赤旗2020年5月1日付
参院予算委 小池書記局長の質問
政府の補正予算案が審議された30日の参院予算委員会で日本共産党の小池晃書記局長は、新型コロナウイルス感染症から、国民の命と生活、営業を守るために安倍晋三首相の姿勢を正面からただすとともに医療、学生、中小企業、フリーランスなどへの抜本的な支援の強化を求めました。
病院への支援急げ
災害時並みの対応が必要
小池氏は、医療機関への支援も、PCR検査の強化も1490億円の緊急包括支援交付金で当面まかなおうとする政府に対し、どれだけの感染者数を想定して積算したのか質問。加藤勝信厚労相は「ピーク時の重症入院患者が1日当たり7400人、重症以外の入院患者が同21万人、外来患者が同43万人と推計した」と答えました。
小池氏は、現状の10倍、20倍の規模だと指摘。コロナ患者受け入れで1病院・月2億円の減収になるとの東京都杉並区の試算を挙げ、「全国に当てはめれば月2400億円、半年で1・4兆円だ。病院経営への支援だけでも桁違いに足りない」と追及。安倍首相は「当面必要な規模を確保している。さらなる対応が必要なら予備費を活用する」と強弁しました。
小池氏は、政府の危機感の薄さを批判。四病院団体協議会(全日本病院協会などで構成)と日本医師会が、コロナ対応のために通常の入院・外来患者数が減少して経営が圧迫されているとして、前年度の実績に基づく診療報酬の概算請求を認めるよう要望していると紹介し、「東日本大震災や昨年の台風19号の時にもとった措置だ。緊急対応として要望に応え、さらに支援を上乗せすべきだ」と求めました。
安倍首相は「災害でレセプト(診療報酬明細書)等の消失がある中での対応と今度は違う」と拒否。「まずは融資で支援したい。その上でさらに困難が生じたら手だてを講じる」と繰り返すだけでした。
小池氏は、「融資や100万円・200万円の持続化給付金で済む話ではない。『検討する』さえ言えないのか」と批判。4月分の診療報酬の請求は5月10日締め切りで、6月下旬に支払われるとし、「今すぐ決断すれば、医療機関は資金ショートしないで済み、安心できる。医療を守るために直ちに応えよ」と強く求めました。
学生支援
若者に勉学諦めさせるな
新型コロナ感染症の影響で大学生らに深刻な経済的困難が広がっています。「高等教育無償化プロジェクトFREE」の調査では5人に1人が「退学を検討」と回答。親の減収で「大学をやめることにした」という人もいます。こうした中で、全国171大学で授業料返還・減額などを求めるオンライン署名が自然発生的に沸き起こっています。
小池氏は「首相は、学業をあきらめる若者が広がりかねない瀬戸際にあるという認識があるのか。緊急対策が必要だ」と提起。安倍首相は「学びの場、生活費も含め必要な方々に対してしっかりと支援したい」と語りました。
授業料減額などを求める学生の声に応え、大学も学生への支援金支給や学費返還など経済的支援に努力しています。一方、文部科学省の伯井美徳高等教育局長は、補正予算案に盛り込んだ授業料減免費用は7億円で、減免可能な学生数は国立大学で学費全額免除した場合は700人、私立大学などは平均減免額の1600人分と説明し、あわせても2300人分にすぎないことが明らかに。小池氏は「大学・短大・専門学校生は369万人で、1600人に1人の授業料減免にしかならない」と批判しました。
政府は高等教育の「無償化」は当初7600億円かかるとしていましたが、実際は5300億円しかあてられていません。小池氏は、差額の2300億円で、全ての大学生や専門学校生の学費を6万円以上減額できるとして「もっと学生を支援する余地はある」と指摘。あしなが育英会は約10億円の給付を決定していることを紹介し、「政府は7億円のままでいいのか。これで学生は救われるのか」「日本の未来を担う若者たちに勉学をあきらめさせるようでは一体何のための政治か」と迫り、ただちに抜本的支援を行うように求めました。
萩生田光一文科相は「今回の補正予算案が必ずしも十分とは考えていない」と発言。小池氏は「不十分と認めるなら、それを補うのが政治の責任だ。ただちに財政措置を取るべきだ」と求めました。
PCR検査
従前のやり方 転換明言を
小池氏は、PCR検査をめぐり、1日1万5000件の能力がありながら、実際の検査数が半数程度にとどまっていると指摘。安倍首相が表明した“1日2万件”を「どうやって、いつまでに実現するのか」とただしました。
加藤厚労相は、方法も時期も示さず「2万件の能力があるから2万件やるわけではない」と強弁しました。
小池氏は、無責任ぶりを批判し、加藤厚労相が同日、「本当に必要な場合は検査する」と述べたことについて、「それだから軽症では検査が受けられない。悪化してようやく検査し、陽性と判定されたときには集中治療室にいるという事態が続いている」と強調。「重症になるまで検査しなかった今までのやり方を転換すると明言すべきだ」と迫りました。
安倍首相は「医師が必要と判断しても行われていないかもしれない。いろいろな指摘もある」と認めつつ、「当初から、必要と判断すれば検査を受けられるようにする方針だ」と言い張りました。
小池氏は、保健所を介さずPCR検査センターで検査する新たな取り組みが東京都など一部の地域で始まる一方、全国的には保健所を通さないと検査できない従前の仕組みで、医師が判断しても検査が受けられないままだと指摘。「今の予算では、開業医が診療を休んで同センターで検査に当たっても、学校健診並みの報酬しか出ない。危険を伴い、休診に伴う損失補償も必要なのに、ほとんど手弁当で、しかも2分の1は地方負担だ」と告発。「補正予算成立後に、検査体制拡充のために緊急の財政措置を行うべきだ」と求めました。
