかると試算していましたか。今年度、実際にどれだけ予算措置しましたか。
萩生田光一文科相 7600億円を最大と想定し、令和2年度当初予算で5300億円を措置してます。
小池 当初は、高等教育無償化7600億円。ところが予算措置したのは5300億。結局、差額2000億円以上ある。そうなると、全ての大学・大学院生、あるいは短大生、専門学校生1人当たりにすると6万円を超える額になるわけです。もっと学生を支援する余地はある。
カナダでは、8月まで毎月10万円支給
小池氏は、あしなが育英会が高校生も含む全奨学生約6500人に、緊急支援金15万円を給付し、総額は約10億円になることを示し、「あしなが育英会が10億円、政府が7億円でいいんですか」と指摘。カナダは5月から8月の4カ月間、毎月約10万円の「学生給付金」を支給することもあげ、次のように迫りました。
小池 (カナダの)トルドー首相は「経済と国の未来は、われわれが今日、学生に提供する機会と支援にかかっている」と述べました。
先ほどの学生団体FREEは、政府に学費の一律半減を求めています。日本の未来を担う若者たちに勉学をあきらめさせるようなことでは、いったい何のための政治かということになりませんか。そんなことが絶対におこらぬように、緊急に、抜本的な学生支援策をとるべきだ。
首相 生活に窮した学生への経済的支援については、本年4月から改称した高等教育無償化の枠組みにおいて入学金や授業料のみならず、家賃支出も加味した学生生活の費用をカバーするために十分な給付型奨学金の支給を行うこととしており、その際、感染拡大などの影響を受けて家計が急変した場合には、それを加味した所得見込みで支援の判定を行うこととしている。
小池 「無償化」というけど、対象は低所得者だけです。それなのに新たな支援は7億円でいいんですか。このままで学生が救われるとおっしゃるんですか。
文科相 今般の新型コロナウイルス感染症により家計が急変した世帯の学生等の支援については、令和2年度当初予算で必要な額を措置しています。また補正予算案において各大学が独自に行う授業料減免等を支援していくことを考えています。新型コロナウイルス感染症の影響が長期化することも見据えれば、今回の補正予算案が必ずしも十分だとは考えていません。
小池 補正予算は不十分だと認められました。だったら成立後に直ちに財政措置をとっていただきたい。
文科相 まずは、新制度の中でやれることを。小池先生のエールは大変うれしく思います。十分だと思っていません。予備費なども含めて今後しっかり考えていきたい。
小池 いや、それじゃダメでしょ。補正予算成立したらすぐやると言ってください。
文科相 既存のメニューで、本当に救えない学生さんがいるかどうか、しっかり見極めたうえで対応したい。
小池 不十分だと認めたんだから、それを補うのは政治の責任でしょ。直ちに措置するように求めたい。
小池「1490億円の交付金で医療機関がコロナの対応に取り組めるか」
首相「さらなる対応が必要なら、措置をとる」
医療の問題に話を進めた小池氏は、医療機関支援もPCR検査の強化も、1490億円のコロナ緊急包括支援交付金でまかなうとしていることを追及。加藤勝信厚生労働相が、1490億円の根拠は「今後の感染者数の増加を踏まえた」としていることについて、積算根拠の感染者数は何人かをただしました。
加藤厚労相は、重症の入院患者数はピーク時で1日約7400人、重症以外の入院患者数はピーク時で1日約21万人との推計を基礎に算出したと答弁しました。
小池氏は、現在の重症患者の入院は306人で、確認中を含めても1000人いないと指摘。重症以外の入院も今の1万人が21万人になることを想定して算出されたものだとして、「いまの10倍も20倍も入院患者が増えて、1490億円のままで対応できるのか」と追及しました。
厚労相が暴論“いまより10倍の患者が出ても 対処する数字”
厚労相 それも想定しながら、それぞれの施策のニーズに対処する数字をはじき出して、つくりあげたものです。
小池 驚くべき話だと思いますよ。1490億円でどうしてそんなに多くの入院患者に対応できるんですか。
東京・杉並区は、コロナ患者受け入れ病院は月2億円の損失だという。全国にあてはめたら月2400億円、半年で1・4兆円ですよ。桁違いに足りない。