安倍首相は「1490億円の包括交付金で支援している。地方創生臨時交付金でも対応できる」と拒否。小池氏は、地方創生交付金(1兆円)は営業自粛する事業者への協力金にも使われるもので、打ち出の小づちではないと批判し、「それだけ言うなら、野党が言うように5兆円に増額するべきだ」と強調しました。
「地域医療構想」
病床削減計画見直しせよ
小池氏は、病床削減を進める「地域医療構想」について、今回のような感染症のまん延は想定していなかったとして、「コロナ危機を踏まえて見直すべきだ」と強調。加藤厚労相は「こうした感染症の事態もあったので、それも踏まえて地域で議論いただく。見直すところもある」と述べました。
「持続化給付金」
5割線引きやめ何度でも
中小業者やフリーランスむけの持続化給付金は、売り上げが半減しないと対象になりません。
小池氏は、「国民を分断するべきでない。なぜ5割減で線引きするのか」と根拠をただしました。
梶山弘志経済産業相は根拠を示せず、たびたび審議が中断。安倍首相が答弁に立ち「どこかで線を引かなければいけない」「財政規模の中で検討した結果だ」などと述べたのに対し、小池氏は「根拠はないということだ。無責任だ。事業を続けられるかどうかのときに、財源の規模を言っている場合じゃない。コロナの被害で企業を一つもつぶさない。その責任を果たすのが政治の役割だ」と強く訴えました。
しかも中小業者200万円、個人事業主100万円の1回だけの給付では足りません。
小池氏は、4月の売り上げが53%減、5月は65%減の見通しという青森のアパレル経営者から、従業員の生活のため雇用調整助成金の手続きをしたが、200万円以上の家賃などが払えないとの声が寄せられたと紹介。「融資では企業に負債を負わせるだけ。従業員を守るといっても企業が維持できなければ解雇、倒産してしまう」の声を代弁し、「100万、200万では全く足りない。絶対に企業をつぶさない姿勢を示すべきだ」と迫りました。
安倍首相は、経済の状況が悪化すれば必要な措置を行うなどと答弁。小池氏は、「緊急事態宣言を延長するなら1回で終わらせないと明言を」と重ねて求めましたが、首相は同じ答弁を繰り返しました。
小池氏はまた、日々の出演料などの明細がないライブハウスを巡業するミュージシャンにも、給付金が支給できるよう要求。梶山経産相は、月の収入が比較できれば支給できると述べました。
中小企業支援など
税金使う優先順位改めよ
補正予算案には主に大企業に資金を供給する返済不要の「新型コロナリバイバル成長基盤強化ファンド」(1000億円)の創設が盛り込まれています。
小池氏は、「中小企業には貸し付け、大企業には返済不要の資金援助出資で納得が得られるのか。目の前の命と暮らしを救うべきときに不要不急どころか大企業支援の枠組みを潜り込ませるのは、火事場泥棒もいいところだ」と追及。収束後の需要喚起策や大企業向けファンドはやめて、学生、医療、中小企業とフリーランス、文化・芸術の支援にこそ税金を使うべきだと迫りました。
首相は「危機のときにどういう方にはやめてということではなく、必要な対応をとっていきたい」と答弁。小池氏は「優先順位がめちゃくちゃだと言っている」と批判しました。
家賃払い困窮者に
住居の確保は政治の責任
コロナ感染の広がりで給与が激減し、家賃の支払いに窮する人が増えています。
小池氏は、こうした非常時に東京都足立区のバス会社で働く人が家賃を支払えなくなり、独立行政法人都市再生機構(UR)から立ち退きを求める訴状が送りつけられる事態が起きていると告発。URに訴訟撤回を求めるとともに、政府に対し「ステイホームと言っている時に『独立行政法人のURが立ち退きを強制するようなことはやめるべきだ』と言うべきだ」と迫りました。
赤羽一嘉国土交通相は「平時のルールと今回のような感染症の状況は違う。国交省としては、いま居住されている方が、コロナ感染症の件で居住できなくなるような事態は最大限避ける努力を尽くす」と答えました。
小池氏は、リーマン・ショック時には「派遣切り」で住居を失った人に公営住宅の空き家や雇用促進住宅を提供し、災害時には賃貸住宅を「みなし仮設住宅」として提供したことにもふれて「ステイホームと言うなら、ホームを提供するのが政治の責任だ」と強調。「今は災害を超えるような事態が起こっている。災害時にやったさまざまな知恵を生かすことを本気で考え、対応するべきだ」と求めました。
国民目線で「痛快」
小池氏質問に反響次々
日本共産党の小池晃書記局長の30日の参院予算委員会での質問に、「国民目線で的を射ている」「痛快な質問だった」などの反響が次々に寄せられました。
党本部に声を寄せた男性は「痛快な質問だった。安倍首相こそ国難だ。野党一致団結してやってほしい」と言います。
「国民の誰もが疑問と不満に思う事を代弁してくれた」という男性は「安倍政権には一番大切な子どもや教育、文化や中小企業を守る意識も危機感もありません。とにかく今は一人でも多くの人が助かるように頑張ってほしい」と語りました。
自粛・休業要請に伴って4月の収入がほぼゼロになったという20代のフリーランスからは「企業からの補償もない中で、持続化給付金は額が少なく、10万円の給付も足りません。不安だけど、小池さんが私たちのために厳しく追及してくださって本当にありがたい」という声が届きました。