しかも、交付金は病院だけでなく診療所や、PCR検査の強化にもあてる。1490億円だけで日本の医療機関がコロナの治療に安心して取り組めると思いますか。
首相 現時点で当面必要な規模を確保したものと考えております。仮にさらなる対応が必要となれば、新型コロナウイルス感染症対策予備費の活用など必要な措置を講じることにしたい。
小池氏は、「現時点の患者数でたてた予算ではないと大臣は言っている。現時点だって1490億円では対応できないと思う。しかし、いまよりも10倍も20倍も患者が増えても1490億円だと言っているから聞いている」と重ねて批判しましたが、安倍首相はまともな答弁ができませんでした。
医療機関が資金ショートしないように概算請求を認めるべきだ――医師会なども要求
その上で、小池氏は、全日本病院協会など四病院団体協議会が、日本医師会とも連名で申し入れた要望では、4月以降、入院や外来患者が大きく減少して、6月以降の資金ショート(不足)が懸念されるもとで、災害時と同様に、前年度の診療報酬支払額に基づく概算請求を認めるよう提案していることを紹介しました。
小池 もちろん、これですべてが解決するとは思いません。しかし、通常の請求と概算請求が選択できるようになれば、コロナで大幅減収となった医療機関には、前年の報酬額がタイムラグ(時間差)なしに入って一息つける。これは、阪神大震災でも東日本大震災のときも、昨年の台風19号でもやりました。緊急対応として、この四病協と日本医師会の提案に応えるべきではないか。
厚労相 災害時は、診療録やレセプト(診療報酬明細書)コンピューターが滅失して、本来の金額が請求できない。したがって過去の実績に基づいて概算請求を認めているわけです。今回の場合、請求自体の仕組みが壊れているわけではありません。ただ4月分の診療報酬の請求が5月10日になるので、その数字を見ながらですね。
小池 こういう答弁が返ってくると思いませんでしたよ。(4月分は)5月10日が締め切りなんですよ。そうすれば6月下旬には昨年水準の報酬が振り込まれるから、資金ショートしないですむ。
いままで以上にお金を出せと言っているんじゃない。いままでの実績・概算でやる。きわめて合理的なやり方です。5月の結果を見てからだったら、6月に資金ショートして日本の医療が壊れますよ。四病協、日本医師会の要望を受け止めるべきじゃありませんか。
安倍首相は、新型コロナ対応で「経営が困難になることはあってはならない」と語りながら、無利子・無担保の経営資金融資などの支援を行い、さらに困難が生じれば手だてを講じると回答。小池氏は「さらなる困難、災害時以上の困難が生まれている。総理がいまここで決断すれば、日本の医療従事者は安心できる。そういうメッセージを出すべきだ」と重ねて要求しましたが、安倍首相は「震災時とは事情が大きく違う」と冷たく背を向けました。
小池 “100万、200万の持続化給付金でやれ”。そんなことで済む話じゃないんですよ。毎月億単位で損失が生まれて、医療機関が成り立つかどうか。これで医療機関がつぶれたらどうするんですか。これでは感染対策もやれないではないか。ならば、こういう非常時の対応をやるべきじゃないですか。党派を超えた医療関係者が声を上げているのに、耳を貸さないんですか。「検討する」、そのくらいも言えないんですか。
首相 医師会からのご要望もいただいております。まずは資金の供給をして、その先、困難な状況が続く中で、経営が成り立たないということがないようにしていきたい。
小池氏は、「こんなことでは日本の医療は守れない。コロナのたたかいの最前線に立っている医療機関、医療従事者にそんなことがよく言えるなと思う。せめてこれは検討するんだと(言うべきだ)。ただちに応えてもらいたい」と重ねて求めました。
小池「PCR検査をどう1日2万件にするか――『医師が判断すれば検査』に転換したと言明せよ」
首相(従来答弁だけで明言せず)
PCR検査の問題で小池氏は、3月3日の参院予算委員会で、検査が進んでいないのは「帰国者・接触者相談センターがネックになっているのではないか」と追及し、それから2カ月が経過して、政府が保健所を介さずにPCR検査に特化した「地域外来検査センター」をようやく認めたと指摘しました。
小池 東京都医師会などのイニシアチブで一部の自治体で始まっていますが、大臣も「地域によっては」と言ったように、全国ではいまだ、以前からの枠組みのままで、医師が求めてもすぐに検査が受けられない状況が続いています。総理は可能なPCR検査件数を2万件にすると言いますが、いまでも1万5000件可能なのに、実施件数は7000件程度です。問題は検査能力ではありません。実際に検査ができていないことです。その原因は何なのか。どうやって、いつまでに1日2万件の検査を実現するんですか。
厚労相 地域のみなさんが一体に新型コロナウイルスに対する医療体制をつくり、そのなかでPCR検査も位置付けられていくわけです。こうしたものが全体としてできて初めて、PCR検査の必要なものが行われていく。どこかだけで何かすればPCR検査が上がるわけではありません。
小池 どうやって、いつまでに2万件検査を実施するのかと聞いているんです。
厚労相 医師が必要とした検査が行われるということなので、別に2万件の能力があるから2万件やると申し上げているわけではありません。いま1万5000件に上がってきた能力を、2万を超える能力にする。医師が必要とする検査が実施できる状況をつくっていく。
小池 「2万件検査をやるわけではない」といったことは重大だと思いますよ。大臣は先ほど(他の議員の質問に)「本当に必要な場合は検査する」と答弁したんですよ。私はそれがいけないと思いますよ。「本当に必要な場合」などと言うから、熱が続いて呼吸状態が悪化するまで検査が受けられない。軽症だからと自宅で過ごしていたら急激に呼吸状態が悪化して、ようやく検査を受け、陽性と判定されたときには集中治療室で人工呼吸器につながれている。そういう事態が続いているわけですよ。「本当に必要な場合」などと言って、重症になるまで検査しなかったいままでのやり方を転換すると、はっきり言うべきではありませんか。少しでも症状があって、医師が必要だと判断したら、すぐさま検査すると、それを原則にすると、この場ではっきり言ってください。
首相 医師が必要と判断すればPCR検査を受けられるようにしていく。これが政府の基本的な考え方です。
小池氏は、「そうなっていない。担当大臣が『本当に必要な場合』なんて言う。それで現場では、肺炎直前まで検査しないということが行われてしまう。それではいけないではないか。だから、『いままでのやり方を転換します』とはっきり言ってほしい」と重ねて要求しました。しかし、安倍首相は、「厚労大臣もずっと医師が必要と判断した場合ということだから、それを指す」と述べ、従来の政府方針を転換するとは明言しませんでした。
財政措置を抜本的に強め、緊急に対策をとるべきだ
小池 3月に予算委での私の質問に、“もう保険適用したから大丈夫だ”って言ったが、全然進まなかったじゃないですか。結局、公的検査の枠組みがずっといままで続いているんですよ。
重大なのは、お金をかけていないことです。「地域外来検査センター」を立ち上げようと言っていますが、開業医が診療を休んで検体採取にあたっても学校健診の報酬くらいしか出ていない。危険を伴い、休診に伴う損失補てんも必要なのに、ほとんど手弁当です。それも2分の1は地方負担。これでは広がらないでしょう。補正予算成立後に検査体制拡充のための財政措置を緊急に取るべきではありませんか。
厚労相 基本的に今回の包括交付金のなかにおいて、医師の派遣を受けるといった費用も入っております。それから、もともとPCR検査は保険適用ですから、保険適用の収入もあり、それに足りないものについては、運営費の補助事業もあります。そういったことを通じPCRセンターをつくって、実施をする。
小池 そんなことで進むわけがないでしょう。広がりませんよ。抜本的に改めて、財政支援しっかりすべきだ。
首相 1490億円の緊急包括支援交付金で支援しております。地方負担があるではないかという指摘ですが、地方創生臨時交付金で対応も可能であろうと考えております。
小池 何でもかんでも地方創生臨時交付金って、打ち出の小づちみたいに。それだけ言うんだったら、1兆円じゃなくてね、野党が要求しているように5兆円にしてくださいよ。対応できませんよ、いまのこんな水準では。
小池「地域医療構想に基づく病床再編は立ち止まり見直しを」
厚労相「地域において見直すところもある」
小池氏は、地域医療構想に基づく病床再編について質問を進めました。
国のガイドラインに基づいて2025年の必要病床数をはじき出した際には、想定されていなかった新型コロナウイルス感染症という事態が進行していると指摘。「この計画は見直すべきだ」とただしました。
加藤厚労相は、計画策定時の分析の項目のなかに、「感染症というのは当然入っていない」と改めて明言。「今回、こうした感染症という事態もあったから、それもふまえて地域で議論いただく」としながらも、「地域の変貌を踏まえ、それに必要な限られた医療資源を配分することは当然やらなければならない」と病床再編に固執する姿勢を示しました。
小池 コロナ感染の事態を踏まえ、それを加味して、再検証、見直すということですね。
厚労相 ですからそれは地域においていろんな資料も出し、それらを踏まえて見直すところもあるし、どうやっていくのかも議論していただく。これが前提になるわけです。
小池 国が基準を示してやらせているのだから、責任逃れはやめてください。地域において見直す議論もあるというふうにおっしゃったので、これはいったん立ち止まり見直すということを求めたい。
小池「持続化給付金の抜本拡充を――5割線引きの根拠は?」
首相・経産相(50%の根拠示せず)
小池「企業・事業をつぶさないさらなる補償が必要だ――1回きりでは守れない」
小池 一律10万円の現金給付について総理は、国民みんなが連帯して困難を乗り越えていくためと言った。それならばなぜ、中小企業やフリーランス向けの持続化給付金は、売り上げ半減以上という線引きがあるのでしょうか。3割落ちても4割落ちても大変です。困っている人の中に分断を持ち込むというのは絶対にやっちゃいけない。なぜ5割で線引きするのか。その根拠を示してください。
梶山弘志経済産業相 5割というのは、50%に落ちている方たちが、調査のなかで8%おいでになる。そしてさらにまた8%、さらに30%まで含めて、これらも含めて5割になる可能性があるというなかで線引きをした。
小池 いまのは全然分かりません。誰も分からないと思う。線引きの根拠を示してほしい。
まともな根拠を示せず同様の答弁を繰り返し立ち往生する梶山経産相。質疑が何度も中断しました。
梶山経産相が「そういった中で、5割以上売り上げが落ちているところが、固定費の支払いとか大変苦しくなるということも含めて5割という線に線引きをさせていただいた」と答弁。小池氏は「なぜ5割だったら線を引いて4割じゃダメなんですか、3割じゃダメなんですか。みんな苦しいでしょう。何で5割なんですか」と安倍首相に迫りました。
首相 財政規模の中で、われわれ検討した結果ですね、こういう形にさせていただきました。
小池 5割に根拠がないということがよく分かった。結局どこかで線を引くしかないから、それだけの話だ。
自席で「そうそう」と発言する安倍首相。小池氏は、「総理が今、『そうそう』と言った。そういうことだ」とたたみかけました。
小池 商工会議所の方々から、「会員から相談がきて、何で5割以上減だったら対象になるのに4割じゃダメなのかと、説明できない」との怨嗟(えんさ)の声が上がっている。こんなことを許しちゃいけない。
首相 予算規模と給付金との見合いだ。
小池 企業がつぶれるかどうか、事業が続けられるかどうかの瀬戸際に、財源の規模だと、そんなこと言っている場合ではない。コロナの被害で企業は一つもつぶさないと、そういう責任を果たすのが政治の役割だ。
アパレル経営者のメール「企業が維持できなければ、解雇あるいは倒産しかない」
持続化給付金はたった1回きりの給付にすぎません。小池氏は、4月の売り上げが53%減、5月は65%減という見通しの青森県のアパレル経営者のメールを紹介しました。
小池 「高級婦人服をつくり、100%デパートに納めている。高い技術を持つ24人の従業員の雇用を守るために雇調金を手続きしたけれども、月200万円以上の家賃が払えない。持続化給付金をもらっても1カ月しか持たない」。この方は言います。「無利子無担保というけれど、結局それは企業に負債を負わせて、国の経済を維持しようとしているだけの話じゃないか。雇調金で働く従業員を守ると言っても、それを抱えている企業が維持できなければ、解雇あるいは倒産するしかない」。総理、100万、200万の1回きりの給付金で、こういう企業を守れないでしょう。しかも緊急事態宣言を延長する。さらなる補償が必要じゃないですか。さらなる補償をする、絶対に企業をつぶさないと、そういう姿勢を示してください。
首相 この経済の状況が続いていく、あるいはまたさらに深まっていくという中において必要と判断すれば、ちゅうちょなく必要な措置を行っていく、断行していきたい。
小池 緊急事態宣言を延長するのだったら、1回きりで終わらせないと明言を。
首相 これが長引き、深まっていく、そして相当状況が悪化していくという中においてはですね、さらなる対応についても当然、判断をしていきたい。
小池 すでにこれだけ悪化しているじゃないですか。このまま延長したら明らかにさらに悪化する。いまから準備するのは当然だ。
首相 悪化していく中においては、当然、われわれも、やるべきことはなしていく。
フリーランスのミュージシャンなどの心配――自分は補償の対象になるのか
小池氏は、全国のライブハウスなどを旅して生計を立てているフリーランスのミュージシャンから「自分は持続化給付金の対象になるのだろうか」との不安の声が寄せられていることを紹介し、日々の出演料などの明細がないミュージシャンも給付金が支給されるように求めました。
小池 キャンセルになったスケジュールなどがわかるようなホームページとかメールのやりとりとかがあれば、対象になるということか。
経産相 申請に当たっては収入が減少した理由を証明する書類は不要だ。月ごとの収入で、前年同月比で比較ができるものがあり、2020年1月以降の任意のひと月を選んで、50%以上減少していることが示せれば、資格が得られる。
小池 新規開業の場合はどうですか。対象になりますか。
経産相 前年の売り上げがないというところはなかなか難しい。こうした事業者には持続化補助金という形で、前回よりも倍大きい補助額が出る補助金をつくりました。そして、それらを現金の支給もできるだけ早くということで、さかのぼった形での費用も認められます。そういったもので対応していただきたい。
小池「URが家賃滞納で強制立ち退きを迫っている――ステイホームと言うならただすのは政治の責任」
UR副理事長「訴訟が始まっても話し合い続ける用意ある」
小池「訴訟を撤回せよ」
小池氏は、コロナ感染が広がるもとで、政治の責任で住居を確保するよう求めました。
小池 コロナ感染の広がりは、安定した住まいを持てない人たちを直撃しています。給与が激減し、(家賃の)支払いできない人が増えています。公営住宅の家賃の減免については、どのような要請を自治体にしているか。
赤羽一嘉国土交通相 3月23日付の通達で、収入が減少し、家賃を滞納している入居者が継続して居住できるよう家賃の徴収猶予などの対応や公営住宅の入居要件の弾力的取り扱いを各都道府県と政令市の担当者に要請した。
小池氏は、独立行政法人都市再生機構(UR)が、家賃を3カ月滞納すると明け渡しを求めて強制退去を求めている事例をとりあげ、これをただしました。
滞納を理由に住宅の明け渡しに至った事例は、2016年度に2100件、17年度に2000件、18年度に1900件、19年度に1600件に達しています。
URの伊藤治副理事長は、強制退去を求める事案は、「減少傾向にある」と強弁。これに対し小池氏は、「しかし、いまも家賃3カ月滞納で強制退去を強いている。ステイホームと言っているときにこういうことを続けるのか」と追及しました。
伊藤氏は、「機械的に明け渡しを求めているわけではない。個別の事情に応じ、またお客さまとの相談を通じて、必要な配慮を行いながら対応しているところだ」と釈明。緊急事態宣言を踏まえて、分割支払期間のさらなる延長や分割支払期間中の家賃について遅延利息の免除などを行っていると述べました。
小池 足立区のバス会社の正社員の方は、仕事が減って家賃が払えなくなった。「いっぺんに払ってください。だめなら出ていってください」とURからいわれた。3月13日に滞納家賃の支払いと立ち退きを求める訴状が届いた。分割でも必ず払うからといっても言うことを聞かなかった。こういうことが起こっている。
副理事長 個別の事案であり、詳細な経緯はここでは控える。訴訟が始まっても話し合いを続ける用意はある。
小池 訴訟を撤回してください。
副理事長 ほかの方との公平性等も考慮しまして、慎重に対応を検討してまいりたい。
小池 ほかの人にも同じことをやっているということか。
副理事長 指摘の案件について、現地の対応が不十分な点があれば、今後そういったことがないように、十分徹底をしてまいりたい。
小池氏は、安倍首相にこの問題をただしました。
小池 ステイホームと言っているときに、独立行政法人であるURが立ち退きを強制するようなことを許していいのか。
首相 収入減少等に苦しむ方々が抱いている住まいへの不安については速やかに解消しなければならないと思っている。
小池 リーマン・ショックの時は公営住宅の空き家や雇用促進住宅を、派遣切りで住居を失った人に提供したこともある。災害時には、みなし仮設住宅も提供しているわけですよ。ステイホームというのであれば、ホームを提供するのは政治の責任ですよ。
国交相 平時のルールと、今回のような感染症の状況は違う。国交省としては、いま居住されている方がコロナウイルス感染症の件で居住ができなくなるような事態は、最大限避ける努力を尽くす。
小池 今は災害を超えるような事態が起こっている。であるならば、災害時にやったさまざまな知恵を生かすということを本気で考えるべきです。今までの常識を超えた対応をしなければいけないんですよ。そのことを強く求めたい。
小池「成長基盤強化ファンドは返済不要の大企業優遇――国民の理解は得られない」
首相「資本性資金による支援を行うもの」
小池「優先順位がめちゃくちゃ、火事場泥棒だ」
補正予算には、主に大企業に資金を供給する返済不要の「新型コロナリバイバル成長基盤強化ファンド」(1000億円)の創設が盛り込まれました。
小池氏が、同ファンドは「出資、すなわち株の購入、ファンドへの出資に当てられるもので、返済不要の支援か」とただしたのに対し、麻生太郎財務相は、「返済ではなくて投資しているんだから」「これを直ちに返済してなんとかしてくれということを要求しているわけではありませんよ」と開き直りました。
小池 返済不要ということだ。大企業もコロナ危機でたしかに大変ですよ。でも、巨額の内部留保があるじゃないですか。政府が出資しなくても十分なたくわえがあるじゃないですか。しかも危機対応融資として大企業向けに4兆円が用意されている。中小企業には無利子・無担保だけど貸し付け。大企業には返済不要の資金援助、出資。納得が得られると思うか。
首相 企業規模にかかわらず資本性資金による支援を行うものだ。大企業優遇ではない。
小池 これまでの実績でいうと、競争力強化38件、5094億円、86%が大企業です。
首相 そういう形で、これを活用していきたい。
小池 これまでまさに大企業支援の枠組みとしてやってきたことを、コロナ危機だといって、1000億円入れるわけだ。これは、不要不急どころか、いま目の前の命と暮らしを救うべきときに、優先順位がめちゃくちゃな上に、ましてや大企業支援の枠組みをもぐりこませる。これは火事場泥棒もいいところじゃありませんか。
大企業支援をやめて、医療・学生・中小企業・フリーランス支援のために使え
小池氏は、同日の質疑で追及してきた議論を振り返り、税金を使う優先順位を改めることを求めました。
小池 なぜ、(中小企業に対する持続化給付金で売り上げ減を)5割で線を引くのかと聞くと、どこかで線を引かなきゃいけないから。お金がないからと答えた。あるじゃないですか。こういうお金を中小企業に、医療になんで使わないのか。466億円のマスクではなく、医療支援、これに使うべきじゃないですか。こんな大企業支援の枠組みをやるんだったらば、それを苦境にあえいでいる中小企業のために使うべきではありませんか。“Go To”キャンペーンも、大企業向けのファンドもやめて、学生の支援、医療の支援、中小企業の、そしてフリーランスの支援、文化・芸術の支援、そこに税金を使うのが、政治の責任じゃありませんか。
首相 それぞれ必要な対応をとっていきたいと考えている。
小池 「優先順位がめちゃくちゃだ」といっている。今じゃないでしょう、これをやるのは。コロナ収束後の対応をいま考えるときではない。いま目の前の危機をどうやって乗り越えるかを、党派を超えて知恵を出し合うべきだ。